チート催眠術師が贖罪の為に生きようとするも催眠した女達が追いかけてくる話   作:                  

1 / 2
見切り発車なので設定変わりやすいかもです、スマソ……


プロローグ
彼女に出会うプロローグ


◆-◆-◆

 

俺はクズだ。

 

この世で一番必要のない、どうしようもないクズ。

だから"こんな力"を得たら色々な人に迷惑をかけるのは明確だった。

 

 

 物心ついた頃から両親からは気味が悪い子供として距離を置かれていた。

最低限の衣食住だけは面倒を見てもらったが、幼かった俺は孤独感に苛まれていた為、近所の唯一、仲良くしてくれていた幼馴染に傾倒していくのは当然のことだった。

しかし、彼女もある日を境に俺から離れていった。突然の態度に俺は裏切られたと感じ、誰も信じることができなくなった。そしてそんな自分と友達になってくれる物好きはいない。

年を重ね、中学生になっても友達はおらず、楽しそうに話すクラスメイトを横目に休み時間は寝たふりをし、毎日寄りつく道もなく、家に帰っても家庭内にすら居場所はない。自分は一人でも大丈夫だと、言い聞かせながらも孤独感を募らせていた。

 

 

そんなある日、俺はとある能力に目覚めた。

 

”催眠能力”

 

エロ漫画やエロ同人における最強の能力である催眠能力、

誰かに授けられたとかではない、ある日突然自分の中にその能力が芽生えた事を自覚したのだった。

 

誰にも愛されない、そして中学生に上りたてのクズが催眠能力を得たとして、どんなことに使うのか?

 

当然、エロい事に使いまくった。

 

自分を捨てた幼馴染や、クラスで誰にも分け隔てない優しい委員長、

天才と呼ばれた二年のクールな美術部の先輩や、学年が上がると同時に入ってきた新入生代表のかわいい後輩。とにかく、俺の手が届かないような子達を毒牙にかけた。学校内外問わず、売れ始めた芸能人もだ。

 

催眠能力はあまりにも無敵で、目が合った相手、声が届く相手は逆らうことはできない。

欲望の赴くままに、俺は女を手にした。

だが、女を手に入れれば入れるほど、孤独感は増していく一方だった。

 

そして、

 

二年生がもうすぐ終わる二月中旬、俺は忘れもしない彼女に出会った。

 

学年がもう終わるというのに転校生がやってきた。その日の担任はいつもと違ってどこか慌ただしく、変な時期だから忙しいからだと思っていた。しかし、彼女がクラスルームに入ってくると、皆が納得した。

 

「初めまして、如月桜子(きさらぎ さくらこ)と申します」

 

その可憐な美貌や、どうやらハーフらしく、透き通るような金髪に鈴のなるように美しい声。

黒板に書かれた名前も美しく、聊か古風な名前だが、桜好きの両親から名付けられたと恥ずかしそうに微笑む彼女には似合っていた。

更に身長も140cm程で華奢であり、まさに神様が生み出した完璧の人間といっても過言ではなかった。

俺も空いた口が塞がらず、

そんな二月(如月)にやってきた早めの桜はクラスを沸かせるには充分であった。

どこかおっとりとしている彼女は勿論、クラスメイトから好かれ、

そして彼女の周りに皆が集まる中、俺は遠くの席から彼女をどうやって自分の手中に入れるかを考えていた。

 

 

◆-◆-◆

 

如月サクラコが転校してきてから、一週間がたった。どうやって二人きりになれるかプランを俺は考えていた。

彼女は人気者なので意外と一人になるタイミングがなかった。

全員催眠すればいいじゃん、と思うかもしれないが、催眠をかけるのは簡単だが催眠を解くのは結構大変だ。

出来れば一人づつ最適な催眠をかける事が一番効率がいいと、一年半の催眠生活で気づいた。一度壊れたメンタルを戻すためにはいくつもの催眠をかけて、戻さないといけない、というのが強力すぎる催眠の弱点だ。

俺はエロい事をしたいだけで他人のメンタルを滅茶苦茶にしたいとは考えていない。

 

放課後、彼女の帰りを誰にもバレないように追う。

新しくできたクラスメイト達と楽しそうに話しながら帰っているが人通りが少なくなる度に一人一人が彼女から離れていく。

そして辺りも暗くなった所で俺は彼女に接触しようとしていた。

だが、先客がいたのだ。

 

「ふひひ……最近引っ越してきたサクラコちゃん、だよね」

 

眼鏡をかけた太った身長の高い中年の男が不自然に止められていた車から出てきて、サクラコに話しかけた。

こんなに寒いというのに汗だらけでシャツの袖で脂汗を拭っている。

その目はまさに穢れきっており、俺がいつも鏡越しに見つめている目とよく似ていた。

 

「……あなたは誰でしょうか?」

 

明らかにやばい男に話しかけられているサクラコは普通の女子中学生なら泣いてしまう様な状況にも関わらず、冷静だった。

男は彼女の美しい声を聞き、嬉しそうに笑みを浮かべる。

 

「一週間前ぐらいにスーパーの帰りに君の姿を見つけてね、毎日つけていて話すチャンスを探してたんだよ」

 

「……そうですか」

 

彼女はその瞬間、素早く、鞄に手を入れ、携帯を取り出す。

だが、通報するよりも先に男は彼女の手を掴む。

 

「離してっ……」

 

「ねえ、通報なんてしないでよ。ただボクは君とお話をしたいだけなんだ」

 

そういって、男が手に力を入れると華奢なサクラコは悲痛の表情をして、携帯を落としてしまう。

そして叫ぼうと息を大きく吸い込んだ彼女の口を音が出ないようにもう片方の手で押さえた。

 

「……っ!」

 

声にならない声が日が落ちた住宅街の片隅で発せられるが、勿論、助けなど来るわけがない。そして素早く彼女の手にガムテープを貼り、手を縛った後。黒いバンの後部座席に入れようとしていた。明らかに手慣れた犯行だった。

そしてつぶやく、

 

「ボクの家は近いんだ。落ち着いて話をしよう」

 

サクラコの表情は絶望に染まった。

彼女に似合わない表情、

 

その姿を見ていた俺は

 

「おい」

 

俺の声に振り向いた男の顔面に拳を叩きつけた。

別に正義感ではない、ただ

 

そう、

 

「そいつは俺の獲物だ」

 

それだけの衝動的な理由だった。

 

遠くから声をかけて催眠をすれば簡単に無力化することは出来たが、何だかこの男にムカついてしまい、体が気が付いたら動いていた。

だが、明らかに体格のいい男は姿勢を少し崩しただけで、ズレたひび割れた眼鏡を元の場所に戻すと俺を睨みつけた。

 

「やべっ……」

 

自分のミスに気付いた俺は焦る。

なぜ、催眠を最初に使わなかったのか、と後悔した。

そしてどんな催眠をかければこの場を変えれるのか、と考えている刹那、

そして男はポケットから何かを取り出して俺に向かい、

 

「いてぇなあ、ガキがぁ」

 

何かを俺の腹に突き刺した。

思考が止まる。

 

一体、何を刺された?

 

男は俺を突き飛ばした。当然、地面にあおむけに倒れる。

腹辺りに手を当てると固い何かに当たった。

そう、俺はナイフで刺されたのだ。

 

男は俺に向かって興奮したように叫ぶ。

 

「お前がっ!!お前が悪いんだからなっ!」

 

そのままサクラコをバンの中に引きずり込む為に腕をつかんだ。

サクラコは抵抗しながら俺の顔を見て悲痛の声を上げた。

目に涙を浮かべながら必死に、叫ぶ。

 

「んっーーー!!」

 

だが届かない。ガムテープによって封じられた口からは声にならない声しか漏れなかった。

 

倒れたまま、明かりが完全に落ちた空を眺める。

しょーもない人生で、

俺はクズでどうしようもない男で、

でも、それでも

 

如月サクラコは俺が手に入れたいと思った女だから、彼女の笑みはお前如きが奪っていいものではない。

 

力が入らない体に気合を入れて、立ち上がる。

痛みは感じない、ただ熱いだけだ。刺されたナイフを引き抜いて構える。

そしてサクラコを引きずる男の背中を捉えて、一言。

 

「おい、”止まれ”」

 

男の足が止まった。

 

「な、な、なにが……」

 

俺に振り向くことすらできない、そのまま、ぴたりとその場に止まった。

催眠の力から逃れることはできない。意志がある限りは俺の支配下だ。

 

きっと、男は動こうと必死だが、脂汗が流れるだけで指先一つ動かせない。

俺は再び、一言。

 

 

「”彼女を離して失せろ”」

 

男はサクラコを話して走り出す。

 

「あ、やっぱ”止まれ” ”今すぐ警察に行って自首しろ”」

 

 

 

 

 

 

 

男が近くの交番に走り出したが、その場には黒いバンや、俺と如月サクラコが取り残されたままだ。

俺は彼女に近づいて、ガムテープを優しく剥がしてやる。

 

「はぁ……はぁ」

 

やっと息が吸えたようで彼女は大きく息継ぎをする。

その間に後ろに回って縛ってある手縄を解こうとするが、固く結ばれており、手では解けなかった。

 

「おい、腕の奴切るから動くな」

 

さっき自分に刺さっていたナイフを使って布を切って手を解放した。

少し痣ができた細い腕をさすりながらサクラコは俺の顔を見た。

 

「____(おうぎ)くん、ですよね?助けてくれてありがとう」

 

____え?

 

「……なんで俺の名前を知ってんの」

 

そう、俺の苗字だった。

彼女が転校してきてから一週間、話したことがないし、クラスには相変わらず友達”は”いない。

先生からもほぼいない者として扱われている俺の事を認知していることが意外だった。

 

「クラスメイトだから、当然ですよ?」

 

なぜそんな当然のことを聞くのかと言わんばかりに首をかしげる。

くそ、かわいい

 

「いやクラスメイトだからって知ってるとは限らな……」

 

反論しようとすると急激に目の前が暗くなり、立ち眩みで黒いバンにもたれるように姿勢を崩してしまう。

 

「扇くん!しっかりして!ってこんなに出血してる……」

 

彼女の悲痛の声がどんどん遠くなる。

小さな体躯で俺の傷を一生懸命抑えているが、やたらと熱を持っている傷口とは対照的に全身が冷えていくのを感じた。

 

「誰かっ!誰かいませんか!」

 

俺は死に行くのだろうか、如月サクラコに看取られながら死ぬなどクズには勿体ない死にざまであった。後にも先にも彼女以上の女性には出会えない、そう思わせる魅力が如月サクラコにはあった。てか、そうだ。彼女に催眠をかけないと、俺のものにする予定だった。

一生懸命、目を開こうとしても開かない。

 

「……如月サクラコ」

 

「はい、私はここにいます。だから気をしっかり持って!」

 

「俺の……モノに……なれ」

 

俺は完全に気を失った。

 

 

 

 

「はいぃ!?」

 

 

 

閑散とした住宅街に上擦った声が響き渡る。そして市街地からサイレンの音がどんどん近づいてきた。

 

◆-◆-◆

 

 

「君ね、意識不明の重体だったんだから」

 

「はぁ」

 

どうやら俺は生き延びてしまったようだ。

目覚めると病室で、すぐに看護婦がやってきて医者を呼びに行った。

呼ばれた初老の医者は状況を説明してくれた。

出血性ショック寸前の状況だったようだが、如月サクラコの適切な処置、傷口を圧迫し、出血を食い止めてくれた事によって救急車が来るまで持ちこたえられたようだ。

医者からはしっかりと叱られ、刃物を持った男に立ち向かわず警察に通報する事や、奥深くまで刺さった刃物を引き抜くことは完全にNGであることを伝えられた。

様子を見て少しの間だけ入院する事になったが、俺の家族は相変わらず俺の様子を見に来ることなく、医療費だけ払ってすぐ消えたらしい。薄情な家族だと思うかもしれないが、俺と家族の関係はこんなものだ。

 

そして手持ちのものがスマホしかない病室は暇だった。

家族に頼んで家にあるゲーム機など持ってきてもらうなどするかもしれないが、俺は家族とすらメッセージアプリの連絡先を交換していなかった。

仕方ないので看護婦でも催眠して"遊ぼう"と思った時に俺のいる病室に誰かが入ってきた。

さっそくチャンスが訪れたのか、と笑みを浮かべてどんな催眠をしようか考えようとした……が、

 

「扇くん、大丈夫ですか?」

 

「き、如月サクラコ……」

 

学校帰りなのだろう、制服を着た如月サクラコが荷物を持って立っていたのだ。

 

 

 

 

 

「そんな幽霊でも見たような驚いた顔をして、どうしましたか?」

 

開いた口が塞がらない俺を見て首をかしげる彼女は俺のベッドの横にある物を置くスペースに持ってきた紙袋を置いて、座った。ニコニコと微笑みながら返答を待つ彼女に何を返すか少し悩んだ末に正直に答えることにした。

 

「い、いや……まさか誰かが来るとは思わなくてな」

 

実際に家族は俺に会いに来なかった。まあ実際に同居している他人という感じだし、医療費をくれるだけ感謝している。俺の返答に対し、一瞬表情が固まったが、すぐに柔和な笑みに戻った。

 

「まあ、確かに他の方も誘ったのですが、皆さん遠慮してました」

 

「……だろうね」

 

ずっと寝てるような陰キャ野郎とクラスメイトとは事務連絡以上に会話することは無い。

けど如月サクラコに誘われても来ないほど嫌われているとはな……

当然、好かれてはいないと思っていたが。

 

(来られても困るけど)

 

「ふふ、中々の嫌われ、いえ、____無関心っぷりですね」

 

「はぁ、そんな事実を俺に伝えに来たのか?」

 

いたずらっ子の様に微笑む姿に少しへこみながらもおくびに出さないように、机の上に置いてあったコップから口に水を含んだ。

 

「いえ、そんな」

 

彼女はそんな風に否定した後、急に耳元まで顔を近づけて、ささやいた。

 

「それに私は好きですよ」

 

「ぶふぉっ!!!」

 

____クスクス

水を吹き出した、俺をそんな風に笑う彼女は天使というより小悪魔なのかもしれない。

依然として、いや以前より魅力的に映ってしまう。思えば出会った時からずっと心を奪われたままだ。最強催眠術師である俺の心を奪う女性は今後現れないかもしれないな。

ここでもうおしまいだ。遠回りをしてしまったが、二人きりのチャンス。寝たきり老人ばかりの病室のカーテン越し、誰にもバレる事もない。最高の催眠チャンスだ。

 

「そういえば、フルーツを持ってきたのですが、食べますか?」

 

俺の返事も聞かずに、横を向いて置いた紙袋の中から取り出そうとする。

そんな彼女に命令を……

 

「はぁ……フルーツは気分じゃないから大丈夫だよ、如月さん。帰りな、もう俺と話す事もないだろう」

 

下せなかった。

なんだか、気分ではなかったのだ。そんな状態で催眠しても仕方ない。

心底冷え込んだような気がする体を覆い隠すように布団を引き上げるとそっぽを向くことにした。

 

「____サクラコ、でいいですよ」

 

近い距離間、また囁くような距離から聞こえる声に驚き、振り向くと

 

目と目の距離は5cm未満、お互いの体温が感じれる距離。

彼女の透き通るような碧色の瞳を見ていると何処までも吸い込まれる様な錯覚を感じる。

声が出ないまま、時間が止まって数秒。

彼女は満足したように俺から離れて、立ち上がると鞄を持った。

 

「それではまた来ます、(みつる)くん」

 

「お、おう」

 

そして部屋から出ていく寸前で、動きが止まる。

 

「それと、助けてくれて本当にありがとうございました」

 

背中を向けてまま、それだけ言い残して出て行った。

仄かにクチナシの花の様な香りが残る病室にて俺は自分の頬を触ると、まるでカイロの様に熱を持っていた。

まあ、つまり飛び立つ鳥は跡をしっかりと濁していったのだ。

 

 




簡単キャラ紹介

扇 充(おうぎ・みつる)
最強催眠術に目覚めたが、意思がないと命令できないだとか、効き目が強すぎるので考えて使わないと不可逆な部分もあるので結構慎重に使う必要があり、催眠術のおかげで自信があるように振る舞うが、メンタルは弱め。

如月 桜子(きさらぎ・さくらこ)
ハーフらしいが日本生まれ、日本育ち。古風な名前だが、気に入っている。
周りからはおっとりしてるように見られるが、本人的にはそうでもない。
最近の悩みは身長が低いこと。

加害者の男
充にナイフを刺した殺人未遂マン
普通に前科ありのかわいい女の子を誘拐するやばい奴
近くにあった交番に刺したことも含めて洗いざらい自主したおかげで割と早く救急車が来た。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。