まだ空の色に明るみが出てき始めてきたばかりの明け方の朝。
にゃんこ城のとある一室でネコ耳のにゃんこ少女が静かに眠っており、部屋には少女の寝息と目覚まし時計の秒針が一秒一秒刻む音だけが響き渡っていた。
部屋の内装は簡素なもので部屋に入ると目に映るのは左の壁際に置かれた本棚、右側の壁際には一人用ベッド、そしてその二つの間に挟まるかのように小さな丸いテーブルと下に敷かれたカーペット、余ったスペースには等身大の鏡と非常に地味な部屋である。
壁際の本棚には勉強ドリルや漫画、アルバムなどなど雑多に並べられており、テーブルには見た目が一昔前の目覚まし時計が一つ置いてあった。
「すぅ…………すぅ…………」
チッ……チッ……チッ……チッ……チッ……チッ……チッ……
少女の寝息と時計の音だけがこの小さな部屋を優しく包み込んでいる。
しかしそんな安らぎの時間もいつまでも続くわけではなく必ず終わる時がやってくる。それは人だろうがにゃんこだろうが変わらない。
チッ……チッ……チッ……チッ……チッ……
ジリリリリリ!!!!
静寂を突き破るように懐かしくも騒々しいベルの音が部屋全体を包み込んだ。
「すぅ……………………んぁ?」
その騒音にも等しいアラームは少女を眠りの海から引き上げるには十分であった。
目覚めた少女はその青い目で時計を睨むように捉えた後、時間を確認すると時計は4:00を示している。
それを見て少女は気だるげに体を起こして時計に手を伸ばした。
ジリリリリリ!!!!カチャリ
時計の背面に備えられた目覚まし用のスイッチを下げると少女は欠伸をしながら立ち上がり、部屋の電気をつけて彼女の全体像が顕になった。
髪は背中が見えなくなり床に届くほど伸びており、体の至る所に
少女は目を擦りながら鏡の前まで歩いていき正面に向き直り身支度を始めようとしている。
だが部屋には服をまとめとくタンスもクローゼットらしき物も存在しない。少女は一体どうやって着替えるのかというと───
「……ッ!」
少女の体を青白い光が一瞬包み込むが直ぐに消えた。
だが少女の格好は大きく変化していた。
右手には自分の背丈よりも高い杖を持ち長く伸びた髪は一本で束ねられており、頭にカチューシャを付け、首にはマラボーとかなり派手な印象をもつ。
だが一番衝撃を受けるのはその服装だろう。
なんせ上半身は胸と脇腹以外は殆ど隠れておらず下半身もドレスのようになっているが前から見れば大切な部分以外は歩けば簡単に太ももまで見えてしまうほど大胆な服装であった。
少女の名はキャスリィ。正確に言えば『漆黒の魔女ダークキャスリィ』という名前である。
彼女は極ネコ祭に所属する超激レアのにゃんこであり極ネコ祭メンバーの中で四番目に加入したにゃんこなのだ。
極ネコ祭──にゃんこ軍団の2大イベント超ネコ祭と双璧をなすにゃんこ軍団にとっては欠かせない行事の一つである。
極ネコ祭では
実は超ネコ祭と極ネコ祭の特別なにゃんこ達にはある共通が存在する。
なんと辿る結末が異なるだけで超ネコ祭のにゃんこと極ネコ祭のにゃんこは同一の存在であるのだ。
例えば超ネコ祭で一番最初に発見されたにゃんこ『皇獣ガオウ』と極ネコ祭で最初に発見されたにゃんこ『皇獣ガオウダーク』は生まれた世界線は違えど本質的には同じ存在なのだ。
キャスリィという少女は幼少期に千の呪いに蝕まれ、行く宛てもなく彷徨う小さな子供であった。
だが人の優しさに触れ愛される温もりを知ったことで呪いを祈りに昇華させて人々を救う聖女になった。──これが超ネコ祭のキャスリィである。
だが超ネコ祭のにゃんこ達とはまったく異なる道を歩んだのが極ネコ祭のにゃんこ達であり、その道は超ネコ祭組とは正反対であった。
ダークキャスリィは人の優しさに触れることも愛される温もりも知ることも出来ずに遂には魂すらも呪いに蝕まれてしまい災いそのものと化したのだ。
こうなってしまってはもう誰も彼女に手を差し伸べる輩はいないだろうと考えられていた──だがそれは違った。
にゃんこ軍団は災いと化したダークキャスリィすらも歓迎し、部屋と衣食住を提供してダークキャスリィを迎え入れた。
にゃんこ軍団はそもそも神さまが変態だったり
現在では二人のキャスリィをそれぞれ超ネコ祭の方を白キャス、極ネコ祭の方を黒キャスと愛称で呼ぶにゃんこ達も多いほど馴染んでいる。
キャスリィは鏡の前に立ち多少身だしなみを整えると足早に部屋を出てった。
「ふわぁ〜……」
欠伸が止まらない。
気を抜けばすぐに閉じそうになる自分の瞼をこじ開けるように開きながら私は部屋を出た。
直ぐにでもまたベッドに戻りたいが今日は1ヶ月の中で1番大事な日なので誘惑を振り払って暗闇に包まれた通路を歩く。
昔の自分に今の生活を教えたら「そんなものは絶対来ない」と否定されても仕方ないほど今の自分の生活は充実している。
重い瞼を必死に開きながら通路を通り階段を降りていくと『食堂』の文字が書かれたドアが見えてきた。
普段は食堂のドアはもう少し時間が経ってから料理担当のにゃんこ達が鍵を開けに来て朝食を作る作業に取り掛かるのだが、この日はもう既に鍵が開けられていて厨房からは光が漏れ出ていた。
食堂に入り厨房の中を覗くとそこには威圧感を放つ、怪物のような外見のにゃんこが立っている。
胸にはにゃんこの顔が埋め込まれており、荒々しい外見とは裏腹に可愛い顔をしていた。
「おっ来たか。おはようキャスリィ」
「おはよう…………まだ眠い……」
「カフェラテはそこに置いてあるからそれ飲んで少し待っててくれ」
私は無言で頷くと目の前にあったカフェラテを手に取り近くの席に座り少しづつ飲む。
コーヒーの苦味と牛乳の甘みが混同するカフェラテはまだハッキリとしない自分の意識を十分ではなかったが多少の眠気を覚ますことはできた。
彼の名前はネコムート。
にゃんこ軍団の中ではかなりの古株のようで彼より入団歴が長いにゃんこは数えられるほどしかいない。
ネコ祭組の片割れがいない時はこのように愛称ではなく名前で呼んでくれる変なところで真面目な奴だ。
厨房の奥を覗いてみると大きな中華鍋や細切れにされた野菜などが並べられおり、ムートがそれに向かって歩き始めた。
鍋に油を引き焜炉に火を着けるとその中に大量の白飯を投入して炒め始めて手馴れたように炒め始めた。
眠い……猛烈な睡魔が絶え間なく襲ってくるのは幾つになっても辛いものだ。
「今回は何作んの?」
「チャーハン」
そういった他愛もない会話を何度か繰り返しながら私は睡魔に負けないように待つ。
ムートが料理できる理由は彼曰く──当時は調理担当に割けるほどにゃんこの数にも余裕はなくて、全員で料理することも珍しくなくて俺が入ってからも一年以上はずっとこの状態が続いてな……まあその間に俺や他のやつは技術が身に付いたんだろうな──ということらしい。
ムートがチャーハンを炒め始めてから暫くして食堂の窓にも朝日の光が当たり始めていた。
この頃にはもう調理担当のにゃんこ達も続々と準備を始めており互いに邪魔しないように厨房を動きまわる様子は1種の演技を見てるようで面白かった。
そうして眺めてる間にどうやらムートは料理を終わらせたらしく調理器具を洗いながら一匹のにゃんことなにやら話していた。
「そういえばいつも思ってたんだけどなんでムートは黒キャスに料理を振る舞うんだにゃ?いつの間にか趣味の自炊に黒キャスが割り込んでたけどなんか理由があるのかにゃ?」
「ん〜?…………ああ、そういえばその話した事がなかったな」
「こんな朝っぱらから長話は勘弁だから手短で頼むにゃ」
「そうだなぁ簡単に言えば最初はキャスリィにはウチに慣れてもらう必要があったんだが、アイツは過去が過去だからいきなり入ってもらってハイ終わり!で済む話じゃなかったのは覚えてるよな?」
「うん、というか黒キャスみたいな過去持ちじゃなくてもあんな無理矢理な入れ方は誰だってそうなるのは当たり前にゃ」
「まあそうなんだが……兎に角、入団当初のキャスリィが色々問題行動を起こすばかりで他の団員からも苦情が多く来てたから一度面を向かって話すことにしたんだ」
「それで食べ物で釣って話し合ったのかにゃ?」
「いやちょっと違うな。その前にアイツの本心を色んな方法でなんとか聞き出したんだ。食事はその後の気分転換に食堂で一緒に食べることにしただけだったんだ」
「その色んな方法ってなんだにゃ?」
「それに踏み込むとと〜っても長い昔話になるからこの話は無しだ。」
「え〜……まあ大体ムートがそこまで言うなら別にいいにゃ。あとなんで気分転換で一緒に食べただけなのに今はこうして月一で来てるのかにゃ?」
「最初はさっき言ったように唯の気分転換のつもりだったんだがな、キャスリィが食べ終わって無言で出ていこうとしたんだが直前で──また何かたべさせてほしい──なんてことを言ってきたんだ。そっからはご覧の通りだ」
「へぇーそんなことがあったのかにゃ。教えてくれてありがとにゃ〜」
「言っとくがキャスリィ本人はこの話誰かに知られるのを嫌がってるからここだけの話にしとけよ。今回話したのもお前が口は固い方のにゃんこだからって理由なんだからな」
「分かってるにゃ!厨房のみんなにも絶対言わないにゃ!」
話し終えたのかムートは二人分の大きい皿に盛られたチャーハンをそれぞれおぼんに乗せて持ってきた。
一つは私の目の前に運ばれ、もう一つは向かい側に置かれた。
ムートが向かい側の席に座り料理を合わせて「いただきます」と言うと食べ始めた。
私も腹が減ってるからさっさと食べようとしたがその前に一つ気になることが出たので聞いてみることにした。
「さっき厨房でにゃんこと何話してたんだ?」
「お前がなんで月一で俺の料理食べに来てるのか知りたがってたからそれを話したんだ…………そんな顔すんな、ちゃんと口外厳禁って念押ししたしアイツは口が固いからな」
「……まああんたがそう言うならいいけど」
聞いてみたら私の話だった。
しかもあまり知られてほしくないここに来たばかりの時の話……正直なところ口が固いという理由だけだと普段は信じられないがムートが言うなら信じたい。
ムートは数少ない私の本心を知ってるにゃんこだし、料理担当のにゃんこ達は特製レシピの流出を防ぐために全員の口は固いので一応信じることにした。
けど本人の承諾無しに勝手に話したことはやはりムカつくので今度無茶な要求でも飲んでもらうか。
「「ご馳走様でした」」
チャーハンを食べ終わり皿とおぼんを返却棚に置く。
ムートはまた食器を洗うために厨房に入っていくのを見終えたら私は足早に食堂を出た。
通路にも電気がつき始めて城全体に活気が出てきた、食堂も数時間のうちに大混雑して人気メニューの争奪戦も始まるのだろう。
初投稿で文も変なところがあると思います
キャスリィ可愛い……目隠れでビジュ好みなのに供給少なくて悲しい
大好きだから早くうちにも来てください……