もし士郎がモルガン化したら?   作:モル士郎

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描写不足ですが、髪色は赤毛、衛宮士郎のままのつもりです。
綾子とは原作より仲良くなっています。


第2話

 

 その日の午前の授業はタイガーが英語の抜き打ちテストを行ったくらいで平穏に終え、昼休となった。士郎は弁当を持って生徒会室へと移動すると、中には既に生徒会長の柳洞一成がおり、3台ほどのストーブを部屋に並べていた。彼は士郎とは1年からの友人で、文武両道で女子人気も高い寺の息子だ。

 生徒会メンバーはよく言えばビジネスライクな存在のため昼休みには基本的に彼しか居ない筈なのだが、もう1人少女がいた。彼女に気がつくと士郎は軽く挨拶をした。

 

「美綴も来てたのか?」

 

「ま、ウチの主将が生徒会に良いように利用されないか見張にね。」

 

「良いようにって、別に俺が好きでやってるんだから問題ないだろ?」

 

 士郎の『好きで』の発言に一成は顔を赤らめた。寺の息子であり恋愛にはあまり興味がない彼だが、それはそれとして意識はしてしまう。その様子に美綴はため息をついた。

 

「……衛宮、そのうち襲われても知らんぞ」

 

「なんでさ……。それはそうと、このストーブか?」

 

 士郎は並べられているストーブのうち一つに指を差した。その様子に一成は頷いた。

 

「頼む。こないだから調子が悪かったがこの度ついにご臨終されてな。」

 

「ご臨終されてたら、いくら俺でも直せないぞ。」

 

「うむ、だが、お前から見たらただの仮病かもしれん。頼む。無論、約束通り、一台は弓道部に進呈しよう。」

 

  一成の発言に士郎は一瞬驚いたが、すぐに思い当たり美綴の方を見た。すると、彼女は凄い良い笑顔で親指を立てていた。士郎はまだ知らないが美綴も()()()()()と(学校というフィールドで)正面からやり合えている女傑なのだ。これくらいの交渉はする。

 

「言ったでしょ。主将が利用されないように見張ってるって……。」

 

「ん……。まぁ、くれるなら貰っておくけど……。良いのか?」

 

 士郎はそう聞きながらその場に胡座をかいて座った。一瞬、2人は下着が見えるか慌てたが下には体操服の短パンを履いていた。ロマンも何も無い。

 

「正当な報酬だ。衛宮……善行は咎められる事ではないが、お前のそれは度を越している。多少は報酬を求めてもバチは当たるまい」

 

 工具を選びながら一成の言葉を聞いている士郎だが、ピンときている様子では無い。むしろ、一成の指摘がなんのことなのか理解していないようである。その様子に美綴はため息をついた。

 

「ようはあんたの行動で勘違いしちゃう男がいるんだよ。」

 

 彼女のその言葉に士郎は自分の顔を触れた。士郎とて大して親しくもない遠坂凛に対して異性として憧れを抱いている。対象が自分というのは気分のいい話では無いが、ドキドキしてしまう気持ちは分かるのだ。

 

「……ああ、そうだな……。気をつけるよ。」

 

 しかし、理解できるだけで士郎の中ではどうも実感が湧いていなかった。それは自然と言動に出ており他人事のような返事となってしまった。その様子に一成と美綴はため息をついた。

 

「…………あんたは……。もういいや、じゃあ、衛宮。私は生徒会長と学食行ってくるから……。」

 

「……任せきりになってしまって申し訳ないが、俺も食べないと午後が持たない。」

 

「ああ、俺も食べながらだから気にしなくて良いぞ。」

 

 ほとんど、いつも通りのやり取りで2人は生徒会室を後にした。

 士郎のストーブ修理は普通ではなく、魔術を使用する。そして、魔術は秘匿するものだ。そのため、常日頃から友人達には作業する時は集中したいから1人になりたいと伝えているのである。

 

「同調、開始」

 

 短い呪文(スペル)で魔術が発動する。士郎の頭の中に瞬時にストーブの設計図が思い浮かぶ。一流の魔術師ならば設計図なんて必要とせずピンポイントに壊れた箇所だけを見つけるはずで、この方法は本来は魔術としてはかなり非効率なやり方だ。

 しかし、士郎にとって最も適性のある方法であり、瞬きほどの時間でストーブの状態を把握した。

 

(よかった。()()()ここにある工具で直せそうだ。)

 

 士郎がその気になれば壊れた部品どころか、ストーブそのものを魔術で作り出す事はできる。しかし、もし、何かの拍子で偽物だとバレてしまうのは魔術師としての最低限のルール、神秘の秘匿に反してしまう。

 士郎とて自分の投影がそう簡単に消えると思ってはいないが、しかし、本物と同様に劣化していくとも思えないのである。

 

「いただきます」

 

 桜が作ってくれた弁当を食べながら士郎はストーブを直し始めた。

 一方その頃、一成と美綴は学食に向かって歩いていた。この2人は元々はそんなに仲良く無かった。しかし、士郎という共通の友人を経てそれなりには親しくはなったのである。

 

「衛宮はもう少し、男どもからの目に注意してくれればね。」

 

 美綴のぼやきに一成は手を合わせて応えた。

 

「……美綴よ。あやつは常にこんな感じだ。時には諦めが肝心だ。俺も修行の一環として割り切っている。」

 

「…………そういう訳にはいかんのよ。部にも勘違いした男子が多くてね。間桐兄がどうにかしてくれてるけど……。」

 

「間桐か……。アイツも不憫な男よ。いや、アレは衛宮が魔性なのか?」

 

 こうして衛宮士郎の昼休みは終えていく。

 午後の授業を終え、弓道部の練習に参加する。最近のガス漏れ事故等の事件の影響か活動時間が18時までに短縮されてしまったため、短い時間に集中して練習を行うことになる。

 士郎にとって弓は魔術の鍛錬の成果である。たまたま魔術で培った技術がイメージ通りに的に当てる事ができるようになったのである。そのため、部に入ってからは一度しか外したことがない。

 部活を終えると、士郎はお世話になっているバイト先へと顔を出し、棚卸し作業を手伝った。士郎が働いている酒屋コペンハーゲンは特に男連中はやる気が高く士郎が行くと、あれよあれよという間に終わってしまった。

 バイトが終わり、家に帰るとすでに桜と大河が待っていた。

 

「しろー、遅いぞー。」

 

「先輩、お疲れ様です。」

 

 2人に出迎えられた。しろとは士郎の今の名前だ。衛宮士郎という名前では違和感が強いとのことで。公の場では衛宮しろと名乗っており、事情を知らない人の前では大河もそっちで呼ぶようにしている。

 それはそれとして、騒がしい夕飯が始まった。

 そんなおり、会話の流れで昔の士郎の話となった。士郎は恥ずかしく必死に止めたが、大河はノリノリで桜は真剣に話しを続ける。

 

「しろの昔の夢は正義の味方だったんだから」

 

「正義の味方……ですか?」

 

 大河の言葉に士郎は頭を押さえた。正義の味方。士郎にとって今もなお追い求める夢、いや、呪いである。大火災で切嗣によって助けられた士郎は正義の味方に憧れた。そして、あの夜に約束したのだ。

 

ーーーそれじゃあ、俺が代わりになってやるよ

 

ーーーああ、安心した。

 

 切嗣はその後安らかに息を引き取った。

 切嗣は肉体の変化に戸惑う士郎を見て、"彼女"の持つ歪みがそこまで大きく無いと勘違いしてしまった。魔術を学ぶのも身を守るタメだと尤もな理由を持ってしまっていた。

 だから、この綺麗な思い出なら、自分とは異なるものになると信じていたのだ。

 だが、士郎にとっては違った。

 衛宮士郎はあの時助けてくれた切嗣が幸せそうだから憧れた。

 顔も性別も変わっていき、◾️◾️士郎としての記憶も無くした。自分自身が何者なのか分からなくなっていた士郎にとって、あの想い、あの約束こそが、"彼女"が衛宮士郎であることを示していた。

 だから、この夢は今もなお追い求める呪いであった。

 

「それじゃあ、桜ちゃん送っていくわねー。」

 

 2人を見送り士郎は土蔵へと入り魔術の鍛錬をして1日を終えた。なんて事のない平穏な1日を終えた。そして、翌朝2月1日となった。

 

「なんだ、これ?」

 

 朝起きると士郎の手の甲にはアザのような跡があった。どこかにぶつけたかと首を傾げたが記憶にない。魔力を通して身体を解析する。

 

(……これ、ただのアザじゃない。)

 

 士郎は魔術の知識は乏しい。身体の変化が進み才能だけはかなり伸びても、知らないものは知らないままだ。そのため、そのアザの正体は分からないままだった。

 

(アーサー王、モルガンの変化か……?)

 

 そして、士郎には肉体の変化には思い当たる節があり、ソレが原因だと決めつけてしまった。こうして最後の平穏な1日が始まった。いつも通りに授業を受け、部活をしてバイトをする。なんとも無い日常だ。

 

そして、2月2日、士郎の平穏な暮らしは幕を下ろした。

 

「な、なんだこれ?結界?」

 

 学校に結界が張られていた。彼には結界、空間の異常には敏感でその違和感に気がつくのは当然とも言えた。

 衛宮士郎の聖杯戦争が動き出した。

 

 

◆interval◆

 1月31日

 

 その日、遠坂凛は聖杯戦争に参加するためサーヴァントを召喚した。聖杯戦争とはどんな願いでも叶えられる聖杯を求めて、7組のサーヴァントと魔術師が殺し合いをする儀式である。

 そして、サーヴァントは英霊、つまりは過去の英雄だ。

 聖杯戦争に参加する為にはサーヴァントの召喚が必須だ。そのため、当然ながら凛も召喚を試みた。けれど、サーヴァントは顕れず、代わりに上の階から大きな物音が響いたのだ。

 

「開かない!こらぁ!」

 

 壊れた扉を蹴り飛ばし、凛は大きな音が響いた部屋に入った。そこには銀髪で褐色肌の女性が偉そうに座っていた。

 彼女は黒いショートパンツとボディーアーマーの上から赤い外套をドレスのように纏っている。その衣服の上からでも分かるほどスタイルが良く、露出は少ないが同性の凛でも見惚れるほど魅力的だ。

 

「あなたが、私のサーヴァント?」

 

 凛が呟くと女性はニヒルに笑った。

 

「そう言う君は私のマスターなのかしら? 私がここに呼ばれた時は姿が見えなかったけれど?」

 

 女性の皮肉混じりの発言に令呪を使ってしまうなどのアクシデントはあったが、紆余曲折を経て、ひとまず、マスターとサーヴァントとして認め合うことはできた。

 

「………地獄に落ちなさい。マスター」

 

 サーヴァント、アーチャーはその日の最後にそう漏らしていたのだが、きっと、お互いに認め合ったのだろう。

 

2月1日

 

 サーヴァント召喚の影響か、凛は盛大に寝坊をしてしまった。その為、学校を休みアーチャーの為に街中を散策する事にした。そして、最後、新都の1番高いビルに登った。

 

「マスター、初めからここに来れば街中を歩き回る必要は無かったのでは?」

 

 アーチャーのその言葉に凛は首を傾げた。

 

「ここで分かるのは街の外観だけじゃない?実際に行ってみるのと違うんじゃない?」

 

「そうでも無いわ。ここからなら……。あそこの橋のタイルの枚数なら数えられる。」

 

「嘘……。あんた本当にアーチャーなのね」

 

「……凛、馬鹿にしてるわよね?けれど、確かに私の本職は弓兵ではなく魔術師、アーチャーには見えないのは仕方が無い事でしょう。」

 

「……それって……。あなたもしかして記憶が?」

 

「初めに言ったはずよ。戦いには支障が無いと。それくらいのことは初めから分かっていたわ。けれど、クラスとは難儀なものね。魔術に関してのスキルの多くが失われている。」

 

2月2日

 

「嘘、これ、結界?」

 

 凛が学校にたどり着くそこには結界が張られていた。『学校にはマスターなんていない』そう思っていた凛なだけにこの展開は考えてもいなかった。

 こうして聖杯戦争が本格的に動きはじめた。

 

◆interval out◆

 

 

 

 

 

 

 

 




衛宮しろ
→熱血希望!大河先生(タイプムーンエースvol.6)の衛宮志郎(しろ)からです。
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