蒼雪の魔術姫   作:藍間道逸

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◆前回までのあらすじ
 約束通り、クリスマスイブ二人して遊び楽しんだシヲリとルシャ。
 そんな日も、もう終わろうとしていた。


第2章 6日目「12月24日」 下節「日常の延長線」

 

 それからも、僕たちは……というかルシャは目につくもの全てをまわる勢いで歩き回った。

 勿論、僕もその後ろについて。

 

 アパレルショップや、

「どう?似合うかしら?」

「うん。似合う似合う。」

「さっきからそればっかり。本当に聞いてる?」

「聞いてるよ。でも似合ってるから他に言い方も見つからないんだ。」

「そ。それならいいんだけど。」

 

 スポーツの体験施設、

「よし!私の勝ちね!」

「……ご、ゴリラじゃん。」

「ーーなっ!?ちょっとそれどういう意味よ!」

 

 夜ご飯は、どこかオシャレな場所の方がいいのだろうか、なんて思いながらも、ルシャの要望通り、ジャンクフードの店に入った。

「んーーうまぁーい!」

「ただのハンバーガーだぞ?」

「へー、これハンバーガーって言うのね。あ、シヲリのも一口ちょうだい!」

「あ、こら!」

 

 本当に他愛のない。

 まるで、普通の日常が、ただゆっくり流れていった。

 この時だけは僕たちは、魔術だの、契約だのそんなもの考えてもいなかったような気がする。

 そう、思えるほど。

 

 そして、その日の最後。

 人の波も落ち着いて、夜が始まろうという時間。

 最終電車に揺られて、2人して駅を降りる。

 

「あーー!今日はすっっごい楽しかったわ!ありがと!シヲリ!」

 

 ぐ。

 と、両手を上に上げるルシャ。

 

「そうか、それは良かった。」

「あ、でも契約を満たすほどではないわよ!?最後の最後まできっちり付き合ってもらうからね!?」

 

 満足そうな彼女に、満足していた僕。

 それを何か勘違いしたのか、少しだけムッとした表情のルシャが僕に詰め寄る。

 それがなんだかおかしくて、笑う。

 

「分かってるよ。」

「そ。それなら良かったわ。」

 

 にんまりと笑うルシャ。

 僕の回答に満足したのか、くるりと踵を返して、上機嫌に僕の前を歩いていく。

 

 ――2020年12月25日。

 

 携帯を開けば、日は既に跨いでいて。

 だからか、人の気配だとか、車の音とかも、今は少しだけ遠くに聞こえる。

 まるで、日常の延長線にあるような日。。

 今日で、彼女と出会ってもう10日も経つのかと思うと、なんだか長いような、短いような変な気分になる。

 前を歩くルシャはどこか上機嫌で、耳をすませば歌を口ずさんでいるのに気づく。本当、こうしてみるとただの女の子である。

 

「それじゃあ、今日の所はこれで。」

「あぁ、じゃあ、また明日。」

 

 当然のように、口から出た言葉に僕は少し驚く。

 そういえば、また明日、なんてそう僕から言うようになったのは何時ごろからだったけっか。

 ルシャの長い髪がふわり揺れる。

 そんな彼女との別れは30日の夜。残り6日も無い。

 

「うん、じゃあねシヲリ。」

 

 そう言って背中を見せるルシャをふと、呼び止める。

 鈍色の瞳が、不思議そうに僕を映す。

 少しの無言、何ともいえない気まずい数秒はルシャの

 

「どうしたの?」

 

 という言葉のおかげ手で破られた。

 どうしてか高鳴る心臓がばれないように、僕はカバンから真っ赤で綺麗にラッピングされた箱を取り出し、ルシャへと差し出す。

 

「あー、そのこれ、あげる。」

 

 自分でも、もう少しどうにかならないものか、と思ったがこれがどうやら僕の精いっぱいらしい。

 突然渡された梱包物を恐る恐ると受け取り、僕を見る。

 

「なにこれ?」

「まぁ、なんだ。クリスマスプレゼントだよ。今まで貰ったことはないんだろ?大したものじゃないけど、まぁ経験として、どうかな、とおもって、それだけだ。」

「……いえ、嬉しいわ。」

 

 彼女はラッピングされた箱を開けて中を見る。

 中に入っていたのはプレゼントとしてはかなりオーソドックスな赤いマフラー。ルシャは、箱の中にゆっくりと手を入れる。

 

「どう?似合う?」

 

 そして大事そうに取り出して、ルシャは赤いマフラーを身に着けて、笑う。

 

「あぁ、いいんじゃないか?」

 

 どうしてか。

 僕の目にはその笑顔は酷く儚げで、悲しく、寂しそうに見えた。

 うす暗い夜道を二人して歩く。

 つめたい風が体を通り、気温二度とかのはずだ。

 しかし、時折マフラーに触れては、優しく微笑むルシャを見ると、どうにも顔が熱い。

 

「シヲリー。」

「どうした?」

 

 そして、いつもの別れ道。

 彼女は、数歩歩いたところで、こちらに振り向く。

 

「――ありがとう。」

 

 せわしなく心動く心臓が煩わしい、今僕がどんな顔をしているか知られたなくて、知りたくなくて。

 僕もルシャにただ一言別れの挨拶を告げてマフラーに顔をうずめて帰路につく。

 特別なことなんて、何もも無い時間。

 そんなありふれた日常のような日々が、あと少しだけ、そして最後まで続けばいい。

 それがきっと彼女の願いで、僕の望みだ。

 

 

「もしもし、宮本さん?あぁ、うん。おっけー」

 




 どうも藍間です。こんばんは。
 これにて6日目終了です。
 子供のようなルシャ、とてもかわいらしいですね。

 閑話休題。
 もしこの物語が『面白い』『続きが気になる』と思っていただけましたら、是非とも評価や感想の方をよろしくお願いします。
 藍間がとても喜びます。

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