もし士郎がモルガン化したら?   作:モル士郎

11 / 12
番外編です
色々考えて今回だけは少し形式を変えた方が良いと判断しました



第11話

 

 

 

 

 

interval

 

 夢を見た。

 人々が笑顔の理想郷。誰もが何も不自由なく暮らし、平和な国。

 そんな理想郷をたった1人で作り上げた英雄。そんな人の半生を見た。人々ために尽くし、多くの人を救った。

 「戦争を無くしてほしい」「ご飯が欲しい」「戦いたくない」そう求められ、そして、与え続けた。

 

「目の前で誰かが傷つくのは嫌だ」

 

 英雄はそう笑って、戦い続けた。そして、世界は平和になった。

 いや、平和になってしまったのだ。

 人間の欲というものは限りがない。満たされれば次が欲しいとなる。そして、その()を求めて争いが生まれる。

 平和の裏には犠牲がある。いくら英雄でも全てを救う事なんて出来なかった。その恨み辛みが積み重なる。

 

 その結果示された1人の肉塊。

 

 「……………これで、良かったの?」

 

 英雄は言う。

 終わらない平和。高みに上り詰めてしまったから見える世界。そして、見えなくなってしまった場所。

 本来の()ならば別の結論に至っていたのだろう。しかし、ここにいるのは変質した正義の味方だった存在だ。

理想はすでにすり替わっている。

 

 

 

 ベットから起きて、まず感じたものは()()()()()()()、そういう感想だった。理想を追えば追うほど理想に裏切られ続け、そして、その理想すら少しずつ変質してしまう、そんな悍ましい夢。

 まるで、頭に吊るされたニンジンを追いかける馬だ。

 

「起きたのね。凛」

 

 聴き慣れた声に()は身体を起こす。そこにはトレイに朝食を乗せたアーチャーがいた。朝食は白米と焼き魚、卵焼き、豚汁、そして小鉢金平牛蒡というかなり豪華なラインナップだ。しかし、使われてる食器は和風で、乗せられているトレイはどちらかといえば()()()と言いたくなる見た目をしている。

 あんな食器、私の家には無かった、どこから調達してきたのだろうか?

 

「………おはよう、アーチャー。美味しそうな朝食ね♪」

 

 自分でもびっくりするくらいの明るい声が出た。だいぶこの空間に毒されてしまっているのだろう。早くなんとかしないと、せめて……。

 布団の下で手を握り締める。

 

「ありがとう。作った甲斐があるわ」

 

 楽しそうに笑うアーチャーはいつの間にか出現した机にトレイを置いた。何が楽しいのかニコニコと笑う彼女に促さらて、これまた突然現れた椅子に座る。そして箸を持つ。

 ふと思う、本来私は朝食は食べない主義だ。だというのに朝食を見た瞬間にお腹が空いてきた。それほどまでにこのご飯が美味しそうなのか、それとも………

 

「どうしたの?凛、早く食べないと冷めてしまうわ」

 

 アーチャーの顔を見ると不思議そうに小首を傾げる。何を考えているか分からないが、彼女は私にとってよく無い存在だ。

 今になって漸く理解し出来た。アーチャーの顔が認識出来ない。違う、厳密には意識ができない。まるでその辺の石ころに意識を向けないように私は、きっと、他のみんなも意識を向けていない。

 今は敵意も不信感も()()()()()()が、しかし、忘れてはならない。だから、疑念を忘れても疑問は持ち続けろ。

 

——-何故アーチャーは、衛宮さんと同じ顔なのか?

 

 あのキャスターを倒した時。アーチャーが固有結界から出た時、私は確かに彼女の顔を()()()()見たのだ。アーチャーは気がついていない、違う。衛宮さんもセイバーすら気がついていない。 

 おそらくキャスターの悪あがき。理由は分からないが、あの戦いのあと一瞬だけアーチャーの魔術に綻びを生んだのだ。

 

「ええ、そうね。ごめんなさい。」

 

 敵意を持つことは出来ない。私が向けられるのは信頼と親愛だけだ。そんなふざけた状態だけど、私は思考を止めない。たとえ私が負けたとしても、アーチャーだけは勝たしてなるものか。

 

 だけど、この思考もいつしか無くなるのだろうか?いや、そもそもこの思考自体がアーチャーに誘導されたものなのかもしれない。そう思うと凄く()()()感じでしまう。

 

 そんなことを考えていると、電話が鳴った。私の家に電話をかける相手は数えるほどだ。その中でも、こんなに朝早く連絡をよこすのはさらに少ない。綺礼か、学校くらいだろう。

 

「私が出るわ」

 

 そう言ってアーチャーはその場を後にした。その隙に服を着替える。たまにあのアーチャーの視線がいやらしく感じる事がある。女同士だしむしろ、嫉妬するくらいアーチャーの方がスタイルが良い。

 しかし、明らかにアーチャーは私のことを意識してるし、意識して視線をずらし、そして、たまにチラ見する。はじめは面白がっていたが、今になってはなんだか、高揚にも似た変な感情にさせてくる。

 明らかに私がアーチャーへと抱く感情は普通では無い。アーチャーに裸を見られ、意識されてることが嬉しくてたまらない。むしろもっと見られ意識されたい。

 絶対に何かされている。だから、私は私の感情に逆らう。

 学校の制服に着替え、そして、習慣になった父の形見であるペンダントをポケットに入れる。このペンダントには遠坂家が代々魔力を貯めてきたもので、今では私も少しずつ魔力を入れている。

 聖杯戦争中だし、護身用に持っていた方が良いだろう。それは兎も角として、穂群原のスカートにはポケットがあって本当に良かった。ポケットの無い服だとかなり不便だっただろう。

 

「凛、今日も学校は休校だそうよ。」

 

 アーチャーが帰ってきた。その言葉に脳裏に浮かぶのは校庭に倒れる生徒。ズキン、と、頭痛がする。

 

「………柳洞くんの?」

 

「ええ、そうね。まだ、その事件が引きずってるみたい。」

 

 その言葉を信じてしまう。既に私の心はアーチャーに対して信頼……、いや依存しつつある。彼女に全てを任せたくてたまらない。

 ああ、アーチャーに抱きついて、そのまま眠ってしまえばどんなに幸せなのだろうか?

 だが、脳裏に漠然と浮かぶ校庭に倒れる1人の見覚えのない少女。それが誰なのか分からないけれど、頭痛が酷くなる。

 冷静に考えろ遠坂凛。私の心は既にアーチャーに支配されつつある。いや、今こうして考えているのも彼女に操られている結果かもしれない………。

 それでも、最後まで足掻きなさい。なぜ、彼女は電話に出た?そして、学校は私が一人暮らしだと知っている。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 あの脳裏に浮かぶ少女は誰?あの場面を私はいつ見た?

 

「けど、柳洞くんの事件って尾を引きすぎじゃない?」

 

あの事件は衝撃的だが、複数日、休校になるのは流石に大袈裟だろう。

 

「………………。ごめんなさい。実は他にも事件が起きたみたい。とある一家、丸ごと行方不明になったみたい。」

 

 アーチャーは私を見る。

 頭が痛い。燃えつきる蟲、崩れ落ちる建物。首を切られる少年。こんなこと知らない。いや、知っている? 私は何をやった?

 

「でも、それって……」

 

 アーチャーは私の頬に手を添えた。その体温が心地よく、身を委ねてしまう。払いのけなきゃダメなのに……。

心がポカポカして、心地が良い。

安心して、全てを任せてしまいたくなる……。

 

「ごめんね、凛。私はあなたに心配かけたくなかった。」

 

 アーチャーの顔が私に近づく。彼女の吐息が私の顔にかかる。薄っすら甘い匂いがして、お腹に熱が集まる感じがして、とても心地ちいい。

 

「心配?」

 

 ダメだ。

 これ以上は、頭がおかしくなる。

 

「ええ、私はあなたのサーヴァントですよ?」

 

 そう言って、アーチャーは私のことを優しく抱きしめてくれた。彼女の熱や、甘くていい匂いが私を包む。お腹がキュンとして、全てを任せたくなる。

 

「そう……。私が間違えていたわ。」

 

 そうだ。アーチャーが私のことを考えるのは当たり前だ。

 そう考える事にして、ポケットの中の宝石を痛いほど握りしめた。

 

「大丈夫。私に全て任せて」

 

 アーチャーの声が心地よく脳を揺らす。甘くて蕩かす。ああ、もうどうでもいい。この気持ちに全て任せてしまいたい。つい、こくんと頷いてしまい————-。

 

—————-ああ、これは、だめだ。

 

 だから、黙って俯いた。

 アーチャーに全て任せてしまいたい。だけど、左手に握りしめる宝石が、そして、私に刻まれた魔術刻印が焼けるように痛く、心をか細く守っている。

 

「ええ、そう。やっぱり、()()は……」

 

 そう言って私から距離を取るアーチャーの声はどうしてか耳に残った。

 

「マスター。少し席を外すわ」

 

 すっと、霊体化したアーチャーに私はどうしてか残念に思ってしまう。早く何とかしないと本当にまずい。

 

interval out

 

 

 




https://syosetu.org/novel/374256/2.html

成人してる方はこっちもどうぞ
ノリで書いてるので、18禁版は深く考えないでください
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。