デスドライヴズとの戦いは終わった。
イサミ、ルル、そしてATF(Allied Task Force)全員の勇気が、最後にして最凶のデスドライヴズ「ヴェルム・ヴィータ」を打ち破ったのだ。
私は役目を終え、ルイス・スミスは帰還した。
だが、決して私は消えたのではない。私は彼らの勇気がある限り存在し続ける。
だから、再び世界の危機が訪れる時まで、私は休むとしよう……………
「私のミスでした。」
……………誰の声だ?
私は視覚センサーを起動し、目の前を見る。そこにはジャパンの電車の中、そして目の前には青い髪の少女が座っていた。
待て……………彼女の頬や服、そして足元にまで血が滴っている。
「私の選択、そして、それによって招かれたこの全ての状況…」
彼女のもとに近寄ろうとするも、体が全く動かない。まるで金縛りにでもあったようだ。
「結局、この結果に辿り着いて初めてあなたの方が正しかった事を悟るだなんて...。」
「……今更図々しいですが、お願いします。」
ああ、私にしか出来ないことがあるからこそ、君は私をよんだのだろう?
「きっと私の話は忘れてしまうでしょうが、それでもかまいません。」
「何も思い出せなくても、おそらくあなたは同じ状況で、同じ選択をされるでしょうから。」
「あなたにしか出来ない選択の数々。」
私にしか出来ない選択……………。
「責任を負うものについて、話されたことがありましたね。」
「あの時の私にはわかりませんでした。でも、いまなら……ですから先生。」
「この捻じれて歪んだ先の終着点とは、また別の結果を...。」
「だから、ブレイバーン先生、どうか、どうか...」
私が……………先生……………?
「…い。」
「……………起きてください。」
「ブレイバーン先生!」
「!?」
私は……………眠っていたのか?
私が今見ているのは眼鏡をかけた紺髪の少女がこちらを見ている。
というか人間である彼女をなぜ私は見上げているんだ?
私の身長は9m。それ以外のサイズからしても今の視点はまずありえないことだ。
私はすぐに体を起こし、周囲の状況を確認する。
ここは建物の中か?なぜ私がこの中に収まっている?
「これは……………私が小さくなったのか……………?」
「……………夢を見ていたようですね。起き抜けに申し訳ありませんが、目を覚まして、集中して頂けると助かります。」
「あ、ああ……………すまない。」
今は彼女の話を聞くことに専念しよう。
「私は七神リンと申します、学園都市”キヴォトス”の連邦生徒会所属の幹部です。」
キヴォトス……………どの国でも聞いたことがない名だ。その苗字と名前からして、彼女はジャパン出身なのだろうか。
「そしてあなたはおそらく、私たちが呼び出した先生……のようですが。」
「……ああ。推測系でお話ししたのは、私も先生がここにいらっしゃった経緯を詳しく把握していないためです。」
経緯は不明、か。だが私がここにいる理由は分かる。
「混乱されていますよね。私も遺憾に思います。ですが今はとりあえず、私に……………」
「私がここに来た理由……………それは……………」
「このキヴォトスが滅亡の危機に陥っている……………そうだろう?」
「……………ええ、そういう認識で結構です。」
「案内してくれ。私の責務を果たそうじゃないか。」
私とリンは、エレベーターで下の階へ降りていく。
その間に彼女はキヴォトスについて追加の説明をしてくれた。
学園都市キヴォトス。千の学園が集まってできている巨大な学園都市だ。そこに私はティーチャーとして呼び出されたらしい。
……………しかし、こういうエレベーターに乗る感覚も久しいものだな。
「ちょっと待って!代行!見つけた、待ってたわよ!連邦生徒会長を呼んできて!」
一階に着き、エレベーターを出た瞬間、青髪の少女が私、と言うよりリンに寄り詰めてきた。
「ん?隣にいるのは……………」
「おっと、初めましてだな。私は……………」
「首席行政官。お待ちしておりました。」
…今度は黒髪の少女がやってきた。彼女には……………羽が付いている?
「私の名は……………」
「連邦生徒会長に会いに来ました。風紀委員長が、今の状況について納得のいく回答を要求されています。」
……さらには眼鏡をかけた特徴的な耳の少女が来た。
「あぁ……………面倒な人たちに捕まってしまいましたね。」
「こんにちは、各学園からわざわざここまで訪問してくださった生徒会、風紀委員会、その他時間を持て余している皆さん。」
………自己紹介のタイミングを見失った。
やってきた4人の話によると、学園の風力発電の停止、「連邦矯正局」という施設から複数名が脱走、不良生徒が登校中の生徒を襲うようになった、などの学園としては規模が大きすぎる案件ばかりだった。
そして、この連邦生徒会をまとめる”連邦生徒会長”に話を聞きたいらしいのだが……………
「連邦生徒会長は今、席におりません。正直に言うと、行方不明になりました。」
「何だと……!?」
「結論から言うと、”サンクトゥムタワー”の最終管理者がいなくなったため、今の連邦生徒会は行政制御権を失った状態です。」
「認証を迂回できる方法を探していましたが……………先ほどまで、そのような方法は見つかっていませんでした。」
「それでは、今はその方法があるということですか?」
黒髪の少女がそう言った。
「はい。この先生こそが、フィクサーとなってくれるはずです。」
三人は驚いた顔をして私を見る。
「ちょっと待って!このロボットはいったい何なの?どうしてここに……」
「ああそうだ、まだ私の名前を言っていなかったな。」
「え?ま、まあそうですが……」
「私の名は、ブレイバーンだ!」
「ブレイ……」
「バーン……?」
ほう?物珍しそうに見てくれるじゃあないか。
「私に興味を持ってくれたかな?ならこの機会に、私の話を聞いてほしい。」
「え?いや、ただちょっとびっくりしただけで」
「Chapter1。出会い……そして、結ばれる二人。」
「そんなイサミと相対した瞬間、全身の油圧パイプにほろ苦くも甘い何かがほとばしった……」
「そして、本能が告げたんだ……彼を私の中に乗せたいと。」
「イサミはそんな私の気持ちに応えてくれた……私の中に入ってくれた……」
「私の動力源は、熱いパトスで、はち切れんばかりだった。私にとっての初めての、体験……」
「これが、結ばれるということなのかと……………」
「イサミを受け入れるということは、すべてを受け入れるということ……」
「イサミが操縦桿を上下に動かすたび、私も上下する……」
「まさに……二人で一人だったんだ、と……」
「……………」
「さっきからイサミっていう人のことしか話してません?」
「なんだか気分が悪くなってきました……………」
「そして……イサミの勇気と情熱が、私の中で激しく動くたびに弾け、全身のオイルと交わるのを感じたんだ……」
「これなら勝てる……その時私を……………」
「シャーレの部室周辺が、不良生徒に制圧されました!」
「何ですって!?」
……………まだ話し足りない部分はあるが、ここまでのようだな。
「シャーレとは何だ?」
「……………連邦捜査部”シャーレ”。単なる部活ではなく、一種の超法規的機関。連邦組織運営のため、キヴォトスにそんざいするすべての学園の生徒たちを、制限なく加入させることも可能で、各学園の自治区で、制約なしに戦闘活動を行うことも可能です。」
「先生には、その顧問になっていただきたいのです。」
「本来なら、このまま部室に向かう予定だったのですが……………」
「その部室は、どこにあるんだ?」
「シャーレの部室は、ここから約30km離れた外郭地区にあります。」
「ちょうどここに、各学園を代表する立派で暇そうな方々がいるので、彼女達とともに…」
「チェーーーーーンジ、ブレイサンダー!」
高速飛行形態ブレイサンダーに変形した私は、シャーレの部室に急行した。
D.U.外郭地区・シャーレの部室付近
想定していたよりもひどい有様だ。少女たちが銃を持ち、都市を破壊しているではないか!
今すぐ止めなければ……………!
「もうやめるんだ!」
私は不良生徒たちに呼びかけると同時に、
「チェーーーーーンジ、ブレイバーン!」
私は通常形態へと戻り、彼女たちの前に降り立つ。
「正義のため、すべての生きとし生きる者のため、そしてイサミのために戦う…………その名も、ブレイバーン!」
「キヴォトスの未来は、私が守る!」
いくら悪を犯した者とは命を奪うことは出来ない。だから、彼女たちが持っている武器を破壊し、無力化することにしよう。
「うおぉぉぉぉぉぉぉ!」
私は背部のスラスターを展開し、彼女たちの武器に手を伸ばすが……………
「失せろ!」
「あだだだだっ!」
私は彼女たちに撃たれ、情けなくずっこけてしまった。
いくら体が小さくなってしまったとはいえ、銃なんかで私がひるむはずが……………
イサミが……………いない……………?
重要なことを忘れていた。私はイサミの勇気がなければ、完全な力を引き出せない……………
……………いや待て、私がこのキヴォトスに呼ばれたのなら、赤い絆で結ばれたイサミも近くにいるはずだ…!
「イサミィーーーーーーーッ!近くにいるのか?イサミィーーーーーーーッ!」
「私は君がいないとまともに戦えない体になってしまった!だから来てくれるよな、イサミィーーーーーーーッ!」
……………かつて共に戦った男の姿も、声も聞こえない……………
「……………まさか、本当にいないのか?そろそろだよな、イサミィーーーーーーーッ!」
……………イサミの返事はなかった。
……………というか、たとえイサミが来てくれても、今の私では一つになることが出来ないじゃないか。
まさかここまで私がイサミに依存していたのか……………少し自分が情けなくなった。
そう言っている間にやってきた戦車が、私に銃口を向ける。
「これは……………予想外だったな……………」
私は戦車の砲撃により大きく吹き飛ばされた。
「あの先生はどこ行ったんですか!?」
「何か変形して飛んでいきましたね。」
「うぉあああああああああああ」
「……先生!?」
ズガガガガァーーーーン!
……………まさか戦車と相対するとはな。
?君たちは……………
「おぉ、私を心配して来てくれたのか?」
「だが私は大丈夫だ!」
「いや、ボロボロじゃないですか!」
「先生、一人で突っ込まないでください!」
『キヴォトスの住民は、生半可な射撃ではダメージを受けません。ですので、彼女達も戦闘に参加できます。』
「何と!?」
……………私の経験からしても信じられないことをリンは言った。
いくら死なないとはいえ、私もかつてはルイス・スミスという一人の軍人だった。だからこそ、子供を戦わせるのは気が引ける……………
いや、それは違うな。
イサミは私がいなくなったとしても、自身の、そして皆の勇気を爆発させ、地球の危機を救ったんだ……………
だから、私の目の前にいる彼女たちの勇気を無碍には出来ない。それにたとえイサミがここにいなくとも、私はヒーローでなくてはならないのだ!
「君たちは、私とともに戦ってくれるのか?」
「「「「はい!」」」」
「……………君たちの勇気、しかと受け取った。」
「さぁ、ともに行くぞ!」
バーンバーンバンバーン バーンバンバンバン バーンブレイバーン
私はメロディとともに飛び上がり、戦車の砲撃を回避する。
この地球(ほし)の 嘆く声を聴け
(ブレイバーン ブレイバーン バンバン バーンブレイバーン)
「ユウカ!私が前へ出る。後衛の防御は任せるぞ!」
「は、はい!」
「ハスミ、君は後方から火力支援を頼む!」
「分かりました。」
安らぎを衛(まも)る 盾となれ
(ブレイバーン ブレイバーン バンバン バーンブレイバーン)
「チナツ!君は待機、万が一の医療支援を任せる!」
「了解です!」
「スズミ!閃光弾を使い、攪乱と足止めを頼む!」
「任せてください!」
Go Dash 命はメロディ
これだけ指示を出せば、ある程度は大丈夫だろう。
私は不良生徒に突撃する。
『待ってください!装備は!迎撃用の装備とかはないのですか!?』
Wake Up 絆はハーモニー
おっと、そういえば……………
「バーンブレイド!」
戦士の眼差しで 貫徹(つらぬ)け
「ハァッ!」
私は不良生徒たちの武器を切断していく。
「ズバババーン!」
愛を 生を 闘志を刃に 叫べ
(ブレイブ斬!!)
「さっきから何なんだこの歌は!!!」
抱(だ)いた可能性 掴め Just one 魂
「バーンブレイド、ブレイズアーップ!」
剣(ブレード) 誇り(プライド) 渦巻く大空(そら)に掲げて
(ブレイブズバッシュ!)
「さぁみんなで一緒に叫ぶぞ、必殺技の名を!」
『え、何なのですかそれ!?』
勇気 無限大 赤く 燃焼(もや)せ 燃焼(もや)せ 燃焼(もや)せ
「勇気一刀流奥義!」
未来(あす)を願う涙 笑顔に変わるまで
「こ、これ私たちも言わなきゃいけな…」
「ブレイブゥゥゥゥ……………斬!」
バーンバーンバンバーン バーンバンバンバン バーンブレイバーン
必殺技により、戦車は一刀両断、爆発した。
続きは期待しないでください