残った少女と残らなかった少女   作:息抜きのもなか

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いつも誤字脱字報告ありがとうございます。キーボードの癖かPCの仕様か変換時にバグりやすいんですよね……


取り込み中だったかしら

 他の部屋にも隠れていたのだろう。

 メリサの背後からも続々と温泉開発部員が現れ、あっという間に退路を断たれてしまった。

 だが、すぐに攻撃を仕掛けるつもりはないようで、メリサの方に銃口を向けながらも部長であるカスミの命令を待っている状態のようだ。

 

「ヒナほどではないが、君も最近手に負えなくなっていると相談されてね。こういう機会を設けたというわけだ」

 

 メリサにカスミと対話する気などない。

 しかしそれはカスミにも悟られているようで、「まあまあそう固くなるなよ」とやれやれと首を振られてしまう。

 

「状況はこちらが有利だ。君の銃の威力は申し分ないし命中精度も驚異的だ。しかし、いかに跳弾で複数人を屠れたとして、10発の弾丸で屠れる人数はたかが知れている。リロードの時間を考えれば、少しでも長く安全圏にいるためにも会話に応じた方がいいのではないかね?」

「戯言を。逃がすつもりはないのなら遅いか早いかの違いでは?」

「それはどうだろうな。君が二度とうちの部員たちに危害を加えないと言ってくれるなら見逃すのもやぶさかではないよ」

 

 じゃあ無理ですね、とメリサは銃を構える。

 カスミが言うようにメリサ一人ではこの人数の相手は難しい。複数人に対する攻撃手段として手榴弾ぐらいは持ち歩いているが、そちらはメインウェポンと比べてしまえば威力は劣る。

 加えて、メリサは攻撃性能はゲヘナでも上位に食い込む存在ではあるものの、耐久力としては普通の生徒たちとそう大差ない。集中砲火を喰らえばそう遠くないうちに倒されてしまうのは彼女自身も理解していた。

 

「……ああそうだ。君の髪、色こそ違うもののヒナとよく似ているね」

「……? 何が言いたいんです?」

「いや、我々の中にはヒナに恨みを持つ者もそれなりに多くてね。それとよく似た髪を持つ君に憂さ晴らしをしようと考える輩がいるかもしれない」

 

 その言葉が放たれて、空気が冷えたのを感じる。

 カスミはひどく残念がる演技をした後に、こちらに向けて不敵な笑みを浮かべた。

 

「もちろん私は推奨などしないが、この中に君が意識を失った後も執拗に攻撃を続ける者もいるかもしれない。その中に加減ができない者もいるかもしれない。そうなればもしかすると最悪の事態も考えられる」

「……脅しですか」

「そう受け取ってもらって構わない。我々は既に指名手配こそされているが、本物の犯罪者になりたいわけではないのでね」

 

 選択肢はないに等しい。向けられる殺気を考えれば降伏が最適解な気さえする。

 しかし、降伏したところで意識は刈り取られるだろう。であれば、状況にそう大きな差はないはずだし、降伏した後に痛めつけられないとも限らない。

 であれば、可能性に賭けて戦った方がまだ希望があるのではないか。

 

 そんな風に考えを巡らせていると、後ろの方から何やら声が聞こえてきた。部屋の後方、いやもっと後ろ、階段の方からである。

 

「あー! 階段が塞がれてるよアルちゃん!」

「わ、私が破壊します!」

「ちょ、ただでさえ崩れているのにここで爆弾なんて使ったら……!」

 

 爆発音、続けて爆発音。ドン、ドン、ドン、ドン、と続く音は、最初の爆発に連鎖反応して起爆された温泉開発部の設置したものだろうか。

 周囲の温泉開発部員の注意が逸れたのを見て、気付かれないように扉の方にゆっくりと歩を進める。

 

 しかし、彼女の足元に威嚇射撃の銃弾が跳ねた。

 混乱に乗じて逃げ遂せるのが自分たちのやり口であれど、敵にそれを許すカスミではない。

 

「何やらイレギュラーも起こっているが、基本的に温泉開発などそういうものだ。始めようか」

 

 次にカスミが言葉を発せば、戦闘が開始されるという緊迫感。

 メリサはゆっくりと息を吐いて呼吸を整えながら、この場から離脱する方法を考える。

 狙うなら同士討ちだろう。であれば多少被弾してでも飛び込む方が都合がいい。動きを止めず、体勢を低くしながら部屋の中を動き回り、気絶した温泉開発部員を盾にしながらリロードする。

 ここに到着するまでの戦闘で弾薬をそれなりに使ってしまっているため、同士討ちでどれだけ削れるかが――ガチャ――勝負だ。

 ……ガチャ?

 

「ここからなら隣のビルへ飛び移れ……、取り込み中だったかしら?」

 

 部屋の入り口を開けて顔を見せた乱入者は、咄嗟に取り繕った不敵な笑みを浮かべて固まった。

 突然の闖入者の登場で、一同の動きが止まる。

 その顔を写真で見たことがあったメリサは、後ろから顔を出す面々がアコ行政官が目の敵にしていた人たちだと思い出す。

 

「べ、便利屋? なぜここに!?」

「お、温泉開発部!? ゴホンッ。か、勝手にうちのビルで何をしているのかしら?」

「すみませんすみません、通るので消えてください!」

 

 あれは確か便利屋の自称社長のアルと、おどおどしてる方はハルカと言っただろうか。記憶と照合しながら警戒していると、部屋の隅々から轟音と共に火の手が上がる。

 先ほどアルはここは自分たちのビルだと言った。ここ含めこの辺りは廃墟になっているので不法占拠な気はするが、何はともあれ元々ここを使っていたということだろう。であれば、自分たちの本拠地にあらかじめ罠を準備しておくのは定石か。

 

「くふふ、こんなところにも仕掛けてあったんだね、ハルカちゃんの爆弾!」

「事務所の下に爆弾は危ないと……はぁ。まあいいか、突破しよう」

 

 予想外の攻撃に温泉開発部員は慌て始める。その隙に駆け出したメリサは、姿勢を下げカスミへ肉薄した。気付いたカスミに攻撃こそ逸らされたものの、ひとまず同士討ちを狙える距離まで近づくことを達成。

 牽制射撃をするカスミから距離を取りつつも温泉開発部員の中に紛れることを忘れない。

 

「ねえねえ、なんかあの子ヒナちゃんに似てない?」

「確かにね。色は違うけど」

「あーわかった! 温泉開発部の人たち、ヒナちゃんに勝てないからって色違いの緑の子をいじめてるんだ!」

 

 便利屋の面々は話しながらも四人固まって脱出経路を確保しようとしている様子。

 その様子を気を失った温泉開発部員を盾にしてリロードしながら探っていると、一番背の高いマントを羽織った生徒が声を上げる。

 

「い、いじめ!? 確かにさっきの子は風紀委員の子だし敵対してるんでしょうけど、寄ってたかっていじめはよくないわよ!」

「……あ。ムツキ、社長の変なスイッチ入れないでよ」

「くふふ。ごめんごめんっ! でも、やっぱり一方的な暴力って良くないでしょ?」

「ゆ、許せませんね!」

 

 リロードを終えて飛び出したメリサは、カスミに向けて続けざまに連撃を浴びせる。

 上手くいなされてしまい、集中砲火の上に爆弾と手榴弾まで投げつけられてしまうも、それをほかの温泉開発部員を盾にしつつ被弾を最小限に抑える。

 

 そんなことをやっていると、一層大きな破壊音が部屋に鳴り響いた。そちらを向けば便利屋の面々が空けたのか、人が通れそうなほどの風穴が空いている。

 それに気を取られた刹那、メリサは至近距離で銃の構えられる音を捉えた。

 咄嗟に反応して振り向くも、側頭部へ二発、続けざまに腹部にも至近弾を喰らい、その場に崩れ落ちてしまう。 

 

「よく注意を逸らしてくれた、便利屋諸君。君たちのおかげで我々の目的は達成できそうだ」

 

 カスミがメリサを組み伏せながらそう言えば、便利屋68の四人は自分たちで開けたであろう風穴の前まで進み、足を止める。

 訝しむカスミのほうに目を向けず外に視線を送りながら、便利屋を率いる少女は言う。

 

「そういえば――私たちのビルで大暴れしてくれた『お礼』がまだだったわね」

「……? いったい何を――ぎゃんっ!」

 

 アルが振り向きざまの片手打ちでカスミの頭部を打ち抜いたのを皮切りに、ムツキが煙幕を投げ込み、ハルカが周囲の温泉開発部員に攻撃を開始する。

 カスミからの拘束が解けたのを見えてメリサがよろめきながら立ち上がれば、その体をカヨコが横から支え、腕を回す。

 

「はい、これあなたの帽子。肩を貸すから……来て」

 

 銃弾を飛び交う中で何発か被弾はしてしまうものの、向こうも視界が悪くでたらめに撃っているため、そこまで大きなダメージは貰わずに済んだ。

 そのままカヨコに連れられてアルの許まで辿り着くと、「近くで見るとそこまでヒナに似てるわけじゃないわね」とアルに言われ、メリサは内心で激しく同意する。所属こそ風紀委員会ではあるものの、ゲヘナ特有の角がないことや身長については万魔殿のイロハの方が特徴は近しいし、胸の比較対象に至ってはヒナよりもアコの方が適切である。

 

 アルにまじまじと見られていると、すぐにムツキとハルカが戻ってきた。間を置かずして、爆弾を置いてきたのか部屋中のあちこちが爆発し悲鳴が響く。

 

「じゃ、この子は頂いていくわ。これに懲りたら、私たちには手を出さないことね」

 

 そう言い残して、ビルに空いた穴から隣のビルへ飛び移る。

 すぐに意識を取り戻したカスミの号令が聞こえるが、既にそこに便利屋の姿はなく。

 

 余談ではあるが、背負ったままだと飛び移れないと言ったカヨコから引き渡されたメリサをムツキとハルカが二人がかりで隣のビルの屋上に放り投げ、先行していたアルが「そんな方法だとは聞いていないんだけど!?」と騒ぎながら下敷きになる形で受け止めたのは別の話。

 

「あんまり一人で無茶しちゃダメだからねー!」

 

 別の拠点へ移動中に風紀委員に発見され、メリサは置いておかれることになるのだが、ムツキに気に入られたのか半ば強引にモモトークの交換を強いられ、去り際にそんな言葉を投げられた。

 言葉を返す余力もなかったために首の動きだけで首肯すると、ムツキは満足そうに去っていく。

 

「小隊長ー! うわぁーん大変だチリチリどころかズタズタになってるぅ!」

「救急部を急がせろ! 今日はもう既に一回爆弾が直撃して吹っ飛んだ後に無茶してるんだぞ!」

 

 ああ、便利屋の人たちに後でお礼をしなきゃなぁ。

 部下たちが近くに集まってくる声を聴きながらそんなんことを考え、メリサは意識を手放した。




というわけで、便利屋68の面々とメリサの邂逅シーンでした。
ここでオリキャラの性能をゲーム内で見れる情報っぽくご紹介。

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名前  又鳩(またばと)メリサ
所属  ゲヘナ学園 2年生
部活  風紀委員会
年齢  16歳
誕生日 10月1日 
身長  153㎝
趣味  人助け・探偵

武器    HG
役割    アタッカー(STRIKER)
ポジション MIDDLE
攻撃タイプ 貫通
防御タイプ 軽装備

武器のモデル S&W M500
※作中で触れていますが本来片手で打つものじゃない。これを両手打ちするってことは……?
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名前  (いろどり)ワタバ
所属  コルニリア連合学園 3年生
部活  チンクエテッレ復興委員会
年齢  18歳
誕生日 9月24日 
身長  172㎝
趣味  文献整理・改善行動

武器    不明
役割    サポーター(SPECIAL)
ポジション BACK
攻撃タイプ 不明
防御タイプ 軽装備

有する神秘 忘却の神秘
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