襲われた翌日、仲直りとまではいかないが、以前までの雰囲気に戻った二人は放課後いつもの図書室に集まり。
そして、シヲリはチオリにある命乞いをした。
◆
「なんでそれを、貴方に決められなければいけないのかしら?」
凍るような寒気さを覚えて、振り返る。
「……終わった?」
いつもと違う、冷徹を思わせる無表情。
しかしそこには、僅かに怒気が含まれているのが分かる。
「薄気味悪い魔力を感じて来てみれば、随分なものに懐かれてるのねシヲリ。」
「それは自己紹介ですか?面白い挨拶をするんですね。」
それに応じる宮本さん。
刹那流れる静寂。
それは僕に張り詰めた命綱すら連想させた。
「また昨日みたいに殺されかけたいのかしら?」
「不意を突いて意識を刈ったくらいで随分とした自己評価ですね。」
「まさか勝てると思ってるのかしら?この私に?あなたごときが?」
「そっくりそのままお返しします。貴方に私が負けることはあり得ませんね。」
一触触発。
頭に浮かんだのは先日までの2人。その全力のぶつかり合い。
場所は図書室。2人が暴れたら図書室どころが、学校すらもたないだろうな。
「「この怪物めが」」
なんて。
そんなことを考えてたら、張り詰めた命綱を切りかからんと互いに手を伸ばしていた。
流石にそれは困るので、僕は2人の手をとって、机に戻す。
「話せば分かる。僕らは人間だ。一旦話し合ってみよう。それでも無理だったら暴力に訴えるというのはどうだろう?」
側から見ればてんで的外れな提案をしてみた。
しかしこの時の僕に、これ以外の何を求めると言うのだろう。
◆
夜道。
僕の3歩先くらいを、ずんどこずんどこ歩いていくルシャの背中をぼうと見つめる。
「何そんなに怒ってるんだよ、ルシャ。」
「怒ってないわ。」
「どう聞いても怒ってるじゃないか。理由を教えてくれれば、僕にできることならするから。」
「じゃあ,あの女殺して。」
「無茶言うなよ。」
「じゃあ話しかけないで。」
八方ふさがりの現状に僕は肩を落とす。
やっぱり怒ってるんじゃないか、という言葉は胸中に留めて、僕は先までの会話を思い出す。
結論。
停戦という形で、話はまとまった。
しかしただで、というわけでは勿論なく。年末までという、期限付きのの約束。
少し意外なのが、ルシャがそれで了承したところだ。
それでも、宮本さんは僕とルシャを狙うのをやめてくれて、また、ルシャもそういう形で納得してくれた。
「……………。」
いや、納得してるのはもしかしたら僕だけなのかもしれない。
とにかく、ルシャはそれがどうにも気に入らないらしい。
宮本さんと別れてからずっとこの調子だ。正直やりづらいことこの上ない。
ふと、空を見上げる。
空は、憎々しいほどの晴天で、今夜は星がよく見えた。
「ルシャ、クリスマスって知ってるか?」
「何よ急に。」
「いやどうかなーって思ってさ。」
「まぁ、知識だけなら?」
相変わらず唇を尖らせたまま、しかし足を止めて僕を見る。
すればルシャは、クリスマスの起源だの、宗教がどうのという話をしだした。
「違う違う、そうじゃなくてさ。この国ではクリスマスはみんなで祝うんだよ。パーティしたりさ」
「……変な話ね?赤の他人の誕生日にみんなでパーティするの?それにこの国無神論者が多いじゃない。」
「それを言われたらそうなんだけどさ」
ルシャは訝しげな瞳で僕を映す
しかし、僕が言いたいのはそういうことではない。
「それでさ、明日ルシャは予定決めてたりする?」
「特に……ないけど」
「そう、それでよかったらなんだけどーー」
2人して、止めていた足を再び動かす。
こういう時、どうするのが正解なのか分からない。
きっともっとかっこいい誘い方があるのだろうが僕には分からなくて無難に、誘うことにした。
「明日。クリスマスデートをしよう。」
しばしの静寂。
別にどうということはない。これは思い出作りだ。
ルシャとの思い出に、どうかと思って提案しただけ。
楽しさの定義は人それぞれだけど、ただの契約のため。その足掛かり。
そんな、言い訳ばかりを内心で並べて、だというのに心臓は煩いし、背中に変な汗がつたう。
「デート?」
「男女で遊びに行って楽しむことをこの国ではそういうんだ。」
「ふぅ~ん」
ルシャは以前として前を歩いている。
そして、また足を止める。
表情は見えず、何を考えているかがわからない。
今はそれで、助かった。
「しょうがないわね。」
それでも、その声音はどこか嬉しそうに聞こえて。
「しょうがないから、シヲリとデートしてあげるわ。明日朝、迎えに行くから」
夜風に揺らぐ彼女の鈍色の髪は繊細で、綺麗だった。
どうも藍間です。こんばんは。
5日目、これにて終了です。読んで下さりありがとうございます。
不機嫌なルシャも可愛いですね。
閑話休題。
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