転生特典に量産型の機体のみという縛りがあったのでジェイアークを選んでやった件 作:友(ユウ)
【Side 三人称】
シンクロ率が400%に達した初号機。
だが、そのエントリープラグ内にシンジの姿は確認できず、プラグスーツが漂っているだけであった。
リツコ達は、シンジの肉体が自我境界線を失って量子状態のままエントリープラグ内を漂っていると推測。
シンジを救うため、サルベージ計画を始めることとなった。
リツコが計画の概要を考案している間、初号機のケージの前には毎日のように2人の少女の姿があった。
それは、アスカとレイの2人。
「………………早く戻ってきなさいよ、バカシンジ………」
拘束具が外され、包帯を巻いたミイラのような姿となっている初号機を見上げながらアスカは呟く。
「シンジ君…………」
同じように初号機を見上げるレイも、寂しそうな表情をしている。
それからまた数日が経ち、アスカとレイは自宅代わりとなっているミサトの部屋で食事をしていた。
ミサトは、ここ最近はNERV本部で寝泊まりしている。
すると、
「……………シンジの手料理が食べたい………」
アスカがポツリと呟いた。
毎日の食事当番はシンジであり、その腕も中々のものだった。
その時の料理に比べれば、自分たちで作るものは、簡単なもの。
もしくはレトルトや冷凍食品のものの為、味気なかった。
しかし、アスカが呟いたのは、味だけではない。
「シンジと一緒に………ご飯が食べたい……………!」
涙を浮かべながらアスカは呟く。
シンジの居ない食卓に、寂しさを感じていたのだ。
「………………私も同じ」
すると、レイが呟く。
アスカがハッとして目の前のレイに視線を向ける。
「シンジ君の作ったご飯が食べたい………シンジ君とご飯が食べたい…………シンジ君と一緒に居たい……………………………………シンジ君に………会いたい………!」
レイの口から零れるその言葉。
それを聞くと、
「…………………ねえ、レイ……………アンタ、シンジの事どう思ってる?」
アスカはそう問いかけた。
「シンジ君…………?」
レイは俯くと、
「……………わからない」
少しの沈黙の後、そう答えると、
「でも、ポカポカする…………シンジ君にも私と居てポカポカして欲しい…………」
更にそう続けた。
それを聞くと、
「そう………やっぱりね」
アスカは納得したように頷いた。
「やっぱりアンタもシンジの事が『好き』だったのね」
「好き?」
「ええ、そうよ。アンタはシンジの事が好きなのよ」
「好き………この気持ちが………『好き』………」
レイは自分の胸に手を当てると、ほんのりと頬を赤く染めた。
すると、
「この際だから言っておくわ。私もシンジの事が好きよ」
アスカはそう宣言した。
「私自身を見てくれるシンジが好き。私と正面からぶつかってくれるシンジが好き。私を護ってくれるシンジが好き。私の為に必死になってくれるシンジが好き!」
「アスカ…………」
アスカの赤裸々な告白に、レイは若干驚いたような表情を浮かべる。
「だからレイが相手でも私は絶対に身を引いたりなんかしない! それだけは覚えておいて………!」
アスカが言いたいことを言い切ったという表情をすると、
「………………………私も………負けない」
レイが呟く。
「アスカが相手でも…………シンジ君を渡したくない…………!」
それがレイの嘘偽りなき本音。
それを聞くと、アスカは笑みを浮かべ、
「受けて立つわ………! どっちが勝っても恨みっこなしよ」
そう言い放つのだった。
シンジが初号機に取り込まれて約1ヶ月後。
リツコがサルベージ計画の要綱を完成させ、さっそくシンジのサルベージが行われようとしていた。
勿論その場には、アスカとレイも同席している。
2人に出来ることは無いが、せめて見届けたいと願い出たのだ。
そして、
「自我境界パルス、接続完了」
「了解。サルベージ、スタート」
マヤの報告にリツコがサルベージの開始を告げる。
「了解。第1信号を送ります」
「エヴァ、信号を受信。拒絶反応無し」
「続けて、第2、第3信号送信開始」
「対象カテクシス、異常無し」
「デストルド、認められません」
「了解。対象をステージ2へ移行」
サルベージが始まり、オペレーター達が忙しなく作業を始める。
サルベージ作業が始まってしばらくすると、突如アラームが鳴り響いた。
「駄目です! 自我境界がループ状に固定されています!」
「全波形域を全方位で照射してみて!」
「駄目だわ……発進信号がクライン空間に囚われている……」
「どういう事!?」
ミサトがリツコに問いかけると、
「つまり……失敗」
リツコは残酷な一言を返す。
「えっ!?」
リツコは何とか現状を維持しようと奮闘するが、次々と問題が広がっていく。
「エヴァ、信号拒絶!」
「LCLの自己フォーメーションが分解していきます!」
「プラグ内、圧力上昇!」
「全作業中止! 電源を落として!」
「駄目です! プラグがイグジットされます!!」
最後にマヤがそう報告した直後、エントリープラグが開放され内部のLCLが流れ出してしまう。
その中にあるはずの、シンジの因子ごと…………
その様子にアスカは目を見開く。
「シンジ………!?」
「シンジ君!?」
それと同時にミサトが叫ぶ。
彼女達が現場に向かうと、LCLによって水浸しになった作業場と、そこに残されたプラグスーツが、シンジが居なくなったことを強く感じさせた。
「嘘………嘘よ…………シンジ………!」
アスカは首を振って現実を否定しようとし、ミサトはプラグスーツを抱きしめて泣きじゃくる。
「人1人………人1人救えなくて何が科学よ…………シンジ君を返して! 返してよ!!」
ミサトがリツコに向かって叫ぶ。
リツコはバツが悪そうに視線を逸らすだけだ。
「何で………?」
アスカは思わず呟いた。
「何でシンジが居ないのよ!?」
そのままリツコに掴みかかる。
「どうしてシンジがこんな目に遭わなきゃいけないの………!? 何でこんな物を作ったのよ!?」
アスカは涙を流しながら叫んだ。
「……………………」
リツコは黙ってその言葉を受け止めている。
「何とか言いなさいよ!? 何も言わないならシンジを返しなさいよ………!」
アスカの言葉から、徐々に力が無くなっていく。
そのまま膝から崩れ落ち、その場に座り込んだ。
「うっ……ううっ………! シンジぃ………!」
アスカは遂に我慢できなくなり嗚咽する。
一方、レイは初号機をじっと見つめていた。
(………………私はシンジ君が好き………この気持ちが好き…………シンジ君ともっと一緒に居たい………シンジ君と触れ合いたい…………シンジ君が居なくなるのは絶対にイヤ…………この気持ちを伝えたい……………どうすれば、シンジ君に届くの…………?)
レイは考える。
その末に出した答えは……………
(届いて………私の想い……………)
レイはそう心の内で思うと、
「……………今あなたの声が聞こえる ここにおいでと………」
その口から紡がれる詩。
「………レイ?」
その声に思わず振り返るアスカ。
「寂しさに 負けそうな わたしに………」
初号機を見つめ、シンジへ想いを伝えようと心を歌に込めて歌うレイの姿。
「ッ………!」
その姿を見て、自分は何をやっているのかと己を叱咤し、奮い立たせるアスカ。
アスカは涙を拭って立ち上がると、
「今あなたの姿が見える 歩いてくる 目を閉じて 待っている わたしに………」
続きの歌詞を紡ぐアスカ。
「…………アスカ………レイ………何を………?」
突然歌い出した2人に、ミサトは困惑する。
「昨日まで」
「涙で曇ってた」
「「心は今………」」
しかし、2人は構わずに歌い続ける。
(シンジ………お願い。戻ってきて………!)
(シンジ君………私には、あなたが必要………!)
「「覚えていますか 目と目が合った時を 覚えていますか 手と手が触れあった時 それは初めての 愛の旅立ちでした I love you so………」」
2人は初号機に向かって手を翳す。
2人の歌は、劇的に上手いものではない。
それでも、聞く者を引き付ける『何か』があった。
【Side Out】
【Side シンジ】
…………………………………………………………………………………………………僕は、何でここに居るんだっけ…………?
何時からこんな所に居るの?
そもそも、僕は誰………?
わからない…………
分からないけど、帰らなくちゃ………
帰る?
何処へ?
『彼女達』の所へ………
『彼女達』?
『彼女達』って誰だっけ?
分からない…………
分からないけど……………
太陽のような女の子と、月のような女の子…………
分からない………
でも、会いたい…………
ここから出て、『彼女達』に会いたい………
でも、何処へ行けばいいのか分からない…………
分からない。
分からない…………
分からない………………………
どうすればいいのか、分からない…………………………
「今あなたの視線感じる 離れてても 体中が 暖かくなるの」
………………何か、聞こえる?
「今あなたの愛信じます どうぞ私を 遠くから 見守ってください」
これは……………………歌?
「昨日まで」
「涙で曇ってた」
「「世界は今………」」
この声…………知ってる……………!
「「覚えていますか」 目と目が合った時を」
アスカ……………
「「覚えていますか」 手と手が触れあった時」
レイ……………
「「それは初めての 愛の旅立ちでした I love you so………」」
そうだ!
アスカとレイだ!
「もう 独りぼっちじゃない」
「あなたがいるから」
帰らないと!
2人の所へ!
「「覚えていますか 目と目が合った時を」」
帰り方は………分かる。
「「覚えていますか 手と手が触れあった時」」
2人の歌が導いてくれる。
「「それは初めての 愛の旅立ちでした I love you so………」」
僕は歌の聞こえる方へ迷いなく進んだ。
【Side Out】
【Side 三人称】
2人が歌を歌い終えた時、バシャリと水音が聞こえた。
見れば、初号機のコアの前にシンジが倒れていたのだ。
「シンジ!!」
「シンジ君!!」
アスカとレイは弾かれたように飛び出し、シンジに駆け寄る。
「シンジ……! シンジ!!」
「シンジ君………!!」
2人はシンジを抱き起して体を揺らすと、シンジの目がうっすらと開く。
「シンジ!」
「シンジ君!」
その様子に2人は嬉しそうに涙を浮かべた。
すると、シンジの視線が2人を捉え、弱弱しく微笑みを浮かべる。
「……………聞こえたよ………2人の歌……………2人のお陰で………僕は戻ってこれたんだ……………」
「シンジ………」
「シンジ君………」
「アスカ………レイ…………僕を必要としてくれて…………ありがとう……………」
シンジはそう言うと、眠る様に気を失った。
その様子を宇宙のマクロス・ブレイバーから見ていたジェイ達。
「どうなるかと思ったが、無事に戻ってこれたか………」
ジェイがそう言うと。
「うんうん。良かったね」
ハルが嬉しそうに頷いた。
「エントリープラグが排出されたときには、どうなる事かと思いましたよ」
シンもホッとしたように言う。
「シンジ……良かった」
ステラも笑みを浮かべる。
「それにしても、まさかあの2人が歌うとはな」
アルトはアスカとレイが歌ったことに意外そうな顔をした。
「あら? 歌は自分の気持ちを相手に伝えるいい方法よ?」
「2人の歌には、2人の想いが籠ってたから………」
シェリルとランカは、さも当然という様な表情だ。
「それにしても、もしサルベージが失敗したらどうするつもりだったんですか?」
ルリがそう聞くと、
「最悪は俺とルネのエヴォリュダー能力で干渉できないか試すつもりだった」
「それでも不確定要素が多すぎるから、ここは専門分野の人に任せた方が、可能性が高いと思ったの」
ジェイとルネがそう答えた。
皆が見るモニターの向こうでは、アスカとレイが静かに眠るシンジを見ながら優しい微笑みを浮かべていたのだった。
はい、エヴァ編第16話です。
こんな感じになってしまった。
エヴァに取り込まれたシンジを2人の歌で救い出す。
これは前々から決めていた事だったのですが、こんなもんで如何でしょう?
マクロスの歌は世界を超えても何でもありなんです!(爆)
因みにエヴァ編の後に行く世界も大体決まったのでお楽しみに。
A.T.フィールドは心の壁。つまりシェリルとランカの歌で使徒の心を開かせればA.T.フィールド消滅or弱体化はアリ?ナシ?
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アリ
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ナシ