転生特典に量産型の機体のみという縛りがあったのでジェイアークを選んでやった件 作:友(ユウ)
A-01部隊と模擬戦をした翌日。
俺はいきなり香月博士に呼び出された。
「香月博士、何でしょうか?」
俺がそう問いかけながら執務室に入ると、
「ジェイ! あんたもう最っ高よっ!」
「おわっ!?」
部屋に入るなり香月博士が抱き着こうとしてきたので反射的に避けてしまった。
「あら? せっかくハグしてあげようと思ったのに………」
香月博士は残念そう………というか、本当に良かったの?と言いたげな声でそう言ってくる。
「いきなりだったんで驚いて避けてしまっただけですよ」
俺がそう言うと、
「……………もしかしてあんたって………童貞?」
「うぐっ!?」
図星を突かれた俺は心に大ダメージを受ける。
「あははは! 道理で反応が初心っぽいと思ったわ!」
香月博士は楽しそうに笑う。
「ええそうですよ! 今まで女に縁のない生活を送ってましたので!」
俺はやけくそ気味にそう言う。
「まあ、そんなことはどうでもいいとして」
香月博士は急に話を変える。
「あんたの持ってきたデータ。ハッキリ言って宝の山ね」
「そこまででしたか?」
「わかってて渡したんじゃないの?」
「俺は技術者じゃないんで詳しいことは分かりません。そっち系は、ジェイアークのメインコンピューターに任せてますんで」
「一つ残念なことがあるとすれば、このデータでも00ユニットにはもう一歩届かないってところかしら?」
「そうですか」
まあ、そこは俺がトモロに頼んで調節してもらった。
おそらくトモロなら00ユニットを完成させるデータを作ることは出来たのだろうが、この時点で00ユニットを完成させてしまうと、白銀 武の必要性が下がり、2人の信頼関係が結べなくなってしまう可能性が出ると思ったからだ。
俺自身武には極力関わろうとは思っていない。
自分が関わって状況が良くなるとは限らないからだ。
まあ、わかってる人死には避けるつもりでいるが。
「ま、そうはいってもこのデータを実用レベルまでもっていくには、最低でも1年は必要でしょうけど」
「そうですか。お話というのはそのことで?」
「まあ感謝の意を伝えたかっていうのは本当よ。ついでに伝えとくけど、私、明日から数日間南の島でバカンスだから」
南の島でバカンスって言うと………
207B分隊の総戦技演習だったか?
「はあ? ごゆっくり?」
「それであんたの予定だけど、特にないから昨日みたいにA-01部隊との親睦でも深めときなさい」
「了解です」
まあやることないので暇だし。
ついでに言えば、美人揃いのA-01部隊との交流は悪いものだとは思ってない。
誰かと恋仲になれるとも思ってないけどな。
そんなこんなで1週間ほど時が流れた。
度々A-01部隊の訓練に顔を出しつつ、毎度の如く模擬戦を申し込まれ、その度に返り討ちにする。
そんな生活サイクルを繰り返し、PXで食事をするのにも慣れてきたある日。
今日もPXで食事をとっている。
A-01部隊のメンバーは予定が合わないので誰もいない。
すると、
「おい、そこの訓練兵」
俺のすぐ近くで声がした。
「は………何か御用でしょうか? 少尉」
見れば俺が食事している机のすぐ近くで正規兵の服を着た男女の2人組が、1人の訓練生の制服を着た少年を呼び止めていた。
あれ?
もしかしてこれって。
「………お前らの隊はあそこにいるので全部か?」
男の少尉が親指で少し離れたテーブルの少女達を指す。
ってあそこにいるのは207B分隊かっ!
じゃあこの少年って………
「はい、総員で6人です」
「だったらハンガーにある特別機………帝国軍の新型は誰のだ? お前らの中の誰か用だと聞いたが…………」
続けて女の少尉が問いかける。
すると、
「………少尉、私の機体です」
そう答えたのは、少年………白銀 武ではなく、いつの間にかその後ろにいた少女、御剣 冥夜だった。
「あっ! お前、いつの間に!?」
武が驚いたように振り返る。
しかし、冥夜はそれをスルーし、
「少尉、あの機体が何かご迷惑を?」
少尉達に問いかけた。
「お前の名は?」
「御剣 冥夜訓練兵です」
「ん? あれ………? お前の顔、何処かで…………」
「ああ……どうなってる? 何で
冥夜の顔を見て既視感を感じたのか少尉が更に問いかけた。
「……………………」
口を閉ざす冥夜。
「黙ってちゃ分からねえだろう? 訓練兵?」
『訓練兵』という言葉を強調して、自分たちが上官だという事を意識させてるのかね。
すると、
「恐れながら少尉殿」
武が口を開く。
「何だ?」
「それは少尉殿の個人的な興味からの質問でしょうか?」
「あぁ!? ハンガーをあいつが1つ占拠してるのは事実だろ? 整備兵もあいつの点検を行っている」
「ましてや特別仕様と来ればそこらの戦術機とはわけが違う」
「その事情を聞く権利が、俺達に無いと言いたいのか!?」
いや、まったくもって一介の衛士に知る権利があるとは思えないが。
内心でツッコミを入れつつ食事を続ける。
「聞けばお前らは、何か訳ありの特別待遇らしいじゃねえか、そこんとこも説明しろよ」
「それは武御雷やその搭乗衛士の事を調べろ……という任務を受けていることですか?」
「お前がそれを気にする必要があるのか? いいから訓練兵は言われたことに答えてりゃいいんだよ」
そんな少尉の言葉を聞いて、武の口から出た言葉は、
「……少尉殿には、もっと他にやるべきことがあるかと考えますが……」
少尉達を煽るような言葉だった。
「よせタケル!」
それに気付いた冥夜が止めようとしたが、
「………なんだと?」
少尉の顔に青筋が浮かぶ。
「少なくとも、訓練兵相手にイキがるよりも優先すべきことが…………」
武がそこまで言った瞬間、バキィと鈍い音が響いた。
男の少尉が武の頬を殴ったのだ。
「タケルッ!?」
冥夜が叫ぶと、
「タケル!?」
「何やってるの白銀!?」
騒ぎに気付いた207B分隊のメンバーが立ち上がってこちらに向かってくる。
「…………大丈夫だよ冥夜。撫でられただけだ」
しかし、武の目は闘志を失っていない。
より強い輝きをもって少尉達を睨みつけた。
「カッコいいねぇ………少しは骨があるじゃないか」
女の少尉が楽しそうにそう言うと、
「ああ……? まだわかんねえの……………かっ!!」
男の少尉が再び武を殴ろうと、拳を振り上げた。
俺は…………
「なっ!?」
男の少尉が驚愕の声を上げる。
俺は思わず手を伸ばし、武を殴ろうとしたその拳を掌で受け止めていた。
【Side 白銀 武】
俺は猛っていた。
何の因果か俺がこの世界に連れてこられたあの日に遡り、与えられた2度目のチャンス。
何も知らずに状況に流されるだけだった1度目。
夕呼先生が進めていたオルタネイティヴ4から5に移行され、人類10万人を宇宙へ脱出させる計画となる。
それを阻止するために2度目の今回は、夕呼先生に協力し、先生の研究を完成させるのが目標だ。
だけど、目の前のこいつらは…………!
このままじゃ人類はBETAに負けちまうっていうのに…………!!
「あぁ!? ハンガーをあいつが1つ占拠してるのは事実だろ? 整備兵もあいつの点検を行っている」
「ましてや特別仕様と来ればそこらの戦術機とはわけが違う」
「その事情を聞く権利が、俺達に無いと言いたいのか!?」
そんな下らないことで権力を振りかざして…………!
「……少尉殿には、もっと他にやるべきことがあるかと考えますが……」
「よせタケル!」
「………なんだと?」
「少なくとも、訓練兵相手にイキがるよりも優先すべきことが…………」
俺がそこまで言ったとき、頬に鈍い痛みが走る。
少尉に殴られたのだ。
「タケルッ!?」
冥夜が叫ぶ。
「タケル!?」
「何やってるの白銀!?」
騒ぎに気付いた他の207B分隊のメンバーが立ち上がるところが見えた。
「…………大丈夫だよ冥夜。撫でられただけだ」
だけど、黙っていられない。
人類にはこんなことをしている時間すら残されていないというのに………!
「カッコいいねぇ………少しは骨があるじゃないか」
「ああ……? まだわかんねえの……………かっ!!」
男の少尉が再び俺を殴ろうと拳を振り上げた。
俺は再び殴られることを覚悟しながら歯を食いしばり、
―――バシィ!
横から伸びてきた手にその拳が止められたところを目撃した。
「なっ!?」
「えっ………?」
俺が拳を止めた手を伝って視線を移動させると、そこには1人の男性がいた。
見た感じ、俺らより年上で20歳ぐらいだろうか?
すると、
「くっだらねえことで騒ぎを起こすんじゃねえよ。飯が不味くなるだろ」
その男性は呆れた表情をしながらそう言った。
「あぁっ!? 何だてめぇは!?」
少尉は喧嘩腰に睨みつけながら叫ぶ。
「別に、ここで飯食ってたら目の前で騒ぎを起こされて目障りになったから首突っ込んだだけだ」
その男性は、如何でもよさげにそう言う。
「だったら引っ込んでな。てめぇには関係ねえだろ!」
男の少尉が忌々しそうに叫ぶ。
「だから…目の前で騒ぎを起こされると目障りだって言ってるだろ?」
男性の方も引く気は無いようだ。
すると、
「そもそも、訓練兵に対して、階級を盾に絡むなんてみっともない真似して、よくそこまでイキがれるな?」
呆れたようにそう言う。
「んだと!? こいつらの特別扱いに納得がいかねえだけだ! ちゃんと説明してもらわなきゃ不公平だろ!?」
「何でお前らを納得させる必要があるんだ?」
「何っ!?」
「軍に居れば、納得できなくても命令を遂行しなきゃいけない場合だってあるだろうに………軍人ならもうちょっと割り切れよ」
「俺達は必死こいて衛士になったんだぞ!? それなのにこいつらは特別扱いで訓練環境も優遇されてる! 相応の理由がなきゃ納得できねえだろ!?」
俺はそれを聞いて、少尉の言葉にも一理ある、と思ってしまった。
207B分隊のメンバーは、何かしら優遇されているのは確かだ。
部屋も個別で用意され、吹雪だって優先して納入してもらったりしている。
「こいつらを特別扱いしてるのは上層部だろ? 文句があるならそっちに言え。あと、逆に言うなら、こいつらには特別扱いするだけの理由があるって事じゃないのか?」
「だからその理由を教えろっていうんだ!?」
「その理由を知って如何する?」
「如何って…………」
「もしその理由を無理に聞き出したとして、その理由が機密に関わってくる事だとしたら、お前らは消されるかもしれないぞ?」
その言葉で、少尉達は一瞬顔色を悪くする。
「そ、そんな事あるわけねえだろ!?」
「ああ。そんな事あるわけない。でも、もしかしたら………とは考えないのかな?」
「そ、それは…………」
「ついでに言えば…武御雷って、帝国の上層部や政治的に関わってくる話だろ? そんなもんに一介の衛士が首突っ込んで、無事でいられる保証は無いと思うんだがなぁ?」
「う………ぐ……………チッ! 行くぞ」
「あっ、おい!」
男の少尉は舌打ちすると、忌々しそうにしながら女少尉に声をかけ、その場を立ち去った。
……………終わったのか?
「やれやれ………」
その男性は呆れた態度でそう言うと、自分の席に戻ろうとした。
「あ、あのっ!」
俺は思わず声をかけた。
「ん?」
その男性は振り返る。
「助けていただき、ありがとうございました!」
俺は頭を下げてそう言う。
「ああ、気にすんな。あいつらの態度が気に入らなくて首突っ込んだだけだし」
その人は手をひらひらさせて気にしない様に言う。
「いえ、ですが…………」
「これでも一応あいつらよりは階級が高いからな。あの程度の小物如何とでもなるよ」
いや、小物って…………
「そっちこそ、さっき一発殴られてたろ? ちゃんと治療は受けておけよ」
この人は『前』の世界では見た事無かったけど、悪い人ではないようだな。
その人はそう言って今度こそ自分の席に戻り、食事を続けた。
その後、自室で待機していると、まりもちゃんが尋ねてきた。
仮にも上官に楯突いたことになるから、その処分を言い渡しに来たんだろう。
『前』の世界では罰とは言えない処分が下ったけど、今回は如何だろう?
「用件は分かっているな? PXでのことだ。あれこれ言ったところで自分の仕出かしたことは分かっているだろう………処分だけ言い渡す」
「はい………」
『前』と同じで謹慎かな?
すると、
「…………今回の件は不問にする」
「えっ………?」
まりもちゃんの言葉に、俺は思わず声を漏らした。
あんなのでも少尉だし、何かしらの罰は下ると思ったんだけど………
「………………ジェイ特務少佐に感謝するんだな。彼が私を訪ねてきてPXでのことを大目に見てやってくれと頼んできたのだ」
「ジェイ…………特務少佐!?」
そんな階級の高い人知らないぞ!?
「先の件で、途中で割って入った男性が居ただろう? 彼がジェイ特務少佐だ」
「特務少佐だったのか、あの人………」
少尉達より階級が高いとは言ってたけど、てっきり中尉辺りかと…………
「あの人今まで見たことなかったんですけど、どういう人なんです?」
俺がまりもちゃんに尋ねると、
「ジェイ特務少佐はつい最近、この横浜基地に来られた方だ。詳しいことは私も知らん」
「そうですか…………」
『前』の世界では偶々合わなかっただけか?
何となく気になる人だ。
後で夕呼先生にでも聞いてみるかな?
俺はそう思うのだった。
はい、第5話です。
ありふれたフロンティアへが終わったのでこっちに集中できるようになりました。
今回はいけ好かない少尉達とのひと悶着を書いてみました。
ついでに初登場の原作主人公のタケルちゃん。
2人のファーストコンタクトはこんな感じに。
次はまた時間が飛ぶかも?
お楽しみに。