名もなきルビコニアン   作:ぶたたけ

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3月15日『神隠し』+3月19日『モカ・マタリ』

3月15日『神隠し』

 

怖いことがあったので話を聞いてほしい。

 

ルビコンでは年に1回精霊祭という祭りが行われる。

先祖を供養する為の祭で

村中に張り巡らされたロープに結ばれた花を、新しいものに付け替える祭りだ。

 

祭りの時期は町によってまちまちなのだが、今月は近郊の町で1件、精霊祭が行われる予定だった。

『だった』のだ。

今日が精霊祭に使う花の納品日だったので、私はレースのリボンを目一杯に用意して町に向かった。

 

だが、町は無かった。

町自体が瓦礫となっていた。

 

建物は尽く壊されていた。

でも不思議なことに死体は一つも無い。

町中を歩いて、歩いて、歩き尽くしたが生存者も死体も、それどころか血の跡すら無い。

あまりにも恐ろしすぎて、供養することも忘れて家に帰って来てしまった。

 

あれは企業の襲撃なのだろうか

しかしあの町には企業が狙うような大規模なコーラル資源は無いはずだ。

 

何を目的に彼らはあの町を狙ったのだろうか?

いつか我々も……。

 

私はこれから、町長にこの事を報告しに行く。

 

悠長に花を編む時期は終わったのかもしれない。

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3月19日『モカ・マタリ』

 

親愛なるモカ・マタリへ

君への連絡手段が見つからなかったのでネットワークの海にメッセージを流すことにした。

ボトルメールという奴さ。

洒落ているだろう?

 

君からのメッセージは確認したよ。

君の身も危なくなるだろうに、危険を冒してまで私に危機を報せてくれたこと、とても感謝している。

 

さて、本題なのだが

君がメッセージをくれた直後に、解放戦線からも通告があってね。

企業共は壁を中央氷原に移動するまでの拠点としたいらしい。

我々の住むこの場所も侵略範囲なのだそうだ。

 

だから私達は愛する街を捨てて、南ベリウスに向かうことに決めた。

南ベリウスは生きているコーラル鉱山も少ない。企業も侵攻してこない安全な土地だ。

其所で我々は勝利か、あるいは死を待つ。

もしかしたらこれが死出の旅になるかもしれない。

 

モカ・マタリ

君に初めて会った日の事は今でも鮮明に思い出せる。

 

“カフェ、それは悪魔のように黒く、地獄のように熱く、天使のように清く、愛の様に甘い”

 

そう言って淹れてくれた“モカ・マタリ”はこの世で一番美味しい飲み物だった。

まあ、ルビコンから出たこともない私に言われた所で、君は嬉しくは無いだろうが。

 

もし、奇跡が起こり、君にもう一度会うことが出来るのならば

その時は君ともう一度コーヒーを飲みたい。

ただ、その時は“モカ・マタリ”じゃなく君と同じ“泥水のようなフィーカ”を飲ませてくれ。

 

 

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