転生特典に量産型の機体のみという縛りがあったのでジェイアークを選んでやった件   作:友(ユウ)

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第11話 明日へ響く歌声

 

 

 

バジュラとのコミュニケーションも成功し、フロンティア政府やギャラクシーの野望も潰え、更に現れた原種も勇者達に倒された事で、これにて大団円…………とはいかなかった。

戦いの直後にシェリルが倒れたのだ。

元々限界だった身体で命を懸けて歌った。

倒れるのも道理だ。

この世界の医療技術では医療カプセルの中での延命が精々。

アルトは悔しそうに、ランカは悲しそうに眠るシェリルを見つめる。

ルネも心配そうな表情で見ていた。

それを見かねた俺は、いつもの如くジェイアークの医療ポッドの力を借りることにした。

皆の同意を得てシェリルをジェイアークの医療ポッドに移した。

だが……………

 

「ジェイ! シェリルは助かるのか!?」

 

アルトが切羽詰まった雰囲気で問いかけてくる。

ランカも縋るような思いで見つめてくる。

 

「………………治療自体は可能だ」

 

俺から出た言葉にアルトとランカは安堵の息を漏らして微笑み合った。

そんな彼らを見て、心苦しく思ったが俺は言葉を続ける。

 

「……………だが、問題が1つ」

 

「問題………?」

 

俺の言葉にアルトが怪訝な声を漏らす。

 

「ああ……………時間だ」

 

「時間………?」

 

ランカも不思議そうに呟く。

 

「シェリルを完治させるのに、大体1週間かかる」

 

俺の言葉に2人は拍子抜けしたような表情になった。

 

「何だよ………てっきり目覚めるまでに何年もかかるのかと思ったじゃねえか………1週間位…………」

 

アルトはその位大したことないと言いたげだったが、

 

「そうじゃない。おそらく、俺達がこの世界に居られる時間はそれよりも短い」

 

「「「「「「「「「「ッ!?」」」」」」」」」」

 

その言葉に、全員が驚く。

 

「どういう事だ?」

 

オズマが問いかけてくる。

 

「以前にも言ったが、俺達はこの世界の存在ではない。この世界にとっては異物………イレギュラーだ。そのイレギュラーを排除するために、原種やゾンダーと言ったカウンターを世界が生み出す。しかし、そのカウンターが全て倒された世界は、最終的にイレギュラーを世界そのものから排除………弾き出すんだ」

 

「それは、お前達がこの世界から居なくなるという事か?」

 

ミシェルの言葉に俺は頷く。

 

「ああ。そして、今までの経験から言えば最後の原種を倒してから5~6日で………少なくとも、1週間は持ったことが無い」

 

「じゃ、じゃあ…………」

 

アルトが焦りを隠せない表情で詰め寄り、

 

「そうだ。シェリルを完治させるのに時間が足りない」

 

「そんな…………!?」

 

アルトは、せっかく掴んだ希望が指の隙間から零れ落ちていくような絶望感を覚えているのか、悲しそうな表情をする。

 

「シェリルさん…………」

 

ランカも俯いた。

そこで俺は口を開く。

 

「………………それを踏まえて俺から出せる選択肢は2つ」

 

「選択肢………?」

 

アルトは俺の言葉に顔を上げる。

 

「ああ。1つは時間ギリギリまで治療を続け、出来た猶予でこの世界の医療技術の進歩に賭ける事……………完治できないとはいえ幾分か余命の猶予は出来るだろう。絶対とは言えないが可能性はある」

 

「ッ………………もう1つは?」

 

アルトは何かに感付いたようにもう1つの選択肢を促す。

 

「………………もう1つはシェリルをこのまま俺達と連れていくことだ。その場合、おそらくこの世界に戻ってくることは出来ない。だが、命は確実に助かる」

 

「ッ………! そうか…………」

 

アルトは拳を握りしめる。

 

「その場合、お前もついて来るというのなら止めはしない」

 

「ッ!?」

 

その言葉にアルトはハッとなって俺を見た。

 

「この世界と………延いては家族や友人たちと永遠の別れとなる覚悟があればだがな」

 

俺は警告のようにそう言う。

 

「この世界と…………皆との別れ……………」

 

その事実の重さに、アルトは俯く。

 

「………………………」

 

アルトは目を強く瞑りながら悩んでいた。

すると、

 

『………………アルト、あなたが決めて』

 

医療ポッドの中から声がした。

 

「シェリル!? 意識が戻ったのか!?」

 

『ええ。少し前にね…………話も聞いていたわ』

 

「ッ………そうか…………」

 

『…………アルト。私はどちらでも後悔はないわ』

 

「ッ……!? シェリル!?」

 

『この世界で限られた命で皆と共に過ごしたとしても…………別の世界に行ったとしても……………』

 

「シェリル………だが…………」

 

『どこに居ようと、私はシェリル・ノームよ。私はただ歌うだけ! 異世界に行ったとしても、そこが私のステージになるだけよ!』

 

シェリルはそう言い放つ。

 

「ッ………!」

 

シェリルの言葉にアルトはハッとなる。

すると、アルトは決心した表情で俺に振り返り、

 

「決めたぞ! ジェイ! 俺達を一緒に連れて行ってくれ!」

 

そう言い放った。

 

「本気かアルト!?」

 

ミシェルが思わず口を出した。

 

「こいつの言う事が本当なら、二度とこの世界には戻ってこられないんだぞ!?」

 

クランもそう口を出す。

 

「覚悟の上だ! 例え異世界の空だろうと、俺は飛んで見せる!」

 

『アルト………!』

 

アルトの言葉に、シェリルは嬉しそうに微笑んだ。

 

「…………………アルト君」

 

しかし逆に、ランカの表情は暗く、落ち込むように俯いた。

 

 

 

 

 

【Side 三人称】

 

 

 

 

 

アルトやシェリルがジェイ達と同行することになり、その準備が開始される。

その最中、

 

「宇宙にあるクォーター級の残骸を使いたい?」

 

ジェイがジェフリーにそう持ち掛けた。

 

「ああ。正直、母艦が欲しいと思ってた所だ。ディビジョン艦は勇者ロボ達の専用運用艦という意味合いが強い。MSやバルキリーの運用を考えると、マクロス・クォーター級が丁度いいからな。だからと言って、マクロス・クォーターを丸々1隻寄越せと言われても困るだろう?」

 

「…………カーペンターズか」

 

「ああ。先日の戦いで撃沈したクォーター級も多いだろう。それをかき集めれば、何とかなると思ってな」

 

「…………………………」

 

ジェフリーは少し思案していたが、

 

「例え撃沈されているとはいえ、残骸は貴重な資源だ。おいそれと渡すわけにはいかん」

 

そう口を開く。

 

「………………だが、先の戦いでは跡形も残らず消滅した艦も多い。被害はまだ完全には把握できていない。把握できたとしても、誤差はあるだろう。艦1隻分以上はな………」

 

ジェフリーはニヤリと笑いながらそう言う。

ジェフリーは暗に、今なら誤魔化すことも容易いと言っているのだ。

 

「そうですか………艦1隻分程度の誤差は仕方ありませんね」

 

ジェイもそう言いながらその場を去った。

 

 

 

その後、宇宙ではカーペンターズが忙しなく働いていた。

残骸から部品を回収していき、それを1隻のクォーター級として組み立てていく。

それに伴い、艦そのものやオービットベースにも改良を加えていた。

バトル級やアイランド船のシステムを元に、オービットベースにも推進装置を追加し、組み立てているクォーター級とドッキング可能とする。

ドッキング方法は、オービットベースを頂点に接続ユニットを追加し、航行時には横倒しとなる。

オービットベースは重力制御装置があるので、どんな方向を向いていても問題は無い。

更にクォーター級の空母モード時には、中央部にジェイアークがドッキングし、容易な行き来とエネルギーの共有を可能とした。

次にシェリルの為に、マクロス・クォーターと同じ『フォールド・サウンド・ステージ』も搭載した。

そして、艦長はルリとなり、オモイカネがメインコンピューターとして各管制を行い、ルリによるワンマンオペレーションで操艦される。

色は、ディビジョン艦やオービットベースに合わせ、金色とした。

そして現在、勇者ロボを交えた話し合いが行われた結果、

 

「それじゃあ、この艦の名は、『マクロス・ブレイバー』に決定って事で」

 

ジェイの言葉で拍手が沸き起こる。

 

「いい名前だ。勇者である俺達の母艦に相応しいと思うぜ」

 

ゴルディマーグがそう言う。

勇者達が集う艦にちなんで、勇者(ブレイバー)の名を冠した。

この時点で既に4日目。

残り1日か2日で異世界へのゲートが開くだろう。

そして、その時が近付くにつれ、ランカの表情は日に日に暗くなっていった。

 

「………ランカ」

 

そんなランカを見て、ルネは心配そうに呟く。

そしてその夜。

バジュラの母星への移住とアイランド1の復興作業が進む中、ランカは公園で俯いていた。

 

「アルト君…………」

 

ランカはアルトの名を呟く。

もうすぐアルトはこの世界を去る。

シェリルと一緒に………

俯くランカの瞳から涙が零れ落ちる。

その時、

 

「…………ランカ」

 

不意に名前を呼ばれ、ランカは顔を上げる。

 

「ルネさん………」

 

そこに居たのはルネだった。

 

「ど、どうしたんですか? こんな時間に……!」

 

ランカは慌てて涙を拭いながら、明るい声でそう返す。

 

「………ランカが心配になって」

 

ルネがランカに歩み寄り、隣に並ぶ。

 

「心配って……どうしてですか?」

 

ランカは表情を取り繕いながらそう聞くが、

 

「………このままでいいの?」

 

「ッ………!?」

 

ルネのその言葉に、見る見る表情が崩れていく。

 

「それは………」

 

「アルトの事………好きなんでしょ?」

 

「…………はい…………でも、アルト君が選んだのはシェリルさんなんです………私じゃなく…………」

 

再び俯いてしまうランカ。

 

「それでいいの?」

 

「……………」

 

ルネの言葉に何も答えないランカ。

 

「………………私を見てよ、ランカ」

 

「えっ………?」

 

ルネの言葉に顔を上げる。

 

「私は、ジェイの事が好きだよ」

 

「それは…………」

 

「でも、ジェイにはハルっていう恋人がいる」

 

「……………」

 

「ついでにルリも恋人らしい」

 

「ええっ!?」

 

その言葉に盛大に驚くランカ。

 

「だけど私は諦める気は無い。3人目だろうとジェイの恋人になる」

 

「ル、ルネさん………!?」

 

呆気に取られるランカ。

 

「私は、それぐらいジェイの事が好き」

 

「ッ…………!」

 

その言葉にハッとなる。

 

「ランカはどう?」

 

「私は……………」

 

「因みにハルに聞いたことだけど、恋人や夫が1人って言うのは法律がそうなってる所が多いってだけで、異世界を渡り歩く自分達には当てはまらない、って事らしい」

 

ルネがそこまで言った時、

 

「………ッ!」

 

ランカは何かを決意した表情で顔を上げると、

 

「ありがとうございますルネさん! 私、決めました!!」

 

そう口にすると、駆け出して行った。

ルネはそれを見送ると、

 

「………頑張れ、恋する女の子」

 

優しく微笑みながら、そう口にするのだった。

 

 

 

 

 

 

 

翌日。

遂に上空に異世界へのゲートが出現した。

その為、アルトはS.M.Sの仲間達と別れの挨拶をしている。

一通り別れの挨拶を済ませるが、

 

「……………ランカは?」

 

この場にランカの姿は無かった。

 

「…………昨日から自分の部屋に閉じこもって出てこない」

 

オズマがそう言う。

 

「直接別れを言うのが辛いんだろうさ」

 

ミシェルがそう口にした。

 

「………そうか」

 

アルトは残念そうに呟く。

 

「後でメールを送っておくよ」

 

「そうしてやれ」

 

アルトはもう一度皆を見渡すと、最後に背を伸ばして直立し、

 

「今までお世話になりました!」

 

敬礼をして礼を述べた。

 

「唯今を以て、早乙女 アルト准尉の除隊を認める! ご苦労だった!」

 

ジェフリーの除隊宣言により、アルトは正式にS.M.Sを除隊となった。

アルトは、餞別として贈られたYF-29デュランダルに乗り込もうと踵を返し、

 

「………………待って~~~~~~!!」

 

遠くから声が聞こえた。

その声にアルトは即座に振り向く。

丘の向こうから、大きめのトランクを手にこちらに駆けてくるランカの姿があった。

 

「ッ! ランカ!!」

 

アルトは思わずランカに駆け寄る。

ランカはアルトの前で息を切らせると、

 

「はぁっ……はぁっ……! よかった~! 間に合った~!」

 

安堵したようにそう口にする。

 

「ランカ…………ッ?」

 

アルトはランカの手に下げられたトランクに気付く。

 

「ランカ……その荷物は………?」

 

アルトがそう聞いたとき、ランカは満面の笑みを浮かべ、

 

「私も行くよ! アルト君!」

 

「はぁっ!?」

 

「何ぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!?!?」

 

ランカの言葉にアルトが素っ頓狂な声を漏らし、オズマは盛大に驚く。

 

「お前っ……! 分かってるのか!? もうこの世界には帰れないんだぞ!?」

 

「もちろん分かってるよ! でも、このままアルト君とお別れする方がもっと嫌だって気付いたの!」

 

「ッ!?」

 

そして、

 

「私………アルト君が………好きです!」

 

頬を赤らめながらハッキリとそう言った。

 

「ランカ………………俺は………」

 

「アルト君はシェリルさんが好きなんでしょ? そうじゃなきゃ、この世界を捨ててまで一緒に行くなんて言わないはずだし」

 

「ッ! だったら……!」

 

「だけどそれは、私がアルト君を諦める理由にはならないと思うんだ」

 

「ッ!?」

 

ランカの言葉に口を詰まらせるアルト。

 

「私もルネさんを見習う事にしたんだ。覚悟してね? 絶対に逃がさないんだから!」

 

ランカはウインクしながら右手をピストルのようにしてアルトを狙い撃つ仕草をする。

 

「ちょっと待てランカーーーー! それはゆるさーん!!」

 

オズマが爆発する。

 

「どうしても行くというなら俺も……!」

 

「お兄ちゃんにはキャシーさんがいるでしょ!? それに私はもう決めたの!!」

 

「しかし………!」

 

その時、ゴイーンといい音がしてオズマが倒れる。

 

「女の子が覚悟決めたんですから、ここは見送ってあげるのが優しさですよ?」

 

ルネが何処から出したのかフライパンを構えていた。

因みに、オペレーターの3人娘やクランも何かしら打撃武器を構えている。

全員がランカの味方の様だ。

 

「オズマには私から言っておくから、ランカさんは行ってきなさい」

 

キャサリンが微笑みながらそう言う。

 

「キャシーさん………ありがとうございます!!」

 

ランカは深く頭を下げた。

 

「お、おい………!」

 

アルトは未だに狼狽えていたが、その肩にポンと手が置かれる。

 

「ジェ、ジェイ…………」

 

「…………諦めろ。女が徒党を組んだら男は勝てん」

 

凄まじい説得力を以て、ジェイがそう呟いた。

 

「行こっ! アルト君!」

 

ランカはアルトの手を取って強引にデュランダルの方に駆け出す。

困った顔をしていたアルトだが、

 

「アルト、翼は片翼だけじゃ飛べないよ?」

 

ルネがそう言った。

アルトの翼はシェリルとランカ。

どちらが欠けても飛べはしないと言っているのだ。

その言葉にもう一度ランカの顔を見るアルト。

すると、嬉しそうなランカの顔を見て思い直したように微笑む。

デュランダルが空へと舞い上がる。

ランカの歌声と共に。

やがてオービットベースやジェイアークとドッキングしたマクロス・ブレイバーが動き出し、ゲートへと飛び立つ。

明日へ響く歌声と共に……………

 

 

 

 

 






はい、マクロスF編最終話でした。
皆さんが疑問に思ってたアルト達がついて来る理由。
それはシェリルの病気を完治させるためには時間が足りなかったから、でした。
シェリルの治療に時間がかかるのは、怪我などの外的要因ではなく病気だから。
未知の病気には治療にも時間がかかるという事で。
でもって、アルトが行くとなればランカも、と言う訳で迷ってましたがルネの言葉で決心してついて行くことに。
因みにブレラもついて行かせようかなとチラッとは考えたんですが、キャラ的に動かし辛そうなので没にしました。
ランカが遅れた理由がブレラに別れを告げていたという事で。
そして母艦ですが、名前がマクロス・ブレイバーとしました。
安直ですね、はい。
因みに色はオービットベースやディビジョン艦に合わせて金色にしました。
オービットベースが無ければJジュエルの色に合わせてメタリックレッドにするつもりだったんですけどね。
そしてオービットベースはアイランド船の如くマクロスに引っ張ってもらう事にしました。
この程度が自分の思い付きの限界です。
因みに次回からはTV版エヴァンゲリオンとなります。
それではお楽しみに。


マクロスF編のラストは?

  • ほぼ原作通り
  • アルトとシェリルを助けるだけ
  • 両手に花のアルトを連れて異世界へ
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