【なろう400万pv】船が沈没して大海原に取り残されたオッサンと女子高生の漂流サバイバル&スローライフ   作:海凪ととかる

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第66話 7日目⑦おっさんはタコを捕る

 砂浜に上がり、乾いた砂の上に並んで座って濡れた服と体を乾かしながら、これからの予定を話し合う。

 

「まあまず優先は食材の確保だな」

 

「そっすね。……あたしとしては、貝も好きっすけどそろそろ魚とか別のものも食べたいなーと思うんすけど」

 

「それなー。泳いでる時にけっこうでかい魚もいたから、俺もそれは思ってた。銛とかヤスを作って魚を突くか、釣り仕掛けを作って岩場で根魚を釣るのもありだな。針金はまだあるからペンチで加工して焼き入れすればそこそこ強い釣り針も作れると思うんだが」

 

「ここの魚は泳いでる人間に平気で近寄って来るぐらいぜんぜん擦れてないっすから、突きでも釣りでも簡単に捕れると思うっすよ。あと、さっきタコを見かけたのでタコ捕ってみるのもいいと思うんすけど」

 

「タコかぁ。俺は蛸壺以外の取り方を知らんのだが美岬はわかるか?」

 

「もちろんっす。小さい穴ダコは子供の頃から遊びで捕ってたっすから得意っすよ。大きめの真ダコなら、釣り針を作るついでにこんな感じのタコ針を作れば釣れるっす」

 

 そう言いながらピースサインの指先だけくいっと曲げて見せる美岬。

 

「んー、U字型の両端を尖らせて曲げる感じでいいのか?」

 

「そうそう、そんな感じっす。で、針の手前に生きた磯ガニをくくりつけて岩場近くに沈めればタコが食べに来るので引っかけて引きずりあげるんす」

 

「なるほど。とりあえずなんにせよ針を作るところからか」

 

「あ、ちなみに穴ダコなら灰とストローがあれば簡単に捕れるっすよ」

 

「…………は? なんだそれ?」

 

「灰吹き漁って聞いたことないっすか?」

 

「初耳だ」

 

「ほほう。ほうほう、それはいいっすね。じゃあそれは実際に見てのお楽しみということで」

 

 美岬が意味ありげに笑う。本人はにやにやと悪い笑みを浮かべているつもりだろうが、俺からすれば可愛いだけだ。あえて指摘しないが。

 

「それじゃあその穴ダコ捕りはするとして、俺としてはハマグリも欲しいんだよな。ハマグリの旨味スープを濃縮して醤油と混ぜて出汁醤油にしておきたいから」

 

「了解っす。じゃあハマグリも採りましょ。ハマグリを採るなら確実にアサリも採れるっすけどどうするっすか?」

 

「採れるならそれはそれでかまわんさ。食べるのに多すぎるなら一度剥き身にしてから天日干しにして保存食に加工してもいいし」

 

「なるほど。保存食にするのもありっすね。食事のたびに漁に行くのも大変っすもんね」

 

「そういうことだ。保存食のストックが増えれば食事のバリエーションも増えるし、何より心のゆとりができる。まあ、冷蔵や冷凍という手段が使えない以上、乾物にするぐらいしかできないけどな。……塩ができれば塩漬けもいけるか」

 

「朝からガクさんが作ってた干し網がさっそく大活躍っすね」

 

「だろ? さて、とりあえず今から食材の調達と加工、それと今後の漁のための道具作りを進めていくとするか。美岬は何かクラフト系で欲しいものはあるか?」

 

「あー、そっすねぇ……明日にでも冷めた焼き畑を耕していきたいんすけど、折り畳みスコップはやっぱり短くてちょっと使いづらいんで、耕すのに手頃なサイズの(くわ)が欲しいっすけど、作れるっすか?」

 

「鍬か。そりゃいるな。分かった、石と木を組み合わせたかなり原始的な物になるが作ってみよう」

 

「あ、なるほど。石を刃として使うんすね。ギャートルズっすね」

 

「ネタ古っ! だがまあ、そういうことだな。じゃあそろそろ動くか」

 

 

 それから一旦拠点に戻り、(あし)の節と節の間を切り出した(つつ)と、かまどの灰を入れた小コッヘルを持って俺と美岬は岩場に向かった。

 崖が崩落して積み重なった石積部分ではなく、溶岩が冷えて固まった大岩の、長年の浸食で凸凹している岩肌を美岬が調べている。

 

「穴ダコがいるのは、満潮時は水に沈む岩の窪みとか穴なんすよ。……お、こことか良さそうっすね」

 

 美岬が葦の筒の先に灰を付けて見つけた岩の隙間に差し込み、反対側からフッと息を吹き込んで灰を奥に飛ばす。すると……

 

──にょろにょろ

 

「うお、マジか」

 

「あは。慌てふためいて飛び出してきたっすね」

 

 小さいタコが大慌てで穴から這い出してきた。

 ちなみにタコやイカといった頭足類(とうそくるい)は読んで字の如し、足の根元に頭があり、その先に内臓を納めた胴体がある。

 美岬が逃げ出してきたタコの丸い胴体を掴んで捕まえる。胴体は長さ5㌢ぐらいだが、意外と足が長くて美岬がぶら下げている全長は30㌢ぐらいはある。

 

「じゃん♪ これが穴ダコっす。イイダコとテナガダコの2種類がいるっすけど、こいつはテナガの方っすね」

 

「本当に簡単に捕れるんだな」

 

「そうなんすよ。難しいのはタコのいる穴を見極めることだけっす。さ、ガクさんもどうぞ。次はこの穴を攻めてみてほしいっす」

 

 美岬から受け取った葦の筒に同じように灰を付け、穴に差し込んでブッと息を吹き込んで灰を飛ばして待つこと数秒。

 

──にょろにょろ

 

 慌てふためいて飛び出してくる穴ダコ。

 

「おお、出た出た。ははっ! 面白いなこれ」

 

「でしょでしょ? これはハマるんすよ。次はこの穴っす」

 

 美岬が出てきた穴ダコをさっと捕まえて、先に捕まえてあった穴ダコに近づけると、2匹は互いに足を絡ませあって一つの塊と化す。

 

 次の穴も同じように灰を吹き入れると穴ダコが逃げ出してきて、美岬が捕まえて2匹の塊にくっつけて3匹の塊にする。

 

「そのタコをお互いに絡ませて塊にするの面白いな」

 

「面白いっしょ。クーラーボックスとか魚籠(びく)だとタコは逃げ出しちゃうんすけど、こうやって絡ませとけば逃げられないんすよ。さあ、あたしがこいつらは捕まえとくんでガクさんはどんどんタコを追い出してほしいっす。次はこの穴っす」

 

「おっけ。……ブッ」

 

──にょろにょろ

 

「はいゲット。じゃ次こっちで」

 

「おう」

 

 その後も次から次に穴ダコが捕れ、美岬に止められるまでに20匹ほどのタコが捕れたのだった。

 

 

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