転生特典に量産型の機体のみという縛りがあったのでジェイアークを選んでやった件 作:友(ユウ)
【Side 三人称】
碇 シンジは中学生である。
中学生とは義務教育である。
故に、住む場所が第3新東京市に移ったとしても学校に通わなければいけないのは当然であった。
なので、シンジは第3新東京市にある市立第壱中学校に通う事になる。
「碇 シンジです。よろしくお願いします」
転入したクラスで転校の挨拶をするシンジ。
以前であれば、自信なさげに小さな声で名乗る程度だったが、今ではハッキリと自分の名前を口にして挨拶をしていた。
そして、そのクラスには同じエヴァのパイロットである綾波 レイも通っている。
だが、まだ怪我は治っていないのか、顔と腕に巻かれている包帯が痛々しい。
しかし、心配して声を掛ける者達はほんの僅か。
その僅かな者達にも、レイの態度は素っ気なかった。
そこでシンジは、休み時間に声を掛けることにした。
「こんにちは」
無難にそう挨拶するシンジ。
「……………………」
返事はない。
しかし、その真紅の瞳がシンジを捉えた。
完全に無視しているわけではないようだ。
「こうやってまともに話すのは初めてだね? 僕は碇 シンジ」
「…………知ってるわ。初号機のパイロットで碇司令の息子でしょう?」
一応答えが返ってくるが、その声は感情の籠っていない淡々とした声だ。
「まあそうなんだけど…………できれば普通に名前で呼んで欲しいかな? 君の事は何て呼べばいい? 綾波? それともレイ?」
「……………好きにして」
レイはそう言うと、ついっと視線を外へ向ける。
人と関わるのが嫌というより、興味が無いようだ。
「わかったよ。じゃあレイって呼ばせてもらうね。怪我は大丈夫? あの時はかなり苦しそうだったけど………?」
「動けるようになったから問題無いわ」
相変わらず返事は素っ気ない。
「そう。だけど、無理はしないでね」
「………………………」
返事は無かったが、シンジはそれ以上無理に踏み込もうとはせずに、また来ると言い残してその場を離れた。
少し時が流れ、シンジは現在エヴァ初号機のエントリープラグの中で戦闘シミュレーターを行っていた。
「目標をセンターに入れてスイッチ」
シンジが操縦桿の引き金を引くと、映し出された使徒に無数の弾丸が命中する。
エヴァの基本の遠距離武器であるパレットライフルの訓練だ。
命中した敵は次々と爆散していくが、
(…………………こんな簡単に行くものなのかなぁ………?)
あっさりと倒れていく仮想敵にシンジはそう漏らす。
シンジは先日の使徒戦を思い出す。
あの使徒は、初号機がA.T.フィールドを中和した後にアルトのデュランダルやシンのデスティニーが攻撃を加えているが、ビームにはダメージを負っていたものの、まだ動けていた。
なので、明らかな実弾兵装であり、攻撃力では1歩も2歩も劣るような武器で使徒にダメージが与えられるか甚だ疑問だった。
転校から2週間が経ったある日。
とある授業中、使用しているノートパソコンにメールが届いた。
内容は、
【碇君があのロボットのパイロットってホント? Y/N】
それを見た瞬間、シンジの顔がヒクついた。
(機密云々言ってたくせに簡単に特定されてるんだけど!?)
中学生にも特定されるNERVの情報管理は大丈夫かとシンジは呆れる。
周りを伺うと、わくわくした視線が向けられている。
「………………ま、いっか」
シンジは開き直って『YES』と返信した。
当然、授業どころではなくなるほどシンジの周りに人が殺到したのだった。
その後、シンジはクラスメートの男子2人に、校舎裏に呼び出されていた。
(これはアレかな………? 調子に乗った転校生を不良がシメるみたいなシチュエーション?)
一見柄の悪そうなジャージを着た男子生徒と、茶髪の眼鏡男子生徒を眺めながらシンジはそう考える。
すると、黒ジャージの男性とが振り返った。
(来るかな………?)
「………転校生!!」
それと同時に怒鳴るような声で呼ばれる。
「ワシは…………ワシは…………………!!」
拳を握りしめながらプルプルと震え、シンジはいつでも殴りかかられてもいい様に覚悟を決める。
そして、
「ワシはお前に感謝せにゃならん!!」
「………………………………はい?」
予想外の言葉に呆気に取られるシンジ。
「ホンマありがとう!! 感謝してもしきれへん!!」
挙句の果てにその場に土下座して感謝を表す始末。
「ちょ………ちょ、ちょ………ちょっと待ってよ!? いきなりそんなことされても、僕には何が何だか…………!?」
シンジは困惑しつつもそう返した。
「あ~、コイツの妹がこの前の戦いの時お前に救われてな。そのお礼が言いたかったって事」
眼鏡の男子生徒が横で説明する。
「妹………救った……………?」
男子生徒のその言葉で、思い当たる事があった。
「もしかして…………あの時の女の子のお兄さん!?」
使徒との戦いのとき、庇った少女の事を思い出した。
「せや! 妹が無事やったのはお前さんのお陰や! ホンマにありがとう!」
再び地面に頭を擦りつけ、感謝を表す男子生徒。
「いや、あの、理由は分かったから頭を上げてよ! そんなことされると逆に困っちゃうから………!」
「おお……すまんすまん」
我に返ったのか立ち上がる黒ジャージの男子生徒。
「けど、お前さんに感謝しとるっちゅーのは本当や。改めて感謝するで」
「いや、あの子を助けられたのは僕だけじゃなくて、ジェイ兄さんがいたから………」
「お前さんは身を挺してまで妹を守ってくれたっちゅうやないか! そんなら感謝するのは当然や!」
「あ、うん………それじゃあどういたしましてと言っておくよ」
シンジは困惑から抜けきっていないが、感謝を受け取ることにした。
「けど、妹を救われたのに感謝の言葉だけっちゅうのは気分が悪い。転校生、ワイに出来ることがあったら何でも言ってや! 出来ることなら何でもするで」
黒ジャージの男子生徒はそう言う。
シンジとしては、あまり恩を着せるような真似をしたくは無かったのだが、
「…………そうだ!」
シンジは思いついたように声を上げる。
「2人とも、もしよかったら僕と友達になってくれないかな? 転校して来たばかりで、友達と言える友達がいなくて…………」
シンジの言葉に2人は顔を見合わせると、
「その位ならお安い御用やで!」
「むしろこっちからお願いしたいくらいさ!」
2人は笑みを浮かべてそう言う。
その言葉に、シンジも嬉しそうな顔になると、
「それじゃあ、これからよろしく。僕の事はシンジって名前で呼んでよ」
「ワイは鈴原 トウジや。ワイもトウジでええで」
「俺、相田 ケンスケ。俺もケンスケでいいよ」
自己紹介をする3人。
「うん。よろしくね、トウジ、ケンスケ」
「よろしゅうな、シンジ」
「よろしくシンジ」
そう言って握手を交わした。
シンジにジェイ達以外で初めて友人が出来た瞬間であった。
すると、
「…………碇君」
レイが現れてシンジに声を掛ける。
「レイ………?」
シンジが振り返ると、
「非常招集…………」
「あ、うん。わかったよ。ありがとう、レイ」
「………先、行くから」
レイはそれだけ言うと立ち去ってしまう。
「何やシンジ? あの綾波となんか関係あるんか?」
ミステリアスで誰とも関わろうとしないレイが、ほんの少しとはいえシンジに声を掛けてきたことに疑問と驚きを持ったトウジが問いかけてくる。
「あ~、うん………彼女もエヴァのパイロットだからさ」
「そうなのか!? 凄い! 同じクラスにロボットのパイロットが2人もいたなんて!」
ケンスケが興奮したように声を上げた。
「それよりも…………」
シンジは、非常招集が掛かったという事は間もなく使徒が来ると思い、2人に避難を促そうとした時、非常事態を告げるサイレンが鳴り響いた。
『目標を光学で捕捉。領海内に進入しました』
「総員第一種戦闘配置」
『兵装ビル、対空迎撃システム稼働率48%』
NERVでは戦闘準備が着々と進められていた。
「それにしても碇司令の留守中に第4の使徒襲来か。思ったより早かったわね」
「前は15年のブランク。今回はたったの3週間ですからね」
ミサトの言葉にオペレーターの日向 マコトが答える。
「こっちの都合はお構いなしってことね。女性に嫌われるタイプだわ」
ミサトは呆れたようにそう言った。
再び現れた使徒は紫色のイカのような形をしており、飛行して移動していた。
その使徒に対し、NERVの迎撃システムによる攻撃が繰り返されているが、まるで効果が無い。
「税金の無駄遣いだな」
コウゾウは馬鹿にするようにそう言った。
「委員会から、再びエヴァンゲリオンの出動要請が来ています」
オペレーターの青葉 シゲルが報告をすると、
「うるさい奴らね………言われなくても出撃させるわよ」
ミサトはやれやれと言いたげに呟いた。
初号機が発進シークエンスに入る。
エントリープラグ内のシンジに通信が入った。
『シンジ君、出撃いいわね?』
「はい」
ミサトの言葉にシンジは返事を返す。
『よくって? 敵のA.T.フィールドを中和しつつ、パレットの一斉射。練習通り、大丈夫よ』
「…………はい」
リツコの言葉にもシンジは返事を返すが、本当にこんな武器が使徒に通用するのかと不安で仕方なかった。
「発進!!」
ミサトの号令で射出され、地上に現れる初号機。
『作戦通り、いいわねシンジ君?』
「………はい」
不安は拭えないが、ひとまず作戦通りの行動をすることにしたシンジ。
射出口の影から飛び出すと、初号機は使徒に向かってパレットライフルを連射する。
使徒は見る見るうちに爆煙に包まれた。
しかし、
「ッ!?」
シンジはこれ以上は視界が悪くなる一方だと判断し、射撃を中断する。
すると、
『馬鹿っ! 爆煙で敵が見えない!』
いきなりミサトから叱咤が飛んできた。
「だから攻撃を止めたじゃないですか………!? ッ!」
思わず言い返すシンジだったが、悪寒を感じて咄嗟に飛び退く。
直後、爆煙を切り裂いて光の鞭が襲い掛かった。
「うわっ!?」
直撃は避けるものの、パレットライフルを切断される。
煙の中から現れた使徒は無傷であり、両側の突起部分から光の鞭のようなものが2本伸びていた。
『予備のライフルを出すわ! 受け取って!』
ミサトから通信が来るが、
「要りません!!」
シンジは即行で断った。
『なっ!?』
「さっきのライフルはまるで効いて無かったじゃないですか! あんなもの視界を悪くするだけで使い物になりません! それよりも、リーチのある近接武器は無いんですか!? 剣とか槍とか!」
シンジはそう聞くが、
『無いわ。今ある近接武器は、この前使ったプログレッシブ・ナイフだけよ』
リツコから無情にもそう返ってくる。
「ナイフで鞭に対抗しろとかふざけてるんですか!? 剣道三倍段って言葉知ってます!? 剣で槍に対抗するには相手の3倍の実力が必要って事ですよ!? つまりリーチの長い武器はそのまま強さに直結するって事です!」
『だ、だからパレットライフルを………』
「効かなきゃ無いのと一緒ですよ! 豆鉄砲作ってる暇があったらこの前の戦いで効果のあったナイフを長くして剣を作るとか、ナイフの柄を長くした槍を作るとか他にもやりようあったでしょう!?」
余りにも杜撰なNERVの対応にシンジは次から次へと文句が出てしまう。
しかし、文句を言っていたがためにシンジの注意力が削がれてしまい、伸びてきた光の鞭がアンビリカル・ケーブルを切断する。
「あっ!? しまっ…………!?」
しまったと言い切る前に、初号機の足に光の鞭が巻き付き、初号機は高く放り投げられた。
「うわぁああああああああっ!?」
思わず悲鳴を上げるシンジ。
そのまま重力に引かれ、小山に墜落する初号機。
「………ッ! ううっ………!」
シンジは墜落の衝撃で一瞬意識が飛びかけたが、何とか気を取り直す。
しかし、
「………えっ?」
着いていた左手の指の隙間に、2人の人影があったからだ。
それは、
「………トウジ………ケンスケ………!?」
その2人の名を呼ぶシンジ。
その2人がここに居る理由はケンスケがエヴァの戦いを見たいがためにトウジを言いくるめてシェルターを抜け出してきたためだ。
『シンジ君のクラスメート!?』
『どうしてこんなところに!?』
ミサトとリツコが驚愕する。
「2人とも………何で………!?」
どうして避難した2人がこんなところに居るのかと困惑するシンジだったが、その2人に影が掛かる。
使徒が空中を移動して近付いてきたのだ。
「ッ!!」
シンジは咄嗟に振るってきた鞭を手で掴む。
「……ッ!? ぐぅぅ…………!」
シンジの手にも焼けるような熱さが伝わる。
『初号機、活動限界まで後3分28秒!』
オペレーターから報告が来る。
「ッ………! どうすれば………!?」
シンジが打開策を見つけられずにいると、
『シンジ君! その2人を………!』
ミサトから通信が入って何かを伝えようとした。
その時、
―――ヴィィィィィィィィィィィィィィィィィン!!
何かが高速回転する音と共に、神社の階段をパトカーが駆け上ってきて飛び出し、ドリフトしながらトウジとケンスケの手前で停止。
そして乗れと言わんばかりに勝手にドアが開く。
ただ、そのパトカーの中には人が乗っていない。
「な、なんや!? 何でこんなトコにパトカーが!?」
「しかも誰も乗ってないよ!?」
驚愕する2人だったが、
(あのパトカーはっ!)
シンジは直ぐにそのパトカーの正体を察した。
「2人とも! 早くそのパトカーに乗るんだ!」
シンジの言葉に2人は不安そうに初号機の顔を見上げる。
「せ、せやけど………」
「早く!! 死にたくなかったら早く乗るんだ!!」
シンジは必死に叫ぶ。
「ッ! わ、わかったわ!」
トウジがいち早く頷くと、ケンスケを引っ張ってパトカーの後部座席に飛び込むように乗り込んだ。
すると、ひとりでにドアが閉じ、誰も運転していないにもかかわらず勝手にギアのレバーが切り替わると、けたたましい音と共にタイヤが猛回転し、階段を駆け下りて初号機から離れていく。
(ありがとうボルフォッグ……!)
シンジは心の中で礼を言うと、
「後はこっちを何とかしないと………!」
シンジが使徒に集中しようとした。
すると、使徒に無数のミサイルが降り注いだ。
不意に攻撃を受けた事で、鞭に入る力が弱まった。
「今だ!」
シンジは鞭を掴んだまま手を振り上げ、勢いをつけて振り下ろす。
それに伴い、使徒も吹き飛ばされた。
シンジは初号機を立ち上がらせると、先程のミサイルの出所を見上げる。
すると、赤と白の戦闘機デュランダルと、それに次いで青を基調としたトリコロールカラーのデスティニーが降下してきていた。
「アルトさん! シンさん!」
頼もしい援軍にシンジは顔を綻ばせるが、
『またあいつ等………!』
ミサトは何処か文句ありげな様子だった。
『大丈夫か!? シンジ!』
アルトの言葉に、
「はい、何とか!」
シンジはそう返す。
その時、降下してきて来たデュランダルに光の鞭が振るわれた。
『ッ!?』
思った以上の速さにアルトは驚いたが、反射的に回避する。
鞭の先端の速度は音速を超えているが、アルトが乗るバルキリーの最高速度はマッハ5を超える。
超高速戦闘を経験して来たアルトの回避能力は伊達ではない。
アルトはガウォークに変形すると、ホバーで横滑りするように使徒の周囲を旋回しつつビーム砲やガンポッドで攻撃を加える。
その攻撃は、先程のパレットライフルとは違い、明らかに使徒の身体に傷をつけ、ダメージを蓄積させていく。
使徒も光の鞭で応戦するものの、デュランダルの動きを捉え切れずに空振りに終わる。
その時、
『はぁああああああああああああっ!!』
アルトのデュランダルにばかり気を取られていた使徒の上空から、アロンダイトを振り被ったデスティニーが急降下してきて使徒の左側の光の鞭の発生源である突起を断ち切る。
使徒がデスティニーの方を振り向こうとした時、
『まだだっ!!』
デスティニーは反対側の突起に右腕を伸ばしながら掴みかかると、掌に内蔵されたパルマフィオキーナで突起を爆散させた。
『シンジ!!』
シンジに呼び掛けるシン。
「ッ! はい!」
シンジは肩からプログレッシブ・ナイフを取り出すと両手で握りながら無防備になった使徒に突進。
赤く光るコアにそのナイフを突き立てた。
十数秒するとコアの光は消え、同時に使徒も行動を停止する。
そして、そのすぐ後に初号機も活動限界を迎えた。
「……………っはぁ~~~~~~~~っ!!」
戦闘が終わったことで思いっきり息を吐くシンジ。
以前のように気を失わなかっただけマシだろう。
『よく頑張ったな、シンジ』
アルトが声を掛ける。
「いえ、アルトさんとシンさんのお陰です。ありがとうございました」
礼を言うシンジ。
『何、当然のことだ』
アルトは笑ってそう返す。
『それにしても、A.T.フィールドさえ中和すれば攻撃効くんだから、国連軍とかいう奴らと協力すりゃいいのに、シンジ一人に全部押し付けるなんて、何考えてんだNERVの連中は?』
シンが疑問を口にする。
「僕も結構文句言ってるんですけど、なんかエヴァで使徒を倒すことに固執してるみたいな感じがあるんですよね?」
『何だそりゃ?』
シンは意味不明とばかりに声を漏らす。
すると、NERVの所属であろうヘリが飛んでくるのが見えた。
『っと、俺達はもう行くな?』
「はい、改めてありがとうございました」
シンジが礼を言うと、アルトのデュランダルがバトロイド形態で敬礼した後、2本指で軽く挨拶をする仕草をするとファイターに変形して空へと飛び去り、デスティニーも光の翼で空へと舞い上がっていくのだった。
はい、エヴァ編第3話でした。
トウジとケンスケとの出会いはつつがなく。
にしてもこのシンジ君は文句が多いっすね。
まあ正論言わせてるだけなんですけど。
次は本来シンジ君の逃げる回ですけど、このシンジ君は逃げそうも無いので多分ラミエル戦になるかと。
お楽しみに。
A.T.フィールドは心の壁。つまりシェリルとランカの歌で使徒の心を開かせればA.T.フィールド消滅or弱体化はアリ?ナシ?
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アリ
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ナシ