転生特典に量産型の機体のみという縛りがあったのでジェイアークを選んでやった件   作:友(ユウ)

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第26話 狙い撃つ者

 

 

 

【Side 武】

 

 

 

 

「…………以上で本日の座学を終了する」

 

相変わらずまりもちゃんは頭の痛そうな表情で教壇に立っている。

どんな質問にもほぼ完璧に答えてしまう俺達の所為なんだろうけど。

すると、

 

「―――最後に伝達事項を1つ。急な話ではあるが、明日、国連事務次官が当基地を視察することになった」

 

「「「「「「ッ!」」」」」」

 

その言葉に、純夏以外が反応する。

いよいよ来たか。

 

「本来なら明日からスケジュールを繰り上げて旧市街地で模擬戦闘訓練を行う予定だったが………こればかりは仕方ない。明日は全員基地内待機だ。以上」

 

「敬礼!」

 

まりもちゃんの話が終わると、委員長の敬礼で講義が終了する。

 

「………………」

 

まりもちゃんが教室から出ていくと、たまが気まずそうな顔をしていた。

 

「どうした? たま。一応横浜基地に来てからは手紙を出してるんだろ? 今回は前みたいに分隊長に勘違いされることは無いだろうし」

 

俺が声を掛けると、

 

「は、はい………それはそうなんですけど…………置手紙1つで家を飛び出しちゃったから、顔を合わせ辛いっていうか…………」

 

「まあ、解からなくもないけど」

 

千鶴が同意する。

 

「後悔してるの? 壬姫ちゃん」

 

純夏が尋ねると、

 

「い、いえ! そんな事は………! ただ、パパ達に心配かけちゃったのは申し訳ないって思ってるだけです」

 

「それは謝るしか無いんじゃないか? 心配かけてごめんなさいってさ。いざとなったら俺も一緒に頭下げてやるよ」

 

俺はたまを元気づける為にそういう。

 

「たけるさん………! はい!」

 

俺の言葉に、たまの表情が少し明るくなった。

 

 

 

 

 

【Side Out】

 

 

 

 

 

【Side まりも】

 

 

 

 

今日の訓練を終えた私は、真っ直ぐに夕呼の所へ向かっていた。

どうしても確かめたい事があったから。

夕呼の執務室へ入ると、

 

「香月副司令、御質問があります」

 

「あら、まりもじゃない。何か用?」

 

私の剣幕にも動じず、いつもの飄々とした態度で答える夕呼。

 

「単刀直入に聞きます。私が受け持っている207B分隊の子達……………あの子達は、1ヶ月ほど前にヴァルキリーズを圧倒したあの吹雪の部隊の衛士ですね?」

 

それは、ここ数日の戦術機訓練で感じていた事。

世に出て2年足らずのGNドライブ搭載機を手足のように使いこなし、歩兵としても圧倒的な能力を持つ子達。

そんな子達が唯の新人な訳が無い。

そして、シミュレーターや実機訓練で見せた動きにも見覚えはあった。

 

「あら、気付いちゃった?」

 

夕呼はあっさりと認めた。

いえ、気付くことは元から織り込み済みという事かしら?

 

「………何故あれほどの能力を持つ衛士を訓練兵として入隊させたのですか!? あれほどの力があれば………!」

 

「だってあの子達、公式的には何の訓練も受けてない一般人だったのよ? そんな子達をいきなり戦術機に乗せるわけにはいかないでしょ?」

 

確かにその通りかもしれない。

何の記録も無い人間をいきなり戦術機に乗せるのは無理がある。

だけど、同時に別の疑問も浮かび上がる。

 

「一体あの子達は、何処であれほどの力を手に入れたの? あの年頃の子供達がどんな訓練を受ければ…………?」

 

「あるじゃない。世界中のどの国、基地よりも大きな力を持っている組織が………」

 

その言葉で私はハッとなる。

 

「まさか…………GGG……!?」

 

「フフッ………」

 

夕呼は私の言葉には答えず、薄く笑みを浮かべるだけだ。

 

「少なくとも、あの子達は敵じゃないから安心しなさい。序にあんたもあの子達から教わるべき所は多い筈よ。一緒に頑張んなさい」

 

夕呼はそう言って話を終わらせた。

私は退室すると、

 

「あの子達が………GGGに…………」

 

あの子達の経歴は、3年前からこの前横浜基地に現れるまで不明となっていた。

多分、その間にGGGに居たのだろう。

少し釈然としない所はあるが、あの子達が私を教官として慕ってくれている事はよくわかっている。

だから、あの子達は間違いなく私の教え子だ。

だから信じよう、私の教え子を…………

 

 

 

 

 

【Side Out】

 

 

 

 

 

 

【Side 武】

 

 

 

 

 

翌日、『前』の通り珠瀬事務次官が来訪した。

たまは分隊長では無いが、案内役として委員長と共に抜擢されている。

 

「珠瀬事務次官! 横浜基地衛士訓練校へようこそ!」

 

珠瀬事務次官を出迎える。

 

「ありがとう軍曹………ん?」

 

珠瀬事務次官はキリッとした表情でそう言ったが、その視線がたまを捉えると、途端にへにゃっとなった。

 

「た~~~~ま~~~~~~~!! 久しぶりだな~~~~~~~~~!! 今まで一体どこに居たんだい~~~~~~!? 会いたかったぞ~~~~~~~~!!」

 

「はにゃぁっ!?」

 

珠瀬事務次官はたまに抱き着きぐりぐりと頬擦りをする。

………相変わらずだよたまパパ。

 

「そ、その………心配かけてごめんなさいパパ…………でも、私にはやらなければいけない事があったので………!」

 

たまは困惑しつつも謝り、そしてそう言った。

すると、

 

「……………ッ頼もしくなったなぁたま! でもパパ甘えて貰えないのはちょっとさびしいぞぉ………!」

 

「パ、パパ………!」

 

そんな親子2人に唖然としつつも、

 

「ここから先は、珠瀬訓練兵がご案内差し上げます」

 

まりもちゃんがそう言った。

 

「あ、はい! こちらへどうぞ!」

 

そうして訓練校内の案内が始まった。

 

 

 

 

「こちらが兵舎です!」

 

問題の兵舎案内の時が来た。

俺達は部屋の前に並んでいる。

さて、手紙のやり取りも1ヶ月ぐらいだし、たまも『前』の経験から下手な事は書いて無いと思うが………

 

「うむ………君達がたまの同期かね」

 

たまパパが俺達を見渡す。

すると、

 

「………あんたもたま」

 

慧が何を思ったか口を開く。

 

「たまパパ………ヒゲ……………………たまバカ…………」

 

何でお前は余計な事を口走る!?

しかも更に口数増やしてるじゃねえか!

 

「あう……あう………」

 

たまが困惑している。

今回は分隊長と言う肩書は無いので下手に命令するわけにもいかない。

 

「彩峰、私語を慎みなさい」

 

代わりに委員長が注意してくれた。

 

「…………申し訳ありません。分隊長………」

 

彩峰は謝る。

特に怒ってはいない様だ。

 

「おや? 君はさっきまで一緒に居た………」

 

「は! 榊 千鶴訓練兵であります! この207訓練小隊の分隊長を務めています!」

 

委員長は敬礼しながら自己紹介する。

 

「連中の相手は疲れただろう? 官僚体質の無能ばっかりだからねぇ………」

 

「いえ! とんでもありません!」

 

流石委員長。

2度目ともなれば落ち着いて対処出来ている。

 

「君がたまの分隊長だったんだね?」

 

「はい。未だ未熟ですが、精一杯務めさせていただいています」

 

いや、今の委員長が未熟者だったら、世界の隊長の9割は全員未熟じゃないかなぁ?

 

「うんうん。たまからは的確な裁量と指示でとても頼りになる隊長だと伺っているよ」

 

「は! ありがとうございます!」

 

おおっ!

何事もなく過ぎ去った。

 

「ただ、彩峰訓練兵と仲の良い連携を見せる癖に、仲が良いとは認めない頑固な所があるとも伺っているねぇ」

 

「「ッ!?」」

 

「そういう所は父親譲りだね。はっはっは!」

 

「ッ~~~~~~~~! お、お恥ずかしい限りです」

 

何とか耐えたな委員長。

 

「む、君は………」

 

「鎧衣 美琴訓練兵です!」

 

「ほほう、君かね。サバイバル技術と戦況把握能力に長け、小隊のムードメーカーとして活躍している子とは………」

 

「えへへ、それほどでも………」

 

美琴は恥ずかしそうに笑う。

 

「しかも、隠れている相手を8割以上の確率で見つけ出す野生の勘と言うか変態的な勘をもつらしいね」

 

「へ、変態…………」

 

美琴がずぅーんと沈み込んでしまう。

しっかりしろ美琴。

前よりは傷は浅いぞ。

 

「む、君は………」

 

「御剣 冥夜訓練兵です」

 

「そうですか………あなたが…………」

 

「私には何も無いのですか?」

 

「死活問題ですので…………」

 

「そうですか…………」

 

今度は一体何書いたんだ、たま?

 

「君は………?」

 

「鑑 純夏訓練兵です!」

 

おっと、今回は純夏も居たんだったな。

 

「ほほう。君が…………たまの最大のライバルという………」

 

「………はい?」

 

ライバルって何の事だ?

俺に関しては6人の間で協定が取り交わされたと聞いたことがあるが…………

正妻が誰になるかという戦いが繰り広げられていた事など、俺は知る由も無かった。

 

「何でも屈強な男達すら一撃で悶絶させる拳の持ち主だそうじゃないか」

 

「はわっ!?」

 

確かにそうですけど、正確には悶絶どころか空高く打ち上げられます。

悶絶程度ならたまでも可能ですよ?

 

「ッ………!」

 

そこで俺の感情を感じたのか、純夏からギロッと睨まれた。

 

「…………あははは」

 

たまパパには笑って誤魔化す純夏。

 

「はうあうあ~………たけるさんは見捨てないでください~………」

 

たまが俺に縋りつく。

 

「ほう、君が白銀 武君か」

 

「は!」

 

俺は敬礼して肯定する。

 

「先程から見ていたが、うむ、なかなかの好青年だ。座学、兵科共に成績優秀、冷静で頼りがいがあると言う。今の御時世で、君ほどの男早々居まい」

 

「は、ありがとうございます」

 

「君ならば、うむ、良いだろう。たまの事をよろしく頼むよ。傍で支えてやって欲しい、今までも、そしてこれからもね」

 

「あはははははは…………」

 

俺は苦笑して誤魔化す。

来たよ。

この次に来るのは孫発言…………

 

「それで式は何時にするのかね!? 形式は神前婚で宜しいかな!? いや、たまの白無垢姿も見たいがウェディングドレスも捨てがたい! うう~む、迷うな! 君はどちらが良いと思う!?」

 

「ししし、式ぃぃぃぃぃぃぃっ!?」

 

「ぱ、ぱ、パパァッ!?」

 

おいおい!

孫発言以上に直接的な表現になってるじゃねえか!?

 

「わはは! 恥ずかしがらなくていい! 君はたまの『大切な人』だと聞いている! ならばそう言う事なのだろう!?」

 

一体何書いたんだ!? たま!

 

「たぁ~けぇ~るぅ~ちゃぁ~~~~ん……………!? どぉ~いう~事ぉ~~~~~~~…………!?」

 

後ろからゆらりと純夏が近付いてくる。

 

「ま、待て! 俺にも何が何だか………!」

 

このままでは鍛えに鍛えて威力の増した純夏のどりるみるきぃぱんちを受けることに………

その時だった。

 

ヴィー! ヴィー! ヴィー!

 

突如として警報が鳴り響く。

 

「「「「「「「「「ッ!?」」」」」」」」」

 

突然の事に、全員が驚愕する。

すると、

 

『207衛士訓練隊に告ぐ。直ちに第2ブリーフィングルームに集合せよ。繰り返す、207衛士訓練隊に告ぐ。直ちに第2ブリーフィングルームに集合せよ』

 

夕呼先生の声で放送が響く。

それを聞き、事務次官に避難するよう伝えると、俺達はブリーフィングルームに急いだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

ブリーフィングルームに集合すると夕呼先生が待っていた。

夕呼先生が説明を始める。

 

「事故の発生は41分前の15時04分。エドワーズから那覇基地に向かっていたHSSTが、再突入の最終シーケンス直前で通信途絶。15時19分、国連軍GHQは状況を原因不明の機内事故により乗員 全員死亡と推定。同時に遠隔操作による突入角の変更を試みるも失敗。自爆コードも受け付けずハッキングも失敗。結果、現在HSSTはここ横浜基地に順調に落下中………というわけ」

 

「しかし、それだけで防衛基準体制2と言うのがよく分かりません。HSSTの墜落事故は過去に例が……」

 

夕呼先生の説明に疑問を持った委員長が口を挟む。

委員長としても理由は知っているが、聞かなければ不自然だからだろう。

 

「確かに通常の手順で滑空降下してくるHSSTの運動エネルギー自体は大したものではないわ…けど事故機の航法システムをモニターしていて分かったことだけど……なぜか電離層を突破した後、フルブーストする様に設定されていたわ。しかも機体の耐熱限界ギリギリで……」

 

「フルブースト!? 加速するんですか!?」

 

「減速ではなく!?」

 

委員長に続いて冥夜も驚愕の声を漏らす。

 

「加速よ。どういうつもりか知らないけれど、まともな航行プログラムでないことは確かね」

 

夕呼の説明に、皆は静まり返る。

 

「極めつけはカーゴの中身、爆薬が満載だそうよ。それも海上運送がセオリーのデリケートなやつがね」

 

「「「「「「ええっ!!」」」」」」

 

その言葉に俺達は驚愕の声を上げた。

少々わざとらしかったか?

 

「香月副指令、被害予測は………?」

 

まりもちゃんがそう聞くと、

 

「HSSTの速度は激突直前には音速の数倍まであがっているでしょうね。軍用装甲駆逐艦の耐熱耐弾装甲の強度をもってすれば………地面を最低20メートルはえぐるでしょうね…………更にカーゴに満載の爆薬が爆発すれば……」

 

「基地が丸々吹っ飛ぶ?」

 

慧がそう口にした。

 

「加速? 爆薬? どうして………偶然………ですか………?」

 

委員長が話を合わせる為にそう言うと、

 

「さあどうかしらね? あちらの方がご存じなければ誰にも分からないわ」

 

夕呼先生が出入り口の方を見ると、珠瀬事務次官が入って来た所だった。

 

「おお、お邪魔でしたかな?」

 

「事務次官!? 何故避難なさらないのです!?」

 

神宮司教官が驚愕の声を上げた。

 

「私の仕事はこの基地の視察でしてな………それに今の香月博士の説明を聞く限り何処にいようが安全ではない様だ」

 

「ですが!!」

 

「優れた兵器? システム? そのような物を見た所でこの基地の真価は見えますまい。大事なのは人。極東の絶対防衛線。国連の最前線である横浜基地の実力、ここでとくと拝見させてもらいます」

 

珠瀬事務次官はそう言い切った。

 

「随分と仕事熱心なようで………」

 

「ささ、私に遠慮なさらずに」

 

夕呼先生の言葉に事務次官は先を促した。

 

「さてあんた達、ここからは心して聞きなさい」

 

夕呼先生はそう言うとパネルを操作してモニターにある物を映し出した。

 

「こんなこともあろうかと用意していたものがあるわ。これよ!」

 

映し出された物は、長大なライフル。

だが、記憶にある1200㎜OTHキャノンとは別物だった。

形は巨大なスナイパーライフルと言った所だ。

 

「超長距離狙撃用GNビームライフル…………ビーム用のスナイパーライフルと言った所ね。現在これの固定準備を進めているわ」

 

「こ、これは!?」

 

まりもちゃんが驚愕の声を上げる。

 

「これを使ってHSSTを撃ち落す」

 

「これは対地兵器でしょ!? HSSTの高度と距離がどれだけあるか………!」

 

「高度60㎞。距離500㎞………と言った所かしらね」

 

まりもちゃんの言葉に夕呼先生は平然と答える。

 

「1発撃つのにチャージに時間が掛かるから、チャンスはそれほど多くないわ。時間が掛かれば撃墜したとしても日本の本土内に墜落。被害が出るわ…………で、これって当然ながらGNドライブ搭載の戦術機での運用が前提なの」

 

「夕呼………あなた…………」

 

「HSST打ち上げ用のリニアカタパルトの先端に整備リフトを固定。そこに吹雪とGNスナイパーライフルを配備。極超長距離狙撃を行う」

 

「な、なら、この子達に頼むのは………」

 

「当然極東一…………いいえ、世界一のスナイパーが居るからよ」

 

その言葉に視線がたまに集中する。

 

「まあ、GNスナイパーライフルは2門あるから一つは正規兵に任せるわ。誰に任せるかはわかるでしょ?」

 

「…………風間少尉……………」

 

「けど、あの子の能力じゃ可能性は低いでしょうね」

 

「ッ……………!」

 

すると、夕呼先生はたまを見て、

 

「念の為に聞くけど………自信はある?」

 

そう問いかけた。

『前』のたまは、基地の運命と多くの人々の命を背負うというプレッシャーに耐えきれず、一度逃げ出してしまった。

だけど、今のたまなら……………

 

「……………もちろんです!」

 

たまは両手で握り拳を作って自信を持った表情でそう言い切った。

 

「何て言ったって、私はロックオン・ストラトスと呼ばれた人の弟子なんですから! その位狙い撃って見せます!」

 

「ロックオン・ストラトス………成層圏を狙い撃つ? フフッ………今の状況に相応しい名前じゃない」

 

夕呼先生は笑う。

 

「なら珠瀬! あなたの力、見せてみなさい!」

 

「はいっ!」

 

夕呼先生の言葉に、たまは力強く頷いた。

 

 

 

 

 

【Side Out】

 

 

 

 

 

 

【Side 三人称】

 

 

 

 

 

207B分隊がブリーフィングを行っていた頃、横浜基地にも複数あるHSST用のリニアカタパルトの1つに、不知火とGNスナイパーライフルが配備された整備用リフトが上昇していき、頂上で固定された。

その不知火には、A-01部隊の1人、風間 祷子が乗っていた。

そして、そのリニアカタパルトに一番近い基地施設の屋上に他のA-01部隊のメンバーがそろっていた。

 

「……………風間少尉なら大丈夫ですよね…………?」

 

多恵が思わず口にする。

 

「我々にできるのは、風間を信じる事だけだ」

 

みちるがそう言う。

 

『目標地上到達まで約300秒! GN粒子、高濃度圧縮中! チャージ完了まで30秒!』

 

「ッ……………ふう………」

 

祷子はコクピット内で深呼吸をする。

正規兵とはいえ、基地の命運を背負う事は非常にプレッシャーを感じている。

 

『チャージ完了まで残り10! 9! 8…………!』

 

「ッ!」

 

祷子は集中し、照準を合わせる。

 

『3! 2! 1!』

 

「いきます!」

 

祷子が引き金を引き、赤い閃光が空へ向かって放たれた。

ビームは着弾まで時間はかからない。

 

『目標健在!』

 

「ッ…………!」

 

軽く舌打ちする祷子。

 

『再チャージ、砲身冷却開始! 再発射まで30秒!』

 

「風間…………」

 

「風間少尉………」

 

「祷子………」

 

A-01部隊のメンバーは祈ることしか出来ない。

 

『再チャージ完了!』

 

「第2射、いきます!」

 

再び引き金を引く祷子。

だが、

 

『目標健在! 地上到達まで234秒』

 

「くっ………!」

 

歯噛みする祷子。

 

『再チャージ開始!』

 

「………早く………早く…………!」

 

祷子に焦りが生まれ始めた。

 

『3……2……1……チャージ完了!』

 

「ッ!」

 

引き金を引く祷子。

しかし、

 

『目標健在! 地上到達まで198秒!』

 

「ううっ………!」

 

祷子の精神は限界に近かった。

基地の、1万人以上の人間の命を預かっているというプレッシャーは、祷子の本来の力を引き出す妨げになっていた。

更にそこに焦りまで加わっては、真面な狙撃など出来ようはずもない。

だがその時だった。

 

――ガコン! ウィィィィィィィィン!

 

別のリニアカタパルトの整備用リフトが上昇して来た。

そこにはGNスナイパーライフルと吹雪が配備されている。

 

「吹雪………?」

 

祷子が呟く。

 

『目標! 地上到達まで約170秒!』

 

オペレーターであるイリーナの声が響く。

そして、

 

『狙い撃ちます!』

 

吹雪が引き金を引き、赤い閃光が空へと放たれた。

そして、

 

『目標………………撃破!! レーダーに反応無し!』

 

「嘘……………1発で……………?」

 

祷子は信じられない声を漏らす。

 

「あの吹雪…………まさかあの部隊の………!?」

 

その腕前に祷子はハッとなった。

 

『作戦終了。各機、指定のハンガーへ帰投してください』

 

「ッ………了解」

 

吹雪の衛士の正体は気になるが、命令には従わなければならない。

後ろ髪引かれる思いをしながら祷子は帰投するのだった。

 

 

 

 

 

 

横浜基地から少し離れた場所。

そこから離れる様に飛び立つ機動兵器があった。

それは、ニールのアシュセイヴァー。

万が一の時の為に待機していたのだが、

 

「流石だな壬姫。ナイススナイプだったぜ………!」

 

コクピットの中で、ニールはそう呟く。

そのままアシュセイヴァーは横浜基地から離れていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 






はい、マブラヴオルタネイティヴAnother編第26話でした。
今回はたまパパの登場と、HSSTの狙撃でした。
たまパパの登場だけでは盛り上がりに欠けると思いましたので。
でもたまパパのおふざけはオルタよりも更に加速しました。
次回は鎧衣課長の登場からクーデター直前までかなぁ………?
お楽しみに。


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