名もなきルビコニアン   作:ぶたたけ

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2月21日『ストレリチア』・2月22日『親父』

2月21日『ストレリチア』

 

今日は解放戦線の戦士が店に来た。

褐色の肌に白い戦線の腕章が映えるのですぐに判った。

若者は店の端に並べているセール品を前に1時間もうんうん唸っている。

 

「お兄さん、彼女へのプレゼントなら安くしてやるから、好きなのを選びなさい。」

そう言ったら、破顔してレースの一つを手に取った。

ストレリチアのオレンジと青紫の鮮やかな首飾りだ。

 

「ルビコンに自由を取り戻した時、彼女にこの花を送ろうと思うんです。」

 

首飾りを見て照れくさそうに言う彼に、私は今すぐにでも渡してやりなさいと忠告した。

 

「君も彼女も、明日にも死ぬかもしれない。伝えるなら早くしたほうがいい。」

「……今すぐに告白したほうが良いのは解ってます。でも、今もしこの思いが実ったとしても、私はその幸せを受け入れることはできない。」

 

彼はプレゼントの包みを受け取ると、俯いたまま出ていってしまった。

 

ストレリチアの花言葉は「輝かしい未来」

首飾りを送るにはまだ世界は暗い。

 

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2月22日『親父』

 

今日は特に忙しい日だった。

今日は『五本指』の一人、同志ダナムの葬儀だった。

解放戦線の葬儀は質素であるが、とにかく必要な花の数が多い。

 

彼らを慕う者は大勢いる。

しかし、同志ダナムは別格だ。

彼は多くのルビコニアンにとっての『親父』だったからだ。

 

昔職工であった酒屋の爺は同志ダナムについて良く語っていた。

 

「ダナムの親父はな、家の無え奴には家を建ててやって、飯が食えねえ奴には身銭を切ってその日の飯を与えてくれたんだ。

食い扶持の無え奴には仕事も与えてくれたし、ガキには勉強する場所もくれた。

足を悪くして昔みてえに力仕事が出来なくなった俺には、故郷に店を作ってくれた。

ダナムの親父に会った奴で親父を嫌う奴は居ねぇ。

居るとすれば、コーラルを狙うハイエナ共だけだ。」

 

輸送トラックいっぱいの花を葬儀会場に持っていくと参列者の中に爺が居た。

 

爺は目に涙をいっぱい溜めて泣いていた。

私が声をかけると、お前が花を作ってくれたのかと更に泣いた。

 

「お前の花はルビコン一出来の良い花だ。最高の花で親父を見送れる。ありがとう……」

 

爺は私に手を合わせてひたすらに礼を言った。

 

次々と参列者が私の作った小さな花を取ってゆく。

棺や献花台に花が満ちる。

 

花の数は愛の証。

この人は本当に皆に愛されて居たのだと実感する。

 

「さようなら、親父」

と爺が小さな声で呟くのが聞こえた。

 

愛に埋まる棺を見て、私の心も切なくなってしまった。

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