もし士郎がモルガン化したら?   作:モル士郎

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第9話

 

 

 周りに広がるのは死体の山。

 かつて仲間だった騎士達は次々と倒れていく。

 

「父上ぇえ!」

 

 少年あるいは少女が叫ぶ。それに向け王は槍を突き立てた。

 

 

 士郎は目覚めると知らない部屋にいた。

 周囲を見渡してみが、どうしたものかと考えていると扉が開いて凛が入ってきた。

 

「衛宮さん。目が覚めたみたいね。」

 

「遠坂?ここは?」

 

「私の部屋よ。あの後、血塗れだったあなたをここに退避させたの。あなたも警察沙汰は嫌でしょ?」

 

「遠坂の?……いや、あの後って」

 

 凛の部屋という驚いたが、しかし、それ以上に考える事がある。自分で自分を傷つける一成の姿を思い出した。

 

「一成、一成はどうなったんだ?」

 

 士郎の言葉に凛は言いにくそうに首を振った。

 

「彼は、………亡くなったそうよ。………多分、自殺って扱いになるんじゃないかしら?」

 

「自殺……。」

 

 士郎はその言葉を呟いた。確かにあの状況なら自殺だろう。そうで無くとも神秘は秘匿される。監督役によってそのあたりはうまく処理される。

 

「ありがとう。遠坂、助かった。今度、この埋め合わせはするよ。セイバーが待ってるだろうから、もう帰るよ。例の共闘の件は明日改めて話そう。」

 

 士郎はいつの間にか握りしめていた拳を解き、立ち上がった。一成に刺された場所を軽く触るが、違和感はあるが傷は塞がっているようだ。凛が治してくれたのだろう。

 

「衛宮さん……。大丈夫なの?」

 

 凛は心配そうに言った。彼女も一成とは知らない仲ではない、衝突することはあったがそれでも、級友だった。だからこそ凛も悲しく、凛以上に仲が良かった士郎が心配だった。

 いくら魔術師だってそんなに上手く割り切れるわけではない。

 

「………ああ、慣れてる。」

 

 士郎の脳裏にあの大火災がよぎった。

 

「……そう。」

 

 対して凛は士郎が10年前の大火災の生き残りだと、聖杯戦争の説明のおりに綺礼が言っていたことを思い出し、それ以上深く追求しなかった。

 

 

 

 

 

「何をやっているんですか?!シロ!!」

 

 士郎は帰宅すると、本気で怒ったセイバーが待っていた。居間で正座させられ、小言が続く。

 

「危険ならば迷わず令呪を使うようにしてくださいと、あれほど言ったじゃ無いですか!」

 

 と、頭に手を触れて正座した自分の周りをぐるぐる回り、プンスカ怒るセイバーに士郎は謝るしか無かった。

 

「凛から連絡が無ければどうなっていたのか……」

 

「え?遠坂が?」

 

「はい、正確にはここに来たのはアーチャーでしたが、キャスターによって傷を負ったから、ひとまず凛の家で治療すると。凛と同盟を結んだのですね。」

 

 その言葉に士郎は凛に迷惑をかけてしまったと再確認した。

 

「けど、セイバーが近くにいれば傷は治るんだから、こっちに運んでくれれば……。」

 

「……………それは………ええ。いえ、同盟相手とはいえ敵同士。あまりこちらの手の内は明かさない方がいい。」

 

 何か言いにくそうに言うセイバーだが、慌てたように話題を変える。

 

「今日はもう休んでください。キャスターについては明日考えましょう」

 

 ◆

 

 翌日、

 士郎が起きると既に大河が来ていた。朝の準備をしていると大河が口を開いた。

 

「………士郎、今日は学校休みだって。桜ちゃんは来れないみたいだし、今日はゆっくり休むんだぞ!」

 

 意図してるのかしてないのか明るく振る舞う大河に士郎は少し笑みをこぼした。

 

「ああ、藤ねぇも。他の先生に迷惑かけないようにな。」

 

「何よそれー、私はいつだって誰にもメーワクなんてかけてないよー。」

 

 そんないつも通りのやり取りをして、大河は家を出た。そして、彼女と入れ替わるように制服姿の凛が家にやって来た。

 

「遠坂?なんでうちに?」

 

 とりあえず居間に通し、お茶を出した。士郎は凛の向かいに座り、セイバーは士郎の隣に座った。

 

「なんでって、キャスターのことよ。学校で話そうと思ってたけど、今日は臨時休校だから、わざわざ来たのよ。…………私のテリトリーであんなことされて、黙ってられるもんですか……。」

 

 凛の目には明らかに怒りが宿っていた。その思いには士郎も同感だ。あんなことをするサーヴァントを放っておく訳にはいかない。

 

「ああ、まずはキャスターのマスターが誰なのかだが……。」

 

「調べが付いてるわ。マスターは葛木よ。あの事件の後、忽然と姿を消した。調べてみると、葛木先生って柳洞寺に住んでるのよ。」

 

 その言葉に士郎は驚きを隠せなかった。思い返せば一成と葛木は仲が良かった、と言うよりも一成がフランクだったように感じる。

 そう思い返しているとセイバーが言う。

 

「その話が本当なら、キャスターは自陣の防御を固めているでしょう。籠城されては突破出来ない。夜襲するにしても警戒されていては効果は半減だ。」

 

「ええ、セイバーの言うとおり。だから、あえて真正面から行くのよ。」

 

「真正面から?」

 

 士郎の言葉に凛はバツの悪そうな顔して言う。

 

「今から、亡くなった友だちにお線香をあげに行くのよ。」

 

 通夜前に故人の家に行くことはマナーとしてはよろしく無い、と言う考えもあるし、そもそも、一成の遺体は現在は警察が保管している。事件性はないだろうとは言われているが、まだ調査中なのである。

 もし、凛が士郎を連れ出していなければかなり大変なことになっていただろう。

 

「私たちは高校生。友達の為にやって来た。そう言う口実で真正面から行って、葛木達を倒す。」

 

「なるほど、聖杯戦争が夜行うもの、という発想を逆手に取るということですか……。」

 

「ええ、そうよ。いくらキャスターでも、急に我々が来るとは思っていない。中にさえ入ればアーチャーの宝具で倒せる。でしょ?」

 

 凛の言葉にアーチャーが実体化した。

 

「その認識で間違いありません。キャスターと一対一の状況にさえ出来れば勝てます。私の宝具であれば無関係の人を巻き込むことはありません。幸いにも平日の昼間、参拝者は少ないですし、上手く誘い込めば無関係の人を巻き込むことはありません」

 

 いつも通りにそう言うアーチャーだが、士郎は何故か嬉しそうにしているように見えた。

 それはさておき、作戦を詰め柳堂寺へと向かった。

 

「これは?」

 

 長い階段を登ると山門が破壊されていた。その様子に3()()は気を引き締めた。

 何かが起きている。何かがおかしいと、警戒を強め、境内へ入った。

 

  瞬間、魔弾の雨が降り注いだ。

 

「はぁぁああ!」

 

 セイバーは一瞬で武装し、魔弾を剣で消し飛ばす。見上げるとローブを広げた女性、キャスターが浮いていた。

 

「キャスター? 待ち構えていたのか!」

 

 士郎の言葉にキャスターは苛立つように応える。

 

「待ち構える? 山門を破壊されたのですから当然でしょう!」

 

 その言葉と共に無数の骨で出来た化け物が出現した。竜牙兵と呼ばれるソレらが凛や士郎達を襲う。

 一体一体はそんなに強くない。適当な剣を投影した士郎や凛のガンド撃ちでもなんとか勝てる程度だ。しかし、数が多い。そして何よりも厄介なのが……

 

「ーーーーーー」

 

 空から無数に放たれる魔術である。

 対魔力のあるセイバーやアーチャーには効果が薄い。だが、人間である士郎や凛は当たればひとたまりもない。

 セイバーは剣でアーチャーは弓矢で魔弾を防いでいくが、ジリ貧だ。いつかはこの拮抗は崩れるだろう。

 

「マスター!宝具の使用の許可を!」

 

 セイバーは言う、だが、それをアーチャーが止め、アーチャーは手を天に翳した。

 

「いえ、作戦通り、私がいかせてもらいましょう。……………熾天覆う七つの円環(ロー・アイアス)

 

 7枚の花弁が出現した。それらはキャスターの魔弾を防ぎ切る。だが、この盾は本来なら投擲武器を防ぐもので魔術相手ではただの硬い壁だ。時間稼ぎにしかならない。

 

I am the bone of my sword.(――― 体は剣で出来ている。)

 

 だが、それで十分だった。

 詠唱を始める。その行動にキャスターも警戒し攻撃を強めた。盾にヒビがはいり、竜牙兵の数も増す。

 

Steel is my body, and fire is my blood.(血潮は鉄で 心は硝子。)

 

 そして、さらに1人の男も現れる。

 スーツ姿の彼は竜牙兵の間を縫うように通り、セイバーに肉薄する。

 

「マスター!!」

 

 キャスターの声が響く。その声と共に男、葛木の速度は強化される。

 

I broke over a thousand blades.(幾たびの戦場を越えて無勝)

 

 キャスターのマスターの出現、それにより一気に形勢が変わる。セイバーの攻撃は無常にも防がれ、葛木の拳によりセイバーはズタボロとなる。

 

Unknown to Death.(ただの一度も敗走は許されず)

 

 Not Concerned About Loot.(ただの一度の勝利も無い)

 

「セイバー!」

 

 士郎は自分の腕に傷を作り、その血を飛ばす。そこから無数の剣が投影され、葛木を襲う。しかし、そんな攻撃も簡単にかわされてしまう。しかし、セイバーから距離を離すことは出来た。

 

In the end, the pain made me throw away my weapon.(担い手はひとり、剣の丘で勝利を嗤う)

 

 盾にヒビが多くなる。この盾を維持するための魔力を減らし、宝具に回しているからだ。

 

「――――yet(けれど),」

 

 キャスターの魔弾、葛木のセイバー以上の戦闘能力、それらにより士郎達は追い詰められる。そんな中、キャスターだけがソレに気がついた。

 

yet, the hand grasped it.(未だ、その生涯の意味には気づかず)

 

 

「アーチャー!ソレは!」

 

 キャスターの叫び、しかし、それに応えるものは居ない。

 アーチャーは姿を消した。

 

So as I pray, UNLIMITED BLADE WORKS.(故にその体は、無限の剣で出来ていた。)

 

 そして、キャスターの背後に出現した。

 

 

 

 

「左手のそれに、固有結界。アーチャー、あなたはやはり、魔術師なのね」

 

 キャスターは広がる廃墟を見ながら言う。朽ちた家々、街並みは何処までも広がり、そこに無数の剣が突き刺さっている。

 そして、建物も剣達も多種多様で、和風のものもあれば西洋風のものもあり、節操が無いという印象を与える。

 

「その口ぶりだと、前から私が魔術師だと気がついていたのね?」

 

「当たり前よ。自分のマスターにすら顔を見せない女が魔術師で無いとしたらなんなのかしら? いえ、マスターではなく可愛いお人形かしら?」

 

 キャスターの言葉にアーチャーの眉間に皺がよる。しかし、そんな事を気にせずキャスターの背後に魔法陣が出現する。

 固有結界とはいえ、ただの魔術だ。神代の魔術師ならば脱出する術があってもおかしく無い。

 

「逃さない」

 

 アーチャーは懐から一つの宝石を取り出す。それを見た瞬間、キャスターの思考がとまる。

 

「さすがは裏切りの魔女、コレがなんなのか分かるようだな。」

 

「……ええ、分かるわ。そんなものが、なんだって言うの!!」

 

 キャスターは、さらに無数の陣を出現させ、アーチャーに向けて無数の魔弾を放つ、その表情は恐怖と怒りが混じっている。対してアーチャーはニヤリと笑う。

 

「なんだって新技の実験をしようと思ってね。マスターには見せられないのが残念だが……」

 

 魔弾が着弾する。アーチャーの身体は吹き飛ばされ、霊核にも傷が入る。だが、それでもアーチャーは静かに唱える。

 

「…………夢幻召喚、バーサーカー。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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