転生特典に量産型の機体のみという縛りがあったのでジェイアークを選んでやった件   作:友(ユウ)

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第2話 目覚めと決意

 

 

 

 

ブラックサレナ(だろう機動兵器)に乗っていた、テンカワ・アキト(らしき男)を医療ポッドで治療している間、俺はいつもの如く情報収集をトモロに頼んでいた。

だが、この世界でのハッキングは、トモロでもそう簡単な事ではないらしく、いつもより時間がかかっていた。

そして、先にアキトの治療が終わるようで様子を見に来たわけだが、

 

「貴様達は何者だ……!? ここは何処だ……!?」

 

目が覚めた瞬間、警戒心MAXでこちらを睨みつけるアキト。

 

「あ~、とりあえずここは俺の船、ジェイアークの艦内だ。世界を渡る最中に、お前の機動兵器がジェイアークにぶつかってきて、コクピットの中で死にかけてるお前を発見したから治療の為に医療ポッドに放り込んだ。悪性のナノマシンは除去したし、いろいろ弄られてた所も再生した。その証拠に、普通に動けるし五感も戻ってるだろ?」

 

「ッ!?」

 

俺の言葉にアキトはハッとなる。

 

「なっ………!? バイザーをしていないのに目が見える!? 耳も聞こえて………!?感覚も…………! それに、補助スーツを着ていないのに動けている!?」

 

アキトは今気付いたと言わんばかりに自分の身体を見つめた。

 

「視覚と聴覚、触覚はOKと。あとは………ほれ」

 

俺はそう言いながらジェイアークで作った合成リンゴを放り投げた。

アキトはそれを片手でパシッと受け取る。

 

「…………………」

 

アキトは鼻を近付け、匂いを嗅ぐ。

 

「嗅覚も大丈夫か?」

 

「……………ああ」

 

俺の問いにアキトは頷いた。

そして、そのリンゴを口元に持っていき、数回躊躇した後、そのリンゴに齧りついた。

そのまま数回咀嚼すると、

 

「……………………ッ!」

 

アキトのその眼から涙が溢れた。

 

「………分かる………………味が分かる…………!」

 

感極まったようにそう呟くと、一口……また一口とリンゴに齧りつく。

 

「分かる…………リンゴの酸味も………甘みも…………皮の渋みも…………!」

 

泣きながらそう口にするアキト。

 

「なんか、味が分かることに凄い感動してますね? この人………」

 

シンがアキトの様子を見てそう零した。

まあ、コックが夢だったアキトにとって、味覚を失ったことは人生の終わりに等しかったのだろう。

それが戻ったとすれば、その感動も一入(ひとしお)だ。

 

「嬉しそう………」

 

ステラも笑みを浮かべながらそう言う。

しばらくすると、ようやく落ち着き、

 

「……………未だに状況が良く分からないが、どうやら君達に救われたようだな」

 

先程の警戒心がだいぶ薄れた雰囲気でそう言うアキト。

まだ、完全には心を許したわけではないようだが。

 

「まあ、偶々だ。見捨てるのも後味悪いしな」

 

「それでも助かった。改めて感謝する」

 

アキトは頭を下げた。

それから顔を上げると、

 

「まだ名乗ってなかったな。俺の名はテンカワ・アキト…………改めて聞きたい。君達は何者だ? 正直、俺の身体は現代の医療技術ではどうにもならない位悪化していたはずだ。それを治すとは…………」

 

やっぱりテンカワ・アキトだったんかい!

あと、呼び方が『貴様達』から『君達』に変わってるから、ある程度信用はしてくれているようだ。

 

「そうだな………俺の名はジェイ。そっちはハル。それとシンとステラ。最初に言うが、俺達はこの世界の人間じゃない」

 

俺達が別の世界からの来訪者だという事をかいつまんで話す。

 

「異世界から来た………!? そんな事が…………」

 

「まあ、そう簡単に信じられることではない事は理解している。証拠としては、このジェイアークそのものと、後はシン達の世界の機動兵器があることぐらいだ」

 

「あまり恩人を疑う事はしたくないが………流石にな」

 

まあ、これが正しい反応だろう。

その時、

 

『じぇい、コノセカイノジョウホウノシュウシュウガカンリョウシタ』

 

トモロが報告してくる。

 

「ッ!? この声は?」

 

アキトがトモロの声にそう問いかけてくる。

 

「ああ。これはトモロ。ジェイアークのメインコンピューターだ」

 

「メインコンピューター? オモイカネのようなものか…………」

 

自分の知識に近しいものがある為、納得するアキト。

 

「とりあえず、現在の日時と場所を教えてくれ」

 

俺がそう言うと、

 

『ゲンザイハ、コノセカイノコヨミデ、セイレキ2196ネン、4ガツ………』

 

「2196年だと!?」

 

突然アキトが叫んだ。

 

「い、いきなりどうしたんだよ………?」

 

いきなり叫んだアキトにシンが驚きながら尋ねた。

 

「……………俺が居た年代は、2201年だ……………」

 

アキトは神妙な顔をしながら呟いた。

 

「5年前か…………」

 

俺がそう言うと、

 

「信じるのか?」

 

アキトが意外そうな表情でそう聞いてきた。

 

「俺達だって異世界から来てるんだ。時間を遡ったって聞いても否定する材料は無いさ」

 

「確かに…………」

 

俺の言葉に、納得してしまうアキト。

 

「因みに心当たりはあるか?」

 

「おそらくだが…………ボソンジャンプが原因だろう」

 

やっぱりそれか。

 

「ボソンジャンプ?」

 

初めて聞く単語にシンが首を傾げる。

 

「ボソンジャンプ………一種の瞬間移動のようなものだが、実際には時間と空間を移動する技術だ。俺も以前は2週間前に時間移動したことがあるし、知り合いには二十数年前にジャンプしてしまった人も居る…………5年前に跳躍するのは普通にあり得ると思う」

 

知り合いって言うのはイネスの事なんだろうな。

っていうか、イネスことアイちゃんは、遥か古代にも飛ばされたんじゃなかったか?

話がややこしくなるだけだから省いたんだろうが。

 

「この時間に飛んでしまったのは、ナデシコCの相転移エンジンの暴走がトリガーになったと……………」

 

そこまで言って突如アキトは黙り込んだ。

 

「アキト?」

 

ステラが首を傾げると、

 

「そうだ! ユリカ! ルリちゃん!」

 

アキトが突如として叫んだ。

 

「ジェイ! 俺の他に保護した人はいないのか!?」

 

アキトが突然立ち上がり、切羽詰まった様子で問いかけてくる。

 

「いや………ジェイアークにぶつかったのは、お前の機体だけだ」

 

「ッ…………そう………か…………」

 

アキトは力が抜けたように座り込む。

 

「何があった?」

 

「………………………それは…………」

 

アキトは話し出した。

新婚旅行の時にテロ組織に拉致され、人体実験を受けた事。

人体実験の影響で味覚を始めとした五感を失い、コックになるという夢が断たれた事。

自分だけ救い出されたが、捕まっていた妻を救い出す事と、夢を奪ったテロ組織に復讐するために行動を始めた事。

復讐を遂げ、妻を救い出したが、復讐鬼として手を血で汚してきた自分には、彼女に会う資格がなく、去ろうとしたこと。

このままでは自分の命に先は無く、1人静かに死のうとしたこと。

そこへ、妻のユリカと家族として暮らしてきたルリが、アキトを連れ戻すためにナデシコCに乗って現れた事。

彼女たちの言葉に、思い直そうとした時、生きていた怨敵がナデシコCを攻撃。

相転移エンジンが暴走し、爆発寸前に陥った事。

アキトはせめてもの償いに一緒に死のうとして、ナデシコCの爆発まで傍に居た事。

それから気付いた時には、このジェイアークの医療ポッドの中だったことを伝えた。

 

「なるほど……………」

 

俺は呟くと顔を上げ、

 

「トモロ。この世界のテンカワ・アキト、ミスマル・ユリカ、ホシノ・ルリはどうなってる?」

 

「ジェイ?」

 

俺の発言にアキトが怪訝な声を漏らす。

暫くすると、

 

『コノセカイノてんかわ・あきとハ、ハントシマエノカセイノゆーとぴあころにーデシボウシテイル』

 

「俺が死んでる…………」

 

その言葉に少なからずショックを受けたようだ。

 

『みすまる・ゆりか。ネンレイハハタチ。地球連合大学ヲソツギョウシテイル』

 

「そこは同じか…………」

 

『ホシノ・ルリ。ネンレイハ16。ねるがるニすかうとサレテオリ………』

 

「………って、16歳?」

 

トモロの言葉の途中でアキトが口を挟む。

 

「この時期のルリちゃんは11歳の筈だが…………」

 

「もしかしたら、よく似ているけど違う世界………並行世界ってやつじゃないのか?」

 

俺は自分の推測を言う。

 

「並行世界…………」

 

アキトが呟く。

すると、

 

『ム………?』

 

トモロが怪訝な声を漏らした。

 

「どうした? トモロ」

 

俺が聞くと、

 

『タッタイマ、てんかわ・あきとトみすまる・ゆりかニツイテシラベラレタハンノウガアッタ』

 

「俺とユリカの情報を?」

 

アキトが呟く。

 

『ソノエツランモトハ、ねるがる傍系ノケンキュウジョダ』

 

「ネルガルの………もしかして、ルリちゃん!?」

 

「ホシノ・ルリがアキトとミスマル・ユリカの情報を調べたって事は、彼女も時を遡ったんじゃないのか?」

 

俺は推測を言う。

 

「ルリちゃんも……………」

 

「もしそうなら、ミスマル・ユリカも同じ状況の可能性が高いな」

 

「ユリカも…………」

 

2人も来ているかもしれないと聞き、アキトは俯く。

 

「会いに行かないのか?」

 

俺がそう言うと、

 

「だが…………俺の手は血まみれで……………」

 

アキトはまだ踏ん切りがつかないようだ。

俺は一度ため息を吐き、

 

「お節介かもしれんが、それを決めるのはお前じゃない!」

 

「ッ!?」

 

「今のお前を受け入れるかどうかは、彼女たちが決めることだ。それとも何だ? 彼女達は、一度でもお前を拒絶したのか?」

 

「ッ…………いや…………むしろ俺を追ってきたな…………」

 

「だったら彼女達は、お前に傍にいて欲しいって思ってるって事だ」

 

「…………ユリカ…………ルリちゃん……………」

 

アキトは2人の名を呟く。

 

「…………………………」

 

すると、アキトはまた難しい顔をする。

 

「今度は何だ?」

 

「いや…………どうやって謝ればいいかと思ってな……………」

 

「そんなもん、美味い飯作って食べさせてやって、謝ればいいだけだろ? 味覚も戻ったんだ。コックの夢ももう一度目指せるんじゃないのか?」

 

「ッ!?!?!?」

 

俺の言葉に、アキトは青天の霹靂と言わんばかりの虚を突かれた表情を浮かべた。

 

「コックの夢…………もう一度………目指せる…………!」

 

目を見開いたまま、アキトは片言で言葉を紡ぐ。

すると、勢いよく立ち上がった。

 

「決めた!」

 

アキトは握りこぶしを握りながら叫ぶと、

 

「半年で落ちた料理の腕を取り戻す! そして、もう一度ナデシコに乗る!」

 

決意を口にする。

 

「あんな未来は………変えてやる!!」

 

アキトはそう言い放つのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





ナデシコ編第2話です。
はい、逆行アキトが目覚めて案の定暴れかけましたが、ご都合主義の如くすんなり納得しとります。
そんで、五感が戻ったとなれば、こういう反応するかなぁと。
そして、決心したアキトが進む道とは?
次回もお楽しみに。
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