妹とゆるゆる同棲生活 〜まさかの幼馴染が居候で修羅場の危機?!〜   作:ひざぎ

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弐/偶然にも最悪な出会い
2-1


 

 この季節の行く先を、私は知ることをしない。

 

 予測することはできる。それは誰にだってできる。大体の未来というものは、自分の中にある経験則に従うように、当たり前のような一年の一周をなぞる。

 

 それは普遍的なものであり、一年のめぐりあわせというものは、よっぽどのことがあっても変わることはない。

 

 それほどまでに、私たち人間の干渉というものは、世界に対して小さなものだ。季節はそれを受け容れるということはどこまでもなかった。

 

 春はあるし、夏はある。秋もあるし、冬だってある。春夏秋冬はどこであれ繰り返されていて、その行く先は、どうしようもなく私たちの今へ、いつかの未来へとたどり着く。

 

 どこまでも変わらない。変わることはない。それに憂いを抱く必要はないし、憂いを抱くことはない。

 

 当たり前のことなのだ、自然としたことなのだ。だから、それについて考える必要はどこまでも存在しない。

 

 それなら、私の押し寄せてくる季節に対する感情はなんなのだろう。

 

 どうして、私はこんなことを考え続けているのだろう。

 

 解決もなにも存在しない、自然的な現象に、どうして私は憂いを抱こうとしているのだろう。

 

 私の裏腹を無視するように、世界は、季節は、すべては彩にあふれている。

 

 緑色があった、桜色がある、地面に灰色が残っている、青空が広がっている、コントラストのような白色が一部を占有している。花の色が赤として視界を刺してくる。そのどれもが美しいと感じる感性は私の中にある。

 

 でも、どこまでも寂しさを拭うことはできない感傷に浸り続けている。

 

 その所以を考えてみた。その所以は後悔だった。言葉を吐きだしたことへの後悔だった。彼に対して吐き出した言葉の思惑の勝手さに対する後悔だった。

 

 いつだって、私は彼を探していた。

 

 学校の中を探した。よく彼は図書室にいたはずだった。だから、図書室を探してみた。そこに彼はいなかった。

 

 学校が終わって、そうして彼の家を覗いてみた。学校が終われば家に帰っていると思った。幼い頃に何度も遊びに行った家だった。だから、それは特に普通の行動だった。そこにも彼はいなかった。なんなら、彼の家族さえ存在していなかった。

 

 どこにも彼の影は感じなかった。

 

 最後に見たのは卒業式だった。知っている彼の名前は変遷していた。知らぬ間に変わっていた。それを彼は私に知らせることはなかった。

 

 いや、知らせようとしてくれていたのかもしれない。知らせようとしていた時期に逃げていたのは私の方だった。

 

 私は彼の事情を察した。事情を察して、そうして後悔の青を私の中に飾り立てた。

 

 後悔、後悔、後悔。どこまでも取り繕うことのできない後悔。

 

 それに浸りながら、彼を今も探し続けている。

 

 一言、謝ることができたのなら。

 

 そんな思いのまま、彼をどこに行っても探し続けている。

 

 

 

 

「部活動か、いいねぇ」

 

 落ち着いた口調の中で言葉を間延びさせて、中原は俺たちの質問に、ゆっくりとそう返した。

 

 ホームルームを終わらせた教室の中には、どこまでも静けさが漂っている。人の気配もまばらであり、こちらに注目する視線がいくつかあったけれど、帰ることを優先したように目を逸らしていく。そうした結末の行く先は、担任である中原と、俺と皐と伊万里が残るという絵面であった。

 

「実際、部活動はやる人がいるならやれるんだよ。まあ、他の先生方は良しとしないけどねぇ」

 

 中原は、少しばかり気まずそうに言葉を吐いた。

 

「ほら、部活動って正直先生方からしてみれば居残り……、というか残業そのものだからね。それを良しとする熱心な先生はあんまりいないんだよね。でも、私はその心意気には感心するよ。もし、やる気があるというのなら、人数を集めてみるのも悪くはないと思うんだ。もし、顧問になる人がいないというのなら、私が顧問をやってみてもいい。……ああ、でも外で活動する系の運動部は難しいからね。ほら、うちの高校にはナイターがないからさ」

 

 ははは、と乾いた笑いを返しながら、中原は答える。俺たちはそれに薄ら笑いを浮かべて、相槌のような笑みを返した。

 

「まあ、でもバスケットボール部とか、もしくは文化系の部活なら大丈夫だと思うよ。吹奏楽については難しいだろうけれど」

 

「……いや、とりあえず部活動ができるなら安心しました。今はそれだけでもありがたいので、方向性が固まったらまた相談してもいいですか?」

 

 かまわないよ、と間延びした声を中原は返して、そのまま廊下へと彼は歩いて行く。俺は最後にさようなら、と挨拶をきちんと行った。彼女らもそれに従うように声を合わせて頭を下げた。

 

「……というわけで、部活動は何とかなりそうだぞ」

 

「あ、あ、ありがとうございます!」

 

 伊万里は中原が去った後も頭をあげないままで、感謝の言葉を呟いた。

 

「でも、そうだなぁ。問題というほどのものでもないんだけれど、俺たちの部活は何にしようか、というところがあるわけなんだけど」

 

 俺がそう言うと、伊万里は小さな声で言葉を呟く。

 

「う、うんどうぶとかは、にがてなのでやりたくないです……」

 

「それなら文化系の部活だな。思いつくのだと、文芸部とか、生活部とか?」

 

 生活部という言葉を出すと、皐が「懐かしいね」と言葉を返す。確かに懐かしいかもしれない。俺たちが通っていた中学の文化部のひとつだった部活だ。

 

「せ、生活部ですか?」

 

「うん。なんというか、家庭科の授業みたいなものを部活でやるやつなんだけど──」

 

「──あっ、あっ、あ、それは、だ、大丈夫です」

 

 言葉に食い込みながら伊万里は返した。

 

「それなら文芸部か?」

 

「え、え、えと、私、やりたいことがあるん、です、け、けど」

 

 伊万里は照れくさそうな表情をしながら言葉を呟く。

 

「て、てて天文部……、とか……」

 

 なるほど、と俺は彼女の言葉に返した。

 

「とりあえず、そちらの方向性で活動してみることにしようか。今日はもう遅いし、明日以降にまた相談しよう」

 

 伊万里はその声に頷いた。

 

 方向性については定まりそうだ。俺は安堵の息を吐きだした。

 

 

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