転生したらTSふたなり聖女だった件 作:自給自足日常系異世界ファンタジー作家
「あのねイリエ君?ごめんね?
帝国は妖精の奴隷売買を禁止しているの、ギルドでは買い取れないから、彼女のおうちに返してきなさい。」
「そんな!!」
俺ちゃん撃沈、やはりエルフさん置いてくればよかったと後悔中。
——異世界といえば奴隷貿易が蔓延っている上で、法も倫理も何もない世界じゃなかったのか?うせやん。
「昨晩街から姿を消したと思ったらいきなり...
——どこからそんな大荷物をもってきたの?エルフの町でも滅ぼしてきたの?」
「ああこれは俺の故郷に住み着いてたゴブリン達を全員殺した後に、そのゴブリン達の住処を潰したところにあったものを拾ってきたんです。
元は人間からゴブリン達が奪ったモノなので持ち主なりが居るなら返しといてください、持ち主が見つからなかったら俺の住んでいた町の再開拓の時にでも使って下さいな。」
「え...えぇ?
まあ分かったわ、それで彼女は。」
「知らない、
「「「「...」」」」
うわコイツまじかよとドン引きする周囲の人々
「分かりました、ではこちら全て買い取らせていただきます。
——ですが妖精の奴隷を買い取る事はできません、彼女の通行料を払い即刻森へ帰してきなさい。
色つけてあげるから絶対に返してきなさい、面倒な事になる前に一刻も早く。」
二度手間だ、まあいいや色を付けて買い取ってくれるって言ってたし。
——物凄い剣幕で迫られて怖かった、やっぱ人間ってこういう部分が本当に怖いよね。
「あはい、分かりました。」
そしてその瞬間、この世の終わりの様な顔をしながらゲロを吐いていたエルフが目を覚ました。
「水...うっ...」
あ、また吐いた。
「「「「...」」」」
「...何て言うか、まあソファー代引いといてください。」
「い...ぃえ、これからもどうぞ御贔屓に。」
禿げたオジサンがドン引きしながら俺に一声かけてくれた、あんたもっとドッシリせい。
いやはや、合計いくらになるか本当に楽しみだ。
...ただねぇ、使い切れるのかなぁ?俺もドゥトラスさんみたいに傭兵団でも組織してみようかな、もしくはそれ以上の何か。
「ありがどゔ面倒見でぐれで...」
うん俺この人の事を一生エロい目で見れないわ...
「命拾いしたなデカパイ金髪蒼眼エルフ。
——どうやらお前さんは奴隷として売れないらしい、帝国は妖精を奴隷として取引したらいけないんだって。」
「それはそうよ妖精との貿易もあるし、魔物が居る限り帝国国内で人間はともかく妖精の奴隷は認めないでしょうね。」
何故で人間しかいない世界の方が秩序が機能していないんだ...
あっちの世界なんか奴隷売買されまくりだったんだぞ、てか俺が売られてたし、どうなってんだこの世界は人間が人間に優しくて脳がバグる。
「それって妖精の国なら妖精を奴隷として売る事ができるって事?」
「いや無理ね、人間が妖精の奴隷を妖精の国に売る事はできないわ。」
つまり人間は人間の国で人間の奴隷しか売る事ができないし、妖精は妖精の国で妖精の奴隷を売る事しかできない訳だ、そう美味しい話はないのか残念。
「じゃあ帰っていいよ、邪魔だしねさようなら、行くぞバンバ。」
背中にまたがったあと、バンバがひとりでに馬小屋に戻っていく。
その瞬間アホエルフはバンバの後ろに立って俺の手を掴んだ、バンバのガチキックが命中しブッ飛ばされる。
——間違いなくアホである、馬の後ろに立ってはいけないと習わなかったんですかね?知らないんだろうな、もしくは強くなり過ぎて忘れていたか。
「いや待ってごめん待って、謝らせてごめんだから少し待って。」
「止まらなくていいなら話を聞いてもいいけど」
そんな晴れた顔しないでくれ何か俺が悪いみたいになっているから...
でもそれは俺に限った話じゃないか、そもそもこいつがゴブリン殺しを止めなきゃこんな面倒な事にならなかったんだからな。
ただの自己中心的な暴論だなと考えながら、彼女の言葉に耳を傾ける。
「何から何までごめんなさい、実はあの子、『衝撃の魔女』と言われてた彼女は私の弟子でもあったの。
——あの子に教えた魔術があんなことになってしまいました、あなたの母親と父親が死んでしまったのは私のせいです、ごめんなさい。」
父親?今世父親なんか居なかったが...
あ、
「別に恨んでないしアレは父親じゃない、他に何かあるかな。」
「あなたの事を何も知らず一方的に糾弾してごめんなさい、あなたの辛い過去を知らず私の一方的な感情を押し付けてしまいました。」
「知らんわそんな事どうでもいい」
俺も相互理解する気なかったのにね、そんな俺の記憶がトラウマになったのか。
——でも大して珍しい話じゃないと思うんだけどな?
俺もゴブリンからエロい肉付きの女冒険者を融通してもらってた訳だし、同類なんですが?うぅむ沈黙は金だな。
「それから一つもう、私はあなたについて行きます。
とても見てられません、あなたがゴブリンや妖精にこれ以上酷い事されるのは私の心情的に嫌です、何から何まで不安です。」
お前も妖精じゃねぇか...ん?
「...は?」
てかさ...俺もこいつに心配されているの?
——俺からしたらコイツの方が不安なんだけど、え何これ俺が間違えているのか?いや違う間違っている様に見えるだけだ世の中絶対はない。
思考やめやめ、雑に考え直そう。
「あなたの心も不安定ですし、謝罪も兼ねてついていきます。」
「好きにしたら?」
来る者拒まず去る者追わず、我が人生のそういう抱負みたいな?一人で生きていけるしうん適当だな俺。
「ありがとう!!」
「あそうそう、君の分の通行料払ってないから一回こっそり町から出て払っておいで。」
「払ってないんですか?!」
「いや奴隷って密輸が基本でしょ?」
「どこでそんな知識を学んだんですか?!犯罪ですよ?!」
マジかぁ壊れるなぁ...
彼女の肩に触れてから顔を近付けて、見開きながら真剣に言葉を紡ぐ。
「俺は犯罪者にもなりたくないんだ、帝国からの褒章もあるしな頼む。」
「はい...」
(´・ω・`)みたいな顔をして彼女は頷いた、陽キャというより光属性が強い陰キャみたいなのが見てて何か辛い。
——いやまあ嫌な訳じゃないんだけどね?
例えるなら久し振りの運動を友人に誘われたら、いきなり腕立て腹筋背筋100回3セットをさせられている感じ。
「イリエはどこで魔術と戦い方を覚えたの?」
「記憶見たんでしょ、なら分かるでしょ。」
「そこまでは見ていない、簡単に引き出す事ができる表層の記憶を少し見ただけ。」
簡単に引き出すか、俺も何だかんだトラウマになってたんだな。
...まあ話すぐらいしてもいいか、減るもんじゃないし。
「これ読んだ、魔術覚えた。」
何て言うかすげぇカタコトな言葉が出てきたんだが...
「あの子が使っていた魔術書ね、でもどうやって覚えたのかしら。」
たまげるだろうなこの人も...
「ここ見て、この魔法陣。」
「魔術回路と魔力神経を無理矢理拡張する効果があるみたいね...もしかして触れて魔力を流したのかしら?」
「そう」
またドン引きされてる、何度も考えるがよく生きているな俺。
「それで彼女の魔術を自分なりに習得したの?第三階梯魔術師?」
「まあそうなるらしいねぇ、多分。」
「無理矢理魔術回路と魔力神経を魔女と同等にまで広げられてピンピンとしている人間が居る事が信じられない、悪魔とかが乗り移ってないわよね。」
「俺は悪魔じゃない、てか自分にも洗礼魔術系統の魔術を使いまくってるし悪い事をする前に昇天するだろうな。」
「洗礼を受け杖を所持している通り司祭の位を受けているのよね...どっかの隠し子?」
またこの話だよ、何回言われるんですかね。
「父親は知らん、ただ母親は女優やってたからねぇ過去も知らないし答えられないわ。
——まあ見た目はピカイチだったから貴族の可能性はあったかもね、あと俺の隠し事を知りたければもっと仲良くなりなさい。」
「そうね、根掘り葉掘り聞いてごめんなさい。」
「うむよろしい、それでさ、まあエルフさんの名前何なの?呼び方が分かんないしさ。」
「教えてないっけ?」
「教えてない」
そういや俺受付嬢さんの名前も知らねぇや、今度それとなしに聞いておこう。
「えっと...
今は『ヘレン・アレイク・レイアス』になるわね、あなたの名前も教えて。」
『今は』って...
——長く生きてたら名前は変わるもんなのかな、まあいいや。
「イリエ・リエンデールだ、覚えたよヘレンさん。」
相変わらず超美人だわこの人、耳の垂れ具合を見るにまあそこそこ年を喰ってるみたいだけど。
「分かったイリエちゃんね」
...こいつチンチンとタマタマ切られた記憶見てないのか?
それとも小さな子供は誰でもちゃん付けするタイプか、あらやだエルフって大胆、俺の事は子供としてしか考えてない。
「ほいほい、それじゃ俺は飯食ってくるから、ヘレンさんは町に再入場しておいで。」
「分かった、ここで待っててね。」
「え嫌だよ」
「ここで待っててね?」
「あっはい」
とんでもない魔力の塊を掲げられて脅迫された、正直怖かった。
「イリエに指名の仕事が二つあるわ、一つ目は貴族のお坊ちゃま達への魔術指南、二つ目は迷宮で採掘を行う為の派遣調査団の護衛、前者は個人だけど後者はドゥトラス傭兵団の一員として参加してもらうわ。
——取り分が多いのは貴族のお坊ちゃまへの魔術指南金貨120枚、ドゥトラス傭兵団の一員として派遣調査団の護衛を受ければ8枚ってところね。」
金貨120枚とか馬鹿でしょ、まあ教えられる程詳しい訳じゃないからパスだけど。
——正直貴族とか面倒くさい、帝国は褒章とやらをとっとと寄越してくれ、俺はニート生活と洒落込むからな、権力闘争には関わりたくないゾイ。
「派遣調査団の護衛で」
「分かった貴族の坊ちゃん達への魔術指南ね、受けてくれて助かるわ。」
無理矢理だな、絶対に嫌だよプライドに溺れた人間モドキなんぞ手に負えんわ。
「俺は魔術を教えられるほど造形深く知っている訳ではない、実戦的な手合わせをしてやれるぐらいだぞ。
——絶対にその辺の魔術師にやらせた方がいい、それにお高いお貴族様は血生臭い事が嫌いだろ?一切関わりたくないし絶対に嫌だね。」
「既に名が売れているし不可能な話よ、それにイリエくんの為でもあるの、馬鹿な貴族に舐められない様に力を示してきなさい。
——イリエくんは教師でもありお客様だから好きに周囲を振り回せばいいの、貴族の御子息御息女様達を相手に実戦的な指南をしてきなさい。」
「ならそういった魔術の指導は私に任せていいよ」
そうストーカーエルフは口を開いた、無給だけどいいのかな?いやまじで。
「銀貨1枚もやらんぞ」
「タダ働きでいいよ」
俺だったら絶対に嫌だね、いや本当にマジで。
「はぁ、なあエヴァさんギルド内部でかなり留保しているでしょ?その中から金貨一枚彼女に渡しておいて。」
「んーいいよ、それくらいならね。」
金は命、故に依頼ならば報酬は出すらしい。
...それが依頼者のストーカーでも、信頼の問題なんだろうか?分からんけど。
俺もタダ働きはさせたくない、後ろを刺されて死にたくないからねうん。
「それで出発はいつ?」
「今すぐにです」
お嬢改めルルさんにスーツケース?
に入った金貨を手渡しされた、メッチャ重い。
何か凄そうな馬車が来た、言っちゃアレだが下品な装飾だな。
「我らが救世主聖女イリエ様、お迎えに参りました。」
「...ん?」
なぜ俺はイケメンに跪かれて女扱いされているのでしょうか、どうしようメッチャ気色悪い。
——いや無いわ、てか俺は男だぞ普通に握手でいいじゃねぇか、いやでも半分っていうか外見は女か。
当然俺はその馬車とやらに乗る気はない、正直棺桶にしか見えないし何より趣味じゃない。
——あのドチャクソイケメンな強そうな騎士が居れば殺される事もないだろうけど、でも何より女扱いされるのが嫌だ。
そのまま手を引かれて悪趣味な馬車に乗せられるのは気分が悪い、俺はさりげなく手を離し馬列に加わった。
俗に言う無礼な態度をとったのにあの王子が
困った様な笑顔で手を振ってきやがった
余裕のあるイケメンはイラつく、俺達底辺は人に笑顔を向けられるだけで自尊心を傷付けられるんや。
彼女は僕の手を放した、拗ねてしまったみたいだ。
婦女子との関わり方は理解しているつもりだったけど彼女には通じないか...一度目が合ったのに逸らされたところを見ると魅了の魔眼も効力を発揮できなかったみたいだし?
魔術的な耐性が高いのか、狂信的なまでの
——そもそも魔眼程度で救世主である聖女を手籠めにできる筈がない、本物の救世主の可能性も生まれてしまったな、とてもそうは見えないが。
礼拝協会の騎士達に救世主を偽る何者かに苦言を呈する胆力はないか、所詮権威を振り翳すだけか。
気晴らしに外を見たら聖女と目が合った、美しい顔立ちの彼女に手を振るが顔を逸らされてしまった、つれない御方なのだと考えておこう。
野営の刻に探ってみようか、聖女として救世主としてでもない彼女を。
——恐らく彼女は聖女でも救世主でもない、婦女子に迷宮の主が殺せる訳がない。
恐らく礼拝協会が迷宮の主が討伐された事実に肖ろうとしたに過ぎない筈だ、それを為したのは彼女の横に居るエルフという可能性が高い。
——聖女として認定された彼女に魔術の指南ができる訳がない、そもそも救世主は洗礼魔術を扱う第一階梯魔術師なのだから、彼女が黒魔術が使える時点で聖女でも何でもない魔術師でしかない。
...礼拝協会はどさくさに紛れて彼女を謀殺する気だったのか?
自分達の権威を誇示した後に邪魔者を事故に装い始末するそういう筋書きか、短絡的な、彼女を殺せば名誉はそのままという訳にはいかないだろうに。
彼女自身あのエルフに利用された生贄に過ぎないのだろうか、可哀想な子供だ。
——だけど一つだけ懸念点がある、偽物の救世主等という存在に向けて礼拝協会が暗殺者を送っていないとは思えない、第三階梯魔術師も多く送り込んだに違いないが、たかだかあの少女一人も殺せないとは思えないのだ。
情報はないがあのエルフも魔力の巡りから見て第三階梯魔術師だろう、ならば迷宮の主を討伐してもおかしくないが、協会の暗殺者を退けられる程とは思えない。
何かが居る、この騒動に紛れて魔女を誅殺し迷宮の主を殺した本物の黒幕が居る、それとなしに探ってみるか。
「失礼致しましす聖女イリエ・リエンデール様、馬車はお気に召しませんでしたか?」
彼女は私を一瞥してから一呼吸おいて口を開いた
「気に入るも何もねぇそれに関しては口を開きたくないや...」
「そうでしたか、失礼致しました。」
それ以前の問題という意思表示だろうか、年齢にしては聡い少女だ。
——できない理由があるのかもしれない、まさか馬車の装飾の趣味が悪いからという理由ではないだろうし...ケチをつけるならこれ以上の理由はないだろうが、うんきっとこれは建前なのだろう。
...彼女は何を求めている?彼女は何を伝えようとしている?
「迷宮とやらを攻略したら褒章が貰えるって本当?」
「勿論でございます、貴女様が偉大なる救世主ならば地位も富も人も思うが儘、唯一皇帝陛下に並ぶ存在となりましょう。」
「へぇ、俺が偽物の聖女、救世主じゃなかったらどうなる?」
「魔女の誅殺と迷宮の主の討伐が本当ならば帝国からの褒章は出るでしょう、ただ貴女を救世主として認定した礼拝協会からの風当たりは惨憺たるモノとなりましょう。」
「はぁ...なあ王子様これら全部なかった事にしてくんね?
ああ褒章は貰うけど、君達が呼び込んだんだ俺は面倒な事に巻き込まれたくないしそれぐらいの事はしてくれるだろ。」
「はぁ...」
彼女からの回答は思いもよらぬモノだったのだ、曰く彼女はその両方に手をかけた人間ではないらしい、そう断言した。
「魔女を殺したのは俺ではない。
彼女は俺と答弁を交わした後に自殺したんだ、迷宮の主とやらと戦いはしたが俺がトドメを刺した訳ではない、俺がお邪魔していた傭兵団の人達が俺が弱らせた魔物にトドメを刺したんだよ。」
魔女の自殺に居合わせただけで自分は手を下していない?
迷宮の主を弱らせたのは自分だが、最終的に手を下したのは同じ傭兵団に所属していた仲間だと?荒唐無稽にも程がある。
彼女の真意が分からない...彼女は私に何を伝えたいのだろうか?
——陰謀に巻き込まれていないと言っている様なモノだ、そんな事が有り得るのか?全てが偶然だと彼女は言っているのか?信じられない。
迷宮の主も魔女もこの少女の前で死んでいる、偶然と言えるモノではない。
——何よりややこしいのは彼女がそれを為すのに相応しい人間ではないか?
という可能性だ、魅了の魔眼も通用せず我々大勢の騎士や魔術師を前にして動じない胆力は一朝一夕で身につけられる度胸ではない。
「失礼ですがとても信じられません。
全てが偶然の出来事であり、神敵を討ち果たしたのも自分ではないと言いたいのですか?」
彼女は頷いてしまった、否我々が同調せざる負えなくなった。
「これだけ巻き込んでくれたんだ褒章は払ってもらう、互いの勘違いの末に起きた出来事だからな、ちゃんと礼拝協会とやらを宥めてくれよ。」
——彼女は我々の求めていた救世主だったのだろうか?
帝国は魔女迷宮の主救世主を上回る大いなる存在を、下らない政争に巻き込んでしまったのではないだろうか。
...最低でもあの第三階梯魔術師のエルフを上回るのだろう、恐らくそれ以上のナニかなのだ。
「...承知致しました、どうやら行き違いがあった様です。
委細お任せ下さい、私の名前は皇太子の名において任を果たしましょう。」
「皇太子様が名を賭けて動いてくれるのか、なあ皇太子さん名前は?すまないな、これまでの不遜な態度は許してくれ。」
「とんでもありません、偉大なる御方よ。
私の名前はフリードリヒ・フォン・ハイエンシュタイン、皇帝ユリウス・フォン・ハイエンシュタインの第一子でございます。」
「分かったフリードリヒ、改めて私の名前はイリエ・リエンデール、しばらく世話になる。
——それに偉大なる御方はやめてほしいな、もっとフランクに呼び方はイリエで頼むよ。」
私は彼女の事を何も知らない、そして彼女は想像していた存在とは違った、何を探らなければならない出来事が有う事か。
「ではその通りに、任せてくれイリエ。」
イケメソ騎士改めて皇太子フリードリヒさん、いや何て言うかもう何でもいいって感じだ。
彼がここまで来た経緯が悲惨で悲惨で...
曰く礼拝協会とやらと仲のいい手合いが救世主紛いのナニかを迎えに行くには都合が悪かったらしく、礼拝協会と険悪な皇太子が得体の知れない化け物を迎える事になったらしい、曰く生贄空洞化した帝国権力の麻痺の結果だとの話だ。
——悪かったな得体の知れない化け物で、いやマジで苦労してるんだねこの子も。
まあ数日彼と仲良くしつつ、飯を食い昼寝するだけの日々を過ごしてくれればいいらしい、そんで王都では誰にも跪かずに適当に暮らしているだけでいいんだと。
「なあフリードリヒは普段どんな遊びしてるんだ?」
「ダンスとかお茶会とかが多いね、仲のいい人とは絵を描いたりボードゲームをしたりしているよ、あとは魔術を学んだりとかかな。」
「お~多芸だねぇ、色々と頑張っているんだな。」
俺の人生その全てが一芸特化だったし趣味は競馬だったからなぁ、芸術のゲの字も知らないし絵の上手さは幼稚園生とトントンだったよ、その点フリードリヒは自分の為に頑張っているんだな。
「この僕でもできない事は多いよ。
音楽の教師や絵の先生は授業前はピチッと着こなしているけど授業後は服装が乱れてばかりだ、僕の歌の前に全ての妖精が振り向くと称えられ芸術の先生には芸術的と授業の度に褒められている。」
「芸術方面のセンスはからっきしなんだな、何か親近感沸くわ。」
「当然
「うんうんそうだな、俺も得意なのは射撃とCQCぐらいで他はからっきしだよ。」
その点俺は叩き上げだけどコイツは訓練でそこそこやれるんだよな...
バカみたいに気が合うのが面白い、イケメンで何でもできそうなヤツでも案外普通の人間だった、いやマジで芸術方面に疎いのが好感度高いわ。
「そんな僕達にも異なる部分がある、僕が欲しいのは今の僕にないものだ。
僕は欲しいものを全て手に入れてきた、だけど一番欲しいモノは手に入れられてない、ねえイリエ僕の欲しいものが何か分かるよね。」
ただ事ある事に口説いてくるのだ、いやマジでやめとけよ俺も半分男だぞ。
...ここだけは相容れない、どうしたらそう簡単に人を口説く事ができるんですかね。
おいロリコン、お前こちとら確か11歳のTSふたなり女?だぞ今の内に止めておけ。
——いやそれでも5歳差か、案外普通かもしれないな俺なんか洞窟で年齢不詳のエルフや若い女の子を何人も犯してるし、うん誰にでも対等に接する善性極まった王子様だわ。
あと恋した人間が男だったとか可哀想にも程がある、もしくはその辺不足し過ぎて男でもokになってしまう可哀想な人間の何方かだな。
「それに関しては止めておけ、その理由を説明するのはもう少し仲良くなってからだな。」
「僕はイリエの事が好きだからね、ながい時間をかけてその事を話してもらえる人間になるよ。」
「俺も好きだよ、まあこれからも仲良くしような。」
括弧友達として括弧閉じ
紛らわしい事を言うのぉ君は、俺は友人が欲しいだがなって...まあいいや。
お前は友達に母性と友情を同時に求めるのは止めなさい、君のお父さんが困ってしまいます。
...予め伝えておこう、流石にアレだわケツ穴刺されそうで怖い。
「一つ勘違いしているみたいだから伝えておくよ、俺は男だ。」
「...ん?
——またまた冗談は止めてくれよ、礼拝協会が君の事を聖女だと予言したんだぞ?そういう冗談は通じないよ。」
汗をかいて目を逸らす皇太子様...すまんな現実は残酷なんだ...
「男にしか分からない事を教えてやろう、股間を蹴られると痛いを通り越して無となるから立てない。」
「ごめん蹴られた事がないから分からないな」
何か急に元気になったぞ
「自分で持つ収集物は凄い多い癖して脈絡がない」
「僕は特にそういう事はないかな?」
さてはこいつ与えられたものを使い捨てしているな?
ロマンに生きないタイプか、畜生芯まで王族だぞコイツめ。
「お気に入りのAVを保存したて切り抜き編集する」
「えーぶいって何だい?きりぬきへんしゅうとは何かの魔術かい?」
異世界にはそういうモノはないようですね当然である...もしくは王族貴族だから必要ないとか...
どうやら男のフリをする友達兼小さな女の子みたいな扱いになったらしい、未だ女として見てきやがる。
「俺に対して友愛や親愛に限らず、それ以上の感情を持っている事は理解したよ。」
「そうだよ?」
ハッキリと言ってきやがる...
「俺は男に興味ないんだ、何度も言うが俺男だし、だからそういった願望を抱くと後悔するぞ。」
「分かったよ、イリエとは友人として接するさ。」
絶対に理解してない、勘弁してくれよ。
「ねえイリエちゃんはまだ寝ないの?」
俺が焚火の前で鶏肉を焼いている時にヘレンと名乗るエルフに話しかけられた、何でもないただの暇潰し、深夜一人寂しい時間という永い無聊を慰めるだけの無駄な時間を潰す相手に俺を選んだらしい。
「そうだなまだ寝ない、腹が減ったからな夜食を食べてから寝るさ。」
「へぇーなら私も1本貰っていい?」
ほう?奴隷の分際で俺の夜食に手を出すか...
まあいいか焼き鳥の予備は沢山あるし、別に食事には困ってないからね。
「別に構わないよ、美味しいモノではないけどそれでもいいかな。」
少しの塩と食べれる野草で味付けをしただけだからね、ああ醤油が欲しい、濃いタレを塗れるだけ塗って食べたい。
「店として出せるぐらい美味しい」
「そりゃどうも」
「イリエちゃんって何が好きなの?」
何でもない会話だな、まあいい天気ですねとか言われるよりはいい選択だな。
「特に趣味はない人間だよ、強いて言うなら食事かなぁ、今の自分の手に届く遊びの中って条件になるから趣味っていうより暇潰しに近いけど。
——趣味という否根源的概念を理解する機会というか、それを構築する余裕がなかったからね、結果雑に快楽が得られる食事が趣味と言えるかもしれない。」
いや違うわ、前世の後半ならそんな機会はいくらでもあった。
——でもな、何もやる気が出なかったんだよな。
「そうなんだ、昔から理由もなしに打ち込んできた事はなかったの?」
「そりゃあねぇ、強いて言うなら競馬かな。」
「競馬?」
「賭博だよ、馬に走らせたり重いモノを牽引させたりして競わせるんだよ。」
まあ俺は輓曳競馬に行った事ないんだけど、毎回タイムを競うレースだったね。
「へぇそんな遊びがあったんだ、本当にこの世界は広いなぁ。」
彼女なりに感心する部分があったらしい、そうだ世界は広いのだ、本来は人の片手に収まるモノじゃない。
「...」
「趣味は女を犯す事とか言うかと思ってた、第一印象って大切ね。」
失敬なあれは自己防衛の一種だ、いやまあ『楽しんでいたんだろ?』と聞かれたら否定はできないけど、その辺の女の人を問答無用で犯す様な狂人染みた事はしない。
「失敬な、エルフさんには俺がそんな堂々とした大物に見えるのか。」
「見えない、常に何かを怖がっているし普通の人が感じる事もないナニかを恐れている。
普通の人間よね、うん。」
何かを怖がっているしナニかを恐れているか、間違いじゃないな。
——てか人間観察能力が超能力者のレベルなんだが、いやまあ魔術師は超能力者か。
これは彼女なりに俺の為に声をかけているんだろうね、まあ俺なりに言葉を返そうか。
「...前置きの長い話になるけど大丈夫か?」
「ええ、無駄に長い時間を全て使い切る勢いで話してください。」
そうだな、その通りだ、この無駄に長い時間を使い切ろう、そうすれば無駄な事を考えずに済む。
「なあエルフさん神って居ると思うか?」
「勿論、全知全能の存在は信じられないけど生者の魂が昇華されて生まれた神霊は存在するわ、だから神の存在は信じる。」
俺は全知全能の神は存在すると考えている、だけど存在を証明できていないだけなんだと思う、野生動物や鳥が罠という概念が希薄もしくは持たないのと同じ様にな。
鶏と卵問題だけど、人間が創造したモノではない本物の神が存在するなら、全知全能の神も存在すると言えよう。
きっとこの矛盾を感じたのはあの時、あの魔女に問い詰められた時に感じた、いや植え付けられたマインドだな。
「それだけじゃない、天使は存在するのか?ならば悪魔も存在するのだろう、そもそも魔術があるだけで異常だ。
全知全能の神は存在するし悪魔が存在するなら天使も居る筈、物理法則から逸脱した妖精や魔物が跳梁跋扈しているのもおかしい、そしてそんな怪物共と渡り合う為に人間に取って付けられたような白魔術と黒魔術の存在に加えて魔力、世の中おかしい事ばかりだ。」
「魔力ってあって当然のものよ?この世界を形作る物全ての源流、魔力を持たない存在はないわ。」
「人は魔力なしでも生きていける」
「...何を言っているの?
そんな筈はない、生物が必要とする体内エネルギーその全てを魔力なしで賄う事はできない。」
「なら俺は今どうやって生きている?」
俺の持つ魔力その全てのリソースを魔術に注ぎ込んでいる今どうやって俺は生きている?
「確かにおかしいわね...」
困惑だろう、自分の中の常識が目の前で覆されていたのだから、まあその事を認識して受け止めている時点で相当凄いが、このエルフ人間として出来過ぎている。
「この世界は異様なんだよ、そう明らかに異常なんだよ、存在する筈のない魔物や妖精に魔術なんてモノが存在するに加え他にも未知な存在が在るだろう。
挙句そんな世界で救世主として担ぎ上げられている、恐怖以外の感情があるものか。
——死ぬのが怖い魔物が怖い妖精が怖い、ただそれだけだよ。」
「なら何で怖いものに近付くの?何で私の同行を許したの?」
怖いから排斥していい筈がない、それを何度も繰り返せば自分以外の全てを滅ぼす事になるし、例え全てを滅ぼす前に自分が生きていくのに必要な要素がなくなって死ぬ。
——ただしゴブリンは例外である、あそこのゴブリンだけは例外だ、人類社会が滅びる可能性があるからね、そうなったら俺は生きられないから防衛本能故の行動だ。
「恐怖を受け入れて生きなければならない、そうしなければいずれ破滅してしまうのが人間だから。」
「なら何をしに帝国へ向かうの?」
「生き残る為に地位を得て一丁前に神を気取る奴らが巣喰う政治から距離をとり、社会的人間的な力を得る、それが俺の目的だ。」
「それが何に繋がるの?」
「俺の気が晴れる、俺が気を楽にして生きる事ができる。」
それでも内圧によって滅ぼされる可能性は高いし、外圧によって根底から覆される事も多いだろう、ただ人と話し合う事ができれば幾分も恐怖は緩和させられる。
——自らの価値を高めるのだ、今の自分の価値を示すには今回の騒動は都合がいい。
ゴブリンよりかは人間の方がマシだ、頑強だし自立性がある、頼るならゴブリンじゃなくて人間だね。
——エルフも同じだけど寿命が長過ぎるから駄目、トップがずっと同じはよくない。
「——そんな事をして何になるのかしら?
私達第三階梯魔術師は自己完結が可能なのよ、魔術を使えるから飲み水に困る事はないし熱エネルギーに困る事はないから食べ物にも困らない。
関わらないで生きていけるから関わる必要もない...なのに関わろうとするのは何で?」
炎でエネルギー問題は解決、水で飲料物は確保できる、食料も多少手間をかければ気軽に用意できる。
——想像にも満たない妄想だけど、消費量より得られる量の方が多いんだと思う、だから上位種の魔物は迷宮を作るし膨大な資源を迷宮から得られるんだと思う。
つまり人に寄り添って生きる必要はないと、彼女は言っているんだ。
「関わらなければ生きていけない、例えば俺が100年1000年生きるなら。
...俺は詳しく知らないけど魔女さんかなり長生きしてるんでしょ?旧帝国時代が云々とか聞いたし、多分俺もエルフ並みとまではいかなくてもそこそこ長生きするに違いない。
——人から一度離れたらどうしようもないナニかに執着して破滅する、その矯正にも丁度いいしね、まあ俺達は完全じゃないんだよ。」
魔女さんには悪いけど残等ですわ、それに西暦世界の日本で暮らしていただけあって自分の中の水準が高いのだよ。
「そうなのね...でもそれは行動を始める為の理由でしょ?
行動を起こす根源的な理由じゃない、私はもっと深い部分を知りたいの。」
建前が通じない、何故バレたし。
「まだ話す程仲良くなってないだろ、もっと単純で根源的な理由を知りたいなら俺を懐柔しなよ。
——ハードルは高いからな俺の知られたくない訳ではなかったけど自分本位に過去を探ったんだ、しばらくは骨抜きにされた理由で満足してろ。」
「いけず...」
おばあちゃんは可愛いですね、いや本当に出会いさえ違えば俺が彼女の尻を追いかけていたに違いない。
——因みに俺の好きなタイプは、強いて言えば大きい方が好きだが特にはない、まあ男の人間として包容力のある人間が好きだと思う、てか俺達男はそういうカタチで作られているからそうに違いない。
「いけずで悪かったな、人と気軽に話せたのは今世じゃ数える程度だよ、それじゃまた明日な。」
「イリエちゃんは人と話す時に耳障りのいい言葉を使うべきね、皮肉屋って言うのかしら?彼女できないよ。」
「はいはい、別にいいですよ彼女居なくても、いや超欲しいけど。」
「はいはい!!私立候補します!!」
「お前魔力目当てだろ?」
「——違う!!
...いや違わないけど、それじゃ嫌?」
あかん眩しい、俺に合わせてくれるのは彼女ぐらいだろうな。
皮肉屋で捻くれ者でマウントが好きな俺に、誰にも心を開かない俺を知ろうとしてくれるのは彼女ぐらいだ。
余計なお世話だ、いや彼女とか居たら嬉しいけど別に俺は...いや欲しいけど人と向き合う力がないから無理なんよ。
——テクならまあ負ける自信ないようん、でもそこまでの関係を築けないんじゃ意味がないよねって話、まるで童貞だな、はいはい俺の他者任せのマインドの源流その精神性は未だにガキですよ。
「まあ嫌じゃないけど...」
理由付けよくない、自分の劣等感や忌避意識に向き合うのは辛い、彼女の言葉に向き合いたい。
「何でダメなの?」
俺が決めていい、他者に影響を与えられる環境に居る訳でもない、俺が俺だけの心で俺の意思に沿って好きに物事を決められる。
言葉でしか分からない、まあ仕方ないかそれ以上の手段がないわけだし。
「俺の心の問題だよ、ただ俺と仲良くしたいって気持ちはよく分かった、また今度話す時はもう少し深い話をしよう。」
女には言葉じゃ勝てないな、そうデザインされているから仕方ないか。
...良い感情と悪い感情が同時に渦巻いてしまうのを何とかしたいな、まあ彼女は人間じゃないし魔性なだけか。
俺とモルガンさんの性根は似ているのかもしれないな、奔放だけど自分を卑下するところがある所とか...彼女の自分みたいになってほしくないってどういう背景があったんだろうね。
妖精は人の隣人か、しかもそれは人間次第だしなぁ、不可思議で空虚だな。
「やった!!添い寝でもする?」
彼女と向き合おう、俺だけじゃないんだ、多分彼女も向き合ってくれる。
——一方的ではあるが彼女だってそれは同じだ、理由付けとしては完璧だな。
これが演技ってんならそれはそれで凄い、まあ騙されてみるのも悪くはないか。
「ヘレンさんの話もしてよ?」
「もちろん、でも私は、私の事を知ろうとしてくれた事が嬉しいよ。」
曇り一つない笑顔、惚れてまうやろ。
——今日一日で友人に恋人候補ができた?
合計二回の人生で一番幸せかもしれない、異世界最高と叫びたい気分だ。
フリードリヒ(不特定多数)要素ゴチャ混ぜ皇太子様...
あと友情と母性を求める青少年の表し方って難しいよね
関係ないが少女漫画描いてる人の脳は俺の理解できない性欲?かそれに似た何かに支配されているよな、何だかんだ女の人も同じ人間なんだなと感じる。
みんな大好きフード理論
人に食べ物を分け与える事ができる主人公は善人です、例えエルフを奴隷として売り飛ばそうとしても、無抵抗の妖精を虐殺して衝動に任せて捕虜を痴虐してもね。
吐き気を催す邪悪そのものでも日常においてはこれ以上ない善行を行う、それはそれこれはこれ、人間の根底かもしれない。