もし士郎がモルガン化したら?   作:モル士郎

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第7話

 

 

朝、凛は優雅に紅茶を飲んでいた。常に余裕を持って優雅たれ、この遠坂家の家訓にならい苦手な朝の時間もゆっくりと過ごしている。尤も、ここ最近は家事の全てをサーヴァントが勝手に終わらせているため、やる事がない、と、言った方が正確なのだが……。

 

「おはようございます。マスター。学校の準備は整っています。」

 

 アーチャーはスクールバックを凛に手渡した。凛は鞄を受け取ると小さくため息をついた。

 

「……アーチャー、私は家事をして欲しくてあなたを呼んだわけじゃないのだけど……。」

 

「ええ、私はあなたのサーヴァント。使い魔です。使い魔は主人である魔術師の代わりを務めるモノの総称……。私は凛、あなたの為ならばなんでもやります。マスターは優秀な魔術師だと思っていましたが、こんな初歩的なことも知らないのですか?」

 

「いや、そういうことじゃないわよ………もういいわ。」

 

 諦め混じりの深いため息を吐いた後、この捻くれ者のサーヴァントはなぜ、自分にここまで尽くしてくれるのか分からないが、やってくれるなら任せようという結論に至った。

 

「真面目な話なのだけど、マスター。キャスターについてです。」

 

 アーチャーのその言葉に凛は思考を切り替えた。平時のものから戦争のへと変わる。対してアーチャーは困ったような表情で何かを言い淀んでいた。

 

「どうしたの?何か言い難いことでも……。」

 

「ええ……マスター。言わないわけにはいかないのでハッキリ言います。……私ではキャスターには勝てません。少なくとも魔術において私では勝ち目が無い。」

 

 その言葉に凛は目を見開いた。

 凛は彼女が負けず嫌いな性格だと考えていた。そんな彼女がハッキリと、そして、戦う前に負けを認めるなんて考えられなかった。だが、そこは冷静になって切り返す。

 

「……。それはどうして?」

 

「私はアーチャーのクラスですが、その実は魔術師……。戦闘の大半を魔術に頼って戦っています。ですが、()()()()()の魔術師相手に私程度の魔術では敵わない。」

 

「あのレベルって……。戦っても無いのに分かるの?」

 

「ええ、昨晩、マスターが眠った後、偵察に行きましたので……。私も魔術の才能については自信はあるのですが、間違いなくキャスターは魔術において私以上……。」

 

「……。あんたの勝手な行動は後で詰めるとして………。」

 

 凛の少し低い言葉でそう言った後に話を続ける。

 

「あなたはアーチャーなのでしょう? 接近戦をランサーと戦えてた。魔術で負けててもどうにかなるんじゃない?」

 

「………単純に相性の問題です。私は戦闘を魔術に頼り切っています。そこを潰されたら、私に出来ることは少ない。」

 

 真剣な表情のアーチャーの目と何か疑わしげな凛の目が合う。そして嫌な沈黙が少し流れる。

 

「…………………そうね。確かにその話が本当ならまずい。」

 

 凛はアーチャーの言葉を信じ頷いた。

 

「なにか、対策を考えないと」

 

 そう悩む凛にアーチャーはニヤリと笑みをこぼした。

 

 

 

 

 そこはまさに素晴らしい国だった。

 神秘に満ち、人々が暮らす。いずれ終わりが来るとしてもこの島はとても素晴らしい場所だ。

 見上げる白亜の城は美しく、終わりに向けて良い夢を皆に見せている。しかし、それは間違いでは無い。

 終わりという未来が変えられないのなら、素晴らしい夢の中で穏やかに終わりを迎えたい。この想いはきっと間違ってはいない。なのになぜ……。

 

 

 

 士郎は目を覚ました。

 まず1番初めに感じたのは何かへの渇望だ。ソレを手に入れる為なら何をしても良いという、残忍なまでの想い。しかし、それはすぐに薄れていく。

 グッタリとした身体を起こし、時計を見ると既に時間は11時、今日は学校があるが遅刻とか言っている場合では無い。

 

「シロ!目が覚めたのですね!よかった……。」

 

 襖を勢いよく開き、()()()()少女が入ってきた。彼女を見て士郎は不思議と湧き出す苛立ちと共に名前を呼ぶ。

 

「ア………セイバー?」

 

 そこで、彼女の名前を知らないことを思い出した。いや、知っている。アーサー王、それが彼女の名だ。だが、それが本当の名前では無いことを何故か士郎は知っていた。

 

「……昨日、土蔵で倒れた後、勝手ながらお布団へと運ばさせていただきました。体調は大丈夫でしょうか?」

 

 セイバーのその言葉に士郎は昨日、パスを繋ごうとして倒れたことを思い出した。しかし、幸いなことにパスの再接続は上手くいったようで、魔力の供給も問題ないようだ。

 

「ええ……。問題ない。すまないなセイバー、遅くなったが昼ごはん兼、朝ごはんにしよう。」

 

 そう立ちあがろうとするが、セイバーに肩を押さえつけられた。動こうとしてもびくともしなかった。

 

「食事なら問題ありません。朝はサクラが準備してくれましたし、昼はタイガが作り置きしていただいています。」

 

「………藤ねぇが?桜じゃなくて?」

 

「はい。電子レンジの使い方も習いましたので、今日は私の妹にでもなったつもりでマスターは休んでいてください。学校にはタイガから連絡してくださったようです。」

 

 セイバーはそう言うが、士郎は少し嫌な予感がした。しかし、セイバーの張り切り具合にグッと堪えて布団に戻る事にした。

 

「………そうさせてもらうよ。悪いがお腹空いたからお昼ご飯を持ってきてくれないか?」

 

「はい、任せてください」

 

 そう言ってセイバーは部屋から出て行った。その背中を見届けると士郎は横になった。はだけた布団を戻そうとした時に服が寝巻きへと変わっている事に気がついた。昨日は着替えた覚えはないが、セイバーが着替えさせてくれたのだろうか?

 

(………余計なことを考えるのはやめよう)

 

 セイバーからしたら同性のマスターだ。その辺の遠慮は無くなって当然だろうと思い至る。

 

「けど、みんなに迷惑をかけたな……。どこかで埋め合わせしないと」

 

 と考えているとセイバーが昼ごはんを持ってきた。

 お盆の上はパスタだった。士郎は基本的に和食を作ることが多いため衛宮家では比較的珍しいメニューだ。しかし、具材を見て士郎はつぶやいた。

 

「なんでさ」

 

 おそらく鯵の開きである。細かくぶつ切りになっているが鯵の開き(骨ごと)や、鶏レバーが入っている。そして、そこはかとなく香るカレーの匂い。

 

「………いただきます。」

  

 食べられないことはない。

 鯵の開きをパスタに入れる。カレー風味のパスタ。その2種類の新メニューに対して将来性を感じる味であった。

 それはともかく、一旦箸を置いて士郎は口を開く。

 

「セイバー、これからの方針なんだけど」

 

「はい、私もどうするべきか悩んでいました。マスターの中にある聖剣の鞘、おそらくこれが原因でマスターは我が姉モルガンに近づいている。昨日の様子から高レベルの魔術行使は控えた方がいいでしょう。………むしろ……」

 

 私との契約を破棄したほうがいい。

 セイバーはそう言いかけて口を噤んだ。

 このまま鞘の本来の持ち主である自身と契約していれば士郎に良く無いことが起きる。セイバーはそう考えていた。

 だが、仮に士郎があのモルガン並みの魔術の才があるのなら、聖杯戦争を優位に進めることが出来る。

 

——王は人の心が分からない

 

 脳裏にかつて言われた言葉が流れる。

 かつて村のひとつを潰した。他にも非人道的なことを沢山してきた。

 

(それでも、私は……)

 

 また、沈黙が流れる。セイバーは言葉の先を言うつもりはないようだ。その様子に士郎も一旦箸を置いて応える。

 

「…………何もしない訳にもいかない。かと言って敵の手がかりも無いし、だから今晩から街を巡回しないか?」

 

 街の巡回。

 その提案にセイバーは何かを言おうとする。

 

「あなたは……。いえ、そうですね。聖杯戦争に勝ち残る為にも敵の手掛かりを探す必要がありますし……。ですが、身体は大丈夫なのですか?」

 

「ああ、もう大丈夫だ。」

 

 そうして夜から街の巡回をする事にした。

 

 

 夜、士郎とセイバーは街を見て回る事にした。

 人通りが多い場所を重点的に回る。

 学校に張られていた結界の犯人が別の場所に同じ結界を仕掛けるのなら、やはり、人が多い場所が狙われるだろう。

 

「と言うわけで、新都の駅に来てみたが」

 

「特に異常はないですね。」

 

 士郎とセイバーは2人並んでそう口にする。

 2人は似たデザインのGパンとTシャツ、ジャケットを着ており、あまりオシャレな格好では無いが、なまじ見た目の良い2人が揃って着ているため、不思議とオシャレに見えてしまう。

 2人は駅の周りを見て回る。冬木市で1番人通りが多い場所とはいえ、路地裏は薄暗く気味が悪い。そこをひとつひとつ見ていく。そんなおり、3つの人影を見つけた。

 路地裏ということもあり灯りが無く、そして、まだ距離がありよく見えないが、長身長髪の女性が小柄な女性の首元に噛み付いているのだ。そして、その様子を細身の男が見ている。

 

「っ!サーヴァント!!」

 

 セイバーは叫んだ。その言葉と同時に長身の女性がこちらへ気がつき素早く迫る。その速さは驚異的で数十メートルの距離を一瞬で移動した。しかし、セイバーも一瞬で見えない剣を構え、迎え撃った。

 

(サーヴァントってことは!)

 

「セイバー!任せた!」

 

 士郎は両足に魔力を通し地面を蹴る。

 魔力にものをいわせた肉体の強化。敵のサーヴァントも行かせまいと杭のような武器を振るうがセイバーが防ぐ。そして一気に男と距離を詰め、拳を振るった。

 男は反応できずに拳をモロに受けてしまい、数メートル吹き飛び、建物の壁にぶつかり地面へと倒れた。遅れて手に持っていた本が落ちる。

 

「………お前は……慎二?!」

 

 士郎は目を見開いた。

 男は間桐慎二、士郎の中学からの友人であった。その様子に慎二も驚いたような顔をした後に笑みを浮かべた。

 

「衛宮? 衛宮もマスターだったのか!いいじゃないか!なぁ、手を組もう!今回のことは無かったことにしてやる。この僕が守ってやるから。」

 

 慎二の言葉に他意は無い。好きな異性が自分と同じゲームに参加できたから嬉しかった。好きな異性と同じチームで戦いたい。そんなごくありふれた思いである。

 しかし、無情にも暴風が吹き荒れた直後、長髪の女性が2人の頭上を吹き飛ばされていき、壁にめり込むように叩きつけられた。

 

「ら、ライダー!何勝手に負けてるんだよ!僕が弱いみたいじゃないか!」

 

 ふらふらと立ち上がりながらそう命令する慎二だが、ライダーは動かない。いや、動けないでいた。それでも無理に命令され、もがき苦しんでいる。

 そして、慎二の持つ本に突如火がつき、すぐに燃え尽きてしまった。それと同時にライダーも消えてしまった。

 

「慎二、………なんで、聖杯戦争なんかに」

 

 士郎のその言葉に慎二は悪態をついた。

 

「間桐は由緒ある魔術師の一族なんだ!本当なら僕が負けるわけが無い。僕が弱かったんじゃない!ライダーが弱かったんだ!」

 

 そう叫ぶ慎二を見る士郎の目は冷たく、冷酷で、まるで御伽話の悪い魔女のようだ。その目を見て慎二は恐怖した。その友人に向けるとは思えない瞳、その目に気がついた慎二は背筋が凍った。

 

「ひっ。」

 

「——桜も、こんな事やらされてるの?」

 

「さ、桜は関係ない!魔術は長男が継ぐものだ!2人目は何も知らされずに育つ」

 

「そう。」

 

 士郎はそう短く返すと慎二に興味を無くしたかのように、倒れている女性に近づいた。そして、腕に魔力を通して強化してお姫様抱っこのように抱え上げた。

 

「セイバー、聖杯戦争の犠牲者は神父のところに連れてけばいいんだよな?」

 

「え、あ、はい。そうですが、その、いいんですか?」

 

 セイバーはチラリと慎二の方を見たが士郎は首を傾げた。その様子に慎二は怯えながら口を開いた。

 

「———―なぁ、衛宮、お前は誰だ?」

 

「……何を言っているの?」

 

 士郎は興味を無くしたかのように「行きましょう、セイバー」と短く声をかけその場を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





 

書きにくいキャラランキング
1位慎二
2位凛
3位陸部3人娘

セイバー
真名 アーサー王
※士郎曰く他にも名前があるような気がする
マスター 衛宮士郎

パス接続前→接続後
筋力:B→A
耐久:B→A
敏捷:C→B
魔力:B→A
幸運:B→D
宝具 : C→A++
※投稿後しばらくして敏捷値をナーフしました

士郎の格闘能力
美綴綾子に連れ道場で鍛えられているため、格闘術は身に付けられている。また、原作士郎同様にアホみたいに鍛えているため腹筋は割れている。
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