転生したらTSふたなり聖女だった件 作:自給自足日常系異世界ファンタジー作家
妖精達は全て鏖殺する予定だった、だがやめだ。
戦争というか人間同士の殺し合いにおいて腕力とか脚力とか大した関係を持たないのよ。
——ただ手首を少し動かせれば十分、それだけで人間は殺せるんだからな、何だったら銃じゃなくてナイフでも精鋭兵をそこら辺のガキが殺せる。
俺はヘタったんだよ、この異様な数のゴブリン相手に。
——ゴブリンの数が多過ぎる、数を減らすなり自分がより強くならなければ返り討ちに遭いかねない。
俺は理解したよ、ああいう何でもない数だけが取り柄の存在こそが何よりも怖いんだって。
——俺が何かをしなければ彼らに殺されるだけ、コイツらを養わないと俺が殺されるってな理解しちまった。
妖精への魔術の効果は薄いから、焼き殺そうにもコッチが先に一酸化炭素中毒になっちまう、ヘタな事はできねぇんだわ。
そして今の俺に、1000の妖精その全てを殺し尽くす力はない。
——故にこいつらを疲弊させ、反抗しようなどと行動する阿呆が生まれる前に全滅させる、もしくは自尊心を根刮ぎ奪い骨抜きにするんだ。
そして来たる翌日、妖精達は様々な献上品を用意してきた。
人は正しく在りたがる、じゃなかったら誰も戦場になんか出ない。
——人間の愚かなところではあるがこの妖精達も同じらしい、名誉と名声を彼らには捧げよう。
代わりにそれ以外の全てを奪わせてもらう
地位と名誉で雁字搦めにして、不必要な思考力を奪ってやる。
ある者は力の象徴となる武器を、またある者は主のペットとなる人間や家畜を、またある者は立場ある者へ良質な食事を捧げた。
それら捧げられた献上品、その全てが受け入れられた。
——妖精の捧げてきた食は主を癒した、ペットとなる人間の女子と馬畜は主を楽しませた、そして最後に主は力の象徴となる武器を手にし大いに喜び杖を掴んだのである。
我らを知恵と力で導く偉大なる指導者、偉大なる救世主なのだ。
主は馬畜と毎日の様に外へ出かけ、日々妖精達を付け狙う魔物達を討ち果たした。
ペットは毎晩の様に主の無聊を慰める、だが三日程で飽きが来て捨てられてしまった。
——元気だったニンゲン、ペットだったモノは主に忠誠を誓った民の食料となった。
以後3日を目処に奴隷が運び込まれる事になった、その役割を経て地位を得た若き妖精はより一層勤勉に働いた。
次々と主は民に地位を用意した。
国はより繁栄し主は民を守り、民は主を支える理想郷そのものだった。
だが120日という長い時が経ったある日、そうそれは主が即位してから各地位を継承した者達が3代目となった時の話だ。
国には老人と子供しか居ない、若い者達は主の忠誠を顕示する為に身を散らしてしまったのだ。
——そして民達は命を果たせなくなってしまった、民は主を恐れ明日の食事を求めて国を捨てた。
そこに残った無数の子供と老人達、
「役を果たさぬと言うのか?」
我らの偉大なる救世主
——永遠の命を持ち、正しき力を扱う救世主を相手に口を開く。
遠い昔に弱く矮小な我らを救い、知恵を授けた救世主に首を垂れるしかないのだ、力なき子供と衰退の狭間で足掻いてきた老人達は明日を生きる為に最後の希望に縋った。
「申し開ぎのじようもございまぜん」
「ぜめで小さな兄弟が育づその時まで」
毛並みに艶のある馬畜それ以下の扱いなれど、主に我々が救われてきたのも事実である、真摯に最初で最後の寵愛を民は主に求めたのだ。
「面を上げよ」
主は謳う、明日の暮らしと名誉を最後の救いとして求める彼らに。
「貴様達の望む正しき場を作る為にこの役目を負ったのだ、それを果たせぬと言うのならば応える道理がないだろう。
——最後は正しい姿のまま、誇りを持ち矜持を抱え死ぬのが救いである。」
周囲では痩せ痩けた子供や手足を失った老人達が横になっている。
国は内々の成熟という名の停滞によって、少子高齢化という問題によって内側から崩壊したのだ。
私は救世主様の為に使命を果たしました
明日の食事のための仕事をください
そう書かれた板を持った者達が無数に居る
目の前に正しき我らの救世主が現れた、人々は救いを求めた。
だが一瞥しただけで何もなかったかの様に通り過ぎていった、正しき存在は正しき者達を救う事をしなかった。
...正義を信奉し正義を果たした彼らは、正義に救われる事はなかったのである。
役割を託された者達は救世主からの処罰を受け殺された、一時期は1万を超える数に至った群れはこうして滅んだのである。
正しき者達は世界と共に滅び、そこでは秩序なき者達と不毛の大地で全てが覆い尽くされた。
——彼らは矜持に生きて繁栄し、矜持に滅ぼされたのである。
彼らが信じたモノは救世主ではなく、自分を救ってくれる存在の偶像だったのだ。
「といったところだろうか?」
と一人の少年?は口を開いた。
見様によっては奴隷から王になった者が建国した理想国家、その末路というべきか?中々に多くの事を学べる環境であった。
俺も狂信は程々にしないとね、いい経験になったな。
——3代目で整合性の取れた社会は潰れるってのは本当だったみたいだ、本当に勉強になったね。
正しき事を果たせて満足だ、この悪辣な妖精達への復讐劇として中々に満足できる結末だった、空虚ではあるしやり過ぎた気もするけどね。
——ここまで悲惨な地獄を創り出す意味があったのか、否そんなはずはない、ただ人に裁けない性分だっただけだ。
正義を貫いた末に生まれたのは混乱だった、何かを為すにはマンパワーが必要であり、群れという組織の維持に必要なソレを俺を相手に浪費した結果土台から崩壊したわけだ。
でも気は晴れたさ、今世ではこれを教訓にして、自分を食い潰さない程度に人生を充実させよう。
などと考えながら、ペットの馬と共に泉に浸かる。
——その馬に話しかけながら、これからの予定を決めるとしよう。
因みにその馬の名前は『バンバ』だ、輓馬だからバンバという安直なネーミングである、まあ種類は知らんがデカい種類だから輓馬ね。
「バンバは本当に可愛いなぁ!!
とりあえず人の居る場所に行こうと思うんだ。
妖精達との暮らしも悪くなかったが、何だかんだ人間社会の快適さには劣る。
腰もそろそろ落ち着けたいし、人肌も恋しいからな。
——どうだ?」
1代目の英雄達が俺に捧げた至宝を横手に置き水浴びをする、体高2m体重1.4tに達する巨躯と共に休憩だ。
バンバも頬ずり返してくれたから、まあ言葉は通じてるか知らんが同意してくれたのだろう。
俺の腹や胸の傷跡は残ってしまったが俺の肉体と魂は健康体そのもの。
その傷を舐めるバンバちゃん(オス)
我が愛しの愛馬が可愛過ぎる件、ギンギンに陰茎を肥大化させながら膝枕を強請るコイツの存在は傍目から見たら色々とヤバいけど。
あそうそう馬の汗ってセラリンっていう界面活性作用のある物質が含まれていてね、衛生状態の維持に一役かってくれてるんだよね、いやぁこの子ペットにして正解だったわ。
いやはや初代の“英雄”のセンスは素晴らしい、この子も魅力的で見ているだけで胸がドキドキするからね。
...なるほど
馬に手で触れながら恍惚とした表情を浮かべる少女の様な姿をした少年という、何とも珍しい光景が爆誕した。
それから三日後、周囲を放浪し続けて人と出会えた。
第一村人発見!!
「
と、噛み気味に村人第一号のオッサンに声をかけてみたが反応は芳しくない。
「...ん?ガキが何の用だ?」
第一村人系オッサンが、私に腰にかけてある剣に触れながら私に問いをかける。
まあこんな場所で人と出逢ったら警戒するわな、俺だってそうする。
——だがそれがこの人が安心できる要素の一つだ、逆にそのまま受け入れる人の方が怖いようん。
「悪いねおじさん、少しついて行っていいですか。」
俺はあなたの敵ではないと証明するために馬に武器を預けてから近付く。
「それ以上近付くな」
「あハイ。」
「要件は何だ」
最終的にオッサンの馬と横並びになった、こうして見るとデケェな俺の馬...行商のオッサンの馬の1.5倍ぐらいのサイズやん。
——私は先程の回答から進んだ話を続ける、互いの警戒心故だ今これ以上の距離を詰める事はしない。
「実は近くの街に行きたくてさ、行商の人でしょ?ついていっていい?」
オッサンは俺を一瞥してから答えた、正確には俺っていうか馬だけど。
「そうか、それぐらいなら構わないが一人なのか?」
「うんまあ町ごと消えたからねぇ」
「4~から5ヵ月ぐらい前の話か?」
「あ~多分そうだわ」
「生き残りが他にも居たんだな、
「拾いモンだからねぇ、前に飼ってた人が大事にしてたんだよ多分。」
そんな感じで何でもない会話を続ける、特に内容の意味はない、ただ互いに敵意はありませんという表明だ。
「へぇそうなのか、会ってどれくらいなんだ。」
「2から3カ月ぐらい前だね」
「ああ、確か数か月前にゴブリンに騎士様率いる討伐隊が負けたとかいう話があったな。」
そういや、やけにゴブリンの気前がいい時期があったな、まあ十字砲火を理解したゴブリン相手に軽装備の討伐隊が勝てる訳ないしな、そりゃ全滅するわな。
「多分そのゴブリン達を殺したんじゃないかな?もしかして知ってるのおじさん?」
「おじさん呼びやめないか?まだ18だしおじさんって言われる年じゃない。
あんま詳しくないんだ、ただまあ戦術を理解しているゴブリンらしい。
...もしかしてそいつらに勝ったのかお前?」
「魔物とか妖精を殺してたしゴブリン?の盗品?も拾ってたし
——っていうか彼らの蒐集物?を頼りにして生活してたからね、ソイツらも狩っているかも。」
嘘は言っていない、そう嘘は言ってない。
「おっかねぇなお前!!は?マジか?」
「そうだね」
「マジかよお前...」
妖精が上質な飯を用意してくれる環境、そして魔女の知恵を得る事ができたからだね。
...そのどちらが欠けても生きていけなかった、今考えると天の恵みそのものといっても過言ではないレベルだ。
その背景を知らないこの人が聞いたらそりゃドン引きするわ、俺もドン引きする。
結果的に自分を売る事はできた、多少仲も縮まったしついでだから色々と聞き出すか。
「お兄さん行商なんでしょ?
何があるか知らないけど色々売ってほしい、あと次の町の税制とか物価とか教えてほしい。」
「ふてぇ野郎だな、おい名前は?俺はアダン。」
「俺の名前はイリエだ、よろしくアダン。」
「よしイリエだな、情報料銀貨1枚につき一つ答えてやるよ、その銀貨の総量に応じて色々選ばせてやる。」
仕事モードに入ったなこの人...
ふぅむ銀貨か、まあ40枚ちょいぐらいはあるしいいか、金貨も10枚はあるし鉄貨や銅貨は腐るほどある。
銀貨1枚は高過ぎでしょ、銀貨1枚1000から10000円相当だとしても...いや妥当だな。
情報が買えれば交渉で吹っ掛けられる可能性が低下する、天に均しい巡り合わせだな。
でもぼったくりだと思うんだ...
「乗った、所詮妖精から奪ったモノだしね。」
「分かってるじゃねぇかイリエの事は嫌いじゃない、そんで何が知りたいんだ?俺の答えられる事なら何でも答えるぜ。」
お主もワルよのぉ、気が合うねぇ、友達になれそうだわ。
「とりあえず
1.税金
2.銅貨鉄貨銀貨金貨の為替
3.物価、正確には俺の食事と馬小屋を借りる為の価格。
4.仕事をもらえる場所の情報提供
5.大将のオススメ情報おねげぇしやぁす
とりあえず5つ、どうすか。」
「ふむ、まあいいだろう
1.町に人間が入る為に銀貨1枚で馬畜は4枚だ、そして領内で稼いだ金の3割を税として納める。
2.銅貨100枚で鉄貨1枚、鉄貨100枚で銀貨1枚、銀貨20枚ぐらいで金貨が1枚だ。
3.いい飯を食いたいなら一食鉄貨1から5枚だな、安くていいなら日によるが銅貨10から40枚、馬小屋で泊まるんなら鉄貨10から銀貨1枚用意しとくんだな。
4.職を探しているならギルトに行け、自分に合いそうな仕事を探すんだな。
5.大将はやめろ、肉料理がオススメだな、知ってると思うが濃いタレで食う魔獣が美味い。
あと...いや、坊主には早かったな。
まあこんなもんだな。」
飯が美味いのはマジで最高だ、アダンから色々と徴収した後にギルドとやらに行こう。
あと坊主には早かったって何だよ
「おい何が早かったか言えよぉ?」
「そりゃアレだよ、大人の遊びってモンがあんだよ。」
大人の遊び(意味深)やんけ、舐めんなこちとら女優(風俗嬢)の息子(娘)だぞ下手したらお前より詳しいぞ。
「いい話を聞いた、それはそれとして俺の事をジロジロ見てるけど何かついてる?」
アダンの目線がアレなんだよな、何か腕とか足とかジロジロ見てるの何でやろ...もしやロリコンか?ショタコンなのか?いやないな。
「すまない不躾だった、それと随分と肌の艶もいいな。」
ああうんイイもん食ってたからね、あと馬の汗。
まあ言っても信じないだろうからうん、ゴブリンのせいにしよう。
「それだけ妖精共がイイもん食ってるって話、あと馬と水浴びしてるから。」
「馬と水浴び...?
まあいいやお前は何で街に来るんだ?
わざわざ人のいる場所におりてくる必要ないだろ、その方がいい生活できるぜ。」
飯はいいモノばかりだった、当然であるマンパワーならぬゴブリンパワー全開で搾取しまくってたからな。
ただそれ以外の生活水準が低過ぎたのだ
バンバにもたれかかりながら布を被るのはバンバの身体に優しくない、あと味の濃いモノも食べたかった。
「味の濃いものを食いたいんですよ!!木の実も魔物の素焼きもいいが飯の味が薄過ぎるんだよ!!」
仙人もビックリの食事内容だったからな、量はそこそこだったけどね。
ゴブリンに捕らえられるまで特に食の拘りはなかったんだが、贅沢三昧の日々を送っている内に生活水準を下げるどころか上がり続けている。
ふしだらな女と笑いなさい!!
まあゴブリンに捕らわれた人間相手に楽しんでたからふしだらな女というよりヤリチン男だが...
「おお分かったよ...
なんだ、まあ頑張れよ。」
「おう、アダンには感謝してる。」
おじさん改めアダンに感謝をしつつ、町門から正々堂々入場す。
ちな行商のアダンからは
小さめのナイフや矢に、その他小道具とお守りに、蜂蜜とドライフルーツを少し巻き上げた。
タイトル回収まで時間がかかりそうですわ...