転生特典に量産型の機体のみという縛りがあったのでジェイアークを選んでやった件   作:友(ユウ)

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第2話 不死鳥の産声

 

 

【Side 柏木 晴子】

 

 

 

 

 

―――11月10日。

私が所属する部隊、A-01部隊に出撃命令が下った。

任務内容は、11月11日に佐渡島からBETAが侵攻するため、その際に研究用BETAを捕獲するというもの。

行動が予測できないはずのBETAの行動をどうやって知ったのかという疑問は残るけど、私たちは副司令の命令に従うだけだ。

そして11月11日。

新潟の海岸線近くで、戦術機の中で、私達は待機している。

正直、私を含めた新任少尉にとって、これが初めての実戦だ。

私も少なからず緊張している。

 

『大尉………奴らは本当に来るんでしょうか?』

 

A-01部隊の1人、先任少尉の風間 祷子少尉が疑問の声を零す。

 

『さあな。だが副指令の言葉だ。我々は信じるしかあるまい』

 

風間少尉の言葉に、宗像 美冴中尉がそう言う。

 

『そうそう、あたしたちは与えられた任務をこなすだけ』

 

同じく中尉である速瀬 水月中尉が答える。

その瞬間、ドォンと遠くで爆発音が響く。

 

「ッ………!?」

 

その音に思わず緊張から操縦桿を握る手に力が籠る。

 

『…………どうやら手ぶらで帰らずに済みそうだ…………全機出撃!!』

 

A-01部隊の隊長である伊隅 みちる大尉が号令を掛ける。

 

『『『『『『『『『「了解!!」』』』』』』』』』

 

その言葉に、A-01部隊の戦術機、不知火が一斉に起動した。

 

 

 

 

 

 

BETAには基本的に8種が存在する。

 

光線(レーザー)級:全高3m程の小型のBETA。人間のような2本の足を持っているが、その身体は形容しがたく、大きな目玉のようなレーザー照射粘膜があり、380㎞離れた高度1万mの飛翔体を的確に捕捉可能という驚異的な索敵能力を誇り、飛翔体を優先的に攻撃するという特性から、この光線級の登場によって人類の航空戦力が無力化され、ミサイルのような飛翔兵器も数多くが撃ち落とされてしまい、この光線級の駆逐こそが対BETA戦の鍵を握ると言っても過言ではない。

尚、味方のBETAを決して誤射しないという特性も持つ。

 

 

重光線(じゅうレーザー)級:全高21mにも及ぶ大型のレーザー属種。その名の通り巨大な光線級であり、二足歩行としてはBETA中最大。レーザー照射粘膜は1つだが、その出力は大幅に上がっており、単純射程距離は1000km以上とも言われている。光線級と同じく、飛翔体を優先的に攻撃し、味方を誤射しない特性を持つ。

 

 

要撃(グラップラー)級:全高12m、全長21m、全幅28mの大型のBETA。蠍の様な形状をしており、頑強な二対の前腕を最大の武器としていて、その前腕はダイヤモンド以上の硬度を誇るモース硬度15以上。更には強靭な靭性すら併せ持つ。BETAの大型種の中では6割を占めるBETAの主力。

 

 

突撃(デストロイヤー)級:全高16m、全長18m、全幅17mの大型BETA。身体の前面がモース硬度15以上の装甲殻に覆われており、最高速度170kmに達する突撃が最大の武器で、BETAの先鋒を担う。正面からの攻撃には強いが、後方からの攻撃には弱い。

 

 

要塞(フォート)級:全高66m、全長52m、全幅37mの、現在確認されている中では最大のBETA。先端が尖った鋭角状の10本の足を持ち、尾節にはかぎづめ状の衝角があり、それを50m程の触手で振り回して攻撃する。更にその衝角からは戦術機も溶かす溶解液が噴出される。

 

 

戦車(タンク)級:全高2.8m、全長4.4m、全幅1.9mの小型種に分類されるBETA。胴体に戦術機の装甲すら噛み砕く強靭な顎を持ち、最大速度80kmの俊敏と高い対人探知能力を持っているため、戦場では最も多くの衛士を殺したBETAと言われている。常に数十から数百の群れで行動しているため、たとえ戦術機でも一斉に群がられれば、成す術無く中の衛士ごと食われてしまう。ただ、防御力はさほど高くはない。

 

 

闘士(ウォーリア)級:全高2.5m、全長1.7m、全幅1.5mの小型のBETA。対人探知能力が極めて高く、象の鼻のような腕は人の頭を引っこ抜くほどの力を持つ。戦術機にとっては脅威ではないが、その俊敏性と対人探知能力から、歩兵が戦闘を挑むのは推奨されない。

 

 

兵士(ソルジャー)級:全高2.3m、全長1.2m、全幅1.4mのBETA中最小の小型種。対人探知能力が最も高く、腕力も人の数倍あり、顎の力も衛士の強化装備も食い破る力を持つ。しかし、戦術機相手には無力。

 

 

以上の8種が戦場で戦う主なBETAだ。

レーザー属種がいる限り、航空戦力は疎か、跳躍も容易には出来ない。

その為、戦術機は極力地面から離れない戦い方を基本としており、その動きは前後左右の平面的な機動に制限されていた。

 

「たぁあああああああああっ!!」

 

突撃級の後ろに回り込み、36㎜突撃砲を撃ち込む。

ここまでの戦果は順調と言っていい。

BETAを捕獲するための麻酔弾を撃ち込み、動かなくなったBETAを用意していたカーゴへと運び入れる。

言うだけなら簡単だけど、他のBETAと戦いながら行う作業は文字通り命懸けだ。

それでも、何とか予定数のBETAの捕獲は完了し、後は輸送部隊が安全圏へ離脱するまでこの場を守り切るだけ。

 

『ヴァルキリー01より各機!輸送部隊が安全圏へ離脱するまでもう少しだ!いいか、一瞬たりとも油断するな!勝手に死ぬことは許さん!!』

 

『『『『『『『『「了解!」』』』』』』』』

 

伊隅大尉から檄が飛ぶ。

先任達を始め、皆が息の合った連携でBETAを倒していく。

 

『ヴァルキリー・マムより、ヴァルキリーズ。捕獲したBETAの輸送部隊の安全圏への離脱を確認。撤退を開始せよ』

 

CP将校の涼宮 遙中尉から撤退の指示が出る。

私は初めての出撃という事もあって、撤退の指示が出たとき、緊張感が一瞬解けてしまった。

他の新任少尉達も同じだ。

だけどそれは、明らかな油断。

先程、伊隅大尉に言われたばかりであるにも関わらず。

突如として、BETAの群れが左右に分かれる。

それの意味することは…………

 

「――ッ!いけないっ!!」

 

レーザーの警報が鳴り響く。

私は急いで回避行動に移った。

その瞬間、閃光が視界を埋め尽くす。

 

「きゃあっ!!?」

 

BETAのレーザーに私の不知火は右腕を持っていかれてしまった。

だけど、私はまだマシだった。

 

『あうっ!』

 

少し離れたところで麻倉の不知火が両足を失って地面に倒れている。

 

『麻倉!』

 

新任少尉の涼宮 茜が彼女の名を叫ぶ。

そして狙ったように麻倉の戦術機に殺到するBETA。

 

『や、やだ………助け………』

 

「麻倉!」

 

一番近かった私は麻倉を助けようと引き金を引こうとした。

だけど、ピーッという音と共に表示されたのは、右腕が損傷しているというエラー表示。

私は右腕を失っているのに、右腕の武装を使おうとしていた。

なんて初歩的なミスを………と、後悔した。

でも、BETAは止まらない。

麻倉の戦術機の下にたどり着いた要撃級がその前腕を振り上げる。

 

『いやぁああああああああああああっ!?!?』

 

「麻倉ぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

麻倉の慟哭に私は思わず手を伸ばそうとするけど、無意味とばかりにその前腕が振り落とされ……………………

突如として宙を舞った。

 

「えっ?」

 

私は思わず声を漏らす。

前腕だけじゃない。

麻倉に群がっていた全てのBETAが切り裂かれていた。

そして、麻倉の戦術機のすぐそばには、その手から赤い光の剣を発する見たこともない戦術機が、剣を振り切ったような体勢でそこに存在していた。

その戦術機は、剣を振り切った状態から腕の光の剣を消して、直立の体勢になる。

その姿は、座学で見たどの戦術機ともかけ離れていた。

従来の戦術機より1.5倍近くあるその大きさ。

まるでバイザーをつけたような頭部。

派手な金色のV字の装甲を付けた胸部。

翠の肩部。

白い上腕部、腹部、腿部。

黒に近い紺色の腕部と脚部。

脚部に付いている2連装の赤い砲身。

そして、孔雀の尾羽を思わせる5対10枚の赤い光の翼。

戦術機どころか、地球の技術体系とかけ離れているように思えた。

 

『ッ!? 何者だ!?』

 

伊隅大尉が咄嗟にその戦術機に突撃砲を向けながら叫ぶ。

 

『…………………』

 

でも、その謎の戦術機は伊隅大尉の問いかけには答えず、迫りくるBETAの大群に向き直ると、再び右腕に赤い光の剣を出現させ、

 

「―――――ッ!? 消えた!?」

 

一瞬消えたかと錯覚させる程のスピードでBETAの大群に向けて突撃していた。

謎の戦術機は、私がそちらに戦術機のメインカメラを向けた時には、既にBETAの大群を通り過ぎていて、光の剣を出現させた右腕を振り切っていた。

そして、その途中にいたBETAは全て切り裂かれている。

 

「え……………?」

 

もしかして、振り向くまでの一瞬で十数体いたBETAを全て切り裂いたんだろうか?

その中には要撃級だけでなく、突撃級や要塞級も混じっている。

更にその謎の戦術機は、その場で跳び上がった。

光線級がいる場所で跳ぶなんて、なんて自殺行為、と思ったけど、

 

「――――ッ!? また消えた!?」

 

レーザーが照射されたときには、もうその戦術機はそこに居なかった。

レーザーが予想より早く途切れたと思った時には、既にその戦術機が光線級のいた場所に到達していて、全ての光線級が切り裂かれていた。

 

『は、速すぎる………!? 何だあの戦術機は………!?』

 

伊隅大尉も驚愕の声を漏らしている。

すると、その戦術機はこちらに向き直り、左手で倒れている麻倉の戦術機を指差した。

 

「え………? 麻倉を助けろって事?」

 

私は直感的に感じたその意味を口から漏らした。

すると、その戦術機はその言葉を肯定するように頷いた。

その戦術機はすぐにBETAの大群に向き直ると、再び突撃していく。

 

『伊隅大尉、どうしますか!?』

 

風間少尉が問いかける。

 

『ッ………!? 正体が分からない以上信用することは危険だ。周囲に警戒しつつ麻倉を救出する!』

 

『『『『『『『「了解!」』』』』』』』

 

そうは言うけど、私にはあの戦術機が到底敵には思えなかった。

 

 

 

それから麻倉を救出したけど、あの戦術機はこちらを攻撃する素振りは一切見せなかった。

それどころか、私達に近付くBETAを優先的に殲滅していた節もある。

麻倉を救出し終えた頃には、周辺のBETAは全て倒されていた。

そして、全体の戦闘も終息に近付いていた。

そして現在。

その謎の戦術機と、私達A-01部隊は睨み合うような形になっていた。

 

『………………援護は感謝する。だが、そちらの所属を明かしてもらいたい』

 

伊隅大尉は礼を述べつつも、警戒を怠らない。

 

『…………………………』

 

でも、その戦術機は赤い光の翼を広げると、空中へ飛び上がる。

そして背を向けると、物凄いスピードで飛び去ってしまった。

 

「………………………」

 

私はその戦術機が消えた空を見つめる。

あの正体が何なのかはわからない。

だけど、

 

「………………ありがとう」

 

助けてくれたことに、私は感謝した。

 

 

 

 

 

 




どうもです。
現在『ありふれたフロンティアへ』を投稿している者ですが、盆休みの間に行き詰って、息抜きに次回作予定の小説を書いてたらいくつか話が出来てしまったので先行で投稿します。
とりあえず現在執筆中の作品があと1か月前後ぐらいで終わる予定なので、それまではあちらを優先させますので、それまではこちらの更新はほぼ無いと思ってください。
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