朝、ルシャからのモーニングコールを受けたシヲリはルシャと夜遊ぶことを約束して学校へと向かった。
◆
体育終わりの国語。
さらに悪いのはこれが午後の授業ということだ。
満たされた腹に、使い終わった体力。暖房の効いた教室。
辺りを見渡せば、既に何隻か漕ぎ始めている。
「……ぁ。」
小さく欠伸をして外を見る。
いい天気、とは決して言えない曇り模様。この調子だと、雨でも降るのだろうか?
幸い、前回に習って、今日は折り畳み傘を忍ばせているので最悪大丈夫だが、憂鬱なのには変わりない。
「『これは人間に対する最後の求愛だ』この文章は、彼の〜〜」
彼女のことだ、きっと
……雨だと散歩できないの?
なんて言うに違いないと、用意に想像できたから。
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「今日は、一段と眠そうですね先輩。」
放課後の図書室。
宮本さんが、微笑ましげにこちらを見ていた。
「うん。昨日はちょっと夜更かししちゃってさ。」
「夜更かし、ですか。先輩でも夜更かしをするんですね、少し驚きました。」
「一体僕のことを何だと思ってるんだ、夜更かしくらい誰だってするだろう?」
それはそうですが、と物憂げな宮本さん。
この子はなんというか、僕のことを少し誤解してる節がある気がする。
「でも、珍しく昨日は学校に来られていなかったので。何かあったのかな、と一応私も心配してたんですよ?」
「あぁ、なるほど。それはごめんよ。昨日はちょっと家の用事でね、別に体調不良とかじゃないから安心して。」
「家の用事って、先輩、1人暮らしですよね?」
「…………。」
「それで、何をされてたんですか?そんな夜遅くまで」
今日はいやに、突っ込んでくるな、と思いながらも逃げ道を探す。
まさか、この話題を掘り下げられるとは思ってなくて、僕は答えに窮する。
……まさか、ルシャと2人で夜通し遊んでいた、なんて言えないし。
と。
どうしようか迷ってるうちにポケットに入れていた携帯が鳴る。
届いていたのは一通のメールだった。
宮本さんに一言断ってメールを開くと、差出人はバイト先だった。
内容は、欠員が出たから早くきてくれ、とのことだった。
普段だったら悪態の1つでもついているものだが、今回に限ってはなんていいタイミングに、と心の中で店長に感謝する。
「ごめん。あと30分くらいしたら出なきゃいけなくなった。」
「全然いいですよ。バイトですか?」
「うん、そう。1人出れなくなっちゃったみたいで、それで。」
「それは、大変ですね。」
同情してくれる宮本さん。
まぁ普通だったら嫌がるのかもしれないが、ここのバイトは楽しいし、店長はいい人だし、何よりコーヒーが無料で飲めるから僕的には気に入っている。
「何のバイトをしてるんでしたっけ?」
「普通に飲食店だよ。ほら、乗り換えのところの珈琲屋。」
「あぁ、あの落ち着いたところですか、名前は確か……」
どうせわからないだろうなと思って話題に出したが、宮本さんはどうやら知っていたらしい。
少しだけ、後悔する。
「そうですか、あそこでバイトしてたんですね先輩。」
「うん。というかよく知ってたね、個人店だし、知らないと思ってたんだけど。」
「こう見えて、コーヒー好きなので」
「それは奇遇だね。」
「……じゃあ、学校帰り寄ろうと思えば寄れますね。」
「勘弁してくれ、バイトも始めたばかりだし、まだマニュアルすら覚えてない。」
格好悪いところを見せたくない、というわけではないが、やはりバイト先に知り合いが来るというのは落ち着かない。
「じゃあ、お仕事になれたらまた言ってくださいね、その時はお邪魔します。」
「……うん。じゃあその時は、お菓子くらいはサービスできるようにしておくよ。」
そう言うと、宮本さんは
「約束ですよ。」
と、笑う。
約束は好きではない。
けれど、それくらいならと、僕は頷いた。
「じゃあ、お先に。」
「はい、また明日。」
「うん、また明日ね。」
そうこう話していれば、時刻16時。僕は席を立つ。
冬とはいえ、外はまだ明るく、悲鳴をあげてる店長の顔が脳裏に浮かんだので、少しだけ早足で向かうことにした。
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どうも藍間です。こんにちは。
ここまで読んで下さりありがとうございます。
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