もし士郎がモルガン化したら? 作:モル士郎
短いですが生存報告もかねて
しかし、この展開は不快に思われる方がいるかもだが、思いついてしまったんだから私は止まらない。
◆
それは、嵐のようだった。
その巨体では考えられない速度で動き、そして、その巨体だから発生する運動エネルギーを余すことなく振るっている。まさに必殺。全ての攻撃が致命傷に繋がる、暴力の化身だ。
「ふふ、バーサーカー! とっととそいつすり潰してしまいなさい!」
少女、イリヤスフィールは叫んだ。その指示を受けてなのかバーサーカーは雄叫びを上げ、石でできた剣を振り下ろした。
セイバーは寸前のところで避け、振り下ろされた剣を踏み駆け上がる。これで武器は使えない、そう誰もが思ったがバーサーカーは剣から手を離しセイバーの攻撃をかわし、蹴りでカウンターを決めた。
バーサーカーとはステータスの代わりに理性を失ったクラスのはずだ。しかし、その動きには技があった。その様は獣だ。理性がたとえなくても体に染み付いた技術が彼の武器である。
「くっ!」
セイバーは地面を二、三回転し衝撃を殺して立ち上がる。セイバーの元にバーサーカーが迫るがその背中に無数の矢が突き刺さり破裂した。その衝撃にバーサーカーは膝をついた。
アーチャーの援護射撃である。この場から数キロ離れた地点でアーチャーは矢を構えバーサーカーを狙っていた。
(大英雄ヘラクレス……。こんなものではダメージにならん)
「私のことながら、よく、あんなものを倒せましたね……。」
「…………悪いな、イリヤスフィール。
アーチャーはそう呟くとマスターに念話を送った。
「え?」
念話を聴いた凛は一瞬、何のことか理解出来なかった。しかし、捻くれ者だが、大事な相棒だ。ここで疑っては何も始まらないと言われたことを叫ぶ。
「セイバー!アーチャーがバーサーカーの動きを止めてくれって!」
凛の叫びにセイバーと士郎は驚いた。しかし、セイバーは瞬時に
まずは降り注ぐ四つの矢。それはバーサーカーの四方を取り囲むように着弾。セイバーは
瞬間、四つの矢を起点として結界が発動しその範囲内の空間を固定化させた。いくら大英雄とはいえ、空間が固定化されては動けるはずが無い。
そして、放たれた第五の矢。それは弧を描き本来辿るはずのない軌道を描く。バーサーカーの頭上で停止。そして、ぐるぐるとその場を壊れた時計のように回転した後。バーサーカーのマスターの方向を向き停止した。
「え?」
イリヤスフィールの立つ位置は木々が邪魔で狙撃をすることが出来ない。下手をすれば凛にも当たりかねないからだ。だが、強力な追跡の魔術をかけた矢ならば確実に標的を仕留められる。矢はイリヤスフィールを目掛けて放たれる。
「◾️◼️◾️ーーーーー!!」
バーサーカーの声にならない咆哮。固定された空間にヒビが入り、ついには魔術は破壊される。そして自由になった肉体で放たれた矢に手を伸ばす。しかし、セイバーは無感情に言われた通りにバーサーカーの手を剣で弾く。
今のセイバーではバーサーカーには勝てないが、しかし、この程度のことならば出来る。
「————-っ!」
イリヤスフィールに迫る矢はあと数秒もしないウチに彼女の心臓を貫くだろう。士郎の目から見てもそれは明らかで、覆りようのない事実だ。
(………僕はね、正義の味方になりたかったんだ。)
かつての言葉を思い出す。
勝手に身体は動き、手を伸ばす。しかし、間に合わない。間に合うわけがない。それでも士郎は手を伸ばす。
『ーーーーーー』
耳元で誰かの声が聞こえた気がした。しかし、士郎はそんなことには気が付かずイリヤの元へ駆ける。だが、間に合うはずもなく、矢はイリヤスフィールへ迫る。彼女もマスターなのだからそれなりの戦闘能力を持っている。髪の毛を媒介に盾を出現させるが、そんなものは焼け石に水だ。
アーチャーの矢はイリヤスフィールの盾を突き破り彼女の心臓を貫いた。そして、それが起点として彼女の正確な位置がアーチャーに伝わってしまい、雨のように無数の矢がイリヤへと降り注いだ。
そして、全身を貫かれイリヤスフィールは息絶えた。
「ーーーーーーー!」
バーサーカーの咆哮が響く。主人を無くしたサーヴァントは急激に弱体化し、そして消滅する。それは、目の前の大英雄も同じだ。ただでさえ燃費の悪いバーサーカーということもあり、すぐに消滅してしまうだろう。
「----------!」
バーサーカーの咆哮が響く。
手に武器は無く、殺気も無い。ひとしきり雄叫びを上げたあと、静かになりその場から動かなくなってしまった。
士郎はその様子に苦虫を噛み締めるような顔をした。
「……。シロ行きましょう。彼にはもう戦う理由がない。」
セイバーのその言葉で戦いは幕を下ろした。
◆
士郎たちと別れた後、凛は浮かない顔で帰路についていた。
アーチャーの行動は決して責められるものではない。むしろ、あの強敵を被害無しで倒したのだ。褒めるべきもののハズである。しかし、それでも凛はあの呆気ない終わりに思うところがあった。
「ありがとう。アーチャー。あなたのおかげで無事切り抜けられた。」
「お礼はいらないわ。私は凛のサーヴァント。貴女を守るために存在している。けど、マスター、あなたは先の戦いに不満があるようですが?」
「不満はないわ。完璧な戦いだった。」
あの戦いを思い出す。
相手は間違いなく強敵だった。まともにやっても勝ち目はない。それほどまでのサーヴァントだった。
なのに、あっけなく勝ててしまった。
(戦いは強い方が勝てる訳ではない。)
「けど、私、舐めてたみたい。聖杯戦争、いえ、戦いを……。」
「……?舐めてた?凛には戦い自体に油断や慢心は無いと思いますが……。」
「……そうじゃないわ。今回のあなたの戦いを見て改めて思ったの。戦いは私が思ってる以上に単純じゃなくて、作戦一つで戦況は簡単にひっくり返る。アレを見て私もまだまだなんだって思い知らされた。」
そんな凛の言葉を聴き、アーチャーは彼女の前に実体化した。
「ええ、それを知れれば上々です。凛、あなたは優秀だけどまだ子どもよ? これから学び、成長していけば良い。」
アーチャーの言葉に凛が「ありがとう」と、お礼を言いかけたが、それに気がつかずに彼女は言葉を続けた。
「けれど自分の優秀さから、他人を下に見る傾向があるわ。これだけは性急に直した方が良いでしょう。油断に繋がるし、少なくとも対人関係では良い結果にはならないわ。私が感じてる時点で、行動の節々に滲み出ていて…………。」
アーチャーはクドクドと凛に小言を言い出して凛は青筋を立てた。
◆
士郎とセイバーは真っ直ぐに家に帰宅した。居間で士郎は悔しそうに顔を顰めておりそれをセイバーは心配そうに見ていた。
「マスター。貴女の感情は人として正しいものでしょう。しかし、戦争とはこういうことです。助けられる命に限りはある、全員を助けられるわけではありません。まして自分の命を狙っている相手を救うことなどほぼ不可能だ。」
「……分かってるよ。セイバー。」
士郎も魔術師だ。人を殺す覚悟というものは切嗣から叩き込まれている。しかし、それでも誰かを助けられなかったことはショックであった。さらに、下手人であるアーチャーのあの行為を責めることができない。さもなければきっと自分達が殺されていただろう。
イリヤスフィールは我々を狙っていたし、あのバーサーカーに無傷で勝つ、もしくは逃げるのは難しかっただろう。そういう意味ではアーチャーは命の恩人とも言える存在だった。
だけど、それでも……。
「みんな助けたい。そう思うことは悪いことじゃないはずだ。」
「……………。」
士郎の言葉にセイバーは何も言えなかった。
選択肢
(………僕はね、正義の味方になりたかったんだ。)
かつての言葉を思い出す。
勝手に身体は動き、手を伸ばす。しかし、間に合わない。間に合うわけがない。それでも士郎は手を伸ばす。
『ーーーーーー』
耳元で誰かの声が聞こえた気がした。
→そんなことよりも今はイリヤスフィールだ
→誰でも良い、誰か手を貸してくれ
ゲームで二周目だと下の選択肢が解放される感じになるのだと思う。
イリヤルート(仮)
アーチャーの狙撃の時にイリヤを庇うと発生するルート。また、話の展開上、セイバー、モルガンルートとも言える内容になるはず。
完結までの時間、私の気力などから一本道の物語で全てを出し切りたかったが、どう頑張っても一つの物語で全てを書き切るのが無理だと判断。私の技量不足で申し訳ない。
今の話が完結後、モチベーションがあったら書くかも
凛ルート(仮)
アーチャーの狙撃からイリヤを助けられないと発生、アーチャールート、桜ルートとも言える。