転生特典に量産型の機体のみという縛りがあったのでジェイアークを選んでやった件   作:友(ユウ)

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第4話 出会い

 

 

 

香月博士と接触した翌日。

 

「はい。これがアンタの認識票よ」

 

香月博士から認識票を差し出される。

現在いる場所は地下19階にある香月博士の執務室。

とりあえず俺にもここまで来ることの出来る権限は与えてくれたようだ。

 

「基本的にアンタの基地内の行動は自由。必要な時は呼び出す形にするから」

 

「わかりました」

 

俺がそう答えると、

 

「……………………」

 

香月博士は俺をジーッと見つめてきた。

 

「なんですか?」

 

俺が尋ねると、

 

「アンタ、昨日と比べて性格違わない?」

 

「はい?」

 

思いがけない質問に、俺は意味が分からず声を漏らす。

 

「昨日はなんていうか、こう。もっと不遜な感じだったわよ」

 

「自分としては、そんなつもりは無かったんですけど………」

 

「言葉も敬語だし………」

 

香月博士は呆れたような視線を俺に向ける。

 

「まあいいわ。そういうわけだから」

 

「はい。っと、忘れるところでした」

 

俺はそう言いながらあるデータチップを取り出す。

 

「これを………」

 

それを机の上に置くと、

 

「これは?」

 

「香月博士の研究に役立つかもしれないデータをピックアップしておきました。何かの足しになればと思います」

 

「そう。ありがたく受け取っておくわ」

 

香月博士はそう言ってデータチップを手に取った。

一先ず部屋と着替えは用意されているようなので、自分に宛がわれた部屋に向かう。

部屋には既に着替えが用意されていたので、その軍服に着替えた。

デザインは正規兵と同じ黒い制服のような物だ。

 

「さて、これからどうするか…………」

 

一先ず横浜基地に入るという目標は達成できたため、香月博士からお呼びが掛からない限りやることが無い。

すると、ちょうど腹の虫が鳴った。

 

「そういえば朝飯食ってなかったな………丁度いい。PXで飯にするか」

 

俺はそう口に出して部屋を出た。

 

 

 

 

それからしばらく歩いて気付いた。

俺ってPXの場所知らねーや。

今更気付く俺は本当に阿呆だと思う。

香月博士に聞くかと思ったが、PXの為に態々地下19階まで行くのもなんだかな~。

そんな事を考えながら歩いていた所為だろう。

廊下のT字路の曲がり角から歩いてきた人物が居たことに気付かなかったのは。

ドンッと体に衝撃が走る。

 

「うおっ!?」

 

「きゃっ!?」

 

俺が声を漏らすと同時に、軽い悲鳴が聞こえた。

今更だが、エヴォリュダーとなっている今の俺の身体能力は生身の人間の比ではなく、反射神経も良い。

 

「………っと!」

 

その為、ぶつかった相手が後ろに転びそうになっているのに気付き、咄嗟に手を掴んで自分の方に引き寄せた。

咄嗟の事だったので、思った以上に強く引っ張ってしまい、その人物を胸に抱きしめるような形になってしまった。

その時身体に感じた感触はとても柔らかく、いい匂いがした。

下を見れば、青髪の少女を俺は抱きしめていた。

 

「す、すまん!」

 

俺は謝りながら慌てて離れる。

 

「う、ううん………!」

 

その少女も少し狼狽えているように思えた。

 

「ぶつかって悪かった! 考え事をしてて気づかなかった!」

 

俺はぶつかってしまったことを謝罪する。

 

「わ、私もよそ見してて気付かなかったからお相子だよ!」

 

その少女もそう言ってくれる。

 

「そ、そうか………」

 

「う、うん………」

 

「「………………」」

 

無言になる俺達。

こういう時、どうすればいいのか経験のない俺にはわからない。

すると、

 

「私、柏木 晴子。階級は少尉だよ」

 

何故か相手が自己紹介した。

って、この子柏木か!

相手をよく見ると、左分けの青髪ショートカットに女子にしては高い身長。

更には軍服の上からでもわかる程のナイスバディ。

確かに柏木 晴子だった。

 

「……………………」

 

ぶっちゃけ、柏木はゲーム上では好きなキャラクターだった。

それはもうマブラヴという作品の中ではメインヒロイン達を差し置いて一番と言っていいほどの。

彼女がヒロイン枠では無いとわかったときは憤慨モノだった。

まあ、サプリメントやオルフェでお世話になったのは俺だけの秘密だ。

なんのお世話かは言うまでもない。

しかし、何よりも一番ショッキングだったのは、オルタネイティヴにおいて彼女は要塞級に串刺しにされた挙句、溶解液で肉片一つ残さず溶かされてしまうという非業の死を遂げるのだ。

 

「………………どうかした?」

 

彼女が俺の顔を覗き込む。

その行動に俺はハッとなると、

 

「あ、ああ……すまん。少し呆けていた。俺はジェイ。階級は………あ~、一応特務少佐という事になっている」

 

「しょ、少佐!? 失礼しました!」

 

彼女は慌てて姿勢を正し、敬礼してくる。

 

「ああ、そんなかしこまらなくても良いって。特務少佐と言っても香月博士の直属の部下だからそういう肩書を貰っただけだ。正式な士官教育も受けてないし、俺自身こんな高い階級を貰って戸惑ってるぐらいだ」

 

「そ、そうなんですか?」

 

「ああ。だから別に俺に敬語は必要ない………まあ、公式な場所では必要だが、それ以外では気軽な口調で構わないさ」

 

俺がそう言うと、

 

「………クスッ。変わってるね、君」

 

砕けた口調でそう言ってきた。

 

「かもな」

 

俺は否定はしなかった。

正直軍人としては失格なんだろう。

俺自身軍人のつもりは無いが。

 

「それならよろしくね、ジェイ。私の事はハルでいいよ」

 

「いいのか?」

 

「うん」

 

「ならよろしくな、ハル」

 

「改めてよろしくね。ジェイ」

 

そう言ってお互いに笑いかけた。

そこで俺は丁度いいと思い、

 

「それでいきなりで悪いんだが、PXが何処にあるか教えてくれないか? 俺は横浜基地に来たばかりだから、場所を把握してなくてな………」

 

「フフッ……!」

 

俺の言葉にハルは笑いを零す。

 

「…………あまり笑わないでくれ」

 

「ごめんごめん。いいよ、私もこれからPXに行くところだし、案内してあげる」

 

「助かる」

 

俺がそう言うと、ハルは先導するように歩き出した。

 

 

 

他愛ない言葉を交わしながら、歩くこと約5分。

 

「ここだよ」

 

案内された部屋は、ほぼ食堂と言っていい作りだった。

カウンターで好きな料理を注文して、トレーで受け取り、各自自由に席に着いて食事をするというスタンスだ。

まあ、普通だな。

俺達が揃ってPXに入ると、

 

「おや? 柏木、男連れか? お前に恋人がいたとは知らなかったな?」

 

そんな女性の声が投げかけられた。

見れば食堂の一角に10人近い女性達が集まっていた。

って、彼女達って………

 

「宗像中尉~………いきなり何言ってるんですかもう~」

 

真面目な人物なら慌てて否定したり、真っ赤になったりするはずだが、ハルはのらりくらりと質問を躱した。

彼女達を見渡すと、その中に伊隅大尉の姿も見える。

やはりA-01部隊か。

 

「迷ってた人を案内してあげただけですよ」

 

ハルは俺を示しながらそう言った。

すると、

 

「敬礼!」

 

伊隅大尉が号令を掛け、A-01部隊の面々は突然の号令に何事かと狼狽えながらも軍人としての反応で敬礼をする。

ハルは俺が特務少佐という事を知っているので割と戸惑うことなく敬礼した。

その対象は間違いなく俺だ。

 

「お疲れ様です! ジェイ特務少佐!」

 

伊隅大尉がそう言うと、A-01部隊の面々に驚愕の色が伺えた。

 

「どうもお疲れ様です。昨日振りですね、伊隅大尉」

 

俺は見様見真似で答礼を返しつつ伊隅大尉に声をかけた。

 

「楽にしていいですよ。俺も飯を食いに来ただけなんで。食事の時ぐらい気楽にいきましょう」

 

俺はそう言って畏まらない様に言う。

彼女達も力を抜いて敬礼を止めると、

 

「伊隅大尉はジェイの事を知ってたんですか?」

 

ハルが伊隅大尉に尋ねた。

 

「ああ。とは言っても、初めて会ったのは昨日だがな」

 

席に着きながら伊隅大尉はそう言う。

 

「彼も香月副指令直属の部下となる。我々の部隊の事についても、ある程度は知っているので、そこまで気を使う必要は無い」

 

「伊隅大尉とハルは知っているが、ジェイ特務少佐だ。姓については気にするな。香月博士の部下という立場上、君らとは顔を合わせることもあるかもしれないからな。その時はよろしく頼む」

 

俺が名乗ると、速瀬中尉を始めとした部隊員たちが自己紹介をする。

一通り自己紹介が済むと、俺はカウンターで食事を貰い、A-01部隊の机に同席させてもらいつつ食事をとり始めた。

因みにこの料理は全て合成食材らしいが、素材の味はジェイアークで作る合成食材の方が上。

ただ、味付けはこちらの方が上だ。

素材の味はイマイチだが、それに合わせた味付けがされており、素材の味の悪さはさほど苦にはならない。

そんな風に食事していると、

 

「ジェイ、質問良いかな?」

 

ハルがいつの間にか俺の正面に座って問いかけてきた。

 

「ん? 答えられることなら構わないが………」

 

俺がそう答えると、

 

「ジェイって何歳?」

 

「歳か? よ………んんっ! 20歳だ」

 

危ねぇ!

前世の癖で40歳と言いそうになった。

 

「へえ、やっぱり私より年上なんだ」

 

「年上と言っても2、3歳ぐらいだろ? そこまで気にするほどの事でもない」

 

俺達はそんな世間話をしながら食事を続ける。

そんな時、

 

「特務少佐~! つかぬことをお聞きしますが、特務少佐は戦術機の腕はどの位なんですか?」

 

速瀬中尉が手を上げながら問いかけてくる。

 

「ん? 悪いが俺は衛士じゃない。戦術機には乗ったことが無いんだ」

 

俺はそう答える。

別に嘘はついてない。

まあ、エヴォリュダーの能力で動かそうと思えば動かせるかもしれないが。

 

「な~んだ」

 

速瀬中尉は残念そうに言う。

 

「だが…………」

 

そこで俺は言葉を続けた。

 

「白兵戦に関してはそれなりにやる方だと自負している」

 

っていうか、エヴォリュダーの身体能力があって生身の人間に勝てないとおかしいが。

 

「へぇ………言うじゃない」

 

速瀬中尉は面白そうな笑みを浮かべている。

すると、

 

「それでは一つご教授願おうではないか」

 

伊隅大尉が突然そんな事を言い出した。

 

「本日の午前中の訓練を変更し、ジェイ特務少佐との近接格闘訓練を組み込もう」

 

「いいですね、それ!」

 

伊隅大尉の言葉に速瀬中尉は賛成と言わんばかりの声を上げる。

 

「いや、そんな急な変更大丈夫なのか?」

 

俺が問いかけると、

 

「問題ありません。香月副司令より、ジェイ特務少佐の予定が無ければ、交流も含めて好きにしていいと聞き及んでいますので」

 

「何やってんだあの人………」

 

伊隅大尉の言葉に、香月博士に対しての呆れを感じる。

 

「もちろん、ジェイ特務少佐の許可があれば………ですが」

 

そのセリフは、暗にここまで言われて断らないだろうな? という圧を感じる。

ふと正面を見れば、ハルが期待したようにニコニコしていた。

俺は一度ため息を吐き、

 

「…………わかりました。特に任務もありませんし、構いませんよ」

 

了承の言葉を伝える。

 

「よぅし! じゃあ、早速行きましょう!」

 

速瀬中尉が我先にと席を立つ。

 

「その前に飯ぐらいゆっくり食わせてくれ」

 

俺はそう言ったが、結局は残っていた飯を掻き込む羽目になったのは言うまでもない。

 

 

 

 

 

訓練場に移動すると、

 

「じゃあ、アタシから行くわよ!」

 

動きやすい服装に着替えた速瀬中尉がそう言った。

対戦方式は、模擬短刀を使った模擬戦。

審判役は伊隅大尉だ。

 

「それでは………始めっ!」

 

合図の手が振り下ろされた直後、

 

「おりゃぁああああっ!!」

 

先手必勝とばかりに速瀬中尉が突っ込んできて、右手に持った模擬短刀で俺の心臓を狙ってきた。

正直前世の俺なら何の反応もできずに直撃を受けただろう速度。

だが、エヴォリュダーとなっている今の俺には、スローモーションも同然に見えていた。

半身を逸らしつつ速瀬中尉の背中側に避けると、突き出された右手首を掴んで引っ張り、バランスを崩す。

 

「へっ!? わわっ!?」

 

そのまま反対の手で持っていた模擬短刀を、速瀬中尉の首筋に添えた。

 

「そ、そこまで!」

 

伊隅大尉が終了の合図を出す。

声がどもったのは、一瞬で勝負が決まるとは思ってなかったからか?

 

「ちょ、今の無し! もう一回!」

 

速瀬中尉が我に返ってそう言ってくる。

 

「別に構いませんよ」

 

俺はそう言って数歩下がって構えなおす。

 

「次は今みたいにはいかないんだからね!」

 

速瀬中尉はそう言って再び構え直した。

 

「始め!」

 

伊隅大尉が合図を出す。

しかし、今度は速瀬中尉は飛び込んで来ず、構えながらジリジリとこちらの隙を伺っていた。

 

「今度は慎重ですね」

 

「先手は譲ってあげようと思ってね」

 

俺の言葉に速瀬中尉はそう答える。

どうやらこちらの出方を伺うようだ。

それならば、

 

「じゃあ、お言葉に甘えてこちらから行きます」

 

そう言って足に力を籠める。

 

「ッ…………!」

 

その動作で、速瀬中尉は警戒するように気を張り詰める。

しかし、残念だがそんなことは無意味。

 

「ふっ!」

 

俺は地面を蹴ると、速瀬中尉の模擬短刀を狙って自分の模擬短刀を振った。

 

「なっ!?」

 

速瀬中尉が驚愕の声を漏らす。

その直後、カランという音と共に、速瀬中尉の背後に模擬短刀が落ちた。

俺の振り切った手には模擬短刀。

そして、速瀬中尉の手には何も持っていない。

これの示すことは、俺は一瞬で間合いを詰めて、一撃で速瀬中尉の模擬短刀を弾き飛ばしたという事だ。

俺はそのまま模擬短刀を速瀬中尉に突き付ける。

そして、

 

「伊隅大尉」

 

未だ呆気に取られていた伊隅大尉に呼び掛けた。

 

「ッ……! そ、そこまで!」

 

ハッとなった伊隅大尉が終了の合図を出す。

 

「な、何も見えなかった………」

 

見ていたA-01部隊の1人、涼宮 茜が呆然と呟いた。

 

「な、何よ今の………」

 

速瀬中尉が呆然と呟く。

 

「はぁ~………もう完敗よ。悔しがる気も起きないわ」

 

速瀬中尉はそう言ってため息を吐く。

どうやら負けを認めたようだ。

因みにこの後もA-01部隊全員と模擬戦をしたが、全てにおいて圧勝。

1対1だけではなく、2対1、3対1と人数を増やしたりもしたが、特に問題なく勝ってしまった。

改めてエヴォリュダーの身体能力はシャレにならないと再認識した。

それにしても、この模擬戦は俺にも有意義なものだった。

俺がこの横浜基地に来る前にやっていた訓練は、身体能力を把握する訓練が主だった。

だから、こうやって戦う相手がいて、本格的な戦闘訓練が出来るというのは自分1人では出来ない事だ。

戦いの経験が積めるという環境は、今の俺に最も必要なモノだろう。

 

「……………まさかこれほどとは…………」

 

ふと伊隅大尉の呟きが耳に届いた。

その言葉を聞いて、俺の中にある仮説が浮かび上がった。

もしかしたら、伊隅大尉は俺の白兵戦の実力を試したかったのかもしれない。

万一の時に備えて、どの程度の戦力であれば俺を無力化できるか把握しておきたかったのだろう。

まあ、小隊クラスの人数では全然足りないという事が分かっただけだが。

ぶっちゃけアーマー装着状態なら戦術機相手にも勝てそうだけどな。

スピードでかく乱した上でラディアントリッパーで関節部を狙えば何とかなりそうな気がする。

むしろ普通に戦術機の装甲切断できたりしてな。

試してみないと分からないが。

まあこんな感じでA-01部隊との最初の邂逅は終わった。

だが、この時俺は知らなかった。

この出会いに、『運命』とも言うべき出会いがあったことに…………

 

 

 

 

 





はい、第4話です。
この物語のヒロインこと柏木 晴子と主人公の出会いです。
テンプレの如く曲がり角でのぶつかり合いから。
最初っから好感度高すぎのような気もしますが、まあ、互いに無意識に一目惚れしてるってことで。
因みにクーデターまではやることないのでサクサク進みます。
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