転生特典に量産型の機体のみという縛りがあったのでジェイアークを選んでやった件 作:友(ユウ)
【Side 三人称】
火星に近付いたことで、無人兵器の攻撃が本格化して来た。
目の前の宙域には、バッタだけではなく、駆逐艦クラスのカトンボ。
更には、カトンボより大型の戦艦ヤンマの姿も見える。
すると、ナデシコから、エステバリス4機、ブラックサレナ、デスティニー、ガイアが出撃する。
「さて、お手並み拝見といきますか」
ジェイはジェイアークの艦橋からその様子を眺めた。
赤、オレンジ、水色のエステバリスがディストーションアタックでバッタを薙ぎ払っていく。
「今度こそ俺の活躍の場だぁ!!」
ガイことヤマダ・ジロウが叫びながらバッタに突っ込み、撃破していく。
「落ちろ………!」
アキトが静かにハンドカノンでバッタを次々と撃ち落す。
「はぁあああああああああああっ!!」
「でぇぇぇぇぇい!」
シンとステラもビームサーベルで近付くバッタを切り裂きながら進んでいる。
すると、エステバリス隊が大型の戦艦、ヤンマに向かった。
リョーコ、ヒカル、イズミの3人がそのままディストーションアタックを仕掛けたが、ヤンマのフィールドの前に弾かれる。
「チッ、奴もフィールドか!」
「死神が見えてきたわね」
「「見えん見えん!」」
3人がそう言っていると、ガイの青いエステバリスが突っ込んでくる。
「ゲキガンフレアーーーーッ!!」
ヤンマにディストーションアタックを仕掛ける。
しかし、中程まで食い込んだが、推力が足らずに跳ね返されてしまった。
「のわぁあああああああああっ!?」
ガイは慌てて制動を取る。
「畜生、やるじゃねえか!」
負け惜しみの様にそう言うガイ。
『あぶねーぞヤマダ!』
突っ込むときに衝突しそうになったリョーコが通信で文句を言う。
「ダイゴウジ・ガイ!」
『カッコよかったけど間抜けな特攻でしたね?』
『死に水は取ってあげるわ』
『イズミーーーッ!』
『それよりどうするの? このままじゃ………』
4人でワイワイやっていると、
『俺に任せろ!!』
デスティニーのシンが近付いてきてそう言った。
『アスカ!?』
リョーコが驚いた声を上げると、
「デカブツなら、コイツが使える!!」
デスティニーが右背面に手を伸ばし、そこに伸びている柄を掴むと、一気に引き抜いた。
その瞬間、そこから2つ折りにされた長物が現れ、折りたたまれた部分が広がって伸び、1本の大剣を作り上げた。
更に、大剣の片刃にビームの刃が発生する。
対艦刀『アロンダイト』。
これがデスティニーの本来の主力となる近接武器だ。
今まではバッタやジョロなどの小型兵器ばかりを相手していたので、使いどころが無かったのだ。
『おおっ! 大剣か! それもまた男の憧れる武器の1つだな!』
ガイがアロンダイトを見てテンションを上げる。
デスティニーがアロンダイトを正眼に構えると、背部のウイングから光の翼が広がる。
「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!」
シンが叫びながらデスティニーを突撃させる。
ミラージュコロイド粒子による残像を残しながら、ヤンマに接近。
迎撃の為の砲撃が放たれるが、デスティニーは突撃する速度を緩めることなく横滑りするようにレーザーやグラビティブラストを避ける。
「そんなもんにぃぃぃぃぃぃぃっ!!」
シンが叫びながらアロンダイトを突き出す。
ヤンマはフィールドを張るが、物理攻撃を兼ね備えるアロンダイト。
更にはエステバリスよりも遥かに大型のデスティニーが、C.E最高峰の機動力を用いて突っ込んでくるその威力はエステバリスのディストーションアタックなど比べ物にはならない。
フィールドを容易く突破し、アロンダイトの刀身が深々とヤンマの装甲に突き刺さる。
「まだまだぁっ!!」
シンはその状態でブーストを吹かし、突き刺したアロンダイトで装甲を大きく切り裂いていく。
そのままヤンマの先端付近から後方までを一気に斬り抜いた。
一瞬遅れて爆散するヤンマ。
「す、すげぇ…………」
それを見て、思わずそう呟くリョーコ。
更にシンは、近くのカトンボへと向かい。アロンダイトを突き立てる。
「こいつもくらぇえええええっ!!」
シンは密着状態で左背部の高エネルギー長射程ビーム砲を展開すると、零距離で発射。
ビームがカトンボを貫通し、カトンボが爆散する。
その後も、デスティニーの活躍は目を見張るものがあった。
やがて、
「前方の敵90%消滅。降下軌道取れます。どうぞ」
ルリがミナトにデータを送る。
すると、
「サンキュ! ルリルリ!」
ミナトがウインクしながらそう返した。
「ッ……!」
その言葉にルリはハッとなる。
(………またそう呼んでくれるんですね。ミナトさん)
ルリは小さく口元に笑みを浮かべた。
「さあ皆。準備は良い? ちょっとサウナになるわよ」
ミナトがそう言うと、
「その前にエステとMSの回収」
ゴートが口を出すが、
「とっくにやってるわ」
言われるまでも無いと言わんばかりにミナトはそう言った。
その後、ナデシコは火星の地上に向けてグラビティブラストを発射。
敵の第2陣とチューリップを破壊した。
尚、今回は重力制御をしていたため、大変な事にはならなかった。
地上付近に到達すると、
「これより地上班を編制し、搭載挺ヒナギクで地上に降りる」
フクベのその一言でブリーフィングが始まる。
「しかしどこに向かいますか?軌道上から見る限り生き残っているコロニーはなさそうですが」
ジュンがそう言うと、
「まずはオリンポス山の研究施設に向かいます」
そう言いながら地図と研究施設の映像を表示するプロスペクター。
「ネルガルの………? 抜け目ねぇな」
リョーコが呟く。
「我が社の研究施設は一種のシェルターになっておりましてね。一番生存率が高いものですから」
理由を説明するプロスペクター。
「では、地上班メンバーを………」
ゴートが口を開いたとき、
「すまないが、俺はユートピアコロニーに行きたい」
バイザーと黒マント姿でアキトがそう割り込んだ。
「あそこにはもう、何もありませんよ。チューリップの勢力圏です」
プロスペクターがそう言うと、
「分かっている。ただ、生まれ故郷だからな。一目見ておきたいと思っただけだ」
アキトがそう言うと、プロスペクターに歩み寄って耳打ちした。
「……………『前』の通りなら、そこに『イネス・フレサンジュ』博士が居る。生き残った人たちもな」
「ッ…………!」
プロスペクターはその言葉に一瞬目を見開く。
すると、
「行ってきたまえ」
そう言ったのはフクベだった。
「故郷を見る権利は誰にでもある。若者なら特にね」
「………感謝する」
アキトは一言そう言うと、
「しかし、テンカワさんお1人ではいざという時困るのでは?」
プロスペクターがそう言うと、
『ならば、俺達がアキトについて行こう』
モニターが開き、ジェイがそう言った。
「行っていただけるので?」
『何もしないのも暇だからな。構わん』
「それではお願いします」
プロスの言葉に、ジェイは頷くのだった。
火星の荒野を艦首にブラックサレナを乗せたジェイアークが進む。
「この辺りだ。降りてくれ」
アキトがそう言うと、ブラックサレナを地上に着地させ、ジェイとハルも地上へと降りてくる。
そして、壊れたショベルカーらしき重機の前に来ると、
「この辺りだったはずだ…………」
そう言いながら確かめるように地面を幾度か蹴ると、ボコッと穴が開いた。
「ここだな………!」
アキトはそう言って何のためらいもなく穴に飛び込む。
続いて、ジェイ、ハルと穴から飛び降りた。
先に降りたアキトは前を見据えており、そこに1人の人影があった。
「ようこそ火星へ。歓迎するべきかせざるべきか………何はともあれコーヒー位はご馳走しよう」
声からして女性だが、その姿は全身をローブで覆い、顔をゴーグルとマスクで隠しているため伺い知ることは出来ない。
まあ、アキトやジェイにはその人物が誰か分かっているが。
「それにしても、凄い恰好ね。バイザーに黒マント。それに良く分からないアーマーを着込んだ男性。そっちの女性は、まあ、普通……というにはちょっと変わってるかしら?」
「格好については、アンタも人の事は言えないと思うが?」
ジェイがそう言い返した。
「フフフ、確かにね。けど、こんな処で暮らしていくには、こういう格好が必要だからね」
「ごもっとも」
納得するジェイ。
すると、その人物はフードを取ってゴーグルを外した。
その下からは金髪の美女と言うべき容姿の整った女性の顔が現れる。
「私はイネス・フレサンジュ。まあ、簡単に言えば、ネルガルの社員ね」
そう名乗ったイネス。
「私が素顔を見せたんだから、そっちも見せてくれないかしら?」
「…………いいだろう」
イネスにそう言われたアキトは片手をバイザーに持っていき、それを外した。
その瞬間、
「ッ………!?」
イネスが目を見開く。
そして、
「お………お兄ちゃん!?」
掴みかかる様にアキトに詰め寄った。
「なっ!?」
その行動にアキトも驚く。
イネスは、アキトの顔をよく観察するように見る。
「いいえ………! そんな筈無いわ……! だって、お兄ちゃんはあの時に………!」
首を振りながら自分の言葉を否定するように後退った。
「ッ…………!」
アキトは内心で、まさかと言うべき仮説が思い浮かぶ。
「………………アイちゃん………なのか………?」
アキトがそう口にすると、イネスは目を見開く。
「何で………? どうしてその名前を………!?」
アキトの知るイネスにしては珍しく狼狽している。
「…………………………」
アキトは一度深呼吸して落ち着くと、
「どうやら、一度情報をすり合わせる必要がありそうだ。まず、あなたの知るテンカワ・アキトについて聞きたい」
アキトがそう言うと、イネスは話し出した。
イネスが8歳………『アイちゃん』であった頃、木星蜥蜴の襲撃で避難したシェルターで、この世界のテンカワ・アキト………『お兄ちゃん』に出会った。
仲良くなった『お兄ちゃん』に甘えていた時、木星蜥蜴の無人兵器がシェルターに侵入。人々が混乱する中、『アイちゃん』であったイネスは、『お兄ちゃん』から『お守り』だと言われて首から下げていた青い石が付いたペンダントを貰った。
そのまま『お兄ちゃん』は車で無人兵器に特攻。
その隙に母親と避難しようとしたが、既にシェルターの出入り口には無人兵器が屯しており、その攻撃で母親や他の人々は死亡。
母親に護られ、偶然にも軽傷で済んだ『アイちゃん』は『お兄ちゃん』の元へ向かうが、その『お兄ちゃん』は『アイちゃん』の目の前で殺されてしまった。
当時の『アイちゃん』は何が起きたのかは分からなかったが、『お兄ちゃん』が居なくなってしまったという事だけを理解した。
そのまま感情のままに叫び声をあげた瞬間、別の場所に居て、そこに居た人達に送り返されるが、気付いた時には誰も居ない遺跡の中。
更にしばらくしたら砂漠のど真ん中に放り出されたという。
正確には、その事はつい最近まで記憶を失って覚えていなかったが、木星蜥蜴襲撃が切っ掛けで記憶が戻ったという。
「なるほどな…………この世界のテンカワ・アキトが死んだのはそう言う経緯だったか………」
アキトが話を聞いて納得したように呟く。
「次はあなたの番よ。どうして『お兄ちゃん』と同じ顔をしているのか? 何故私が『アイちゃん』であったことを知っているのか?」
イネスは真剣な表情でアキトを見つめた。
「……………俺は、この世界とは別の歴史を辿った世界の『テンカワ・アキト』だ」
アキトは、自分が並行世界の未来から来たテンカワ・アキトであることを話した。
「……………そう………あなたは、並行世界の未来から来た『お兄ちゃん』だったのね………」
頭のいいイネスは一発で理解したようだ。
「ああ………だから俺は、正確にはあなたの知る『お兄ちゃん』ではない」
「そうね。私の目の前で殺されてしまったんだから、同一人物であるという方が無理があるわ」
イネスは少し寂しそうにそう言った。
「あと、俺とは別にユリカとルリちゃん………ナデシコの艦長とオペレーターの子も未来から戻ってきている」
「なんとまあ、呆れるほど都合がいいわね」
イネスは大袈裟に驚いて見せた。
「……………ここの避難民がナデシコに乗るつもりが無いことは分かっている。だがイネスさん。あなたにはナデシコに乗ってもらいたい」
「それも未来の記憶?」
「そうだ。俺の知る歴史では、この場所の上空にナデシコが来て、避難しないというあなたと言い争っている内に無人兵器に包囲され、ユリカはナデシコを護る為にフィールドの展開を指示。ここの避難民を圧し潰す結果となった」
「なるほどね…………それで、その後は火星からの脱出は出来たのよね?」
「結果的にはな。正確には、チューリップに突入し、ボソンジャンプで地球に逃れただけだ」
「やっぱりチューリップは一種のワームホール………空間跳躍の出入り口で間違いないようね?」
「ああ、その通りだ」
「………………」
イネスは少し思案顔になると、
「いいわ。皆の避難を始めましょう」
「ッ!? いいのか?」
イネスの言葉にアキトは思わず反応する。
「ええ。曲がりなりにも火星から脱出できたという実績があるのなら、賭ける価値はあるわ。それが、経験者が艦長なら尚更ね」
イネスは口元に笑みを浮かべて見せる。
「分かった、ナデシコを呼ぶ。だが、なるべく避難に時間を掛けない様にしてくれ。おそらくナデシコがここに来れば、敵が集まってくる」
「ええ」
アキトの言葉に、イネスは頷くのだった。
ナデシコ編第8話です。
もしかしたらイネスさんも逆行者じゃないかと予想した人も居るかもしれませんが、このイネスさんは現地人です。
ですが、並行世界よろしく意外にも既にアイちゃんとしての記憶を取り戻してるイネスさんです。
この世界のアキトの死んだ理由がこんな感じです。
北辰が原因かもしれないと考えてる人も居ましたが、違いました。
まあ、並行世界なので、行動も若干違うという事で。
では、次もお楽しみに。
P.S 度々誤字報告でゾンダーの完全体をゾンダリアンに修正しようとする方が居ますが、完全体とゾンダリアンは別物なので、お間違えの無いようにお願いします。
ルリの扱いについて
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