かなり短いので、もう一話とセットでどうぞ。
風紀委員会の執務室、委員長のデスクの前で、メリサは委員長であるヒナを待っていた。
ワタバと黒服の居る応接室を離れたあと、事情を全員に共有して、いろいろ手配をお願いした。楽しい旅行が虚構であったこと、それを台無しにしてしまったことを悔やんでこそいたものの、それを見過ごすことを彼女の正義が許さない。
「話があると聞いたわ、メリサ。休暇に行っていたと思うのだけど、何かあったの?」
メリサはコルネリア連合学園の地であったことを説明し、その危険性を訴える。その証拠としてワタバと黒服が会話をしている写真を見せつつ、自分たちに起こったことを交えながらその身柄の確保することを強く推した。
ヒナはそれに度々質問を返しながら聞いていたが、一連の話が終わってすぐには回答を出さなかった。
「先生にもこの話をしているんでしょう? あの人がどう考えているのか、聞いてみるわ」
「はい、大丈夫です」
メリサは口ではそう答えたものの、ヒナから見た顔にはそう書いていなかったようで。
「あなたがそこまで言うってことは、本当に何かあるんだと思う。だから少し待って。記憶の操作と、ゲマトリアが関わっているという事実。その自治区に私たちが向かう理由付けとしては問題ないと思うし、結果が出れば文句も言われないと思うから」
「っ! ありがとうございます」
「ただ、何もなかったら本当にただの侵略行為になる。その時は始末書を覚悟しておいて」
わかりました、と返して拳を握る。
それは悔しさからではなく、自分の今までの努力と積み上げてきた信頼が無駄ではなかったいうことが嬉しかったが故のものだ。
ヒナにお礼を述べて深々と頭を下げ、執務室を退室する。
その足で訓練場に向かうと、彼女の姿を見つけた部下たちが駆け寄ってきた。
「小隊長、旅行はいかがでした?」
「少しご尊髪に元気がないような……はっ!? まさか旅先で何か!?」
「旅行は、そうですね。故郷に戻ったのですが、それで少し……」
彼女が歯切れの悪い回答をすれば、それを案じるように部下たちが励ましてくれる。
良い部下を持ったものだとメリサは自分の居る環境に感謝した。
「もしかすると、次は少し遠出しての作戦になるかもしれません。そのつもりで準備をしておいてください」
「承知しました!」
その後は日常を噛みしめるように、射撃訓練に参加したり支援要請に応じて出撃したりして一日を過ごした。
翌朝、ヒナから呼び出されたメリサはシャーレ・アビドス(便利屋含む)との合同作戦の日程が決まったことを告げられる。
「ワタバ先輩、絶対にあなたを捕まえます」
メリサは気合を入れ直し、現地を知る人間として作戦会議へと参加するのだった。