転生特典に量産型の機体のみという縛りがあったのでジェイアークを選んでやった件   作:友(ユウ)

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第3話 接触

 

 

【Side 香月 夕呼】

 

 

 

 

私はここ数日頭を悩ませていた。

理由は、11月11日のBETAの侵攻時、BETAの捕獲任務をしていたA-01部隊の前に現れた謎の大型戦術機の事。

提出された資料から得られたのは、地球上のどの技術体系にも当てはまらず、光の剣と光の翼という実用化どころか、机上の空論と言っていい光学兵器を装備し、戦術機のメインカメラでもほんの僅かに映るかどうかというレベルのスピードで動いたという。

更に、記録映像としては残っているものの、レーダー等の検知機器には全く記録が残っておらず、私とて伊隅から提出された記録映像がなければ、こんな戦術機が存在するなどと報告されても一笑に付す所だった。

だけど、伊隅から提出された上、その戦術機のお陰でA-01部隊に被害が無かったとなれば、信じざるを得ないだろう。

同じ『時』をループしているという白銀にも、それとなく確認してみたが、何も知らないようだ。

考えられるのは、白銀の言ってることが出鱈目か、『前の世界』の私が知らせなかったか、それとも、『この世界』だけに起きたイレギュラーなのか…………

まず、白銀の言っていることが出鱈目という可能性は低い。

あいつの言った日付と時間通りにBETAは侵攻してきた。

BETAの行動は予測できない現在、その行動を言い当てた白銀の言う事には信憑性がある。

次に『前の世界』の私が白銀に伝えなかったという可能性は、まあ…あり得る。

以前の私の白銀に対する信用度がどのぐらいだったのかは知らないが、必要無いことは教えないだろう。

最後に、『この世界』だけに起きたイレギュラーの可能性。

これも無いとは言い切れない。

実際に白銀というイレギュラーが存在するわけだし。

だけど確証がない。

量子電導脳の研究も進んでないのに、こんな問題が起こるだなんて……………

私は思わず顔を手で覆って天を仰ぐ。

あ~も~!

ままならないわ!

私はやけっぱちになりながらも再び机に向かう。

そこで、

 

「あら?」

 

専用のパソコンにメールが届いていることに気付いた。

 

「差出人は…………不明………!?」

 

そんなことはあり得ない。

このパソコンは厳重に管理されている。

少なくとも、差出人が不明なんてことはあり得ない。

私は一瞬、中身を開かず消去しようと考えた。

だけど、あからさまに差出人不明という事に違和感を覚えた。

私を罠に嵌めようとするなら、明らかに警戒させる物でなく知己の人物の名前を使うはず。

そして、最近現れた謎の戦術機。

根拠は無い。

でも、私の直感が何か関係があると告げる。

 

「ッ………!」

 

最悪ウイルスメールでも、定期的にバックアップは取ってあるし、情報を流出させるものにしても、怪しいと思った時点でデータを全て消去すればいいと考えた。

そう思った私は、そのメールをクリックし、内容を開いていた。

その内容を見た瞬間、私は思わず見入った。

その内容を要約すればこうだ。

・自分は先のBETA侵攻の時に現れた大型戦術機の衛士である。

・自分は香月博士()に協力する意思がある。

・自分の事を信じるのなら指定時間に海岸まで来てほしい。

・尚、護衛は香月博士()が信用出来る者なら何人でも構わない。

という事だった。

 

「…………………」

 

私はその内容を見て一瞬考える。

普通に考えるなら、オルタネイティヴV推進派の罠と考えるだろう。

しかし、あの謎の大型戦術機は映像以外には残されていない。

そして、あの大型戦術機はA-01部隊の前にしか現れていない。

研究に行き詰っていた私は、半ば賭けに出る気持ちで、信用できる2人を呼び出すことにした。

 

 

 

私が基地の入り口前に到着すると、既にその2人は待っていた。

私が姿を見せると、その2人は敬礼してくる。

 

「伊隅 みちる大尉、呼び出しに応じ、参上いたしました!」

 

「神宮司 まりも軍曹、同じく呼び出しに応じ、参上しました!」

 

その姿を見て、私はため息を吐く。

 

「はいはい。そういうのはいいって、いつも言ってるでしょ?」

 

手をひらひらとさせながら私は答える。

 

「そして、我々2人を呼び出すとは、いったい何事でしょうか?」

 

伊隅が任務内容を知りたいのかそう問いかけてくる。

 

「別に大した用事じゃないわ。ちょっと海岸まで散歩に行きたいから、その護衛を頼みたいだけよ」

 

「は、はあ………?」

 

私の言葉が意外だったのか、まりもは気の抜けた声を漏らす。

 

「じゃあ、さっさと行くわよ」

 

散歩とは言うけど、海岸線までの移動は車に決まってる。

態々海岸まで歩いて行く程暇じゃない。

 

 

 

海岸線に着き、私は車を降りる。

 

「さて、鬼が出るか蛇が出るか…………」

 

「「?」」

 

私の言葉に伊隅とまりもは顔を見合わせる。

廃墟となった街並みが並ぶ海岸線を歩いていると、

 

「不躾な招待に応えてくれたことに礼を言おう。香月博士」

 

突如として男の声が聞こえた。

 

「「ッ!?」」

 

伊隅とまりもは反射的に私を守る様に拳銃を構えながら辺りを警戒する。

すると、廃墟となった建物の屋根の上に、1人の人影を見た。

距離があってよく見えないけど、マフラーのようなものが靡いて見える。

 

「何者だっ!?」

 

伊隅とまりもがその人影に銃を向ける。

すると、

 

「とぁっ!!」

 

その人影はその場で飛び上がったかと思うと、マフラーらしき影が突如翼のようになり、人影が直立の状態でこちらに滑空するように飛んできた。

 

「「「ッ!?」」」

 

私達は驚いて固まっていたけど、その人影は私達の上空を通過すると、そのまま背後に降り立った。

 

「俺の名はジェイ。初めましてと言っておこう。香月博士」

 

その人物が振り返りながらそう名乗った。

私達も振り返ると、その人物の姿が露になった。

黒いインナーとトゲトゲしい白いアーマー。

ヘッドギアに左目だけを覆う赤いバイザー。

先ほどあった翼もいつの間にか消え、再びマフラーが靡いている。

何とも奇妙な格好をした男だった。

衛士の着る強化服も人のことは言えないけど………

 

「「動くなっ!!」」

 

伊隅とまりもは拳銃を突き付ける。

 

「…………………」

 

それでもその男には焦りは見えなかった。

 

「………………あんた達、銃を下げなさい」

 

「香月副司令……! しかし!」

 

「命令よ」

 

「「ッ………!」」

 

2人は渋ったけど、大人しく銃を下げた。

私はそのジェイと名乗った男に向き直り、

 

「初めまして。知っているようだけど私が香月 夕呼よ。あなたがあのメールの差出人でいいのかしら?」

 

「ああ。そして、メールに記載した通り、先日のBETA侵攻の時に現れた大型の人型兵器の操縦者だ…………こちらでは戦術機の衛士と言った方が分かりやすいか?」

 

「ッ!? お前があの戦術機の!?」

 

伊隅が思わず声を上げる。

 

「伊隅大尉……!? 何か知っているのですか!?」

 

まりもも声を上げる。

 

「まりも、今は黙ってなさい」

 

「ッ……! はっ! 失礼しました」

 

まりもは大人しく下がる。

 

「それで? あのメールの内容が本当なら、私に協力をしても構わないという事だけど?」

 

「その通りだ」

 

「だけど、正体不明の人物をおいそれと協力者にするわけにはいかないわ。率直に聞くけど、あなた何者? あの大型の戦術機だって見たことも聞いたこともないわ」

 

私がそう聞くと、その男は軽くうつむき、

 

「…………信じるかどうかはそちらに任せるが、俺はこの世界の人間ではない。別の世界からこの世界に放り出された帰る場所もない放浪者だ」

 

そんなとんでもないことを口にした。

 

「別の世界だと!? そんな出鱈目を信じると思っているのか!?」

 

伊隅が叫ぶ。

だけど、私には満更出鱈目とは思えなかった。

あの大型の戦術機もそうだが、建物の上からこの場へ滑空してきた技術も私にはよく理解できなかった。

見たところ、推進装置のようなものは着けておらず、先ほど上空を通過した時も、特に熱や空気の噴出は感じられなかった。

 

「伊隅」

 

「ッ……失礼しました」

 

「それで? 何で別の世界から来たあなたが私に協力するなんて言い出したのかしら?」

 

「…………信じるのか?」

 

彼は意外そうな表情で問い返してくる。

 

「…………信じる信じないは二の次よ。少なくとも、あなたは強力な戦術機と、未知の技術を持っている。それだけわかっていれば今は十分だわ」

 

「なるほど」

 

彼は小さく笑って話を続ける。

 

「香月博士に協力をしてもいいと判断した理由だが、この世界の情勢については、あらゆる場所にハッキングをして情報を集めたので大方は把握している。あなたの行っている研究も………そしてこの宙の上で作られている物もな」

 

「へぇ………」

 

今の言葉は、おそらくオルタネイティヴ計画の事を言っているのだろう。

少なくとも、オルタネイティヴ4と5の事については筒抜けの様だ。

 

「その上で自分の感情に従い、協力をするならあなただと判断したまでだ」

 

「感情ね…………」

 

こいつも安っぽい正義感で動いているのかしら?

 

「なら、あなたの最終目的は何なの?」

 

私はそれを訪ねる。

 

「俺の最終目標か………強いて言うなら、幸せで満ち足りた日々を送ること………かな?」

 

「随分と曖昧ね?」

 

「少なくとも、常に命の危険がある殺伐とした日々はお断りだ。多少の刺激は必要かもしれないが、普段は穏やかな日々を送りたい。だが、今のこの世界の情勢ではそれは厳しいだろう。ならば、一刻も早く平和な世の中にするために、何処かに協力することが必要だと考えた」

 

「その協力先に私を選んだ理由は?」

 

「それは先ほど言った自分の感情によるものだ。先の安全が約束されていない逃避行など論外の上、俺の持つ戦力ならばBETAに対し生き残ることも難しいことではない。ならば、あなたに協力することが妥当だと判断したまでだ」

 

「どこにも協力せず、自分だけ生き残るって選択肢もあると思うんだけど?」

 

私は更に問いかけた。

 

「………確かにそれも考えた。だが、この地球上でたった1人生き残って何の意味がある?」

 

「ッ…………」

 

「生きているだけマシとも言うが、生きているだけでは退屈だ。共に生きてくれる者が居るならともかく……な」

 

「なるほどね」

 

少なくともこいつは、自分本位で動いてはいるが、自分の都合で他人にも生きていてもらいたいらしい。

確かに1人だけ生き残ったところで待っているのは孤独で退屈な毎日だろう。

そして別の世界から来たという事が本当なら、こいつには何の後ろ盾もなく、黒幕も居ないという事になる。

それに、ここで断ってオルタネイティヴ5派や別の組織に属したら脅威だ。

 

「……………いいわ。あなたを協力者として認めましょう」

 

「「副司令!?」」

 

私の判断に伊隅とまりもが声を上げる。

 

「感謝する。それと、俺の立場としては、香月博士が個人的に雇っている傭兵という立場でいたい。軍のいいように使われる駒になるのは御免なのでな」

 

こいつ…面倒なことは全部丸投げする気ね。

こっちが断れないことを分かっているわね。

もし断れば、協力を断ると言えばそれだけでこっちは折れるしかないし。

 

「流石に部外者を基地に置いとくわけにいかないから、対外的には私直属の部下という形ね。階級は…………そうね。特務少佐という事にしておきましょう」

 

「随分と気前がいいな?」

 

「それだけアンタのことを重要視してるって事よ」

 

「了解した。損はさせない事を約束しよう」

 

「期待してるわ」

 

私はそう言っておく。

私の勘だけど、こいつは私を害そうという気は無いらしい。

流石に言ってること全部を鵜呑みにしてるわけじゃないけど。

 

「それと、あんたの機体については…………」

 

「保管場所については問題無い。こちらの機体には自動修復機能がある。メンテナンスは不要だ」

 

「そ、そう………」

 

自動修復機能とかオーバーテクノロジー級の単語をサラッと言わないでほしいわ。

 

「あと、一度アンタの機体を見せてもらっていいかしら? 伊隅達を疑うわけじゃないけど、この目で見ないと納得がいかないのよ」

 

私が最終確認の意味も含めてそう言うと、

 

「………いいだろう」

 

そいつは事も無げに頷くと、右手を掲げ、パチンッとフィンガースナップを打ち鳴らした。

その直後、ズズズズッと空気が震えだす。

 

「な、何だ……!?」

 

伊隅が辺りを警戒する。

すると、ジェイの背後の海が突然水飛沫を上げ、何か巨大なものがせり上がってきた。

それは、

 

「これが俺の艦、『ジェイアーク』だ」

 

そこに現れたのは白亜の戦艦。

 

「戦艦………!?」

 

大きさは目測で100m前後。

軍艦としてはそう驚くほどの大きさでもないけど、独特的なフォルムが印象的だった。

すると、

 

「ハッ!」

 

ジェイは飛び上がると再びマフラーが翼になってその艦の艦橋に向かって飛んでいく。

っていうか、何でマフラーが翼になってんのよ!?

だけど、そんなツッコミも次の瞬間起きた出来事に一瞬で吹っ飛んだ。

 

『フュゥゥゥジョン!!』

 

戦艦からそんな声が聞こえてくると、

 

『ジェイバード、プラグアウト!』

 

戦艦の艦橋と砲台部分が分離、上昇していく。

 

「は………?」

 

私は思わず声を漏らす。

更に艦橋に直角に繋がっていた砲台部分が稼働し、垂直に変形する。

そしてレーダー関係と思われていた艦橋両側に突き出す翠の装甲が90°回転すると、その装甲内から腕が飛び出してくる。

そして、艦橋上部から顔が迫り出した。

それはまさしく、

 

『ジェイダー!!』

 

報告にあった大型の戦術機だった。

その戦術機は、分離した白亜の戦艦の胴体部分に降り立つと、

 

『これが俺の機体、ジェイダーだ』

 

ジェイの声でそう言ってくる。

 

「………………」

 

私は声を失う。

伊隅やまりもも一緒だ。

いや、艦橋と砲台が分離して人型機動兵器になるとか、明らかにロボットの口が人の口の様に動いているとか、突っ込みたい所はたくさんあるけど、何よりも一番納得いかないのは……………

 

「何で変形前よりサイズが縮んでんのよ!?!?」

 

私は思わず叫んでしまった。

先ほどの目測通りなら、艦橋と砲台部分がそのまま変形すれば、50m位の大きさになるはずなのだ。

それなのに、目の前に立つ人型機動兵器は、25m前後しかない。

完全に物理法則を無視している。

 

『それは俺に言われても困る。そういうものだと納得するしかない』

 

「あんたの機体でしょうが!」

 

ジェイの言葉に私は思わず突っ込む。

 

『機体の操縦者だろうと機体の全てを把握しているわけではないだろう? 戦術機の衛士に戦術機の仕組みを聞いて完璧に答えられる人間がどれだけいる?』

 

「むぐっ………」

 

確かにその通りだ。

単純な仕組みならある程度教習の過程で教わるが、細かい仕組みはメカニックでないとわからないだろう。

 

「夕呼が言い負かされたわ………」

 

うるさいわよ、まりも!

まあ、少なくともジェイが異世界の人間であることは疑いようは無いわね。

こんなもの今の地球で作ることは不可能よ。

頭が痛くなる事案だけど、強力な力を持った人物が協力者になることは決して悪いことではないだろう。

もしかしたら、00ユニットの研究の足掛かりになるかもしれないし。

こうして私は、ジェイという切り札(ジョーカー)を手に入れることになるのだった。

 

 

 

 





はい、第3話です。
一ケ月は更新しないと言っときながら、2週間で投稿です。
まあ、空いた時間にチマチマ書いてたら思ったよりも書けたので。
今回は夕呼との邂逅です。
協力理由がまた凡人っぽいっていうか………
まあ、中身は凡人ですから。
因みにジェイのアーマーのイメージは、身体はソルダートJのアーマー。
ヘッドギアは漫画版覇界王の戒道のIDアーマーです。
因みに主人公はアーマー装着状態では無意識にソルダートJのロールプレイが入るので口調がJにやや近くなってます。
次もお楽しみに。
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