もし士郎がモルガン化したら?   作:モル士郎

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第10話

 

 結論から言うと呆気なくキャスターには勝ってしまった。

 竜牙兵は突如消滅し、アーチャーが固有結界から帰ってきた。それだけで勝ってしまった。

 呆気なく、そう、本当に呆気なくキャスターに勝ってしまったのである。とはいえ、竜牙兵との戦闘により疲れもあったが、それでも大金星である。

 士郎と凛は"今後の話"は後日として帰宅することになった。

 

 

 そして、翌日の昼、冬木市内の公園に士郎は来ていた。要件は無論、聖杯戦争についてだ。凛との同盟はキャスターを倒すまで、つまりはこれ以降は敵同士ということだ。

 

「遅いですね。凛」

 

 セイバーは大判焼き片手にそう言った。約束の時間はとうに過ぎている。遠坂凛の性格を考えれば意味もなく遅刻するとは思えない。

 

「……一回家に帰って電話してみるか?」

 

 士郎はそう呟き、ベンチから立ち上がった。その時、不意に背後から気配を感じ、振り返ると1人の金髪の男がいた。

 

「フッ、セイバー、随分と愉快なことになっているな?」

 

 白いコートを着て、金髪を逆立てた男は士郎とセイバーを交互に見ながら言う。その様子にセイバーは士郎を庇うように前に出た。

 

「貴様は、アーチャー……?! 何故ここに!」

 

「何故も何も無い。この世界は(オレ)の庭だ。庭を散歩することに理由などあるまい。などと、アーチャーの(オレ)なら言うだろうが……。今は()()()()()()()()()。セイバー、まずはそこの()()()()()(オレ)のことを紹介することが先だろう?」

 

 謎の男の言葉にセイバーは少し迷った後、直感に従い口を開いた。

 

「マスター、この男はアーチャーのサーヴァント。10年前、キリツグと共に戦った聖杯戦争で召喚された存在です。」

 

 セイバーの言葉に士郎は驚いた。

 

「まさか、10年前から残っていた?」

 

「おそらくは……。」

 

 2人の様子を無視して男は言葉をいう。

 

 「………ハッ、未だにこの(オレ)の真名に辿りつかぬとは……。だが、今は不敬者でも惜しい。特別に(オレ)の口から真名を聴くことを許してやる。」

 

 クククと、笑いながら男は言う。そして、壮大に語る。

 

(オレ)の真名はギルガメッシュ……。()()キャスターのサーヴァントだ。」

 

 ギルガメッシュ。

 それは人類最古の物語『ギルガメシュ叙事詩』に記された王だ。そしてありとあらゆる、宝具の原典をもつ最強のサーヴァントだ。その男の自己紹介を聞きセイバーは驚きの表情を浮かべた。

 

「ギルガメッシュ……。いや、キャスター?それはおかしい。10年前はアーチャーだったはずだ。」

 

 その発言にキャスターは口角を上げた。

 

「クラスチェンジというやつだ。この(オレ)にかかればこれくらい容易い。今はアーチャーより、キャスターの方が相応しい。そういう夢を見た。」

 

「夢……。」

 

 サーヴァントは夢を見ない。それは常識だ。しかし、その常識と矛盾する発言に士郎はすぐに答えに行き着いた。

 

「……予知夢。ギルガメッシュの見る夢は未来を示す。そういう伝説があった。」

 

 その言葉にキャスターはニヤリと笑う。

 

「ハッ、少しは頭が回るようだな。セイバーのマスターよ。まぁ、オマケで及第点としておこう。(オレ)は夢を見た。故に、セイバー、そしてセイバーのマスターよ。これより(オレ)の指示に従い。 —————―世界を救え。」

 

 

 

 

「………………という訳で、暫くウチに住む事になった。キャスターだ。藤ねぇ、仲良くしてやってくれ。」

 

 

 

 夜、衛宮家には珍しい静寂が流れた。 

 確かに桜が居ないため、フルメンバーではない。だが、藤村大河という女性がいればこの家は騒がしいはずだ。

 なのに、シーンと静まり返る。その様は嵐の前の静けさだ。

 

 

 

 

 

 

そして、すぐに静寂は切り裂かれる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「し、し、し、士郎が!男、連れてきたぁあああああ!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 虎の咆哮が放たれた。

 空間を破壊する勢いで叫ぶその声は、キャスターすらフリーズさせるほどだ。

 

「誰!どこの誰!なんで出会ったの?どういう関係?ウチの、ウチのしろはか、簡単にあげないんだから!」

 

 捲し立てるように叫ぶその虎に、キャスターは小さく息を吐いたのちに楽しそうに言う。

 

「フハハハハ、不敬ではあるが、未子を守るのが保護者よな。珍獣よ、その心意気は評価しよう。だが、(オレ)はその者ではなく、妹の方。セイバーのフィアンセだ。」

 

「「え?そうなの?!」」

 

 衝撃的な発言に、するっと出た珍獣という言葉には誰も反応しなかった。士郎と大河の目線がセイバーへと向く。

 

「ち、違う! 誰が貴様のフィアンセか!訂正しろ、キャスター!それに、姉は私だ!」

 

「照れるな照れるな。あの時は敵対していたが、今は同盟を結んだのだ。素直になってもいいのだ。」

 

 フハハハハ、と、楽しげな笑い声が家中に響いた。

 

 

 

 

 衛宮家でそんな団欒(?)をしている夜、学校の校舎裏に2人の少女が立っていた。そのうちの1人、桜は不安そうに話した。

 

「…………話って……なんですか?…………遠坂先輩」

 

 夜中に呼び出しを喰らう、しかも聖杯戦争中だ。その質問にもう1人の少女、凛は応えない。まるで人形のようにのっぺりとした表情で答える。

 

「話、なんだっけ?ああ、そうだった。」

 

 凛は小型のナイフを取り出して、迷いなく桜の腹に深々と刺した。桜は何が起きたのか理解出来なかった。ただ、突然感じた痛みと困惑、遅れて何が起きたのか理解した。

 

「ね、姉、さん?」

 

 崩れ落ちるように倒れる。それを見てもなお凛の表情は変わらない。

 

「あれ? 桜?桜?ああ」

 

 何かに気がついたのか壊れたテープのように何かを呟く。そんな様子の凛を背後から女性が抱きしめた。

 

「マスター。大丈夫です。あなたは私がいます。何も心配はない。」

 

「アーチャー?ええ、そうね。何も……」

 

 

 その時、倒れていた桜が消えた。

 そのことに凛は気がつかない。しかし、アーチャーだけは気がついた。咄嗟に凛を抱えたまま干将を投影、跳び退いた。

 その瞬間、紅い槍がアーチャーの心臓目掛けて放たれる。しかし、それをアーチャーは弾く。

 

「ランサー、あなたが不意打ちとは、大英雄が堕ちたものね。」

 

「ハッ、こっちも仕事なんでな。それに……。テメェ、自分のマスターに何をした?」

 

「少し話し合っただけです。可愛いでしょ? それよりランサー、あなたには気配遮断のスキルなんて無かったはずですが」

 

「言うわけ無いだろ!」

 

 ランサーは槍を地面に刺した。瞬間、アーチャーの四方に光の文字が出現した。

 

「ルーン!!」

 

 アーチャーは咄嗟に対処しようと魔術を発動するが、既に遅い。ランサーはその一瞬の隙に姿を消していた。

 

 

 

 

 

 

「慣れねぇことするもんじゃねぇな」

 

 教会の一室に桜を背負ったランサーが現れた。片手には大きな布が握られている。これは宝具『身隠しの布』だ。この布で隠れれば魔術的にも光学的にも体を隠すことができる。それでも臭いや音などは消せないが、そこはそれ、ルーンでどうにでもなる。

 

「ったく、アイツが言った通り、この嬢ちゃんが狙われたわけだが……」

 

 ランサーはぶつくさと文句を言いながら、ベッドへと寝かせ、ルーン魔術で治療を開始した。

 

 

 

 

 




ギルガメッシュ(キャスター)

stay nightのギルガメッシュが諸事情でキャスターになった姿。fgo実装とは異なりもう少し若い感じ。というよりも無理やりクラスを変えたため、アーチャーとキャスター、どっちつかずな感じになっている。
アーチャーほど荒々しくないが、キャスターほど賢王でもない。
イメージは賢王になることを決意した暴君。
現代社会に対する苛立ち等はあるが、それはそれ。



鉄はすぐに化学反応を起こすん。硝子は化学反応起こしにくいんですよね。硝子の心は割と強い
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