転生特典に量産型の機体のみという縛りがあったのでジェイアークを選んでやった件   作:友(ユウ)

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第38話 桜花作戦(後編)

 

 

 

【Side 三人称】

 

 

 

 

 

 

地上でアルゴス小隊が超重光線級を倒した時と同じ頃、凄乃皇を含めたヴァルキリーズは地上へ降下しようとしていた。

凄乃皇を除くヴァルキリーズは、作戦成功率を高めるためにマクロス・ブレイバーへ移って貰っている。

大気圏へ再突入を開始するマクロス・ブレイバー。

そして、その前にジェネシックガオガイガーが先行していた。

その理由は、

 

『数十体の重光線級が焦点を合わせています。ルネさん!』

 

ルリから報告を受けると、

 

「了解! プロテクトシェーーーーーッド!!」

 

ガオガイガーは左腕を前に突き出すとフィールド発生フィンが展開。

広範囲をカバーする防御フィールドを展開した。

次の瞬間地上から数十ものレーザーやビームが放たれてくるが、プロテクトシェードによりそれは全て捻じ曲げられ、マクロス・ブレイバーや凄乃皇に届くことは無かった。

無事地上へと辿り着くと、

 

『さてと、伊角大尉! あんな気色悪い地上構造物(モニュメント)なんて景気よく吹き飛ばしちゃってください!』

 

水月がそう言う。

『前』は凄乃皇・四型を突貫で組み立てた上、調整も碌に出来ず、主機であるムアコック・レヒテ機関も不安定な状態で出撃することになったため、主砲である荷電粒子砲が1発しか撃てないという制約があった。

しかし、今回は10基のGNドライブにより、『前』を遥かに超える安定性と高出力を維持している。

故に1回の作戦中に何発かは撃てるのだ。

 

『フッ! 了解した! BETAに目に物見せてやろう! GN粒子、高濃度圧縮開始!』

 

凄乃皇がGNバスターキャノンの発射体勢に入る。

 

『粒子圧縮率、70……80……90……100%!』

 

みちるがオリジナルハイヴの地上構造物に照準を合わせる。

 

『GNバスターキャノン………発射!!』

 

みちるは号令と共に引き金を引いた。

高濃度に圧縮されたGN粒子が解放され、巨大なビーム砲撃が放たれた。

その一撃は、射線軸上にいる全てのBETAを消し飛ばし、地上構造物に直撃。

その姿を爆炎で覆い尽くした。

 

『やった!』

 

『オリジナルハイヴの地上構造物を……!』

 

『木っ端微塵だ!』

 

ヴァルキリーズのそれぞれが歓喜の声を上げる。

モクモクと上がる黒煙が風に吹かれて散っていくと、

 

『なっ!? 馬鹿な!?』

 

みちるが驚愕の声を上げる。

何故なら、オリジナルハイヴの地上構造物は、発射前と変わらずそこに存在していたのだから。

 

『嘘………凄乃皇の攻撃を受けて無傷!?』

 

『そ、そんな………!?』

 

希望が一転して絶望を叩きつけられたような気分になるヴァルキリーズ。

だが、

 

「……………………違う」

 

地上構造物を注視していたガオガイガーがポツリと呟いた。

良く見れば、地上構造物の表面は紫色の光の膜に覆われていたからだ。

その瞬間、その紫の光が強くなり、地上構造物が形を変え始め、鉱石のような材質だったのが金属へと変貌する。

 

『な、何だ!?』

 

孝之が叫ぶと、

 

「おそらく……原種!」

 

ガオガイガーがそう推測した。

 

「私とGGG機動部隊で原種を抑える! 他の皆はあ号標的へ!」

 

ガオガイガーがそう叫ぶ。

すると、

 

「我々デルタ小隊も地上へ残ります。バルキリーでは閉所空間では真価を発揮できません。マクロス・ブレイバーにも直掩は必要でしょう。突入部隊の指揮はキョウスケさんにお願いします」

 

ミラージュがそう言う。

 

「了解した」

 

その指示にキョウスケは迷わずに返事を返した。

 

『わかった! 後を頼むぞ! ヴァルキリーズ! 全機SW115へ突入!!』

 

『『『『『『『『『『了解!!』』』』』』』』』』

 

みちるの号令と共に、予定していた突入坑からハイヴ内部へと突入していった。

 

 

 

 

 

ハイヴ内は、正に地獄と呼べる場所だった。

一つの広間(ホール)に数万のBETA及びZETAが存在し、行く手を塞ぐ。

通常の戦術機部隊では、突破するのは困難なのは明白だ。

しかし、

 

「消し飛べ! オメガ・ブラスタァァァァァァッ!!」

 

グルンガスト参式の放つオメガ・ブラスターが目の前のBETAを蹂躙していく。

 

「邪魔だよ!」

 

「そこっ!」

 

ビルトビルガーのアサルトマシンガンとビルトファルケンの的確な援護射撃が道を抉じ開け、

 

「狙い撃ちます!」

 

「援護砲撃! いっくよ~!」

 

量産型アシュセイヴァーとラーズアングリフ・レイブンの援護攻撃が近付くBETAを一掃する。

尚も近付いてくるBETAを、

 

「切り伏せる!」

 

量産型ゲシュペンストMk-Ⅱ改がシシオウブレードで切り刻んだ。

それを見て、

 

「フン、少しはやる様になったか」

 

ソウルゲインのアクセルは、武達にぶっきらぼうにもアクセルなりの誉め言葉を零した。

その背後から要塞級が近付いてきたが、

 

「フン!」

 

後ろ回し蹴りで要塞級を蹴り飛ばす。

 

「数だけはわらわらと居るな雑魚共め………だが、数だけでこの俺をやれると思うな!!」

 

ソウルゲインは無数の拳と蹴りの乱撃で次々とBETAやZETAを吹き飛ばしていく。

 

「私も続きますの………」

 

ペルゼイン・リヒカイトの鬼面が大刀を持ち、周辺のBETAを蹂躙しつつ、自身も太刀で次々と切り裂いていく。

 

「数だけ居たって!」

 

「このぉぉぉぉぉっ!」

 

「うぇぇぇぇい!」

 

デスティニー、インパルス、ガイアがビームライフルやビーム砲で数を減らす。

 

「風刃閃!!」

 

ヴァイサーガの剣から巻き起こる竜巻が無数のBETAを巻き込み切り刻む。

 

「止められると思うなよ!!」

 

アルトアイゼン・リーゼの突撃が折り重なったBETA群を関係無しに吹き飛ばし、

 

「それそれそれ~!」

 

ライン・ヴァイスリッターの分身による援護砲撃がBETA群を蹂躙する。

 

「雷衝撃射!!」

 

魔神ランティスの放つ無数の閃光がBETAを次々と貫いていく。

一度オリジナルハイヴの攻略経験がある武達が居るとはいえ、破竹の快進撃を続けていた。

 

 

 

やがて、あ号標的の存在するブロックの一つ手前、主広間(メインホール)と呼ばれる広大な空間に出た。

そこには想定15万ものBETAの大群が存在していた。

『前』はこの場所を突破し、あ号標的の居る場所まで到達するために千鶴と慧、壬姫、美琴が命を散らす事となった。

だが、今回は、

 

『お前達は下がれ! 凄乃皇の主砲で主広間のBETAを吹き飛ばす!』

 

凄乃皇の主砲が使えるため、BETAが何体いようと物の数ではない。

 

『GNバスターキャノン………発射!!』

 

凄乃皇の主砲が放たれ、紅の閃光が主広間のBETAを蹂躙していく。

その一撃で大半のBETAは消し飛ばされた。

そしてその先の最後の広間へと続く横坑(ドリフト)へと目を向けた。

本来は底に門(ゲート)級と呼ばれた門の役割を果たすBETAが存在したが、先程の凄乃皇の主砲により消し飛んでいた。

ヴァルキリーズとGGG部隊は横坑へと進入。その先へと進む。

 

「…………………」

 

奥に進むにつれ、武の表情が険しくなっていく。

そこで、武は仲間内だけに通信を繋いだ。

 

「………冥夜」

 

「む?」

 

「委員長」

 

「何?」

 

「慧」

 

「武?」

 

「たま」

 

「はい?」

 

「美琴」

 

「どうしたの?」

 

「純夏」

 

「タケルちゃん?」

 

武に名を呼ばれ、彼女達は返事を返す。

すると、

 

「『今回』は………死なないでくれ…………!」

 

武は切実な願いを込めてそう呟いた。

 

「タケル………」

 

「武………」

 

「武………」

 

「たけるさん………」

 

「タケル………」

 

「タケルちゃん………?」

 

武は『前』、この戦いで全員を失った。

その時の気持ちが今になって蘇ってきたのだ。

すると、

 

「案ずるな。そなたと結ばれた今、死ぬ気は無い!」

 

冥夜がハッキリと言い返した。

 

「そうね。自爆するのはもうこりごりだわ」

 

千鶴も、

 

「榊と一緒に死ぬのは1回で十分」

 

慧も、

 

「わ、私も生き残って見せます!」

 

壬姫も、

 

「ボクも死ぬ気なんてないよ~」

 

美琴も笑ってそう言う。

 

「タケルちゃん!」

 

最後に純夏が呼びかけ、

 

「私達は、生きて帰るんだよ!」

 

そう言った。

その言葉に、武は笑みを浮かべ、

 

「ああ、そうだな!」

 

その言葉に頷くのだった。

 

 

 

最後のブロックに突入する前に、不知火に乗っていたヴァルキリーズは全員が凄乃皇へと乗り移る。

凄乃皇には脱出用のシャトルが搭載されているからだ。

全員が凄乃皇に乗り移ったことを確認すると、再び前進を開始する。

2つ目の門級も先程の攻撃で消し飛ばされていた。

 

『もしかして、さっきの攻撃であ号標的までやっつけちゃったんじゃないんですか?』

 

水月が楽観的にそんな事を言う。

 

『だったら丁度いいのだがな』

 

みちるもそう言いながら最後のブロックへと進入し、その姿を捉えた。

 

『あ号標的確認、12時方向距離5400』

 

遥がそう報告すると、

 

『フッ、そううまくは行かないか………』

 

みちるは不敵な笑みを浮かべる。

 

「あ号標的………!」

 

武はその姿を見据える。

大まかな形は『記憶』にある物と一致する。

しかし、その表面は金属のように光沢を放っていた。

 

「こいつもZETA化している………!」

 

武はそう呟いた。

すると、

 

『これより最後の攻撃を行う。涼宮! 主砲を最大出力でチャージだ!』

 

『了解! GN粒子高濃度圧縮開始。10………20………30………』

 

凄乃皇のチャージが開始される。

その間、武達はあ号標的からの攻撃に身構えていたが、不思議な事にあ号標的からは何の反応も無かった。

それを怪訝に思いつつも、

 

『粒子圧縮率120%!!』

 

遥が最大出力でチャージが完了したことを報告した。

 

『これで終わりだ!!』

 

みちるが引き金を引く。

 

『『『『『『『『『『いっけぇええええええええええええええっ!!』』』』』』』』』』

 

この凄乃皇の渾身の一撃を前にヴァルキリーズ全員が叫ぶ。

紅の輝きが一直線にあ号標的へ向かい、その姿を飲み込んだ。

 

『やったぁっ!!』

 

『これでやっと………やっと………!』

 

『勝ったぁぁぁぁぁぁっ!!』

 

『人類の勝利だぁぁぁぁぁぁぁっ!!』

 

喜びの声を上げる者、涙を浮かべる者など、それぞれが喜びに満ち溢れている。

武は、『前』の記憶からこんなにあっさり終わったことを不思議に思いながらも、息を吐く。

しかし、

 

「ッ!? 待てお前達!」

 

キョウスケが危機感を持った声色で呼び掛けた。

キョウスケは油断なくあ号標的が居た場所を見つめる。

ビームの放出は続いていて、収束していっている途中だったのだが、放たれたエネルギーの流れがおかしかった。

一向に爆発する様子を見せず、むしろエネルギーの閃光が縮み始めていたのだ。

 

「これは!?」

 

冥夜が思わず声を上げると、GN粒子の光がまるで吸い込まれるように消え、あ号標的が無傷の姿を現したのだ。

 

『む、無傷……!?』

 

みちるが驚愕の声を漏らす。

今までどのようなBETAも消し飛ばしてきた凄乃皇の主砲が効かなかったのだ。

その直後、あ号標的が2本の触手を伸ばしてきた。

その速度は速く、迎撃は間に合わない。

 

『くっ! GNフィールド全開!!』

 

『りょ、了解!』

 

みちるの言葉に遥が動揺しながらもGNフィールドを展開する。

10基のGNドライブによる分厚いGNフィールドが展開される。

そのまま触手がGNフィールドに接触すると、衝撃が凄乃皇を襲う。

 

『くっ! だが、凄乃皇のGNフィールドを易々と抜けると………!?』

 

みちるが易々と抜けると思うなと言おうとした時、GNフィールドのGN粒子がまるで触手に吸い込まれるように消えていき、その直後にGNフィールドが貫かれ、凄乃皇本体に触手が突き刺さった。

 

『ぐああっ!? ば、バカな!?』

 

容易くGNフィールドが破られた事に、みちるは信じられないと声を上げる。

 

「伊隅大尉!? このっ! オメガ・ブラスター!!」

 

武はオメガ・ブラスターで触手を吹き飛ばそうとしたが、

 

「何っ!?」

 

触手はオメガ・ブラスターを受けても無傷でありダメージを受けた様子は無い。

 

「このっ!!」

 

デスティニーのシンがビームライフルを放って触手に直撃させたが、ビームが吸い込まれるように消えてしまい、ダメージを与えられない。

 

「これはまさか………ビームを吸収している!?」

 

ラミアが気付いたように叫んだ。

 

「何だって!? じゃあここにきてあ号標的はGNドライブやビームに対応して来たっていうのか!?」

 

武が驚愕の声を上げる。

その時、

 

『くっ! 凄乃皇のエネルギーが急激に低下している!』

 

みちるが切羽詰まった声で叫んだ。

 

「ッ! はぁああああああああっ!!」

 

「断ち切るっ!」

 

冥夜の量産型ゲシュペンストMk-Ⅱ改とラミアのヴァイサーガがその手に持つ剣で触手を断ち切った。

 

「切れた! 実体剣や実弾兵装ならダメージを与えられるということなの!?」

 

千鶴がそう叫ぶ。

 

「ッ! それなら!」

 

千鶴のその言葉を聞いて、武は気を引き締めてあ号標的に向き直ると、

 

「こいつでどてっぱらに風穴を開けてやる!」

 

背中のドリルを両腕に装着し、

 

「ドリルブースト・ナックル!!」

 

その両腕をロケットパンチのように放った。

2つのドリルが螺旋を描くように回転しながらあ号標的へ向かう。

 

「いけぇっ!」

 

武が気合を込めて叫ぶ。

だが、あ号標的の側面から無数の触手が伸びてきて、ドリルブースト・ナックルの正面を避ける様に回り込んで側面から串刺しにする。

 

「何っ!?」

 

無数の触手に貫かれたドリルブースト・ナックルは爆散してしまう。

ドリルブースト・ナックルにはグルンガスト参式の腕も取り付けられていたので、グルンガスト参式は両腕を失ってしまったことになる。

 

「しまった!?」

 

武が声を上げた直後、あ号標的の触手がグルンガスト参式へ向かってくる。

 

「ッ!? 念動フィールド!!」

 

純夏が咄嗟に念動フィールドを展開した。

触手の切っ先が念動フィールドに衝突する。

 

「くぅぅ………ッ!?」

 

純夏は苦しそうに声を漏らす。

だが、その触手は想像以上の貫通力を持っており、念動フィールドが貫かれ、そのままグルンガスト参式の上半身が貫かれる。

 

「ぐあああっ!?」

 

「きゃあああっ!?」

 

武と純夏の悲鳴が響く。

 

「タケル! 純夏!」

 

冥夜がグルンガスト参式を貫いた触手を断ち切ろうとそちらへ向かうが、別方向からまた別の触手が襲い掛かってくる。

 

「くっ! 邪魔をするな!」

 

冥夜はシシオウブレードで触手を斬り払うが、次から次へと触手が伸びてくる。

更にその時、

 

『後方よりBETA群接近!』

 

遥が叫んだ。

横坑の方から無数のBETAが近付いて来るのを探知した。

 

「拙い! このままでは凄乃皇が飲み込まれる! アクセル! アルフィミィ! シン! ルナマリア! ステラ! ランティス! お前達は後方のBETAを頼む!」

 

「チィ! 世話の焼ける!」

 

「仕方ありません事よ………?」

 

「わ、わかりました!」

 

「はい!」

 

「ん!」

 

「ッ!」

 

6人が後方のBETA群に対処するためにそちらへ向かう。

 

「タケル!」

 

「たけるさん!」

 

触手によって宙吊りにされたグルンガスト参式を助けようと、たまがスナイパーライフルで触手を狙い、美琴は収束荷電粒子砲で薙ぎ払おうとする。

しかし、ビーム兵器に入るその攻撃は吸収されるだけでダメージは与えられない。

 

「武!」

 

「彩峰! 援護するわ! 武達を!」

 

ビルトビルガーが飛び立つと、ビルトファルケンがオクスタン・ライフルの実弾で向かってくる触手を弾く。

 

「このぉおおおおおおおおおおっ!!」

 

慧はビルトビルガーの右腕の大鋏を展開してグルンガスト参式を貫いている触手に向かって振り被った。

だが、別の触手が鞭のように振るわれ、千鶴のビルトファルケンごと薙ぎ払われた。

 

「うわぁああああああっ!?」

 

「きゃぁああああああああっ!?」

 

「彩峰!? 榊!? おのれ!」

 

冥夜も果敢に向かって行くがあ号標的からの無数の触手に近付く事すら覚束ない。

その時、更に追加でグルンガスト参式が2本の触手に貫かれた。

 

「ぐっ! うあっ!?」

 

「きゃああっ!?」

 

コクピットの各部でも爆発が起こる。

その時、

 

「くっ………純夏………お前だけでも………!」

 

武はそう口にすると、合体解除レバーを引いた。

グルンガスト参式の下半身が分離し、Gバイソンとなって地面に落ちた。

 

「タケルちゃん!?」

 

純夏が驚いた声を上げる。

 

「純夏………逃げろ………!」

 

武はそう口にする。

 

「いや………いや………! タケルちゃん! 私も………!」

 

純夏は涙を浮かべながら叫ぶ。

そこへ更に追加で触手に貫かれる。

 

「ぐああっ!?」

 

その一撃でグルンガスト参式のコクピット部分である頭部の左目部分が割れ、武の姿が晒される。

 

「タケルちゃん!?」

 

「タケル!?」

 

「武!?」

 

「武!?」

 

「たけるさん!?」

 

「タケルゥッ!?」

 

純夏達が武の名を叫ぶ。

 

「武! クッ!?」

 

「武クン!? ッ! 邪魔しないで!」

 

「チィッ! このままでは!」

 

アルトアイゼン・リーゼやライン・ヴァイスリッター、ヴァイサーガにも執拗に触手の攻撃が集中し、援護を許さない。

すると、あ号標的は止めとばかりに一際太い触手をこれ見よがしに準備すると、それを一気にグルンガスト参式の頭部に向けて伸ばした。

確実にグルンガスト参式の装甲を貫き、武の命を奪う一撃。

それが見る見る武に向かって迫る。

 

「ッ…………!?」

 

それを見て、武は目を見開き、

 

「「「「「ッ!?」」」」」

 

冥夜達は声にならない悲鳴を上げ、

 

「ッ! タケルちゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!」

 

純夏の慟哭の様な叫びが響いた。

その刹那、

 

『タケルちゃんを助けたい?』

 

そんな声が純夏の脳裏に響いた。

 

「えっ?」

 

純夏が声を漏らすと、純夏の意識は真っ白な空間にあった。

そして、

 

『タケルちゃんを助けたい?』

 

後ろから先程と同じ問いかけが聞こえた。

 

「誰ッ!?」

 

純夏が思わず振り返りながら問いかけると、そこに居たのは、

 

「…………私?」

 

純夏は呆然と呟いた。

そこに居たのは純夏自身。

しかし、純夏がパイロットスーツ姿なのに対し、そこに居た『純夏』は桃色の強化装備姿だった。

その姿を見てハッとなり、

 

「もしかして…………『前』の私………?」

 

その言葉に『純夏』は微笑むことで応えると、

 

『ねえ、タケルちゃんを助けたい?』

 

三度同じ問いかけを口にした。

 

「もちろんだよ! タケルちゃんを助ける方法があるなら教えて!!」

 

純夏は迷わずに叫ぶ。

 

『そう…………確実じゃないけど、方法は一つだけあるよ』

 

『純夏』はそう口にする。

 

「どうすればいいの!?」

 

純夏は必死な様子で問いかける。

すると、

 

『『私達』を受け入れて』

 

「受け入れる………?」

 

その意味が分からず純夏は声を漏らす。

 

『………本当ならあなたにも、『記憶』は流入するはずだった。だけど、『私』の記憶はとても常人が耐えられるものじゃない。最悪、『記憶』が流入した瞬間に心が壊れてもおかしくなかった………だから『私』は、私の能力で『記憶』の流入を意図的に止めた』

 

「えっ?」

 

純夏はその事実に声を漏らす。

武や夕呼は、純夏だけに『記憶』が無い事を不思議に思っていた。

『前』の世界では純夏が一番『特別』だからだ。

しかし、純夏に『記憶』が無かったのは『特別』故に『純夏』が記憶の流入を止めていたからだった。

 

『その止めていた『記憶』をあなたに流入させる』

 

「そうするとどうなるの?」

 

『『私達』の記憶を全て受け取ることになる。タケルちゃんたちと一緒だね』

 

「だったらすぐに………!」

 

純夏は武を救うためにもすぐに行おうと促そうとするが、

 

『でも、さっきも言ったけど、『私』の記憶は常人に耐えられるものじゃない。『記憶』が流入した瞬間に心が壊れるかもしれない。もし成功したとしても、タケルちゃんを確実に助けられるわけじゃない。助けられる可能性があるだけ』

 

「可能性………?」

 

『私自身タケルちゃんを助ける力がある訳じゃない。普通なら、私の『記憶』を受け継いでも何の意味も無い』

 

「じゃあ、どうやって………?」

 

純夏が問いかけると、

 

『でも、私(あなた)にはこの世界の私(あなた)にしか持ち得ない『力』がある』

 

「…………ッ! もしかして、『念動力』………!?」

 

『そう。それは無数の並行世界の私の中でも、私(あなた)にしか持っていない特別な『力』…………』

 

「この力で、どうやって…………?」

 

『まず、私達の『記憶』を受け継ぐことで、あなたは無数の並行世界を持つ事になる。そして、その並行世界の中から、タケルちゃんを助けることの出来る『因果』を私(あなた)の力でこの世界に引き込むの』

 

「『因果』を………引き込む…………」

 

『並行世界の中にタケルちゃんを助けることの出来る因果があるのかは分からない。それ以前に『記憶』を受け取った時点で心が壊れるかもしれない…………それでもやる?』

 

「もちろんだよ!!」

 

『純夏』の問いかけに、純夏は迷わずに頷いた。

 

「タケルちゃんを助ける可能性があるのなら、私はやるよ!!」

 

『純夏』を真っすぐに見つめて純夏は言い切った。

すると、『純夏』はニコッと微笑み、

 

『流石は『私』だね!』

 

嬉しそうにそう言った。

すると、『純夏』が純夏に歩み寄り、

 

『じゃあ、行くよ?』

 

「うん!」

 

最後の問いかけに純夏が頷くと、『純夏』は純夏に向かって歩き出し、重なる様に姿を消した。

その瞬間、

 

「きゃぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!?!?!?!?!?!?!?!?」

 

純夏に怒涛の『記憶』が襲い掛かった。

BETAに捕まり、武と共にハイヴに閉じ込められていた事。

BETAに連れて行かれそうになる純夏を護る為にBETAに殴り掛かった武が目の前で食い殺された事。

BETAの実験で性的凌辱を受け続けていた事。

身体を改造され、真面な人間では無くなっていた事。

最終的に脳髄だけの姿にされ、虚無の空間で何年も存在し続けた事。

常人なら確実に心が壊れる体験。

それが無数の記憶にあるのだ。

しかし、どの純夏にもある一つの共通の想いがあった。

それは、

 

―――タケルちゃんに会いたい

 

その想い1つでどの世界の純夏はその地獄に耐え続けた。

だからこそ、この世界の純夏も…………

 

「私には………タケルちゃんがいる…………タケルちゃんは…………死なせない……………絶対に…………護る…………!」

 

その地獄に耐えきった。

純夏は目を見開く。

 

「お願い! あって! タケルちゃんを助けることが出来る『因果』!」

 

純夏は虚数空間の中で無数の並行世界の因果を求め続ける。

 

「お願い! 応えて! タケルちゃんを助ける為に!!」

 

――グォオオオオッ!

 

その強い思いとその『念』に、

 

――グルルルルルッ!

 

その『因果』は応えた。

 

 

 

 

 

 

触手の切っ先がグルンガスト参式を、武を貫くと思われた瞬間、ハイヴ内にも関わらず雷鳴が轟いた。

眩い閃光と共に辺りが真っ白に染められ、

 

「グォオオオオオオオオオオオッ!!!」

 

青き龍の咆哮と、

 

「ガォオオオオオオオオオオオン!!!」

 

白き虎の咆哮が轟いた。

次の瞬間、白き虎が伸びてきた触手に食いつき止めると、そのまま噛み千切った。

 

「な、何だあれは!? 青い龍と白い虎!?」

 

冥夜が驚いた声を上げる。

 

「嘘ッ!? あれって………!」

 

「超機人っ………!」

 

エクセレンとキョウスケが驚きの声を漏らす。

すると、

 

「応えて………くれたんだね………」

 

純夏が涙を浮かべながらそう呟く。

すると、

 

『汝ら、人界の救済を望むや?』

 

声が響いた。

武と純夏は、その言葉が自分達に向けられたものだと自然と理解した。

 

『汝らは、破邪強念を有する。故に我らはそれに応えた』

 

『我らの使命は、百邪を退け、人界を護る事なり』

 

『汝ら、数限りなき百邪との戦いを、遂げる意気あるや?』

 

『我ら神体の覚醒………五行器の輪転には2人の強念者を要す』

 

『汝ら、救世を望み、魂を刃と化す也?』

 

その問いかけに、

 

「…………お前達が………地球を………人類を護る存在だというのなら、一緒に戦ってくれ!」

 

「私も一緒に戦う! タケルちゃんと一緒なら、何処までも!!」

 

武と純夏がそう答えた。

次の瞬間、青き龍――龍王機が純夏のGバイソンに食いつき、白き虎――虎王機がボロボロのグルンガスト参式の上半身に食いつく。

 

「タケル! 純夏!」

 

食われていくグルンガスト参式を見て冥夜は思わず剣を構えたが、

 

「待て! 大丈夫だ!」

 

キョウスケがそう声を掛ける。

すると、食われていくグルンガスト参式が札のような物に変化していき、やがてその札が集まって球体を形作った。

 

「これは………!?」

 

千鶴が声を漏らすと、あ号標的から再び無数の触手が伸ばされ、その球体へと殺到する。

 

「武!」

 

「純夏さん!」

 

慧と壬姫が叫ぶ。

だが次の瞬間、

 

『唱えよ! 我が名を!』

 

「汝! 無敵青龍! 龍虎王!!」

 

純夏の声で名乗りを上げると共に、札が四散し、青き龍の意匠を持つ人型の機動兵器がその姿を現した。

それは龍王機が主となり虎王機と合体した龍虎王。

伸びてきた触手は四散した札によって断ち切られたが、再び別の触手が伸びてくる。

しかし、

 

「九天応元雷声普化天尊! 雷火の顎よ! 敵を撃て! 急急如律令!!」

 

純夏が言霊を唱えると無数の札が現れ、円を描きながら上昇すると、

 

「勅! 勅! 勅! ちょぉぉぉく!!」

 

次の瞬間雷が落ちて触手を破壊する。

すると、あ号標的は無数の触手を束ねて1本の巨大な触手を生み出した。

それが一気に突き出され、龍虎王に向かって来た。

だが、

 

「順逆転身!」

 

武の言葉と共に、龍虎王が無数の札となって消え、別の場所で再び集まると、

 

「虎龍合体! 最強白虎! 虎龍王見参!!」

 

虎王機が主となって龍王機と合体した姿である虎龍王となって現れた。

 

「うぉおおおおおおおおっ!!」

 

あ号標的に向かって行く虎龍王。

すると、あ号標的は無数の触手を次々と放った。

それに対し、

 

「ランダム・スパイク!!」

 

武が叫ぶと虎龍王がヌンチャクを取り出して振り回し、全ての触手を迎撃して砕く。

それを捨て去ると、

 

「ソニック・ジャベリン!!」

 

巨大な青龍偃月刀を取り出して無数の突きを放ちながら触手を切り裂きつつあ号標的に接近。

そして青龍偃月刀も手放して右腕を振り被ると、その右腕が巨大なドリルと化し、高速回転する。

 

「ヴァリアブル・ドリル!!」

 

そのまま突撃し、あ号標的を貫く。

そして、再び龍虎王の姿となると、

 

「これで終わらせるよ……!」

 

純夏が呟くと龍虎王の尾の先にあった宝玉が分離。

それをその手で掴むと、巨大な青龍刀となる。

 

「龍王破山剣!!」

 

純夏がその名を言い放つとその剣を振り被る。

そして、大きく振りかぶった所でその刀身が龍の顎のような形へと変貌。

 

「逆鱗だぁぁぁぁぁぁぁぁんっ!!!」

 

それをあ号標的へと振り下ろした。

あ号標的はその一撃を受けて真っ二つとなり、直後に放たれた衝撃によって粉々となった。

 

 

 

 

この日、オリジナルハイヴ攻略の知らせが、世界中に報じられた。

 

 

 

 

因みに原種はジェネシックガオガイガーと勇者ロボ達によって一方的にボコられた挙句、ジェイアークと共にやってきたハルによって浄解されていた。

 

 

 

 

 

 

 






はい、マブラヴオルタネイティヴAnother編第38話です。
出すかどうか未定と言っときながらついつい出してしまった龍虎王&虎龍王。
純夏の記憶が無いのは『純夏』が流入を止めていたからでした。
まあ、最近思いついた理由なんですけどね(爆)
そして腕原種と違って終始ダイジェストで粉砕された原種は南無。
これで残るは腕原種と心臓原種だけです。
さて、クライマックスも近い。
お楽しみに。
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