仮面ライダー鎧武 All For The Future 作:エクシ
ヘルは始まりの男と女の間に生まれたヘルヘイム世界で三人目の知的生命体であった。始まりの男も女も二人で寂しいと感じたことはなかったが、やはり一人増え家族を意識するようになるとまた二人の時とは違った喜びを味わうことが出来た。二人は人間の体を捨ててまさか娘を得ることが出来るとは考えてもいなかったためか普通以上に娘を溺愛した。
だが幸せな時間はそう長くはなかった。地球の時間軸では何十年経ったのかは不明だがヘルの容姿が人間の三歳児ほどになった時、始まりの女はついに消滅した。肉体がなく精神体であった始まりの女の存在が初めから不安定なものであったことは始まりの男も知っていたが、まさかこれほど早くに娘と二人になるとは考えていなかった。始まりの男は泣きはらした。そんな父をヘルは何年も見続けた。そして死を極端に恐れるようになったのだ。
やがて始まりの男も立ち直り、父と娘の二人っきりの生活が続いた。ヘルの容姿が十八歳ほどの女性になった時、ヘルの肉体にもついに変化が起き始める。まずは手がたまに光りはじめ、ひどくなってくるとだんだんと全身が光をまとうようになったのだ。彼女はこの現象を知っていた。「私も母さんのように消滅してしまう…。」言い知れぬ不安が彼女を襲った。「いやだ、消えたくない。」始まりの男も自らの能力でその症状を食い止めようとするもそれはあくまで一時的に症状を抑える程度であった。いつ自分が消えるのかわからない中、ヘルは初めて父に反抗し、森の中へと身をくらませた。絶望の中、彼女はロックビークルに乗ったニヴルに出会ったのだった。それは地球時間ならば慧が信継から受け取った戦極ドライバーではじめてアーマードライダー鎧武に変身した日の前日のことである。
「よし…ヘルヘイムの植物がある。ここが葛葉紘汰が作り出したヘルヘイム世界か。」
「貴方…しゃべれるの!?」
「ん?話をしている…だと?」
「私の質問に答えなさい。」
「…。」
「…。」
「失礼、私はニヴル。科学者さ。君は?」
「私は…ヘル。貴方なんでしゃべれるの?」
「うーん、まぁもともと…かな?」
ヘルは警戒心をあらわにしながら話を続ける。
「そんなことあるはずがない!この世界の知的生命体は私と父だけよ。」
「私は他の世界から来たのさ。というか父って…まさか葛葉紘汰?」
「母は確かに父のことを『紘汰』と呼んでいたけど…。」
「ははーん…なるほど。」
「他世界の者が何の用?」
「いやぁ、まぁ研究さ。」
「だからなんの…」
そう言いかけた時、ヘルは再びあの症状に襲われた。その場に倒れこむとニヴルはヘルの症状を観察し始める。
「これはどうやら果実の力に耐えきれていないようだな。」
「な…に…?」
「君の中には父上と母上から遺伝された黄金の果実の力が備わっている。だが父上からの遺伝より母上の遺伝を強く受け継いでいる君の肉体は父上のように果実の力に耐えきれる肉体を持っていない。その肉体を得るには果実を口にするしかないかな。」
「そんな…!」
「君はこの世界に実った黄金の果実の行方を知っているか?」
「し…らない…。」
「ふむ。…まぁ他の手がないわけでもない…。」
「どう…すれば…!」
「とりあえずこれをつけておくんだ。」
ニヴルはヘルの腰にゲネシスドライバーを取り付ける。それにより肉体が輝く症状はひとまず治まった。
「私が君の肉体を強化して果実の力に耐えきれる肉体にしてあげよう。」
「本当!?」
「まぁただとは言わないよ。」
「どうすればいいの!?」
「私の望みを三つ聞いてほしい。」
「なに?」
純粋なまなざしでニヴルを見るヘル。しめたとニヴルは話を続ける。
「まず一つ。父上から果実の行方を聞いてくれ。」
「わかった!」
「二つ目は父上を倒してほしい。」
「え!?」
「安心してくれ、殺すんじゃない。封印…というべきかな?好きな時に解除は出来るからさ。三つ目の望みの障害になるかもしれないから一時的に…ということ。わかる?」
「…。」
「三つ目は地球に存在するドライバー、ロックビークルをすべて破壊してもらいたい。」
「何?それ。」
「あとで説明するよ。どうかな?」
「二つ目のは…。」
「もちろん私も協力するから。父上だって君に助かってほしいと望んでいるに違いないよ?君の母上が亡くなった時、父上は悲しんでいなかったかい?」
「悲しんでいた…。どれくらい泣いていたのかわからないくらい長い期間泣いていた。」
「そうだろう、君が消えれば父上はまたそうなってしまうんだ。」
「そんなのダメ!」
「ククク…そうだろう?」
こうしてヘルはニヴルの望みをかなえるため、再び始まりの男に会いに行った。
「父さん。」
「ヘル!よかった。無事だったんだな。体は大丈夫か?」
「父さん、教えて。黄金の果実はどこにあるの?」
「お前何で…」
「それを食べれば私の体は治るはずなの!」
「悪いが俺にはわからないんだ…。」
「そんな…。」
「すまない…。」
「それなら一つ目の望みはもういいよ。二つ目を実行だ、ヘル!」
二人の会話に突如ニヴルが入り込む。
「お前、何者だ!」
「久しぶりに見たなぁ…葛葉紘汰。お前を見るのは確かアーマードライダーたちが合同でバトルロワイヤルを開催していたときだったかな。」
「なに!?」
「まぁいいや。変身。」
レモンエナジー!ロックオン…ソーダ…レモンエナジーアームズ FIGHT・POWER!FIGHT・POWER!FIGHT・FIGHT・FIGHT・FIGHT・ファファファ・FIGHT!
ニヴルはデュークに変身した。始まりの男は驚きを隠さずにはいられなかった。
「ゲネシスドライバーに戦極凌馬のアーマードライダー!?なんで…。」
「ククク…それだけじゃないよ。ヘル!」
ニヴルがヘルを呼ぶとヘルはピーチエナジーロックシードを構えた。
ピーチエナジー!ロックオン…ソーダ…ピーチエナジーアームズ! ♪~~♪
ヘルがマリカに変身した光景に始まりの男は声が出ない。二人のアーマードライダーに襲われ、始まりの男は黄金の果実の力を持っているとは思えないほど無様に攻撃を食らった。
「ク…変身!」
始まりの男はアーマードライダー鎧武 極アームズに変身した。
無双セイバー!大橙丸!
鎧武は二刀流で二人の攻撃を止める。ヘルヘイムの植物を使い、二人にダメージも与える。
「ヘル!一体どうしたんだ!」
「私は…死ぬのが怖いの!」
マリカは鎧武に突っ込んでいく。鎧武は植物を使って彼女を止めた。デュークはその隙をついて鎧武にソニックアローで斬りかかる。
ソニックアロー!
鎧武は右手で無双セイバーを手放したと思うとすぐにソニックアローを召喚し、それでデュークの斬撃をとどめた。
「ヘル!君自身の力でクラックを開いてくれ!少しの間ならばゲネシスドライバーを外しても大丈夫だ!」
デュークに言われた通り、マリカはゲネシスドライバーを取り外した。ヘルはすぐに蒼銀のオーバーロード態に変化し、言われた通り、地球に通ずるクラックを開く。
「いったい何を!?」
「葛葉紘汰、故郷に帰してやるよ!ヘル!葛葉紘汰をその中に!」
ヘルは植物を使ってクラックの中に鎧武を投げ入れた。それに続いてデュークもクラックの中に入り、最後にヘルも入る。その出口は高司神社の神木の前であった。
「ここは…。」
「久しぶりだろう?葛葉紘汰。」
「…。」
「さてヘル…さっき言った手順で頼むよ。」
「…ええ。」
ヘルは武器である弓を構えながら返事をした。鎧武は説得を続ける。
「ヘル。何でこんなことを…」
「黙って!私は…消えたくない!」
ヘルはすべての力を込めて弓を弾いた。
メロンディフェンダー!
鎧武はヘルの矢を防ごうとする。ヘルは矢を放ち、それをメロンディフェンダーで鎧武は防いだ。だがレモンエナジーロックシードをソニックアローに取り付けたデュークは横から鎧武に必殺の射撃を繰り出した。それを防ぐことは出来ず、鎧武は神木に張り付けられるような形でデュークの矢に貫かれる。
「よし、始めろ!」
ヘルが特殊な呪文を唱えると神木は鎧武を幹に取り込み始めた。
「なに!?」
「フェムシンムに語り継がれていた呪術の一つさ。私がフェムシンムの世界でレデュエの書庫から見つけたんだよ。その神木はもとはヘルヘイムの植物。生命体を植物に封印する強力な呪術でお前は終わりだ。」
「ぐおおおお!」
鎧武はやがて幹に完全に吸収された。神木は膨大なエネルギーを吸収したせいか徐々に巨大化し始め、やがて数倍の大きさへと変わった。
「さて、ヘル。望みはあと一つ。この世界のドライバーとロックビークルをすべて破壊すれば君を助けてあげよう。」
「わかった…。」
こうしてヘルはニヴルヘイム世界のものたちと共に地球の敵へとなったのだった。