転生特典に量産型の機体のみという縛りがあったのでジェイアークを選んでやった件 作:友(ユウ)
【Side 白銀 武】
「先生!! あの大型の戦術機は一体何なんですか!?」
殿下を横浜基地に送り届け、殿下を見送った俺は、夕呼先生の執務室に駆け込むなりそう叫んだ。
「あら、白銀じゃない。お疲れ様」
夕呼先生はいつもの涼しげな表情でそう言う。
「お疲れ様、じゃないですよ! 何なんですかあれは!? 米軍の最新鋭であるラプターを一瞬でダルマ状態にするなんて普通じゃないですよ!」
「さあ?」
夕呼先生はあっけらかんとそう言う。
「ハッキリ言って、今の人類にあんな高度な機体を作る余力………というか、技術は無いわ。人間と遜色ない機体制御。机上の空論である光学兵器。音速を遥かに超えるスピード………どれか一つでもあれば、今の人類がここまで追い込まれることは無かったでしょうね」
「じゃああれは何なんですか!?」
「だから分からないって言ってるじゃない。どうやら敵じゃないみたいだし、そこまで目くじら立てることでもないでしょ?」
「いや、でも、もしあれがオルタネイティヴ5派だったりしたら………」
「馬鹿ね。もしあんなのをオルタネイティヴ5推進派が手に入れてたら、まどろっこしいことはせずに、横浜基地に襲撃を掛けてくるわ。そして私を殺してオルタネイティヴ4は終わり。ね? 簡単じゃない」
何でもないように言う夕呼先生。
「とりあえずアンタには、もうすぐ数式の回収に行ってもらうから、それまではいつも通りにしてなさい」
「…………わかりました」
これ以上何を言っても無駄だろうと思った俺は、部屋を後にした。
【Side Out】
「さてと、アンタもお疲れ様」
そう言った香月博士の言葉で、俺は物陰から姿を見せる。
「白銀には何も教えなくていいのか?」
「教えてもいいけど、その場合、その力をもっと人類の為に使うべきだとか、ギャーギャー言ってくると思うわよ」
香月博士にそう言われ、その様子が簡単に想像できた。
「それは御免だな」
俺はそう言う。
「それに、アンタの機体は本来1対多数には向いてないんでしょ? 今は性能差で圧倒出来てるから目立たないけど、本来の運用は1対1…………というより、ジェイアークに近付いてきた敵に対処するための形態ってところかしら?」
「そんなところだ」
見事に言い当てた香月博士に流石と言いたくなる。
まあ、セーフティーを外せれば話は別なんだが………使えないモノをあれこれ言っても仕方ない。
「そう。ああ、それから言い忘れてたけど…………」
香月博士は改めて俺に向き直ると、
「あの子達を守ってくれてありがとう」
微笑んでそう言ってきた。
「損はさせない約束だからな」
俺はそう言って部屋を出た。
そのまま自分の部屋に向かっていると、
「「あ………」」
廊下でハルとバッタリと出会った。
「ジェイ!」
「ハル」
ハルは嬉しそうに笑顔を見せた。
「………ハルは出撃だったみたいだな。お疲れ様………それと、無事で良かったよ」
「うん………同じ人間相手に戦うのは、ちょっと辛かったけどね………」
俺の言葉に、ハルは少し気落ちした表情を見せる。
「すまん。余計な事だったな………」
ハルのそんな顔を見て、俺は謝った。
「あっ! ううん! 心配してくれたのは、純粋に嬉しいよ」
ハルは慌てたように顔を上げると、再び笑顔を見せた。
こいつの笑顔を見ると、何かホッとするな。
すると、また少し考え込むような仕草を見せた。
「……如何した?」
「うん………今回の出撃で、もしかしたら仲間が死んでたかもしれない時があってさ………」
俺が介入した時か………
「その時は助けもあって大丈夫だったんだけど、戦場っていうのは、本当にいつ死んでもおかしくない所なんだなって再認識したんだ………そして、それは自分にも起こることかもしれない…………」
俺はその言葉を聞いたとき、コクピットを要塞級の衝角で貫かれ、溶解液で溶かされ殺されるハルを想像してしまった。
「ッ………!」
「そしたら………急に不安になっちゃってさ………」
ハルは、アハハと乾いた笑いを零した。
でも、俺が見たい笑顔はそんな笑顔じゃない。
「…………大丈夫だ」
俺は自然とそんな言葉を口にしていた。
「ジェイ………?」
ハルがキョトンとして聞き返してくる。
「お前は俺が護る………!」
何故こんなこっぱずかしいセリフを言えたのかは分からない。
ただ、ハルに暗い顔は似合わない。
そう思ったら勝手に口に出ていた。
すると、
「アハハッ!」
ハルに笑われた。
「そんなに似合わなかったか………?」
俺は恥ずかしくなって頭を掻きながらそう言うと、
「違う違う……! ただ、戦術機に乗れないのに護るって言われてもな~、って思っただけだから………」
ああ……ジェイダーの事は秘密だからな。
「だけど………」
ハルは笑いを止め、呼吸を整えると顔を上げ、
「そう言ってくれて嬉しかったよ………! ありがとう」
嬉しそうに笑みを浮かべた。
そして俺はそのままハルと別れた。
それからまた一週間ほどした後、横浜基地にて次世代OSトライアルが行われた。
白銀が考案した新型OSのお披露目会と言ったところか。
そして、やはりというべきか、任官してこのトライアルに参加している207小隊のメンバーが高評価を受けている。
しかし、問題は午後の部だ。
香月博士の仕業ではあるが、研究用に捕獲したBETAが解き放たれる。
気が抜けた横浜基地の人間達の気を引き締めるという目的ではあるが、この時に取り逃した兵士級BETAによって神宮司軍曹が食い殺されてしまう。
恩師の死は、ある意味白銀の成長には必要な出来事だったのかもしれないが、俺はこれを止めるつもりだ。
見知った人物が死ぬのは避けたいという自分勝手な理由で。
午後の部が始まってしばらくすると、演習場の一角で爆発が起きる。
次いで、コード991―――BETA出現の警報が発令された。
ダミーの武器しかもっていない演習に参加していた戦術機が次々と撃墜されていく。
そんな中、狂ったようにBETAに向かってペイント弾を放つ戦術機があった。
あれが白銀か。
催眠暗示と興奮剤で感情が暴走したんだったか…………
傍目には、無謀で無茶苦茶だが、武器もなく機動だけでBETAを引き付けていると考えれば、その手腕は凄まじいものがある。
とはいえ、敵を撃破できなければいずれは限界が来る。
遂には攻撃を受けて撃破された。
運よくコクピットに直撃は無く、救援も間に合ったおかげで生きてはいるようだが。
やがて、全体の騒動も終息に向かう。
「……………さて、ここからだな」
俺はそう言うと、大型のトランクケースのような物を持って、行動を開始した。
夕日に照らされ辺りが紅に染まるころ、破壊された戦術機――吹雪の前で座り込む白銀。
そんな白銀に神宮司軍曹が歩み寄り、優しい表情で言葉を投げかけていた。
俺はその様子を少し離れたところから、周囲を警戒しつつ伺っている。
そして、神宮司軍曹の励ましが佳境に入った時、神宮司軍曹の背後にある瓦礫の影から何かが這い出してきた。
それは兵士級BETAだった。
おそらくほぼ無傷のまま瓦礫に埋もれていただけだったのだろう。
そいつは、音もなく神宮司軍曹に近付いている。
更に神宮司軍曹は白銀に掛かり切りで兵士級に気付いていない。
その瞬間、俺は駆け出す。
そして、
「おらっ!!」
背後から神宮司軍曹に喰らい付こうとした兵士級の頭部に思いきり跳び蹴りをかます。
エヴォリュダーの身体能力で放たれた跳び蹴りは、まさにラ〇ダーキックの如く兵士級を吹っ飛ばした。
「なっ!? ジェ、ジェイ特務少佐!?」
俺の声と打撃音でこちらに気付いた神宮司軍曹が驚いた表情で振り返る。
「神宮司軍曹。教え子を励ますのも良いですけど、不用心が過ぎますよ」
俺はそう言いながら蹴り飛ばした兵士級を見据える。
「ソ、兵士級!? 生き残りが居たの!?」
「ひっ!?」
神宮司軍曹と白銀も兵士級を認識して戦慄した声を漏らす。
兵士級は、首の骨が折れたように傾けながらも起き上がり、こちらを振り向いた。
BETAに骨があるのかは知らんが。
まあ、それはともかく、
「ここは俺に任せて、神宮司軍曹は白銀を連れて逃げてください」
俺はそう言う。
「ジェイ特務少佐!?」
「俺なら兵士級1匹ぐらいなら如何とでもなります。早く!」
「ッ…………!」
神宮司軍曹は一瞬渋ったが、
「わかりました!」
そう言ってすぐに白銀に駆け寄る。
「白銀! 早く立って!」
神宮司軍曹が白銀に呼び掛けるところを尻目に俺は兵士級に向き直る。
先ほどの一撃で結構ダメージを受けているようだし、そこまで苦も無く倒せるだろう。
俺はそう思った。
しかし、
「なっ………!?」
背後の神宮司軍曹が息を呑む声が聞こえた。
兵士級を警戒しつつ背後を伺うと、逃げようとした神宮司軍曹と白銀の前に、兵士級1体、闘士級2体、更に戦車級1体が立ち塞がっていた。
「おいおい………横浜基地の警備ザルすぎるだろ………」
俺は思わずそう愚痴る。
兵士級と闘士級はまだ理解できる。
戦術機であれば、この2種類は敵ではないため、見逃すのも仕方ない。
しかし、戦場で衛士を一番殺していると言われる中型種の戦車級を見落とすのは理解できない。
それとも、世界の修正力でも働いてるのか?
「そ、そんな…………」
「こ、殺されるっ………」
白銀はショックから抜けきってないのか怯えた声を漏らす。
しかも間が悪く、近くには救援に来れるような戦術機は居ない。
まあ、普通ならこの状況は絶望的なんだろうが…………
「…………ふう、仕方ない」
俺はため息を吐いてそう言うと、左手に下げた大型のトランクケースに視線を落とす。
「念の為だったが…………持ってきておいて正解だった」
「ジェイ特務少佐………?」
神宮司軍曹は怪訝な声を漏らす。
俺は、手に持っていた大型のトランクケースを空中に放り投げると、同時に飛び上がり、
「イィィィィィィィィィィックイィィィィィィィップ!!!」
合言葉を叫ぶ。
その瞬間、空中に放り投げたトランクケースが開き、その中からアーマーが射出された。
射出されたアーマーが俺の身体の各部に装着されていく。
最後にヘッドギアが装着されると、左目だけを覆う赤いバイザーが現れる。
そして、左手の甲に『J』の紋章が輝いた。
「ラディアントリッパー!!」
左腕のアーマーから剣の柄が現れ、それを右手で引き抜くと赤い光剣が現れる。
「はっ!!」
俺はまず正面に居た、蹴り飛ばした兵士級に向かって突進し、剣を振った。
光剣は兵士級をあっさりと切断し、上下に分割する。
その時、反対側のBETA達が神宮司軍曹達に殺到したが、
「させるか!」
俺はマフラーをウイングに変化させ、地面スレスレを飛翔する。
そのまま兵士級と闘士級を光剣で切断すると、戦車級が腕を振り被っていた。
しかし、
「甘いっ!」
俺は垂直に飛び上がって避けると同時に戦車級の真上を取る。
そして、剣の柄を両手で持つと、
「とぁあああああっ!!」
そのまま垂直に降下し、剣を振り下ろす。
その一撃は、戦車級を縦真っ二つに切り裂いた。
「…………………」
俺は、神宮司軍曹と白銀が無事なことを確認すると、余計なことを聞かれる前にその場を飛び去ったのだった。
はい、第8話です。
早くもトライアル編。
タケル達と関わらないとこんなにも早く物事が進むんですね(笑)
今回は生身………というか、アーマー無双な回でした。
まりもちゃんは生存です。
さて、次回は…………