もし士郎がモルガン化したら?   作:モル士郎

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第8話

 

 

 

 interval

 

 「………っ!」

 

 間桐慎二は自室で渋い顔をしていた。眉間に皺を寄せ、落ち着かなく貧乏ゆすりをしている。

 そんな彼が思い起こすのは先程の出来事だ。ライダーが一溜まりもなく負けた。聖杯戦争から一瞬で負けたのだ。

 

「クソ……。ライダーのやつ……」

 

 しかも、異性として意識している相手に負け、みっともない所を見せてしまった。そして、最後に見せた衛宮士郎の表情、雰囲気、それらはまるで別人のようだった。

 

「なんなんだよ……。」

 

 頭を抱える。聖杯戦争で負けた事、みっともない所を見せてしまった事、そして、衛宮士郎の雰囲気。それらが頭の中でぐるぐる回り、慎二をイラつかせた。

 

「くそ!なんで僕がこんな事で悩まないといけないんだよ!」

 

 机の上に置いてあった魔術書を感情任せに叩き落とした。そして時計を見ると深夜を過ぎている。そろそろ魔術の鍛錬から桜は戻っているだろう。

 その事実すら彼をイラつかせる。

 自室を出て、通い慣れた桜の部屋に入る。

 

「……兄さん……。」

 

 部屋に入ると桜は全てを悟って諦めたような表情となった。

 この欲しいモノだけが悉く手に入らない男は桜の肩に手を置き、ベッドに押し倒した。

 

interval out

 

 

 朝

 着慣れた制服へと袖を通す。

 寝癖が付いた髪の毛を手櫛で整え、士郎は部屋を出た。昨日は変な夢を見たせいか眠気は残るがすぐに目は覚めるだろう。

 

「先輩、おはようございます。お身体はいかがですか?」

 

 居間に入ると既に桜がきていた。士郎はそのいつも通りの彼女に昨晩のことが嘘のように感じられた。

 

「ああ、もう大丈夫だ………。そうだ、昨日は慎二はどうだった?」

 

 士郎は我ながら漠然としすぎな質問だと思った。何が聞きたいのか分からないし、なんのための質問なのかも分からない。そんな意味の分からない質問に桜は答える。

 

「………………………。特に、いつも通りでしたよ?」

 

 こうしていつも通りの日常が始まった。大河やセイバーを含めた4人で食事をして、いつも通りに登校した。

 学校では日常が広がっており、いつも通りの級友といつも通りの授業を受けた。

 

「衛宮、メシ行こうぜ!」

 

 昼休みは綾子と合流して食堂に向かう途中、廊下で凛に呼び止められた。

 

「………お疲れ様。美綴さん、少し衛宮さんを借りても良いかしら?」

 

 凛は作り笑いのままそう言う。その様子に2人は足を止めた。 

 いや、足を止めたのは2人だけでは無い。昼休みの廊下で、周囲には多数の生徒たちがいて、そんな中で色々な意味で有名な3人が揃ったのだ。3人の動向は注目を集めた。

 そんな様子を気に留めず士郎は答える。

 

「……貸せって……。そんな物みたいに……これから食堂行くんだが、遠坂も来るか?」

 

 その士郎の言葉に綾子も頷いた。

 

「お、良いね。なんだかんだで遠坂と昼飯食べる機会少ないからね。たまには付き合いなさいよ。」

 

 そんな楽しげに話す2人に凛は笑顔のまま内心でイラついてきた。事情を知らない綾子は良い。凛とてたまには綾子と昼食を食べるのも楽しそうだ、とも思っている。だが、士郎は違う。どう考えてもこのタイミングで話したいと言えば聖杯戦争関連であることは分かるはずだ。

 

「衛宮さん、私が2人で話したいと言っているの。理由はお分かりですよね?」

 

 満面の笑みの凛に綾子の本能が今は逃げるべきだと察した。友人が友人に怒っている。本来なら仲裁に入りたいが、遠坂凛相手はまずい。

 というのは理由の半分で、もう半分は凛がわざわざ話しかけてきたということは重要な話なのだろう、という信頼もあった。

 

「じゃ、衛宮、昼飯は明日にしよう。遠坂、マジで鬼みたいに怖いから、私は逃げる!」

 

 と、わざとらしく身振り手振りをつけてその場を去って行った。その様子を見た後、凛は笑顔を士郎に向けた。

 

「行きましょうか。衛宮さん。」

 

「お、おう」

 

 不思議と士郎は初めて笑顔が怖いと思った。

 

 

 2人は屋上に移動した。

 屋上に着くと凛は作り笑いを辞め、真剣な顔で口を開いた。

 

「単刀直入に言うわ。衛宮さん、同盟を組まない?」

 

 その言葉に士郎を首を傾げた。その様子に凛は情報が少な過ぎると思い話を続けた。

 

「私は今、キャスター陣営を追っているのだけど、一刻も早く倒しておきたいのよ。」

 

「キャスター……。魔術師のサーヴァントか……。けど、三騎士クラスは高い対魔力があるんじゃないのか?」

 

 士郎はセイバーから聴いた話を思い出しながら言った。その問いに凛は首を振った。

 

「ええ、そうね。アーチャーも、そしてあなたのセイバーも魔術は効きにくい。けど、だからこそまともな手段なんて使うわけがない。」

 

 そこで凛は一拍置いて人差し指を立てながら言葉を続ける。

 この聖杯戦争は魔術師達が作ったゲームであり、ルールそのものが魔術によって成り立っている。つまり、高レベルの魔術師であればルールそのものを無視できてしまう可能性があること。

 そして、キャスターは冬木の霊脈をいじり、町全域から魔力を蓄えており、時間が経てば経つほど力をつけてしまうこと。

 それらを説明すると、横にアーチャーが出現した。

 

「それらをあなたに説明したのは私ですけどね。」

 

 士郎とアーチャーの視線が合う。彼女の視線に士郎はゾワゾワした感覚に襲われる。何か違和感がある。致命的な何かを見逃している予感。

 

「…はい、はい。ありがとうアーチャー。あなたのおかげよ。」

 

 凛が適当にあしらうとアーチャーは「フッ」とニヒルに笑うと霊体化してしまった。美しい見た目とは似合わない笑い方に違和感が大きくなる。

 

(何しに出てきたんだ?)

 

 士郎は首を傾げたが、今はそれどころでは無い。凛との共闘についてだ。キャスター陣営には出会ったことはないが、彼女の話が本当なら確かに危険だ。

 

——けど、それは私にとって何のメリットがあるのかしら?

 

 打算的な思考がよぎる。

 凛と組むメリットだ。確かにキャスターを安全に倒せるのなら大きなメリットだ。しかし、凛にも裏の狙いがある可能性があるし、何の条件もなしに凛からの提案を飲むのも、駆け引きとしてマイナスだ。

 

——同盟を結ぶなら私の方が発言権は強くあるべきだ。  

 

 思考がよぎる。

 しかし、それを首を振りかき消したり。

 

「分かった。遠坂とは俺も出来れば戦いたくない。」

 

「あんたねぇ。同盟を結んでも最後は戦うことになる敵同士なのよ?」

 

「分かってるさ。キャスターを倒すまでは仲間ってことだろ?」

 

 そんなことを言う士郎に凛は溜息をついた。何はともあれ、凛と士郎は共闘する事になった。ということでまず凛は士郎に知っている情報を開示した。

 

「……柳洞寺にキャスターが……?」

 

「ええ、そこで魔力を溜め込んでいる。マスターはきっと柳洞寺の関係者……。」

 

 凛は口を出さなかったが、明らかに1人のことを示唆していた。それを察して士郎は名前を呟く。

 

「一成……」

 

「ええ、彼がマスターである可能性がある。そうでなくとも何かしら知ってるかもしれないわ。」

 

 凛の言葉に士郎は頷いたが、その顔は暗い。慎二に続き一成までも聖杯戦争に関係しているかもしれないのだ。彼の友人たちが続々と危険を犯そうとしている。

 

「……一成に情報を聞き出してみる。」

 

「ええ、任せるわ。」

 

 凛は少し不安を覚えたが、士郎の魔術の腕ならばどうとでもなるだろうと考え任せることにした。その様子に士郎は腕を組んで考えた後に口を開く。

 

「遠坂……。話は変わるが、慎二がマスターだった。サーヴァントはおそらくライダー。昨日倒した。」

 

 その言葉に凛は目を見開いた。間桐家は魔術師の家系だが、すでに没落しマスターになれる存在なんていないはずだ。そう思っていたのだ。

 だが、同時にあの家は聖杯戦争を作った御三家だ。何かしらの反則を知っているのかもしれない。

 

「……そう。ってなると、学校の結界は慎二が犯人だったのかもね。その辺は放課後にでも問い詰めてみるわ」

 

 そうこうしているうちに昼休みは終わり授業が始まった。午後の事業はすぐに終わり、放課後となった。授業が終わると士郎は一成を捕まえ、「話がある」と言って生徒会室に連れ込んだ。

 

「……で、話ってなんだ?」

 

 緊張した面持ちの一成に士郎は口を開く。

 

「一成、何も言わずに服を脱いで、身体を見せてくれ」

 

「は?」

 

 生徒会室に静寂が訪れる。

 当然のように言う士郎に思考が停止する一成、その場はまさにカオスだ。

 

「いやいやいやいや、いくらなんでもそれは出来ん。女人の前で服を脱ぐなど……」

 

 そう言う一成に士郎はため息を吐いた。しかし、そのため息は呆れから来るものではなく、意味合いとしては深呼吸に近い。

 いくら士郎でも一成の反応は当たり前であることは分かっているし、女の身で男の服を剥ぎ取る事なんて出来ない。下手したら明日から登校できなくなる。

 

「分かっていたさ……。けど、あまり他人に使いたく無いんだ。」

 

「何を……」

 

 士郎は意識して一成に目を合わせ、そして、一成の肩に手を乗せる。

 

同調、開始(トレース オン) ………一成、服を脱いでくれ」

 

「アア、分カッタ。」

 

 一成は人形のように返事をした。その様子に士郎は申し訳なさそうな顔をした。

 

 瞬間、士郎は腹に激痛が走った。

 

「グッ」

 

 苦痛が口から漏れる。痛みに耐えかねて床に倒れてしまう。自分自身を解析し、傷が内臓まで届いている事を認識する。

 

(なんで……。一成の()()()()()()()

 

「エモノがカカッタ」

 

 一成の声では無い声が聞こえる。

 すでに一成は敵により操られていたのだ。それも士郎()()足下に及ばないレベルの卓越した相手だ。

 

「コノ人形ハ、モウイラナイ」

 

 一成は自分の首にナイフを近づける。

 

「くそ、動け!」

 

 傷口を()()()()()()()()。治ってはいないが傷口が開いたままよりマシだ。痛む体を無理矢理動かして起き上がり、一成の持っているナイフの刃を掴み、動きを止めた。

 

「止まれ、一成!!」

 

 士郎は手から出血をする。

 それでも離すことはない。離すわけはない。そのまま士郎は一成と目を合わせて、魔力を流し一成の制御を奪おうとする。

 だが、士郎の魔術なんていとも簡単にレジストされ、一成は士郎に蹴りを放った。士郎の傷口から生えた剣が一成の肉を引き裂く、しかし、それでも気にせず、そのまま蹴りを振り抜いた。

 

「………ぐっ」

 

 士郎は突き飛ばされ、生徒会室の壁に激突し、崩れ落ちた。全身が悲鳴をあげている。傷ついた内臓に加え、今ので骨が何本か折れただろう。あり得ない威力の蹴り、明らかになんらかの魔術的強化をされている。既に一成の足も変な方向へ曲がっておりまともな強化では無い。

 

(……セイバー。)

 

 士郎は朦朧とする意識の中、手の甲の令呪を見た。魔力を込め、セイバーを呼ぼうとする。が、すでに遅い。

 

「オ前ハ、マスター、ダナ」

 

 一成はそう言って、自分の首を掻き切って倒れてしまった。

 

「一成!一成!!」

 

 士郎の声に一成は答えなかった。

 

 

 

 

 












間桐慎二
おそらく原作以上に捻くれている。
魔術だけではなく衛宮士郎すらも手に入らない。勉強も運動も出来るし女からもモテる。なのに、魔術と士郎だけは手に入らない。
欲しい物だけは手に入らず、それ以外は手に入る憐れな人。


番外編
なんか筆が乗ったので番外編を書きました。
18歳以上の方は
https://syosetu.org/novel/374256/



ヒュプノス
神代の魔女はヤベェよ


最近思う事。
地の文での士郎の三人称。なんや感やで誤魔化して書いてるけどそろそろ限界
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