転生特典に量産型の機体のみという縛りがあったのでジェイアークを選んでやった件 作:友(ユウ)
第1話 使徒、襲来
世界を渡って早半年。
ゾンダーや原種の出現に気を付けてはいるものの音沙汰無し。
現在は月の裏側にオービットベースを停泊させて様子見をしている。
そして現在、マクロス・ブレイバーの甲板の上では、デスティニーとガイアが模擬戦を行っていた。
両機ともペイント弾と模擬刀による装備を限定した物だ。
ガイアがデスティニーに向かって果敢に攻め立て、デスティニーがそれをいなしていく。
暫くすると、デスティニーがガイアの模擬刀を弾き飛ばして決着となった。
2機が格納庫に戻ってくる。
デスティニーが所定の位置についてコクピットから赤いパイロットスーツを着た人物が降りてくる。
言わずもがなシンだ。
すると、
「お疲れ様、シン」
そのシンに金髪の少女、ステラがタオルを持って駆け寄った。
「ああ、ありがとう。ステラ」
シンはヘルメットを取りながらタオルを受け取る。
………何故ガイアが動いているのにステラがここに居るのか疑問に思う者も居るだろう。
今ガイアを動かしていたのはステラではない。
ガイアが所定の位置について、コクピットハッチが開くと、白いパイロットスーツを着た人物が降りてきた。
その人物はシンに歩み寄りながらヘルメットを取った。
その人物は、あどけなさが抜けきっていない少年だった。
「シンさん。ありがとうございました!」
その少年はシンに礼をする。
「ああ。シンジもお疲れ」
シンも言葉を交わす。
少年の名は碇 シンジ。
この世界、『新世紀エヴァンゲリオン』の主人公である。
何故シンジがオービットベースに居るのか?
それは半年前に遡る。
マクロスの世界からこの世界に渡ってきたとき、現れたのは月軌道上だった。
先ずはこの世界の情報を得るために、いつもの如くハッキングで情報を得た。
この世界は、C.E.やナデシコ、マクロス世界に比べれば技術レベルは低く、ルリ達はあっという間に情報を集めてしまった。
そして、その集めた情報の中に『セカンドインパクト』やら『第3新東京市』やら聞き覚えのある単語があり、この世界がエヴァンゲリオンの世界だと気づいたのだ、
因みにシェリルは無事完治し、ランカと共に元気にアルトを振り回している。
そして、この世界がエヴァの世界だと知った時、俺はこの世界の結末を思い出した。
正確には覚えていないが、最終的に『人類補完計画』が発動し、全人類は赤い液体となってしまう結末だった筈だ。
異世界の存在である俺達がどうなるか分からないが、そんな事の巻き添えは御免なので、初っ端から介入することに決めた。
とりあえず最大の被害者とも言える主人公の碇 シンジをついでに助けることにした。
この時期は、シンジはまだ知人の家に預けられており、空虚な日々を送っていた。
俺達は偶然を装ってシンジに接触。
ある程度友好を深めたところでオービットベースに連れてきて、異世界から来たという事をカミングアウトした。
因みに、おそらくNERVの監視だろう黒服たちがいたが、普通に気絶させておいた。
シンジは最初呆気に取られていたが、宇宙ステーションであるオービットベースやMSにバルキリー、果ては勇者ロボを見て、信じざるを得なくなった。
因みにアルトやシェリル、ランカ達とは初顔合わせとなり、いきなり歌を聞かせたりしていた。
彼女達の歌声はシンジにとって衝撃的だったらしく、あっという間にファンになってしまった。
尚、シンジはチェロも弾けるため、度々シェリルやランカの歌に合わせて演奏したりしている。
交流を繰り返すうち、明るい表情をするようになり、自分から行動する積極性も出てきた。
そんな中、ロボットに興味が出てきたシンジに、シンがMSの操縦方法を教え始めた。
シンジは学生なので、俺達と会えるのは週末の土日の2日間のみ。
月に精々8日位だが、MSの操縦訓練をするようになったのだ。
しかし、そんな少ない訓練時間でも、シンジはメキメキと操縦技術を上げていった。
シンから言わせれば、本当にナチュラルなのかと疑ったほどだ。
半年経った現在では、既にコーディネイターの並のエースレベルの技量はあるらしい。
マジか?
そんなこんなで仲良くなった現在では、俺は『ジェイ兄さん』と慕われ、ハルやルリ、ルネは『姉さん』呼びを強要していた。
すると、模擬戦を終えて着替えてきたシンジが話があると言ってきたので、全員で集まっている。
「それで、話って何だ?」
アルトがシンジにそう聞くと、
「実は、父からこんな手紙とIDカードが届きまして…………」
シンジが1通の手紙を見せてきた。
その手紙にはシンジ宛であることを示すこと以外には、『来い ゲンドウ』とだけ書かれていた。
その手紙を見た瞬間、全員の表情が崩れた。
「…………何だこれ?」
シンがそう聞くと、
「父からの手紙です」
シンジはそう言う。
「いや手紙って………! もっと他に書くことあるだろ!?」
アルトが思わず叫ぶ。
「久しぶりの父親からの手紙がこれじゃあね………」
シェリルも呆れている。
「これじゃあシンジ君が可哀想だよ………」
ランカは悲しそうにそう呟く。
俺は、とうとう物語が始まったのかと理解した。
「シンジ君は如何するつもりなんですか?」
ルリがそう聞くと、
「………僕は行こうと思ってます………行かなかったら父から逃げたみたいで癪なので」
「そうか…………」
「父が何のために僕を呼んだのかはわかりません。先生からは人類を護る為の立派な仕事と伺ってましたが……」
エヴァのパイロットにするためだがな。
「だからもしかしたら、ここに来れなくなってしまうかもしれません。だからその前に挨拶をしておこうと………」
シンジは残念そうな表情で俯く。
「気にするな。会いたくなったらこっちから会いに行ってやる」
俺はそう言う。
「ジェイ兄さん………」
「忘れるな? 俺達はシンジの味方……いや、『仲間』なんだからな!」
「ッ………! はい!」
シンジは涙を浮かべながら返事を返した。
【Side 三人称】
15年前。
南極で起きたセカンドインパクトにより、世界人口の半数が失われた。
その際に生じた地軸異動により気候変動が起こり、日本は常夏の島国となる。
その日本の第3新東京市。
現在、その街には非常警報が鳴り響いていた。
非常事態宣言が出され、待ち合わせの人物と連絡も取れなくなってしまったシンジは如何するべきが悩んでいた。
「待ち合わせは無理か………仕方ない。シェルターに行こう」
非常事態宣言が出されているのに全く慌てていないシンジ。
結構な大物である。
「…………………ん?」
シンジはふと見ると、道端に青髪の少女が居ることに気付いた。
直後、鳥達が騒めきながら飛び立ち、一瞬気を取られたが、直ぐに視線を戻す。
しかし、そこには誰も居なかった。
「……………?」
シンジは、見間違いかと怪訝に思っていたが、突如として轟音と共に突風が吹きつけた。
「うわっ!?」
シンジは思わず声を上げる。
いや、今のは突風ではない。
衝撃波だった。
「………はっ!?」
シンジが衝撃波が来たと思われる方向に振り向くと、山の向こうから国連軍の航空機と黒い巨人のような生物が現れた。
シンジの上空を複数のミサイルが通過し、黒い巨人に向かって飛ぶ。
それは黒い巨人に命中し、仰け反らせたりするものの、直後に腕から伸ばした光のパイルが航空機を貫く。
航空機はシンジの近くに落下して来た。
「わぁっ!?」
更に巨人が跳び上がり、墜落した航空機を踏み潰す。
直後、踏み潰された航空機が爆発。
シンジは爆風に吹き飛ばされることを覚悟して身を固めたが、思ったほどの衝撃は来なかった。
「……………?」
シンジが顔を上げると目の前には青い車が止まっており、壁となってシンジを衝撃波から守っていた。
すると、その車のドアが開き、
「ごめーん! お待たせ!」
サングラスをかけた女性が軽い感じで声を掛けてきた。
父親の手紙に同封されていた写真に写っていた葛城 ミサトという女性だ。
ミサトはシンジを車に乗せると急発進。
踏み潰される間際に脱出に成功した。
途中、N2地雷の爆発の余波に巻き込まれたりするトラブルはあったものの、シンジとミサトは自己紹介をしつつ中破した車である所に移動していた。
そこは、国連直属の非公開組織・特務機関NERVの基地であるジオフロント。
ミサトが道に迷うというアクシデントにシンジは呆れながら、新たに現れた金髪の女性『赤木 リツコ』に案内され、真っ暗な部屋に辿り着く。
そして、照明がつけられると、シンジの目の前には紫色の巨大な顔があった。
「うわっ!? 顔……? 巨大ロボット………?」
シンジは突然現れたその存在に驚く。
「人の作り出した究極の汎用人型決戦兵器・人造人間『エヴァンゲリオン』。その初号機。建造は極秘裏に行われた。我々人類の、最後の切り札よ」
リツコがそう説明する。
「…………これも父の仕事ですか?」
シンジの問いに、
「そうだ!」
男性の声で返事が返ってきた。
「ッ!?」
シンジが初号機の更に上を見上げると、そこにある部屋の窓からサングラスをかけた1人の男が立っていた。
「久しぶりだな」
その男こそシンジの父、『碇 ゲンドウ』その人であった。
「…………父さん」
シンジは何とも言えない表情でゲンドウを見上げる。
ゲンドウは口元を釣り上げると、
「…………出撃……!」
そう口にした。
「出撃!? 零号機は凍結中でしょ!?」
ミサトがそう言うが、直ぐにハッとなる。
「まさか……!? 初号機を使うつもりなの!?」
「………他に道はないわ」
ミサトの言葉にリツコが言い放つ。
「ちょっと!? レイはまだ動かせないでしょ!? パイロットが居ないわよ!」
「………さっき届いたわ」
慌てるミサトとは逆に、リツコは淡々とそう言う。
「ッ………マジなの?」
リツコはシンジに視線を移すと、
「碇 シンジ君」
「はい……?」
「あなたが乗るのよ」
「えっ……?」
シンジは思わぬ言葉に思わず声を漏らした。
「でも、綾波 レイでさえエヴァとのシンクロに7カ月もかかったんでしょ? 今来たばかりのこの子にはとても無理よ!」
「座っていればいいわ。それ以上は望みません」
「しかし………」
「今は使徒撃退が最優先事項です。そのためには、誰であれ僅かでもエヴァとシンクロ可能と思われる人物を乗せるしか方法が無いの。分かっているはずよ、葛城一尉」
反論しようとするミサトにリツコがピシャリと言い切る。
「…………そうね」
ミサトも渋々と言った様子だが同意した。
「…………父さん。何故僕を呼んだの?」
シンジがゲンドウに問いかける。
「お前の考えている通りだ」
ゲンドウは即答する。
「じゃあ、僕がこれに乗って、さっきのと戦えって言うの?」
「そうだ」
その問いかけにも、ゲンドウは冷たく肯定する。
「何だよそれ!? 父さんは僕が要らないんじゃなかったの!?」
「必要だから呼んだまでだ」
シンジの問いかけに、感情を感じさせない声で答える。
「………何故僕なの………?」
「他の人間には無理だからな」
「見たことも聞いたことも無いロボットに乗って戦えって………普通に考えて無理に決まってるだろ!?」
シンジはそう言い返す。
「説明を受けろ」
ゲンドウは無情にもそう言う。
「説明を受けただけで乗れるものなのかよ………!」
シンジは知っている。
人型機動兵器の操縦の難しさを。
今でこそMSを自由に動かせるものの、最初は歩く事すら覚束なかった。
「乗るなら早くしろ。そうでなければ帰れ!」
ゲンドウは冷たく言い放った。
その時、基地内に震動が響いた。
地上では、あの黒い巨人がジオフロントの真上の都市に攻撃を加えている。
「奴め、ここに気付いたか……!」
ゲンドウは天井を見上げながらそう言う。
再び揺れる基地。
「シンジ君、時間が無いわ!」
リツコの言葉にシンジはミサトの方を伺うが、
「………乗りなさい」
ミサトからもそう言われた。
「………………」
尚も俯いていると、
「何の為にここまで来たの? 逃げちゃ駄目よ、お父さんから………何より自分から……!」
「……………………!」
シンジは、自分の事を何も考えていない大人達の言いなりになるのが癪だった。
すると、
「冬月、レイを起こしてくれ」
『使えるのかね?』
「死んでいるわけではない」
『わかった』
ゲンドウがどこかへ通信を繋ぐ。
すると少しして、ストレッチャーに乗せられた青髪の少女が運ばれてきた。
「ッ!?」
シンジは目を見開く、
彼女は彼方此方に包帯が巻かれており、重傷だと一目で分かる。
彼女はとても辛そうな表情をしながら起き上がった。
その時、再び基地を震動が襲う。
使徒の攻撃が地上部分を貫通したため、今までよりも強い振動に襲われる。
その拍子にストレッチャーが倒れ、彼女が床に投げ出される。
「ッ! 危ない!!」
シンジは反射的に彼女に駆け寄る。
その時、衝撃によって天井の一部が崩落。
シンジ達の頭上に降り注いだ。
「危ないっ!?」
その光景を目撃したミサトが叫ぶ。
「ッ………!」
シンジは咄嗟に少女を護る様に抱きしめ、背中を向ける。
だが次の瞬間、初号機の右腕がプールの中から飛び出し、シンジを護る様にその手を被せた。
周囲に弾き飛ばされる瓦礫。
『エヴァが動いた!?』
『どういうことだ!?』
『右腕の拘束具を引きちぎっています!』
作業者らしき声が放送で響く。
「まさか……あり得ない………エントリープラグも挿入していないのに………動くはずないわ………!?」
リツコが驚愕の声を上げる。
「インターフェースも無しに反応してる……!? というより、護ったの………? 彼を………! 行ける………!」
ミサトはその事実に希望を見出す。
シンジは腕の中で苦しむ少女を見つめる。
恐らく彼女を連れてきたのは、自分をエヴァに乗せるための誘導策の1つ。
シンジはジェイ達との交流で、その位の考えは思い至る様になっていた。
「…………………卑怯だ………あなた達は………!」
シンジは誰にも聞こえない様に小さく呟く。
そして歯を食いしばると、
「…………僕が乗ります…………! 乗ればいいんでしょう!?」
半ばやけくそ気味に吐き捨てながらそう叫んだ。
初号機の発進準備が始まり、シンジはインターフェースを頭に付けてエントリープラグと呼ばれる円柱状のコクピットブロックに乗り込み、それがエヴァに挿入される。
すると、
『エントリープラグ、注水』
シンジにとって不穏な通信が聞こえた。
「えっ?」
シンジが声を漏らすと、プラグ内が赤い液体で満たされていく。
「な、何だこれ!? わ、わぁ………んぐっ!?」
シンジは反射的に息を止め、直後に顔まで液体で満たされる。
『大丈夫。肺がL.C.Lで満たされれば、直接血液に酸素を取り込んでくれます』
そう言われても、液体の中で呼吸しようなどとは普通に考えてあり得ない。
だが、限界を迎えたシンジは遂に空気を吐き出してしまう。
それでも普通に呼吸できたことに安堵するが、
「うぅ………気持ちワルイ………」
L.C.Lの味に表情を歪める。
『我慢なさい! 男の子でしょ!?』
ミサトから叱咤が飛んだ。
それにムカッと来たシンジは、
「そう言う事は乗り込む前に説明する事でしょう!? いくら男でも事前説明も無しに血の味がするような液体に漬けられたら文句の1つも言いたくなりますよ!!」
そう言い返した。
「むぐっ………!?」
ミサトは口を噤む。
更に起動シークエンスが続き、プラグ内に外の景色が映し出される。
「シンクロ率52.4%」
「凄いわね………」
「ハーモニクス、全て正常値。暴走、ありません」
作戦司令室では映し出される数値に驚きの声が漏れる。
「行けるわ」
リツコの言葉にミサトが頷き。
「発進準備!」
ミサトの号令で発進シークエンスに入る。
拘束具が解除され、初号機が射出口へ移動する。
「発進準備完了」
その報告を聞いて、ミサトは一度ゲンドウの方を向き、
「構いませんね?」
そう問いかける。
「もちろんだ。使徒を倒さぬ限り、我々に未来はない」
ゲンドウは即肯定した。
ミサトは前に向き直ると、
「発進!!」
号令を掛けた。
その直後、初号機がものすごい勢いでシャフト内を上昇していく。
「うぐぐっ…………!」
射出Gに耐えるシンジ。
そして、使徒の目の前にエヴァ初号機が姿を現した。
「ッ!? 目の前っ!?」
いきなり目の前に映った使徒にシンジが驚く。
『いいわね? シンジ君?』
「は、はいっ……!」
ミサトからの通信にシンジが返事を返す。
『最終安全装置解除。エヴァンゲリオン初号機、リフトオフ!!』
ミサトの号令で初号機を固定していた固定具が解除される。
『シンジ君。まずは歩く事だけを考えて』
リツコの指示に、シンジは敵を目の前にそんな悠長な事でいいのかと疑問を持つが、動けない事には始まらないと意識を集中する。
「歩く………」
シンジが呟きながら歩くことを考えると、初号機が一歩踏み出す。
作戦司令室では、歩いたことにざわめきが広がっていた。
一歩歩いただけでそこまで驚くのは如何なんだと思わないでもないが。
「歩く………」
更にもう一歩踏み出す。
その時、
『待ってシンジ君! 前っ!』
ミサトが焦った声で叫んだ。
目の前には、明らかに初号機を敵と認識した使徒が、仮面のような顔で初号機を見ていた。
「ッ!?」
シンジは咄嗟に止まろうとしたが、どう言う訳か初号機は更に踏み出してしまった。
これも操作に慣れていない影響だろう。
「くっそ…………!」
何となくだが、攻撃が来ると直感したシンジ。
「ッ!! そのままいけぇっ!!」
止まらないなら更に踏み込んだ方が良いと判断したシンジは勢いのままに叫ぶ。
その瞬間、初号機は地面を蹴って駆け出す。
「うあぁあああああああああああああああっ!!」
シンジの叫びのままに初号機が使徒に体当りをして仰向けに転倒させる。
その直後、空に向かって光線が放たれた。
「はぁっ………はぁっ………!」
極度の緊張から激しく息を吐くシンジ。
『シンジ君! 危ないじゃない! どうして止まらなかったの!?』
ミサトから文句が飛ぶが、
「止まらなかったんですから仕方ないじゃないですか! 第一、何でいきなり敵の目の前に出すんですか!? せめてもう少し距離があれば、少しは操縦に慣れることも出来たのに………! 僕を殺す気ですか!? 動かせる事と戦える事は全くの別物なんですよ!?」
思わず言い返すシンジ。
『ッ……………』
正論なので言葉に詰まるミサトだったが、
『文句を言う暇があったら戦え』
ゲンドウがそう発言した。
「ッ…………」
ゲンドウの物言いに小さく舌打ちするシンジ。
「だったら武器は無いんですか!? ビームライフルとかビームサーベルとか!」
シンジはそう叫ぶ。
『残念だけど、そんなものは無いわ。他の武器はまだ未完成だし、今あるのは肩のウェポンラックにプログレッシブ・ナイフがあるだけよ』
使えねー、と内心愚痴る。
すると、起き上がった使徒が初号機に手を突き出す。
MSによる模擬戦の経験から、悪寒を感じるシンジ。
直後、そこから光のパイルが突き出された。
「うわっ!?」
反射的に避けようとしたことで初号機が回避行動を取り、頭部を掠めるにとどまる。
しかしその拍子にバランスを崩し、尻餅を着いてしまった。
「ッ………このっ………!」
シンジは起き上がろうと手に意識を集中する。
だが、
「ッ!?」
そこで気付く。
地面に突いた手から少し離れたところに、女の子が倒れていることに。
『ッ!? どうしたの、シンジ君!?』
動きが止まった初号機を怪訝に思ったミサトが問いかける。
「女の子です! 女の子がいます!」
作戦司令室でもモニターに倒れている少女の姿が映る。
『民間人!? 逃げ遅れたの!?』
ミサトが叫ぶが、その時初号機の背後に使徒が近付いてくる。
「ッ……! 拙い!」
シンジは咄嗟にその少女に覆い被さった。
直後に光のパイルが突き出されて背部装甲を傷つける。
「ぐうっ!?」
機体のダメージが痛みとしてシンジに伝わる。
『救出班! 急いで!』
『無理よ! 近付けないわ!』
ミサトが指示を出そうとするが、リツコがそれを否定する。
何度も光のパイルが突き出されて装甲に亀裂が入っていく。
『装甲に亀裂発生!』
『これ以上はもう、持たない!』
その時だった。
『戦えシンジ』
ゲンドウがそう言う。
「ッ…………」
『世界を救うためには多少の犠牲は仕方ない』
冷たく言い放つゲンドウ。
その言葉にシンジは歯を食いしばると、
「嫌だ!!」
そう叫んだ。
「例えこの子を見捨てて敵を倒せたとしても、女の子1人救えない奴が世界を救う事なんて出来るもんか!!」
シンジは覚悟を以てそう言い放った。
その瞬間、使徒が突き出そうとした光のパイルがオレンジ色の光の壁に阻まれた。
光のパイルが弾かれ、後ずさる。
『今のは!?』
『A.T.フィールド!?』
ミサトとリツコが驚愕の声を上げる。
すると、
「よく言った! シンジ!」
シンジにとって頼もしい声が聞こえた。
いつの間にか、白いアーマーを着た人物が倒れていた少女を抱き上げていた。
それは、
「ジェイ兄さん!」
シンジは嬉しそうな声を上げる。
『誰なの!?』
ミサトが声を上げるが、
「お前の言う通りだ。女の子1人守れない奴に、世界など守れはしない」
ジェイはそう言い放つ。
「ジェイ兄さん………」
ジェイの言葉に、シンジは嬉しそうに笑みを浮かべる。
「よぉし!」
シンジは気合を入れるように立ち上がり、目を瞑ると、
「逃げちゃダメだ………逃げちゃダメだ………逃げちゃダメだ………!」
自分に言い聞かせるようにそう呟く。
しかし、
「シンジ………それは違うぞ」
今度はジェイがその言葉を否定した。
「えっ?」
思わず声を漏らすシンジ。
「それは自分の逃げ道を塞いでいるだけだ。それではいずれ戦う責任に押しつぶされる」
ジェイは言い聞かせるようにそう言った。
「逃げることは恥でも悪でもない。何故なら、逃げる事もまた生命が生きる為に藻掻き足掻く行動の1つだからだ」
「逃げることは………恥じゃない…………」
シンジはジェイの言葉を繰り返す。
『何言ってるの!? シンジ君! そんな怪しい奴の言う事なんて聞いちゃダメよ! 逃げることは恥ずべき事よ!』
ミサトが通信でそう言うが、
「ほう? 貴様の言い分が真実ならば、生きる為に逃げることに特化した草食動物たちは、全てが恥ずべき存在で、生きる価値が無いと………そう言うのだな?」
『なっ………!? それは極論過ぎでしょ!?』
ジェイの言葉にミサトは狼狽える。
「逃げることが恥なのは『戦士』だけだ。だがシンジ、お前は『戦士』ではない。どこにでもいる普通の少年だ。故に、お前が戦いに恐怖して逃げたとしても、誰もお前を責める権利はない」
「………………逃げても………いい……………」
「そうだ。例えそれで世界が滅びたとしても、それは決してお前の責任ではない」
「僕に………責任はない……………」
シンジはもう一度使徒を見据える。
A.T.フィールドに弾かれて体勢を崩した使徒が立ち上がり、初号機を………シンジを睨みつける。
「…………そうだ………僕は怖い…………怖くて堪らない…………戦いなんて嫌だ………! 今すぐにでも逃げ出したい位だ…………!」
シンジは、項垂れながら己の本心を口にする。
『シンクロ率急激に低下!? 10%を切ります!』
『何ですって!?』
オペレーターであるマヤの報告にリツコが驚愕する。
それに伴い、立ち上がっていた初号機の身体から力が抜けるように棒立ちになった。
『なに余計な事言ってくれたのよ! あの不審者は!!』
ミサトがジェイに対して憤慨する。
すると、
「逃げたいなら逃げればいい。それは誰もが持つ権利だ」
ジェイがそう言う。
「…………………………………ダメだよ………………逃げても良いとしても…………逃げるのはダメなんだ……………」
しかし、シンジはそう呟いた。
「それは何故だ?」
「………………心の何処かで僕自身が叫んでる……………逃げちゃダメだって…………ううん、違う………………」
シンジは一度自分の言葉を否定すると、勢いよく顔を上げ、
「逃げたくないって、叫んでるんだ!!」
シンジがそう言い放つ。
『ッ!? シンクロ率の低下が停止しました!』
『だけど、もう10%を切ってる………このシンクロ率じゃ、まともに動かないわ』
作戦司令室ではそんなやり取りがあった。
しかし、
「ならば感じている恐怖は認めろ! そしてそれを乗り越えろ! それが『勇気』だ!!」
「ッ………『勇気』……………そうだ、僕は立ち向かうんだ……!『勇気』を出して!!」
ジェイが言い放った言葉に、シンジは己を奮い立たせる。
その瞬間、
『ッ!? シンクロ率が急激に上昇中!?』
マヤが叫ぶ。
『何ですって!?』
『40………50………60………70%突破!!』
『そんな!?』
リツコも驚愕する。
次の瞬間、使徒の目が光り、閃光が放たれた。
しかし、初号機のA.T.フィールドがその攻撃を無傷で防ぎきる。
「うぉおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」
初号機が使徒に殴りかかる。
しかし、使徒もA.T.フィールドを使ってその攻撃を防いだ。
「敵もバリアを!?」
攻撃が効かなかったことで、一度下がるシンジ。
「一体どうすれば……………」
すると、
「忘れるなシンジ。お前は1人じゃないという事を………!」
ジェイがそう口にした瞬間、上空から無数の閃光が使徒に飛来。
直撃コースの物はA.T.フィールドに防がれるが、使徒は足を止める。
「今のはっ………!?」
シンジが空を見上げると、白と赤に彩られた戦闘機が急降下して来た。
「あれはYF-29! アルトさん!?」
シンジが驚愕する。
『待たせたな! シンジ!』
デュランダルに乗ったアルトはマイクロミサイルを発射。
無数のミサイルが使徒に降り注ぐ。
使徒はそれをA.T.フィールドで防ぎ、デュランダルを見上げると閃光を放つ。
『おっと……!』
しかし、アルトはバレルロールしながら回避行動を取ってその攻撃を躱す。
『何!? 戦自の戦闘機!?』
ミサトが驚いているが、更に別方向から緑の閃光が飛来して使徒に直撃する。
『今度は何!?』
ミサトが叫ぶと、再び上空から何かが降下してくる。
それは、光の翼を広げたMS。
「デスティニー!? シンさん!」
再び驚愕するシンジ。
『ひ、人型ロボットォ!?』
エヴァ以外に人型ロボットが存在することに驚きの声を上げるミサト。
『喰らえ! この化け物!』
デスティニーは高エネルギー長射程ビーム砲を展開して発射。
使徒はハッキリと見えるA.T.フィールドを張ってそれを防ぐ。
『光学兵器!? エヴァの半分程度の大きさしかない兵器にあれほどの出力が!?』
リツコは防がれたとはいえ、その威力に驚いている。
デスティニーが初号機の近くに降り立つ。
『シンジ。お前だけを戦わせたりはしないぞ』
「シンさん………」
『ああ。言っただろ? 俺達は『仲間』だ!』
アルトも通信でそう伝える。
「アルトさん………」
2人の言葉に、シンジの心に温かいものが広がる。
そして気を取り直すと、
「ミサトさん! どうすれば相手のバリアを破れるんですか!?」
ミサトたちにそう問いかけた。
『ちょ、ちょっとシンジ君!? そいつらは何者なの!?』
ミサトはそう問いかけるが、
「そんな事は如何でもいいでしょう!? 今は奴を倒す方法を!」
シンジはそう叫ぶ。
すると、
『A.T.フィールドは、同じA.T.フィールドなら中和できるはずよ!』
リツコがそう叫んだ。
「了解!」
シンジは頷くと使徒に向かって突撃する。
「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」
使徒はA.T.フィールドで防ぐが、初号機はそのままA.T.フィールドに取り付き、
「はぁあああああああああああああああっ!!」
シンジも勢いのままにA.T.フィールドを展開。
使徒のA.T.フィールドを中和していき、
「うぁああああああああああああああっ!!」
そのフィールドを抉じ開けた。
その瞬間シンジは叫ぶ。
「今です! シンさん! アルトさん!」
『はぁあああああああああああああっ!!』
デスティニーが背中の大剣アロンダイトを抜き、光の翼を広げて飛翔。
すれ違いざまに使徒の左腕を切断する。
『喰らえっ!』
更にデュランダルが使徒の背後上空から急降下しながらガンポッドやミサイルを乱射。
先程とは違い、明らかなダメージを与える。
更に急降下しながらバトロイドに変形。
地上近くに降りるとガンポッドやビーム砲を浴びせる。
『まだだっ!』
更にデスティニーが両肩のビームブーメランを投擲。
使徒の身体に浅くない傷をつける。
その時、
「シンジ! 奴の赤い球体を狙え!」
ジェイが叫ぶ。
「赤い球体!?」
シンジが正面から使徒を見据えると、胸に怪しく輝く赤い球体が目に入る。
「これかぁっ!」
シンジは直感的に先ほど言われた肩のウェポンラックからプログレッシブ・ナイフを取り出すと、
「うぁああああああああああああああああああっ!!」
叫びと共に赤い球体に突き刺した。
その球体が数度点滅すると、完全に光を失う。
すると、使徒が動きを止め、その場に倒れ伏した。
「はぁっ……はぁっ………うっ………!?」
シンジは緊張が一気に解けたのか、その場で気を失ってしまい、初号機が倒れこむ。
『シンジ君!?』
ミサトが通信で叫ぶ。
作戦司令部では回収班やらなんやらで指示が飛び交っていた。
だが、
「…………よくやった。シンジ」
安堵した顔で眠るシンジにジェイがそう呟くと、女の子を安全な場所まで運んだあと、空へと飛翔し、デュランダルとデスティニーは、そのまま飛び上がって空へと消えた。
作戦司令部では、
「…………碇、これは予定にない出来事だぞ?」
NERVの副指令である冬月 コウゾウがゲンドウにそう言う。
「………問題ない。自力で使徒を倒せたのは偶然に過ぎん。十分に修正は可能だ」
「しかし、あの謎の兵器の事もあるぞ?」
「奴らの攻撃が通ったのは、初号機がフィールドを中和したからだ。それまでは全く通用していない。我々の障害にはならんさ」
「…………だと、いいのだがな…………」
ゲンドウの言葉に、コウゾウは一抹の不安を覚えるのだった。
はいエヴァ編第1話です。
初っ端からシンジ君性格矯正計画発動な上に半年間をダイジェストですっ飛ばしました。
まあ、原作知識あれば、これは介入しないわけにはいかんでしょう。
巻き添えで全滅は御免ですし。
そしてシンジをMSの操縦経験アリにしてエヴァの操縦技量をアップさせといた。
因みに自分は使徒の強さはA.T.フィールドによる防御力ありきなので、A.T.フィールドさえ中和すれば、MSやバルキリーでも十分に戦えると思ってます。
まあ、コンバトラーVの超電磁スピンならA.T.フィールド破れるという原作者のお墨付きですが、超電磁スピンの威力はどの位なんだろうという疑問。
ブロウクンファントムでぶち抜けるか?
それともヘルアンドヘブン位は必要か?
ゴルディオンハンマーなら問答無用で光にするでしょうが。
キングジェイダーなら蹴りで破れそうですけど。
それでは次回もお楽しみに。
P.S 明日で休みは最後なので、明日の更新はお休みします。
A.T.フィールドは心の壁。つまりシェリルとランカの歌で使徒の心を開かせればA.T.フィールド消滅or弱体化はアリ?ナシ?
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アリ
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ナシ