転生したらTSふたなり聖女だった件   作:自給自足日常系異世界ファンタジー作家

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あ今回本編最終話です


拾話

魔女の尖兵

 

妖精の裏切り

 

悪魔の跳梁

 

 

名を失った皇帝が夢想する

 

 

とても人の手に負える戦場ではなかった

 

 

私は愚かだった、あの子供から再三と警告を受けていたというのに、その警告を無為にしてしまったのだ。

——立場ある者としての責務を放棄し戦場へ向かった結果、10万という被害を出す大敗を喫した。

 

 

其方を蔑視した私を許してくれ救世の主よ、だがどうか息子達だけは帝国という小さな世界の未来と共に救ってくれ。

 

 

彼は戦争において数こそ最も重要と言っていた、故に勝てると我々も踏んでいたがアレは数では対処する事はできないぞ。

——先に逝く、あまり早く来てくれるなよ。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「なあ少しいいかヘレンさん?」

 

 

「なに?」

 

 

「魔女の使い魔や雑兵達は殺し尽くしたが本隊は来ないのか?」

 

 

数は戦前に大きく減らしたが第三階梯魔術師や魔女を擁する本隊、そしてマリエナ女史が視た?視られたという悪魔の気配がないのが不安だ。

 

 

既に周囲は魔物と人間の躯の山、そして無数の精霊の亡骸だ。

 

 

「第二波に備えるべき、私達が消耗した時に来ると思う。」

 

 

「アホらし、交代制で対処しようぜ。」

 

 

「いいわよ、でも敵を炙り出すプランはあるの?」

 

 

「ない、こっちも今から使い魔を生み出してのローラー作戦を行うとする。」

 

 

サーチ&デストロイ

生物のトレンドであり原点であるが、正直俺はこの世界に来てから受け身の戦いばかりで疎かにしていた部分だ、何せ向こうから来るから人間程度の状況把握索敵能力で十分だったのだ。

 

 

そんな状況からの開発のだから手探りになるがないよりはマシだろう、彼女が戦闘している横で色々と頑張る。

——生きた人間や妖精の魂を縛り肉体をエネルギー化して、それをアグレラレンみたいに弄りまくって索敵用の使い魔を生み出す。

 

 

製作の途中で魔物の群れを拿捕したりして『休憩とは?』状態だったが気にしない事とする、魔術師は人間だけど普通の人間じゃないから少しなら余裕って事で。

 

 

そんなこんなでワイちゃんSwitchblade*1モドキを10個ほど完成させました、偉大なる米帝の偵察攻撃用ドローンでございます。

——という訳で逝ってらっしゃい、戦果次第で増産決定です、何せ素材は沢山ありますからねってか素材が寄ってくるからね。

 

 

ささ敵の本陣に向けて侵攻を続けよう、市国に向けて侵略と略奪だ。

 

 

 

そんなこんなで侵攻しながら周囲の偵察を繰り返していたら、ただ単純に魔女と悪魔は市国に陣取っていました。

——何だったんだ俺の苦労と緊張感は、改造版として紫外線や赤外線で判別できる様にしたのに無駄な努力だった。

 

 

そんでまた別の方法で音声録音して聞いてみたら何と驚き、彼女人情に溢れた義に生きる人間らしいじゃないですか。

——しかも戦闘において気配探知は魔力の起こりや反応に頼り切りだった、魔術を用いての誘導『衝撃魔術』1200発は透明な壁?で対処していたが、無誘導の48発は完全にスルーしていた。

 

 

なら彼女は魔術を用いない方法で殺すとしよう、前世以来の施設及び人員の襲撃だ、俺らしくコイツ等は殺させてもらう。

 

 

「総攻撃だ、準備砲撃は過剰な程に撃ち込んでやるから総員伏兵の存在を留意せよ。」

 

 

「ちょっといきなり総攻撃?もう少し準備してからの方がいいんじゃない?」

 

 

「そんな事言ってたら10年経っちまうよ、拙速を尊ぶこれ大事だから、その為に敵の厄介そうなクソデカボウガンを剥いで生半可な陣地を吹き飛ばすって言ったじゃねぇか。

——一応聞いておくけどヘレンさん、そこそこ強い刺激を与える物品使うけど大丈夫だよね。」

 

 

それに今の日照り状態なら、暫くアレも雨に流されないで済む。

 

 

「彼らも兵士として何割かは修羅場を潜ってる筈、多分大丈夫だと思う。」

 

 

「ならばヨシ!!」

 

 

魔女が休憩に入るであろう瞬間、その夜に作戦開始だ。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

神を信奉する大馬鹿者の諸君!!愚かで慎ましく横暴な諸君!!

待ちに待った本物の戦争だ!!ここに我らの女神が降臨する!!

 

 

砲兵を称えよ!!衝撃を与えよ!!

 

 

 

 

 

総員吶喊!!加護は我らにあり!!」

 

 

よぉし化学兵器の出番だ、近くで海を見つけた時に大量に用意しておいた海水に適当な植物の葉や実に魔物の血肉を混ぜて洞窟の中で1か月放置しといた()()()()()だ。

——大体500mLから2Lぐらいの分量を錬金術を使ってガラスに分けておいたヤツがあります、それを衝撃魔術と一緒に大量投射する。

 

 

 

大体4から6万Lぐらいかな?

健康な人間にとって命に別状はないがとにかく臭い、とにかく鼻や目などの粘膜の薄い部位がとんでもない事になる。

 

 

対処法は大量の水で洗い流すのみ、だが魔術を使用した瞬間俺の精密誘導式の衝撃魔術が飛んでいく事になるため除染作業を行えないねぇ悲しいねぇ。

 

 

戦場は大量の硝子片含む瓦礫や刺激物に限らず吐瀉物や排泄物が血肉と混ざり合っていた、転べば嗚咽慟哭し七転八倒しながら全身を傷付ける事になりパニックがより広がる事になる、戦場の環境は悪化の一途を辿っていた。

 

 

「異教徒を殺せぇぇぇぇ!!」

 

 

「背教者を許すな!!侵略者を押し返せ!!」

 

 

前線では双方の兵士が揉みくちゃになっており、隣が敵か味方かも分からない様な状況に陥っていた。

 

 

そんな彼らを統制すべく、魔女が味方を鼓舞すべく魔術を使用する。

 

 

「皆さん乱されないで下さい!!悪魔に負けてはいけません!!

今洗礼を届けま——」

 

 

その隙を突き救世主が魔女の後方へ、その手には鋭利なナイフが握られていた。

——魔女は自分の後方にいる誰かに気付いた瞬間に斬り裂かれてしまう

 

左脹脛に骨まで刃が届いた裂傷

右腕の上腕二頭筋の欠損

左脇の下から関節窩と右季肋部にかけての裂傷

 

一瞬で与えられた致命傷故に立つどころか力を入れる事も難しくなり、彼女は自らに与えられた怪我を治癒及び治療する事も妨害され、終ぞ地に伏せる事になった。

 

 

戦場では魔女の加護が失われ、聖女の加護だけが残り、魔女の率いた軍は諸共滅ぼされてしまった。

 

 

「こんな状況でも生きてるのは流石だな、なるほど()()()()()()()()は同類か。

——普通の人間なら2時間ぐらいで死亡するが第三階梯魔術師ならそれ以上に保つだろうし俺と同類なら生き残れてもおかしくはない、故に捕虜とさせてもらう。」

 

 

地獄のような戦場を救わんと魔女が立ち上がったその時、気配も魔力もなくただ一本のナイフによって魔女の全身は切り裂かれ地に伏せる事になった。

——戦場において悪魔の介入が始まる前に、数秒の間に魔女と軍勢は無力化されたのだ。

 

 

大勢は決したのだ、そして残るは残党と魔女の背後に巣喰っているという悪魔のみであった。

 

 

「その子を放してもらおうか、覗き見していたのは貴様だな。」

 

 

澄んだ紺色の髪をした人型の生命体はそう言った

——恐らく妖精の部類、そして悪魔とされるモノである。

 

 

「第二ラウンドか、丁度いい退屈していたところだ。」

 

 

この自分の中から溢れ出す殺戮衝動はコイツに打つけてやろう、聖女はそう志向し杖を向けた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「話は通じんか、畜生以下だな。」

 

 

「すまない彼女は大事な人質なんだ、俺の目的の為にも彼女は必要だしね。」

 

 

俺は彼女の申し出?を断り、魔女さんとやらを後送させる。

 

 

「どいつもこいつもカスばかりだ

——すぐ死ぬすぐ動けなくなる全く使えない貧弱な奴ばかり、第三階梯魔術師等と謳われる超越者であれ所詮その程度だ。」

 

 

 

悉くイラつかせてくれるな、こんな奴に首根っこを掴まれていたあの子も可哀想に。

 

 

 

「ならお前も地に這い蹲って死ねよ」

 

 

衝撃魔術による『砲撃』が直撃したが、彼女が俺の魔術を意に介した様子はない。

 

 

「この程度か?

——下位の魔物すら満足に殺せまい、その程度で我々の様な魔に魔に類する存在に挑もうなど片腹痛いわ。」

 

 

...我々?

周囲を見渡すが誰も居ないし聞き耳を立てても妙な音はしない、その上見られている感覚もない。

——あっ、ふーんボッチじゃん。

 

 

「まあ雑に威力を上げれば通用するでしょ」

 

 

ナイフを高速で投射するが片手で弾かれてしまった、続いて全鉄製の超重量級の槍を放つが精々傷をつけるだけで有効打には成り得なさそうだ。

 

 

「その程度か小娘?」

 

 

「あれま結構本気だったんだが...」

 

 

「彼奴もそうだが魔女なる身の者は名に較べ実態は矮小極まる、所詮人の身の範囲でしかないな。」

 

 

よしアレを使おう、個人的には好かない魔術なんだが背に腹は代えられない。

 

 

「魔術行使『洗礼』」

 

 

それが目の前の妖精に命中する、彼女はノーガードで生来の魔術的な抵抗力で受けた。

——そして

 

 

ガァアアアアア!!

 

 

彼女は洗礼魔術の強烈な離脱感に襲われ仆れてしまった

 

 

「おっメッチャ効くやん、でも何で死なないんだよ。」

 

 

その何でもない質問に、彼女は地面に伏した状態で答えた。

 

 

「我を殺すには細胞一つ残らず消滅させる以外に手段はない、故に洗礼を受け魂をエネルギー化させられ肉体を物質に還元されようと死ぬ事はない。」

 

 

「だとしても効き過ぎじゃね?」

 

 

流石霊体特攻、面白いレベルの効果だ。

 

 

そして周囲は霧に包まれた、対象を洗礼した瞬間から蒸気が吹き出した。

——結果ではあるが少々不気味だ、異様な量と質の魔力が彼女から立ち上っている。

 

 

「どうやら見縊っていたらしい、貴様の魔術そして信仰は人間一だろう。」

 

 

あまりにも早過ぎる手の平返し、草生えますよ(メスガキボイス)

 

 

最初から本気出してほしいのになぁ、どいつもこいつも最初から本気出さないよな。

——俺みたいにデメリットがあるのかな、俺以外の人間も魔術の使用による精神汚染を受けている可能性がある、故に最低限以外の魔術を使用する事を忌避しているのかもしれない。

 

 

「あのさ自称悪魔さんって友達居ないでしょ、一人でボッチしてて悲しくない?俺みたいにプライド含む全て投げ捨てている人間は別だけど君はプライドの塊みたいだし辛いでしょ?あと俺相手に御託を垂れ流すのは無意味だと思うよ。」

 

 

「故に本気を出す、貴様の事は次の因果が始まる1000年後までは忘れないだろう。」

 

 

話が通じない...

——それはそれとして馬鹿げた怪物だ、魔物と形容できる異形のカタチをした妖精は初めて見た。

 

あの見た目は人間とも妖精とも違う存在、虫でも動物でもない全く別の生命体だ。

——きっとこの世界固有の生命体を模ったのだろう、よりにもよって正真正銘ドラゴンもしくは竜が敵とは思わなかったよ。

 

 

「流石異世界ファンタジー、核兵器でもないと対処はできなさそうだ、ファンタジー武器貰っておいてよかった。」

 

 

炎やよく分からない魔術的な何かが組み込まれた触れたモノを腐食させるブレス、形容し難い程頑丈かつ頑強な鱗に損傷したそばから治されていく再生能力、そしてシン・ゴ◯ラ並みのサイズに由来するフィジカルと異様な程の俊敏性はそれだけで脅威だ。

 

 

だがそれだけでしかなかった

人間という小さな標的をデカ過ぎる肉体では捕らえる事はできず、ブレスも初速が遅く到底直撃させる事はできない。

 

 

人間を殺すには十分だが第三階梯魔術師を殺すには不足している、むしろ人型の時よりも戦いやすいぐらいだ。

——だがこちらの火力も必要不十分でしかなかった、生半可な衝撃魔術では傷付ける事もできずナイフなりを投射しても傷一つ付けられない。

 

 

故にこちらも切り札を切る事にした、聖槍を触媒とした魔術を放つ。

——竜に突き刺さり腹部を貫通し頭部を切り落とす損傷を与えたが、未だ致命傷を与える事はできなかった。

 

 

恐らく殺せない存在なのだろう、不死の怪物故に手に負えない。

 

 

だが問題はない、殺す以外の方法を選べばいい。

 

 

罠にかけよう、この様な歪な生命体にこそ効果のある罠を用意してやろう。

——市国の中心その真ん中にこの怪物が巣喰う迷宮を、大地という世界そして人間という圧力に応じてこの存在を押さえ込む罠を断続的に創り出す地獄をな。

 

 

骨の髄まで俺の役に立ってもらう、きっとこの妖精が折れる事はない、ただひたすらに資源を生み出してくれる筈だ。

 

 

逃げる気か?

 

 

「場所を変えよう、人目のある場所の方が俺にとっては都合がいい。」

 

 

一足先に市街地の中央に突入する、そして半径200m程の大穴を地下に創り出す。

 

 

120mもの巨体が着陸した瞬間地が崩れ落ちる、飛行が可能な悪魔は空を飛ぼうとするが、無数の衝撃によって地の底に叩き落とされてしまった。

 

 

地の底で何をする気だ?貴様の逃げ場がなくなっただけではないか...血迷ったか?

 

 

「いいや別に、俺にとって都合がいい環境だよ鱗鳥。」

 

 

意地っ張りめ、危機感と不条理と感精神的視野狭窄で気が気ではないだろうに。

——自分が罠にかけられるという経験は未だなかったらしい、ならばミッチリ教えてやろう人が編み出した最高の叡智を。

 

 

どうやらお前は常々的に地面に干渉する魔術を使わないみたいだ、当然だその巨体は全ての障害物を破壊し閉鎖空間では腐食するブレスや炎によって対象を一方的に虐殺する存在故だからだ。

——だがここにはその巨体を上回る圧倒的な質量が周囲に広がっている、そしてお前でも易々と破壊できない聖槍がある。

 

 

超自然的なモノを操る魔術戦、それに劣った状態で俺と閉鎖環境で対等に戦える訳がないだろう。

 

 

コイツは内骨格と外骨格の両方を持つ歪に頑丈な生命体だが、唯一の弱点が内骨格と外骨格が連動している関節部であり、その弱点を聖槍で貫き地面に固定していく。

——穴の空いた関節部をその状態で治す事で、骨や肉は槍に刺さったまま繋がってしまい機能不全を起こす。

 

 

この屈辱忘れんぞ...

——してこれに何の意味があるのだ?

 

 

凛とした顔で彼の竜は口を開いた、恐怖心がなくただ怒りの感情だけでこちらを凝視し続けている。

——うわキッショ、危機感とかないんか?不死生故か知らんがダチョウみたいな精神性しているな、鳥でさえ恐怖心はあるのにコイツはそれ以下じゃん。

 

 

「確かに脱出には時間がかかるだろう、正直殺す為の手段がないから一時的なモノでしかない、だがそれが俺の目的なんだ。

——俺最近知ったんだよ()()って脅威が現存していれば必要以上に同族で排斥しあう事はないって、本来この立場は魔女さんにやってもらうつもりだったし今でもそのつもりだ、だけど迷宮を創るにあたり魔物の多様性の維持は不可欠だ、故に不死かつ強い力を持つ君には迷宮に巣喰う魔物の為に礎を担ってもらう。」

 

 

完全に固定した場所に色々なモノを入れ、周囲の地下水池や洞窟と繋げて更に生命の多様性を担保させてもらう、少し苦しいと思うが死ぬ事はない筈だ。

 

 

 

まさか我を迷宮に巣喰う魔物の苗床にする気か?!

 

 

「半分は大正解!!やっぱ時代はLGBTQQIAAPPO2S+Mだよな好きなだけ犯されてくれ!!

——くっ殺好きだろ?高慢チキ妖精ドラゴンさんよぉ?

ジャンジャン炎もブレスも好きなだけ吐いてくれて構わない、好きなだけ気が向く儘に暴れたまえ、むしろ気が向かなくても暴れろ。」

 

 

 

常に昇天しない程度に洗礼を受けるから苦しみもない、深い眠りの中で長い間幸せにね。

 

 

そうして彼女は永い眠りについた、いずれ迷宮の底から這い出るその時までこの竜は永遠に近い眠りの日々を過ごすことになるのだ。

 

 

 

 

 

魔女は再び救世主イリエ・リエンデールに再び討ち果たされ、悪魔は地の底に封じられた。

——そして地上には安定が齎されて多くの人達が救われました、めでたしめでたし。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「目が覚めたか、おはよう。」

 

 

「ヒッ...ごめんなさい命だけはどうかお願いします殺してください殺してください...」

 

 

えぇ...

悲報ワイ魔女さんに恐怖されて、命乞いどころか殺してくれと懇願されてしまう。

 

 

「まずは俺の話を聞いてくれない?

——恐怖するのも命乞いをするのも、俺の目的を知ってからでも遅くないんじゃないかな。」

 

 

「ごめんなさいごめんなさい...」

 

 

言葉だけでは恐怖心を解く事はできなかった、諦めて口上を垂れるとしよう。

 

 

「魔女或いは救世主と呼ばれてきた者同士仲良くしようじゃないか、俺の名前はイリエ・リエンデールだ、宜しく。

——とりあえず腹減っているでしょ、無力化するだけとはいえ結構念入りに裂いちゃったから貧血苦しいよね?軽い粥を用意したからさリラックスして腹を満たしてよ。」

 

 

彼女は俺の差し出した粥をまじまじと見て、改めて口を開いた。

 

 

「分かりました...」

 

 

米粥を塩胡椒と胡麻で味付けしただけの簡単料理?である、美味くもないし不味くもない中途半端なモノだ。

 

 

因みに米は南方に向かい俺自ら交渉(略奪)して手に入れた、今の俺のいる場所が前世でいうイタリアら辺だとしたら南方のアフリカ大陸の方、正確にはモロッコら辺かな?超長粒の馴染みない米が手に入った。

——最初はステーキと並べようかと思ったけど想像と違ってパサパサだったから粥にした、これまで以上にコ◯ヒカリが恋しいと思った事はないようん。

 

 

「どうよ味は、美味しくはないけど不味くはないよね。」

 

 

「この黒い粒って何ですか?ツンときます、いや不味くはないんですけど気になりますね。

——でも美味しいです、こんな優しい味は初めてです。」

 

 

あーこの子も生活苦しい系か、マジで胡椒って貴重なんだな。

——肉も果実も飽きるほどあるがそれ以外はほとんどない世界、病人食が逆に気に入られるのは不思議な気分だ。

 

 

「ならよかったよ、そんでおかわりいるかい?味変で塩漬けベーコン()()()和えとか色々あるぞ。」

 

 

有無を言わせずに二杯目、俺も食ったが無難に微妙な代物なんだがな。

 

 

「御馳走様でした」

 

 

腹を満たしたところで尋問といこう、食後は快楽物質が分泌されて口が軽くなるからね丁度いい。アヘンを混ぜた甲斐もあったかもしれない。

 

 

「それじゃあ腹を満たした事だし本題を話そう、これから不特定多数に魔女として追われ続けるぐらいなら迷宮の管理でもしない?」

 

 

「へっ...?」

 

 

「正直俺がやってもいいんだけどしばらくは戦後処理とか忙しいのよ、だけど信用できそうな人で一定以上の魔術的素養を持つ人間が居なくてね、そこで君だ。

——魔物を操ろうと考える度胸と狂気を兼ね備えた君に頼みたい、君以上の適任がいないんだ。」

 

 

やべアヘン入れすぎたかも、ボケーっとしてやがる。

 

 

「失礼致しました、私の名前はアリシア、姓はありません。

——質問しても宜しいでしょうか?」

 

 

「構わないよ、何でも聞いてくれ。」

 

 

「何故私に迷宮を創れと要望するのですか?

——地上をイリエ様が制した今、その地を脅かす迷宮を生み出す意図が理解できません」

 

 

「いやまあ命令じゃないんだけど...

まあ俺自身の為だな、帝国が協会を壊滅させた現在、帝国にとって最も脅威となっている存在は何でしょう?」

 

 

「上位種の魔物もとい『上位存在』によって創り出された難攻不落の迷宮から無数に這い出てくる魔物もしくは上位種の魔物そのものでしょうか?」

 

 

俺は否定する様な前振りをした後に、前世の自分の見た光景を魔術で投影して人類の国家と軍隊という怪物の末を彼女に表した。

 

 

「人間だよ、ただこの世界においては地位と力の両方を持つ人間が脅威だ。

——これから俺を含む福音委員会員によって委員内部による勢力争いが始まる、だが俺はそんな無駄な事に関わりたくない、その為に権威と力を誇示した上で勢力争いから離脱する為の場を必要としている。」

 

 

「目的は理解しました、ですが何故私が迷宮を維持する事とイリエ様の目的が繋がるのですか?」

 

 

「そうだね例えば...

戦の原因となった『悪魔』を封じたが、地下から地上の覇権を狙う様になってしまった今、悪魔を迷宮に押し留める『責務』を俺は授かっている。

——とかどうだろうか?」

 

 

彼女はアヘンをキメてフワフワとしている頭で精一杯考えた末に——

 

 

「神にそう言われたのですか?」

 

 

ラリっている回答をした、入れ過ぎですね間違いない。

 

 

「言われてないよ」

 

 

「????」

 

 

彼女はフワフワとした頭脳で俺の例え話をガチ話と判断してしまった、詳細な話は薬物が抜けるまで待った方がよかったかもね。

 

 

「無人の旧市国領土を掌握し治外法権地域として俺は永遠の都の暫定的な支配者となる、これが第一目標だ。

そしてこの話には続きがあり...

 

——私は救世の主として迷宮の底に巣喰ってしまった悪魔を討つ使命を負っている、そしてその担っている役目を宣伝して、旧市国領土を略奪し幼気のある子供を凌辱するより放置して程々に関わるだけの方が利があると思わせる、その上で宗教的に文化的にも手出しできない状態にするんだ。」

 

 

「ならば帝都で権力を奪い地位を得る事だけでもよいと思われますが...」

 

 

「最もな意見だが、それでは俺が帝国の権力争いに巻き込まれてしまうだろう?アリシアくん。」

 

 

彼女は再びポアポアとした頭で回答を捻り出した、唇や手を震わせながら口を開く。

 

 

「なるほど...つまり政争を避けられる環境を作りたいのですね?

その上で迷宮を抑止として軍争を起こさせない様にしたいという事ですか、つまり私に迷宮を構築させて政治的かつ軍事的な基盤を整理したいのですね。」

 

 

「旧市国領土に巣喰っている迷宮は悪魔が支配しており、その迷宮を救世の主或いは聖女が神の名の下で支配せしめる地の為、手を出してはならない。

——旧市国領土は救世の主が取り仕切り委細を計らう『聖域』とする、そして許可なく立ち入った者は『神罰が下される』と明言するんだ、その地であれば雑に支配者の俺が強権を振える。

真面目な奴は旧市国の地に手を出さなくなるだろうし、権威に目が眩んだ救いようのないカスでも悪魔が巣喰う迷宮なんざ恐怖して手を出そうとは思わないだろう?精神的な安全圏の出来上がりって訳だ。」

 

 

「理解しました、ですが尚更私が迷宮の管理をしろと命令される理由が分かりません。」

 

 

「悪魔の『使徒』もしくは『尖兵』を迷宮と共に管理する存在が必要だろう?表で色々と活動しながら同時に迷宮を管理できるとは思えないんだよなぁ、あと人は石垣人は堀という言葉通りに人を釣る為の資源としての意味もある。

——ていう訳だから白魔術と黒魔術の両方が使える上で、魔物を使役する能力に長けているアリシアちゃんの出番って訳だ、同じ超越者同士明日と1000年後を見据えて動き始めたいんだ。

 

...迷宮は主が都合のいい形で環境を改変した場所の事というのは知っているか?

その中に魔物や生物を呼び込む事もできる、故に俺達はそれを迷宮をコントロールして難攻不落の地としたい、迷宮がある間は俺達に牙を剥く存在は生まれないだろうからね。

——人間に俺達を滅ぼしてもそれ以上の脅威が迫る事になると人類社会に知らせ、介入に精神的政治的軍事的な忌避感を生み出すんだ。」

 

 

要するに俺が表向きの顔として精神的政治的な対処を行い、裏でアリシアは軍事的構造的な対処法を編み出してもらいたい。

——彼女はフワフワした頭で恐怖心や征服心等を激らせ、俺という恐怖の前に首を縦に振った。

 

 

「分かりました!!その野望に私も手を貸します!!」

 

 

今はアレだけど素は聡明なんだろうなこの子は、俺は迷宮を運営する方が楽しそうだと思ってたけど...今じゃ彼女の創る迷宮の方をどうにかこうにかする方が面白そうに思える。

——いつか現れる迷宮を破壊する存在が現れるまで、俺という存在の終わりまで傾倒し続ける人生の基盤だ、それを操る彼女とは是非とも仲良くしたいね。

 

 

 

 

 

「やったぜ、まあ最低限の取り決めとして『双方は双方の権威や環境に肖る事にできる』様にしよう。

——相違ないか?」

 

 

「はい」

 

 

「という訳でアリシアは次々と世界を滅ぼそうと現れる魔女を誅し続けた偉大なる救世主という権威に肖る事を許可しよう、そして俺もアリシアが構築する迷宮への提言と一部領域における権限の移譲を要求したい。」

 

 

「元は敗者であり地位も名声も失った身です、それで構いません。」

 

 

「それじゃあ宜しくね、アリシア・()()()()()()。」

 

 

「「...」」

 

 

「「えぇぇぇぇ?!」」

 

 

何だよ俺という存在に肖るんだぞ?これぐらいどうでもいいじゃん、どうせ上手くいかなかったら離婚すればいいし。

 

 

「私との関係は?!これまでは遊びだったの?!」

 

 

「惰性です」

 

 

そしてこの魔女さんとの関係は打算、悪かったな俺がヘタレで、。

 

 

「嫁入りですか...

いえ私達に性別は関係ありませんね?改めて宜しくお願いします?」

 

 

頭トンでんなぁ、いやマジでアヘン効き過ぎだろ...私達に性別は関係ありませんねなんて言葉は超越者である第三階梯魔術師でもそうそう出ない言葉なんよ。

 

 

「酔わせて付け入るなんて悪趣味」

 

 

あーガチで軽蔑されている顔ですわ...

 

 

「メンゴ」

 

 

「堂々とした宣言ね...嫌いじゃないわ...」

 

 

オデコに『衝撃』を1発

 

 

「アヴェチ!!」

 

 

悪は滅びたらしい...

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「なあアリシア、()()()っていい場所かな。」

 

 

「人々は裕福な暮らしを送れていますし人を踏み躙る存在も居ない、()を生きている人々は幸せそのものです。

——活気のあるこの街の光景が続けば、続ける事ができるならいい国です。」

 

 

「だよねぇ...

——実はこれは続かないのよ、あとからこの喜びと同じぐらいの苦しみがやってくるんだ。」

 

 

「夢も希望もない話ですね」

 

 

彼女はしおらしそうに俺の言葉を受け入れてくれた、俺の使い方をよく理解していらっしゃる。

 

 

「夢は与えた、けど()()同じ夢を見過ぎた。」

 

 

中途半端な善性の発露、明日か明後日か遠くない未来で迷宮に身を投げる人が多数現れるだろう。

——仕方あるまい夢も希望も楽園も存在しないんだ、あながち天使や一部の妖精共の思想は究極的には正しいのかもしれない。

 

 

残念だが俺は上手くいかなかった、たかだか10年の楽園と言えど短かったな。

——1000年かけて発展させていくつもりだったのに、たった一つのきっかけでこのバブルが発生したんですわ、俺の目標は撃沈したのである。

 

 

中途半端に終わってしまったのは仕方ない、人間始まりから終わりまでその全てを把握できる訳ではないからな、こうなったら次の新しい取り組みを始めるだけだ。

 

 

永遠に世界が広がるのなら別なんだろうが、魔術があり資源が間接的に無限でもこの世界のリソースは有限である、悲しいね。

 

 

「まあこれからも頼むよ、幸い資源には余裕ができた事だし悪辣にいこう。」

 

 

「勿論です、いつまでもお供しますよ。」

 

 

迷宮の内側の事柄以外だと全て善性で動いているんだよなぁ、今の俺に必要な人間だ、彼女と一緒に居る事ができてよかった。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「この街に新たな住民を、正確にはとある妖精を受け入れたいの。

...紹介してもいい?」

 

 

「おん?いいよ?

あれでも来るもの拒まず去る者追わずの精神だったから誰も拒んでない気がするが...

まあいいよ、通して。」

 

 

「初めまして救世の『主』殿、どうか我らにこの街に入り暮らし生きる事を許しては頂けないでしょうか。」

 

 

そう彼女が紹介したのは、小さい肉体に緑色の肌を持った妖精のゴブリンであった。

 

 

「んーいいよ!!」

 

 

「えいいの?!私が紹介したのも何だけど...

ほらイリエって昔あんな体験をしてたみたいじゃない、正直私も殺されかける事を覚悟してたんだけど勘違いだったわ。」

 

 

「俺はあの時にあそこに居たゴブリンが嫌いだっただけだし、別にいいよゴブリンでもドラゴンでも故意的にこの『世界』を不安定にさせない存在ならね。

——何よりも税を払い社会に順応し道徳的な人道を兼ね備え、自ら進んで社会に奉仕し高い意欲で日々を精力的に生きる存在なら誰でもウェルカムだ。」

 

 

常識的な人間性を持っているなら死ぬまで排斥しただろうね、ただ俺はマトモな人間性を発露する事はできないんだよなぁ、主観に囚われてしまうんだよね人間って本当に。

——やっと今の俺の精神状況を理解してくれたのかな、それとも彼女が見ているのは今の俺じゃないのかもしれない。

 

 

「どこの妖精かは知らないが出自は問わん、よく食べよく学びよく働け。

——衝動的な攻撃性をこの街で発露させる事は許さないから、マクロな問題だったら解決方法を探すけどミクロ的な問題で強姦とか殺人を無差別に起こすなら種族ごと消えると覚悟してね。」

 

 

「ハイッ!!勿論です!!」

 

 

俺相手に恐怖しスギィ、この人に関しては腹の底が見えないな、いやまあ底を取っ払っているだけかもしれないが。

 

 

俺が常識的な感性を取り戻した時が怖いわ、絶対に離れていくもん。

——ともあれ彼女が居てくれてよかった、彼女が見た俺を取り戻した時は何もない穴に消えるその時まで一緒に居たいね。

*1
Switchblade愛しの米帝が開発した自爆突入型無人航空機、ウクライナ戦争で歩兵に擲弾を投げつけたりしているのが300型で戦車に特攻したりしているのが600型、迫撃砲みたいな方法で飛ばすのが主人公と相性がよさそうと考え採用。




本作品は薬物の范曄を推奨しておりません、法律に則り正しく使用して下さい。


本編終わったんで番外編が始まり申す、次はエピローグですね。
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