転生特典に量産型の機体のみという縛りがあったのでジェイアークを選んでやった件 作:友(ユウ)
【Side 武】
12月5日のこの日。
『前』の通りに軍事クーデターが起きた。
早朝に総員起こしが掛かり、程なく防衛基準態勢2が発令された。
俺はまず夕呼先生の所へ行き、クーデターが発生し『前』とほぼ同じ流れである事を確認。
そのまま207B分隊へ合流する。
そこで沙霧大尉の声明が放送されていた。
内容は『前』と同じく、今の政府と帝国軍の批判。
先日の天元山救助活動の実体。
そして自分達の行動の正当化。
最後に、自分達の行動は、殿下や国民に仇為すものでは無いということだった。
声明の発表が終わると、まりもちゃんがブリーフィングを続けた。
「現在帝都はクーデター部隊によってほぼ完全に制圧されている。先程最後まで抵抗していた国防省が陥落したそうだ。未確認ではあるが、帝都城の周辺で斯衛軍とクーデター部隊の戦闘が始まったという情報もある…………」
まりもちゃんはそこで一旦言葉を区切り、言いにくそうにしながらも次の言葉を発した。
「また………臨時政府はクーデター部隊により、内閣閣僚数名が暗殺された事を確認した……………榊首相の生死は不明だが、状況を鑑みて見ればおそらく…………」
「ッ………」
委員長はその言葉に僅かに反応する。
「首謀者である沙霧大尉自ら閣僚を国賊と見なし、殺害したそうだ…………榊………お父上については…………」
「いえ、今は任務中ですので」
委員長は動揺した様子を見せず、そう答えた。
その後、程なくして横浜基地の米軍受け入れが決まった。
次々と基地内に入って来る米軍の戦術機。
更に、それに呼応するように帝国軍が横浜基地を包囲した。
『前』の通りなので俺達にも動揺は無い。
そこで『前』の通り月詠さんと話し、帝都の様子を聞いた。
今の所変わりは無い様だが、油断は禁物だ。
俺は気を引き締め、ハンガーへと戻った。
【Side 三人称】
時は少し遡る。
帝国議事堂にて、それは起こった。
帝国軍の衛士である沙霧 尚哉大尉を始めとした多くの兵士達が『戦略研究会』を名乗り、帝国議事堂に押し入り、クーデターを起こしたのだ。
内閣閣僚達が次々と兵士によって殺されていく中、代表者である沙霧大尉がある部屋に向かって進んでいた。
その先にある扉を開け放つと、そこには1人の男性が淡々と執務仕事を熟していた。
その男性、榊 是親は内閣総理大臣であり、千鶴の父親でもあった。
是親は沙霧大尉が押し入ってきたにも拘らず、これと言って驚いた様子を見せなかった。
まるで、こうなる事が分かっていたかの様だ。
「ふん……随分と手際の良い事だ。踊らされているという自覚はあるのだろうな?」
まるで確かめるように言葉を投げかける是親。
「………ここで起たねば、日本の民は二度と己の両脚で立つ事もなくなる」
そう言い返す沙霧大尉。
「立ち上がって転ぶ程度なら良いのだがな。それが民に何を強いるのか………分からぬでもあるまい」
「将軍殿下を民から遠ざけ、国政を思うままにした貴様が何を言う……! 日本はBETAに侵攻された時に滅ぶのではない。施しに甘んじ………日本の民たるを忘れた時に滅ぶのだ」
「………ここに来たからには覚悟があろうな? その身を汚泥に晒す覚悟が………」
「……是非も無し」
是親の言葉に沙霧大尉は迷わずにそう答えると、携えた刀の鯉口を切った。
抜き放たれた刀を振り上げる沙霧大尉。
一方是親は、抗う素振りも見せずに落ち着いた表情で目を伏せた。
ただ、心の中で思う事は、
(千鶴………)
3年前に姿を消し、つい1ヶ月ほど前に横浜基地に姿を現したという自分の娘。
(無理をしてでも……会っておくべきだったか………)
総理大臣としての仕事に追われ、再会の時間を作れなかったことが唯一の心残り。
そして振り下ろされる刃。
その刃が是親の首に向かって振り下ろされ―――――
―――ギィンッ!
甲高い金属音を響かせて、その刃が止められた。
「「ッ!?」」
驚いたのは沙霧大尉。
そして、是親も同様だった。
思わず目を見開く。
沙霧大尉の振り下ろした刃は、横から伸びてきた緑の刀身を持つ短剣によって止められている。
「何奴ッ!?」
沙霧大尉は咄嗟に飛び退きつつ油断なく身構えた。
そこに居たのは金色の派手な鎧を身に纏う、黒髪の女だった。
「悪いけど、この人を殺されるわけにはいかない………」
その女………ルネは呟いた。
「貴様!? いつからそこに!?」
クーデター部隊の兵士の1人が銃を向けながら叫んだ。
だが、次の瞬間緑の一閃が奔り、その銃が切断された。
「なっ!?」
驚愕する兵士。
「ッ! 貴様! どこの手の物か!?」
沙霧大尉が厳しい目で問いかける。
すると、
「…………GGG」
ルネはそれだけを呟く。
「GGGだと!? GGGが何故我らの邪魔をする!? GGGは人同士の争いには介入しないと宣言していた筈!」
沙霧大尉が再び問いかけた。
「別に争いに介入するつもりは無いし、クーデターの邪魔もしない。ただ、この人が殺されると知り合いに悲しむ子が居るから死なせたくないだけ」
ルネは淡々とそう言う。
その直後、背後の壁に建物を揺らがせる震動と共にヒビが入り、外から突き破られるように崩れていく。
「な、何だ!?」
困惑するクーデターの兵士達だったが、崩れた顔の向こうから金色のライオン………ギャレオンの顔が現れた。
「こ、鋼鉄の獅子………!?」
驚愕の声を漏らす沙霧大尉。
すると、ギャレオンがゆっくりと口を開く。
「うおっ!?」
是親が驚いた声を漏らす。
ルネによってその身体を担ぎ上げられたからだ。
ルネが是親を担ぎながらギャレオンの口に歩いて入っていくと、一度沙霧大尉の方を振り向き、
「安心して。クーデターの騒ぎが収まるまでこの人の身柄はこちらで預かる。表には出さないからクーデターの進捗には影響は無い」
その言葉と共にギャレオンの口が閉じると、官邸の外から部屋に顔を突っ込んでいたギャレオンが顔を引き抜き、そのまま空高く飛び去って行った。
それを見ている事しか出来なかった沙霧大尉だったが、
「…………作戦を続行。すぐに声明を発表する」
沙霧の言葉に、
「「「「「りょ、了解!」」」」」
我を取り戻したクーデター派の兵士達は返事をするのだった。
【Side Out】
【Side 武】
207小隊に出撃命令が下りた。
任務内容は、将軍家の離城である塔ヶ島城の警備。
月詠中尉達の部隊も同行している。
輸送車両で現地まで移動している最中、帝都でクーデター部隊と斯衛部隊との戦闘が始まったと知らされた。
しかも、一部ではビーム兵器を使用したとの情報もある。
現地に到着すると、交代で仮眠をとりつつ戦術機で警備を行っていた。
そして、ある時間になる。
「そろそろか………」
『前』と同じぐらいの時間になり、
「こちら、20706」
俺は通信で呼び掛けた。
「俺はこれから周辺の哨戒に出る。バックアップを頼む」
『了解しました。たけるさん』
何があるかを知っているたまは、理由を聞くこと無く返事を返す。
すると、
『タケル』
冥夜から声が掛かった。
「どうした? 冥夜」
俺が聞き返すと、
『…………私も同行させてもらっていいだろうか?』
驚きの言葉が返ってきた。
「………本気か?」
『ああ』
俺の言葉に冥夜は頷いた。
「……………わかった」
俺は冥夜の気持ちを尊重することにした。
戦術機から地面に降りると、丁度冥夜も降りてきたところだった。
「確かこっちだった筈だ」
記憶を頼りに移動を始める。
冥夜も後ろを付いてきている。
少し歩いて森の近くに来ると、パキリと枝を踏み折る音が聞こえた。
「来たっ………!」
俺はやや身構えた。
「念のために不知火の暗視モニターにリンクを…………ッ!?」
万一クーデターの兵士だったら目も当てられないからな。
数は………よし、2人だな。
そして、前に月詠中尉の言葉からおそらく殿下も…………
やがて、その2人が視認できる距離まで近づいた。
すると、
「何者です!?」
女性の声が響いた。
それはそれなりに年を取った女性。
確か侍女長だったか?
「失礼しました。私は国連軍横浜基地所属、白銀 武訓練兵であります!」
俺は大きな声でそう名乗った。
すると、
「白銀………?」
もう一人の声が響いた。
こちらは年若い少女の声。
木の影から姿を現したその人は、紛れもなく日本帝国国務全権代行、政威大将軍、煌武院 悠陽殿下の姿だった。
彼女が俺の姿を視界に捉える。
俺はその場で跪き、
「お久しぶりです! 殿下!」
俺がそう言うと、
「ッ…………久しいですね、白銀」
殿下も『久しい』とそう言った。
これで殿下にも『記憶』があることが確定された。
「殿下? この者は………?」
「安心するがよい。この者は信用に足る者です」
「は? はっ、殿下がそうおっしゃるのならば………」
「面を上げなさい、白銀。このような場で畏まる必要はありません」
殿下の言葉で俺は顔上げるが、それと同時に、
「後ろから近づくのは趣味が悪いですよ、鎧衣課長」
後ろから近付いて来る気配に声を掛けた。
「おっと、バレていたのかね?」
その気配、鎧衣課長が参ったと言わんばかりに手を挙げた。
「ま、それはともかく…………早く出て来いよ!」
俺は視線を後ろに向けてそう言った。
それは、殿下が現れると同時に木の影に隠れてしまった冥夜に向けて放った言葉だ。
すると、おずおずと冥夜が木の影から姿を現す。
「………あ…………あの…………」
如何言えばいいか分からないのか、冥夜が言葉に詰まる。
「……………冥夜……………?」
その時、呆然と殿下が呟いた。
「あ…………はい…………」
その言葉に頷く冥夜。
すると、少しフラフラとした足取りで殿下が冥夜に歩み寄っていく。
「冥夜………顔をもっとよく見せてください………」
「殿下…………」
その言葉に、冥夜も殿下の方を向く。
やはりこうして2人が並ぶと、髪型以外は瓜二つだ。
「ああ………冥夜…………!」
殿下は感極まる声を漏らす。
「……………………姉…………………上………………」
冥夜はそう声を漏らした。
「ッ…………! 冥夜、今、何と…………?」
殿下は一瞬呆けた後そう問いかけた。
「ッ! も、申し訳ございません! わたくしとあろう者が図々しくも………!」
冥夜は反射的に跪いて頭を下げた。
しかし、
「いえ、良いのです! もう一度………もう一度呼んでくれませぬか!?」
殿下は喜びを隠し切れない表情で再度促した。
「………………姉上……………」
「はい! 冥夜………!」
殿下は再度『姉』と呼ばれた喜びに涙を浮かべていた。
「ッ………姉上……!」
冥夜も感極まってきたのか涙を浮かべ、よりはっきりとその言葉を口にした。
「はい………はい……!」
殿下もその呼びかけにハッキリと返事を返した。
俺は声を掛け辛かったが、
「ここで話しかけることは無粋と承知しておりますが、殿下。そろそろ行動を起こさねば時間がありませぬ」
鎧衣課長が容赦なく声を掛けた。
流石マイペースな美琴の親父だな…………
「そ、そうでしたね…………はしたない所をお見せしました……!」
殿下は慌てたように姿勢を正し、表情を引き締める。
「白銀。私が此処に来た理由は既に分かっていますね?」
殿下が俺に問いかけてきた。
「はい。殿下の御身を自ら囮とし、帝都の争いを止めるためですね?」
俺がそう言うと、
「ええ。白銀、今一度私の護衛をお願いできますか?」
「えっ? 俺ですか? ここは冥夜の方が…………」
俺は思わずそう言ってしまったが、
「月詠から伝言が届いている筈です。『再び吹雪に乗ることがあれば、またよろしく頼む』と」
殿下は楽しそうな笑みを浮かべ、そう言った。
「ッ…………」
俺は咄嗟に冥夜の表情を伺ったが、
「…………」
冥夜は無言でうなずくだけだった。
「……………承知いたしました。殿下の御身、責任を持って横浜基地まで送り届けて見せましょう」
「よろしく頼みましたよ。白銀」
「では殿下……こちらへ」
俺は自分の吹雪に殿下を案内する。
因みに鎧衣課長は、やる事があると言ってさっさと行ってしまった。
まあ、あの人にもいろいろやる事があるのだ。
殿下に簡易ハーネスを付け、酔い止めを飲んでもらう。
やがて準備が完了したのか、通信で現状の説明、脱出ルートの確認、作戦説明が行われる。
厚木基地からの通信が途絶した事や、冷川料金所跡が最重要ポイントになる事などが伝えられる。
「この任務に携わる事は、国連軍の兵士であり日本人でもある我々にとってこの上ない名誉である。各自の奮闘を期待する……! 以上!」
そして、
「207戦術機甲小隊……全機発進!!」
「「「「「「「了解!!」」」」」」」
戦術機が一斉に発進した。
はい、マブラヴオルタネイティヴAnother編第28話です。
今回はクーデターの序盤でした。
まあ、同じような流れで違う部分がチラホラと。
ぶっちゃけGNドライブだと追撃部隊に追いつかれることなく振り切ってしまいそうですがはたして…………?