黒上シヲリは15日深夜、魔法使いの少女に出会った。
第2章 2日目「再会」 起節「泡沫の夢。」
◆
酷い寝覚めだ。
身体は気怠く、思考も上手くままならない。
後、2時間は寝たりない証拠だ。
「……はぁ。」
それでも、健気に体を起こす自分を褒め称えてやりながら、少しでも眠気を覚ますために窓を開ける。
「冷た。」
時刻はまだ、5時を少し回った程度。
外は氷点下を下回っており、その空気は最早寒い、といより痛いと形容する方が正しいような気もする。
「それもこれも、全部、アイツのせいだ。」
意味などないと分かっていても、つい悪態が口からこぼれる。
脳裏に過るのは5日前。
朱色の染まる、雪景色。
そして、自身を魔術士と名乗った1人の少女。
――今日は、死ぬには良い夜ね。
そんな言葉と共に、僕を殺そうとした頭の可笑しい人間。
鈍色に伸びる、綺麗な髪。
文字通り、周りに溶け込んでしまいそうな肌。
こちらを見つめる、白銀色の瞳。
綺麗だった。
完成されていた。完全で、完璧で。
だからこそ、どうしようもなくナニカが足りない少女を、美しいと、そう感じた。
「……やめよう。」
厭なイメージを、首を左右に振って振り払う。
壊れた録音機みたいに、脳内でループする映像は最早過去のものだ。
思い出したって仕方がない。
あの夜。
彼女に出会ったことも。
出会って、殺されかけたことも。
だけど結局、殺されなくて……その代わりとばかりに交わした契約も。
『これは、契約よ。決して違うことのない、命を懸けた約束事。』
そして。
ケガを負っていた彼女を屋敷まで運び、直したことも。
今となっては、もう過去のことだ。
……廊下に出て、隣の部屋の扉を開ける。
何せ。
あの夜、契約を交わした彼女は先日。
「……ほんと、何処に行ったんだか。」
跡形もなく、この屋敷からいなくなってしまったのだから。
◇
……ギシギシと、板張りの廊下が音を鳴らす。
氷のような床。
吐く息が空気を白く汚す。
冬の屋敷は、まるで冷蔵庫を思わせた。
住んでいた頃はなんとも思っていなかったが、1年経つと、変わるものである。
そんな少しの懐古感を胸に、身支度を終わらせて居間へと入れば、中は既に暖かな空気に満ちていた。
視線の先にはダイニングテーブルに腰掛ける1人の女性。
お馴染みの白のワイシャツにジーンズというシンプルな格好。
ふわふわとした黒髪のボブ。
鋭い眼光は、より険しそうに手元の書類に向けているせいで、悪くいえばかなり目つきが悪い。
「起きてたんですね、マミさん。」
「ん?あぁ、なんだシヲリ君か。そうだね、起きてたというより、まだ起きている、が正しいけど。」
なんて。
そんな、どうでもいい修正を加えながら手元のコーヒー喉に流して
「何はともあれ、おはようシヲリ君。」
そう、マミさんは口にした。
◆
どうも、藍間です。おはようございます。
第2章までページを捲ってくれてありがとうございます。
ついに登場しましたマミさん。私はマミさんのような女性が好みです。
閑話休題。
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