その血が歩む道すじ:完全版   作:亞忌羅

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 旧版との変更?ここには多分ない。


百二話

【薨星宮本殿、空性結界内にて加茂憲倫(のりとし)、羂索と戦闘が始まる】

 

 脹相(ちょうそう)の『超新星』が炸裂した、したがソレは地面に叩き落とされた。だから一瞬、何が起きたのかが分からなかった、だがすぐに気がつき「使ったな! 俺達が知らない三つ目の何かを!!」と叫んでいたらあり得ない声が聞こえた。それはーー

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「俺ってさ、本当は一人っ子なんだ。

 でも、可愛い双子の妹(義妹)ができてお兄(義兄)ちゃんになった。そして同時に兄(義兄)さんもできて俺は弟になった、俺はお兄ちゃんで弟なんだ、そんな俺だから言わせてもらうよ。

 最高にカッコいいぜお兄ちゃん、こっからは選手交代だ」

 

 そこに現れたのは居ない筈の、封印されている筈のーーー

 

加茂晴蓮だった

 

「加茂……晴蓮」

「ナイスファイトお兄ちゃん、後は俺に任せてゆっくり休んでいてよ」

「何故……何故君がここにいる!! 封印は成功した、監視も続けた。

 獄門疆(ごくもんきょう)に近寄ったのは生徒だけ、天逆鉾を持つ禪院甚爾は来ていない! 封印は解けていない筈だ!」

「だから言ったろ、お前の敗因は過大評価だと。

 それと禪院甚爾じゃねぇ俺の兄さんの加茂甚爾だ二度と間違えるな下郎」

「(過大評価? どう言う意味だ、確かに封印は成功した、解かれていない。氷の木ができただけ……逃れる時間は無かったなのに何故)どうしてここにいる」

「常識で考えろよ羂索、獄門(ごくもん)疆(きょう)に封印された奴が呪術使える訳ないでしょ」

「だが実際に氷の木が生成された」

「ハッ、大方『俺が先に術式を使って何かしらの方法で封印された後にできた』とでも思ってんだろ? 俺も下調べくらいはしててね、獄門(ごくもん)疆(きょう)に封印された瞬間に如何(いか)なる呪術もその時点で解除される。

 先に作っておいても意味はない、ならどうやって大樹を作ったのか……理由は、方法は一つ別の場所で氷の大樹を作った(・・・・・・・・・・・・・)んだよ。お前は俺を過大評価しすぎた、お前は『加茂晴蓮ならこれくらいやってのける』と思った、思い込んでいた。流石の俺でもそんな芸当は無理だよ羂索」

「アレは、あの時の君は本物じゃないとでも言うのか」

「いいや本物だよ、ただ正確に言うなら俺ではない俺だけどな」

「どう言う意味だ」

「俺の生得術式は血漿操術、血漿を操る術式だ」

「(術式の開示? 何故今更)」

「お歴々が言うには赤血操術の原型らしいが、俺は違うと考えている。赤血操術は血液そのもの操る術式、その反面俺の術式は違う。

 俺の生得術式の根幹にあるのは『分離』だ、血液を『分離』させ血漿を作り出し細胞内を浸潤させ皮膚から体外に排出する。ここで肝になってくるのは『分離』させる事、血液を『分離』させなければ血漿になり得ない」

「何が言いたい」

「『分離』だよ、俺はあらゆるモノ(・・・・・・)を『分離』させられる。そして生転術式(せいてんじゅつしき)は不可能を可能とする術式、お前が封印したのは『並行世界に存在する俺を『分離』させた分体(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)』だ」

「分身だとでも言うのか」

「分身じゃない、確固たる俺自身だよ。俺は並行世界の俺という存在の概念を『分離』させて連れてきた。だから全てが本物の俺なんだよ」

「あり得ない、いくら君であろうと人間を『分離』させるなんてあり得ない」

「普通ならね、でも俺はソレを可能とする術式(・・)を手に入れた。複数の術式(・・・・・)を使えるのがお前だけだと思い上がるな、お前にできる事くらい俺にもできるんだよ」

「いったい……どうやって……」

「言うと、思うかい?」

「だろうね、君は秘密主義者だ。(複数の術式……幾つだ? 脳のメモリを考えれば最大で四つ(・・・・・)、なら私とイーブン! 手札を全て曝け出させるまで)」

 

 僅か一分の思考、だがそれがいけなかった。不意に背後から術式を使われ全身が割れる(・・・・・・)。

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「!? (いつの間に後ろに)」

 

 すぐに後ろを見る、そこには加茂晴蓮が居た。故に虎杖倭助の術式を使おうとするが後ろから攻撃(術式)される。

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「!!? いったい、何が!」

 

 混乱、動揺それは晴蓮の策に嵌まった事を意味していた。

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「どうした、俺が言った事をもう忘れたのか?」

「(どう言う……)!! 別世界の晴蓮か!」

「大正解。でも遅いぜ? 周りをよく見ろ」

 

 驚愕するはその数、合計六人の晴蓮が羂索に襲い掛かかる。一人は後ろから蹴りで、一人は前から掌底で、一人は右から肩で、一人は左から握り拳で。そして一人は上から踵落としで術式・宇守羅彈(・・・・)を行使しすると四方と上の空間が『バキッ』っと割れ強力な衝撃波が羂索を襲い、そこに遠方に立つ晴蓮が拳銃の形にした手を向けて立っていた。

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「(これは、烏鷺亨子(うろたかこ)の宇守羅彈(うすらび)! いつの間に手に入れた! どうやって手に入れた!)」

 

 四方と上からの宇守羅彈(うすらび)の衝撃波を受け、血を吐きながらすぐさま体勢を立て直そうと前を向くと呪力砲(・・・)が迫っており、呪力強化した腕で防ぐ。

 だが、防ぎきれずに左肘から先が無くなっていた。

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「(ただの呪力砲じゃない。この違和感はなんだ)はぁはぁ……はぁ、はぁ。ッ、ふぅ。君は私以上のバケモノだね」

 生やせるのか、そこまでの反転術式を使えるのは予想外だ。

 

「酷い事を言うね、俺程呪術師をしている奴はいないよ」

 

 失った腕を生やしながら「周りの犠牲を省みず、目的を達成する為なら人的被害も許容する。確かに呪術師らしい呪術師だ、だからこそ私以上のバケモノなんだよ。

 ところで晴蓮。その術式はどこで、どうやって手に入れたんだい」と、まるで世間話かのように声をかける。

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「言う訳ないでしょ」

「そうだね、じゃあ他に何があるのか気になるね」

「他、か。じゃあこんなのはどうだい」

 

 手刀を構え羂索に向けて「比翼扇(ひよくせん)・一重(ひとえ)」と振り下ろしながら呟く。すると『風』が流れ羂索の腕が切り落とされる。

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「!! (これは!)」

「お前は知っている筈だ、何せお前が用意した結界術師の術式だからね」

 

 静かに腕を広い切断面にくっ付け治しながら「これで三つ目だ」と余裕を持って返した。

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「? 何が三つ目なんだ?」

「君が持っている術式の数だよ、初めの『分体』なる術式に烏鷺亨子(うろたかこ)の『宇守羅彈(うすらび)』、そして今使った『衵扇(あこめおうぎ)』。これ以上は脳のキャパシティーの限界だ。それ以上は脳のメモリがはち切れる」

「あぁ成る程、取り敢えず切れとけ。比翼扇(ひよくせん)・二重(ふたえ)」

 

 手刀を二度振ると風が流れ、風は結界の刃となり羂索を斬ろうとするが羂索はいつの間にか違う場所に居た。

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「…………本当は、使うつもりは無かったけど……これは使わざるを得ないね。還(かん)魂(ごん)操術:荒御霊・武速(あらみたま・たけはや)」

 

 術式を使用すると凄まじい瞬発力で晴蓮に近づき、恐るべき破壊力で拳を振り抜く。対する晴蓮は界無為(カムイ)ですり抜けようとしたが、拳をまともに喰らい空性結界の『循環定義(じゅんかんていぎ)』に綻びが生じるまでに殴り飛ばされる。

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 今のは倭助さんの還魂(かんごん)操術? だが俺が知るモノとは違う。

 

「虎杖倭助は自身の術式を勘違いしていた、還(かん)魂(ごん)操術は魂の共存ではない。

 虎杖倭助の術式の真価は魂の隷属(・・・・)だ、この術式は魂に干渉する。君のすり抜けは私には通用しない」

「魂の隷属……魂への干渉」

「君も一度は思った筈だよ。共存共栄ではなく従属させ隷属させるものではないか、と。そしてその通りだ晴蓮、還魂(かんごん)操術はあらゆる魂を隷属させる。人も無機物も、そして呪霊もだ」

「呪霊操術の亜種、或いは原型」

「分かっているじゃないか、還魂(かんごん)操術は呪霊操術の原型だよ。呪霊も突き詰めれば負の魂だ、だから私は呪霊を操れる」

「その割りには呪霊を出さないじゃないか」

「この術式は出す必要が無いんだよ。荒御魂、和御魂を隷属させ、自身の肉体に降ろす。

 そうする事で身体能力を爆発的に増加させる、さっきみたいにね。

 さあ晴蓮、友人の術式で死ね」

「違うな、死ぬのはお前だ、羂索」

 

 両者沈黙し先に破ったのはーー羂索の「ならば聞こう。晴蓮、何故領域を使わない」と言う問い掛けだった。

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「使う必要が無いからだよ」

「君の領域に必殺が無い事は知っている」

「だろうね」

「必殺が無ければ領域に必要な呪力量は減り、展開速度が上がる。だが君はそのリソースを領域の押し合いと外殻の強度を上げる為に使用している、なのに何故使わない」

「言ったろう? 使う必要が無いと」

「なら使わせようか」

 

「領域展開・胎蔵遍野(たいぞうへんや)」

 

 羂索が見せた領域は渋谷で宿儺が見せた絶技、結界を閉じない領域だった。

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「使ったな! 領域を!」

 できるだろうと思っていたがやはり『閉じない領域』を使えるか、やりきれよ天元。

 

 それを見た晴蓮はすぐさま印を結び、同じように(・・・・)領域を展開する。

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領域展開

皆尽皆生伽藍堂(みなづきみぶづきがらんどう)

 

 絶技たる閉じない領域同士がぶつかり合い必中を中和し合う。

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「驚かないんだな」

「君ならそれくらいの事はできるだろうと思っていたからね」

 付与した術式は倭助さんの術式か。それよりなんだこれは……押し合いに負けているんじゃない、俺の術式が無効化されている? どう言う事だ。

 

「還魂(かんごん)操術の領域は神話の再現だ」

「神話の再現……! 天岩戸か!」

「流石は晴蓮、その通りだよ。

 還魂(かんごん)操術の領域は術式の『対象指定を一時的に無効化・封印(岩戸隠れ)』させるモノ、君の領域が解体されるのは時間の問題だ」

「領域の押し合いさえさせない領域とは恐ろしい領域だ。だが、忘れたのか? 俺は一人じゃない(・・・・・・・・)」

「何? 何を言っ………まさか!」

「【九階顕現(くかいけんげん)】」

「【九階顕現(くかいけんげん)】」

「他人の領域に外殻を作るだと! デタラメな事を!」

 

 この世界の晴蓮が領域を展開し羂索の『術式の無効化』を押し留め、別の世界の晴蓮が羂索を囲むように結界を妨害する術式を反転させ、結界を強固にする結界を張り羂索の領域の外殻として成立させる(・・・・・・・・・・・・・・・・)。

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「(なんの為にこんな事をーー)」

 

 いつの間にか天元が現れていた、天元が擬似的に造られた羂索の領域の外殻を解体し始める。

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「(このタイミングで天元が出てきた? なんのために? お前には何もでき……! 成る程、外殻を作った理由はこれが目的か……だから晴蓮から先に領域を使わなかったのか。やられたね)」

 

 

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「奴を殺せればそれでいい。弟達や半身である母の呪いの為に、そして悠仁の未来の為に」

 

 少し沈黙し「分かった、だがその前に私達の計画(プラン)を聞いてくれ」と返す。

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「成る程、領域の解体か」

「その後のタイミングならむしろ君の手は必要だ」

「イヤ、やはり始めは俺一人で出るべきだ」

 

 その言葉に驚き「どうしてだ」と聞くと「領域は強力だが展開後術式が焼き切れ暫く術式の使用が困難になるリスクがある、九十九も天元もそこを突くつもりだった訳だが俺という伏兵を想定していたら加茂憲倫(のりとし)は領域を展開しないんじゃないか?」と言われ何も言い返せなかった。

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「俺が一度加茂憲倫(のりとし)に敗れたとしてもそれにより『九十九との一対一(タイマン)である』という意識を植えつける事ができる」

「成る程、それは良い案だ。だが空性結界を操れるであろう羂索の領域がそう簡単に解体させられると思っているのか?」

 

 三人が話し合う中、凛とした透き通る声が聞こえる。

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「やはり封印されていなかったか、晴蓮(・・)」

「俺がそう簡単にヤられるかよ。

 それと、やっと気づいたか脹相(ちょうそう)」

「悠仁の師、加茂晴蓮か。ああそうだ、あの後お前があの時に言っていた意味が漸く分かった、だから今は悠仁の為に戦う」

「それは良かった。一つ聞きたいんだがいいか?」

「なんだ」

「悠仁君の傍に居なくていいのか?」

「俺も居れるのなら傍に居たい。だが、ここに居れば元凶が現れる。ならここで待ち、迎え撃つ」

「そうか」

「随分と砕けた喋り方だね」

「こっちが素だよ、話し方次第で人に与える印象が変わるからな。じゃあこれからの事を話し合おうか」

 

 

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「やるね、晴蓮。まさか外殻を作られて解体させられるとは思わなかった、でもお互い術式は焼き切れている。肉弾戦かい?」

「お前は何度忘れれば気が済むんだ」

「【比翼扇(ひよくせん)・一重(ひとえ)】」

「【超光速粒子(タキオン)】」

 

 声がする方へと振り向くと手刀を振り結界の刃を放つが羂索は難なく躱し、「全く、君は本当に厄介だね」と軽口を言うとした時羂索が吹き飛ぶ。

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「ブ……グッ。(何が起きた! 待て、背後には二人の晴蓮が居た。もう一人はどこに……)」

「これで四つ目だな。イヤ、俺自身の術式と合わせれば五つ目か?」

「あり、得ない」

「あり得ているんだよ」

「何を……イヤ、聞いても無駄か」

「大正解」

 

 体勢を立て直し「やっぱり君は厄介だ」と溢し「だから封印したんだろ?」と返され、それに対し「結果的には失敗しているけどね」と言い返す。

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「(術式が五つ、次は何をしてくる)」

「それと忘れているようだから教えてあげるよ」

「……何をだい」

「カッコいいお兄ちゃんってのはな、最後までカッコいいんだよ」

 

 背後の空性結界が紐解かれ(ほどかれ)二人の戦闘に割って入る人影が一人、それは先程まで戦っていた脹相(ちょうそう)だった。

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「今更出てきてーー。(体が重い! 何が)」

「【死の恐怖(スケィス)。この世界の俺が焼き切れてても別世界の俺達は焼き切れてない】」

 

 別世界の晴蓮の隣には三つ目で十字架を持った石像の巨人がいた。

 ━

「これ、は………」

「重いだろ? 濃密な死の気配ってのは物理的干渉(圧力)をするんだよ」

「本……当に、デタラメだね……君は」

「褒め言葉として貰っておくよ」

「親殺し、いきまぁす!!」

 

 脹相(ちょうそう)の穿血(せんけつ)が羂索の眉間を貫いた。が、次の瞬間羂索の顔が剥がれ落ちる(・・・・・・・・・・・)。

 ━

「クソったれが、改造術式で他人を自分(・・)に改造していたか。だから領域の押し合いではなく無効化を選んだのか」

「その通りだ晴蓮。そして私の目的は果たせた」

「何?」

「私がここに来た理由は天元の魂の輪郭を知る事(・・・・・・・・・・・)だ、本体の輪郭さえ知れれば草木に宿る天元の魂を集められる。

 集めた魂で形を作る天元は偽物だがそれで充分だ、それにやり方次第で本体を引き寄せられる、結果は私の勝ちだよ晴蓮」

「漸く得心がいったよ、お前が無防備にここに来るとは思っていなかった。

 だが魂の輪郭を知れたのはお前だけじゃない、俺も漸くお前の魂の輪郭を知れた。次からはモザイクのように視えないし、お前の未来(世界)も視えるようになった。だから言おう、お前は死ぬ」

「そうか、それは残念だ。できれば日本人一億総呪霊を見たかったね。でも、計画の失敗とは言わないのかい?」

「当然計画も破綻するさ、一億総呪霊なんてモノは発生しない」

「なら宿儺はどうなる、今の君に視えているのか?」

「これ以上教える必要はどこにも無い」

「ハハハ。それ、答えを言っているようなモノじゃないか」

「どうだろうな、ここに九十九由基が居ない時点で察せよ羂索」

「だがこちらには禍求夜(カグヤ)の術師が居る」

「なんだ、知らんのか」

「……何がだ」

「禍求夜(カグヤ)は死んだ、甚爾さんの手によってな」

「君にしては珍しいな、私がその程度に済ませると思うのかい?」

「お前こそ見落としてるな、俺がその程度を見抜けない事を」

「何? どう言う意味だ」

「さてね」

 

 口撃のし合いはお互いが舌打ちで幕を下ろし、羂索と改造されていたどこかの術師は強引な捻じ曲げの過負荷で泡を吹き倒れている。

 ━

「逃げられた上にやられたな」

「だが羂索は死ぬのだろう?」

「死ぬがお前も死ぬ、今の内に俺の式神にでもなっておくか? そうすれば少なくとも意味消失はしないだろうよ」

「それが好ましいのならするといい」

「アンタは相変わらずつまらん奴だな」

「昔からの腐れ縁(・・・・・・・)だろう?」

「イヤな腐れ縁だ、降伏してやるよ天元」

「式神へと降ろう古馴染。ところで、団和(・・)はどうなった」

「現代には(・・・・)居ないさ」

「現代には(・・・・)居ないんだな?」

「そうだ」

「もう一つ聞こう、眼(・)はどうだ」

「腹立つから教えてやんねぇ」

「それは答えを言っているのと同義だろうに」

 

 あり得ない会話、晴蓮は天元に『腐れ縁』と言い、天元は晴蓮に『古馴染』と言った。それが意味する事は加茂晴蓮が何かしらの……時間遡行を使い遥か過去にて天元と会っていた事の証だった。

 ━

「一つ、疑問点が残る」

「なんも無いだろ」

「あの男は何故あの改造術式ではなく無為転変(むいてんぺん)を使ったのかだ」

「ああその事か」

「その言い振りからして分かっているようだな」

「今のは厳密に言えば改造じゃない」

「どう言う事だ」

「あの術式は存在そのものを汚染するんだよ」

「汚染?」

「存在を汚染し根本から在り方を捻じ曲げる、だが無為転変(むいてんぺん)は魂に触れて肉体、或いは脳を改造する。死滅回游の為に必要なのは脳(魂)を弄る事だ、在り方を捻じ曲げれば当然母体は死ぬ」

 

 羂索に見えていた何者かを見ながら「あんな風にな」と言うと肉体は溶けていき塵一つ残っていなかった。

 ━

「成る程な、変える肉体が溶けてしまえば意味がない」

「お陰で手掛かりが何一つ無いけどな」

「彼には見つけられないのか?」

「してもらっているとも」

「それでもか」

「他人を自分に改造できるのなら、自分を他人に誤魔化せるだろうよ」

「見た目だけを弄るか」

「俺にできるんだ、奴にもできるさ」

「君も大概だな」

「『最優』なんでね」

「加茂晴蓮。お前に聞きたい事がある」

 

 目を閉じ「何をかな」と聞き「お前からは兄弟達とは違う繋がりの様なモノが感じられる。何故だ」と言われ一つ息を吐き「君達が生まれる原因を作ったのは俺だからだ」と意味が分からない事を言ったが、天元は何かに気づいたのか「過去で何をした」と聞かれる。

 ━

「俺は過去を転々とした、その時一人の女性と出会った」

「子を設けたか」

「行きずりの関係だった……ああイヤ、どちらかと言えば『押しきられた』の方がただしいかもな。

 ソイツは俺が呪術師だと知った途端に襲ってきた」

「その娘も呪術界の関係者か」

「だろうな」

「詳しくは知らないと?」

「本名を名乗る訳ないだろう?」

「相手もか?」

「聞いた事が無い名前だったな」

「ならお前はなんと名乗っていた」

「滅んだとされる端白間(はしらま)だな」

「莫迦な事を」

「事実滅んでいたんだ、名乗ろうが問題はないと思ってたんだよ」

「そのお前にその人物が迫り俺達の母親が生まれたと言う事か」

「その通りだ、君の母親………俺の娘は一目見てすぐに分かった。そして気づいた、全ての元凶は俺だとな」

 

 重々しい沈黙が流れるがそれを破ったのは「それは違う」と言う脹相(ちょうそう)だった。

 ━

「全ての元凶は加茂憲倫(のりとし)だ、お前じゃない」

「そう言ってもらえると助かるよ」

「他には何をした」

「……端白間(はしらま)の保護をしようとしたが無理だった、あの一族は滅ぶ運命なんだろうな」

「そうか。でだ晴蓮、これからはどうするつもりだ」

「目下の目的は羂索の発見だな」

「私は何をすればいい」

「取り敢えずここで待ってろ、俺の式神になった以上いつでも呼べる。来ないだろうが羂索がここに来てもすぐに逃がす事ができる」

「そうか、与幸吉はどうする」

「ここに居る与君は傀儡、彼には悪いが壊れても問題はない。が、一応隠しておけ」

「ではそうしよう」

「加茂晴蓮」

「うん? 何?」

「俺はどうすればいい」

「そうだね……」

 

 脹相(ちょうそう)の役目を考えていると耳に付けていた与幸吉の小型呪骸(じゅがい)から「先生、宿儺が虎杖悠仁から加茂恵に体を移しました」の言葉が聞こえる。

 ━




 晴蓮くんって何ができないんですかね。

━━
 どうしよう、キャラが勝手に走り出して変な事になった。どうしよう。

━━
 この世界のAIDA(アイダ)はこういった事ができるって事で何卒。
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