その血が歩む道すじ:修正版   作:亞忌羅

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 封印術考えるのめんどくさい。


五十四話

「ふー……無垢識:(むくしき:)収呪祝印(しゅうじゅしゅういん)

 

『無垢識:収呪祝印』この術式は晴蓮の生得術式の根幹の『分離』をより高め特化させた術式。

 対象の中に割り込み異物を探しだし、分離させる事が出来る。

 但し、この術式を他人が受けると分離する物と比例した痛みが襲う。

 ━

「い……うぅぅう……あ、いづ……んん、あ、あぐぁ……」

 

 暫くすると、津美紀の中からぶくぶくと泡を出すドス黒い卵が姿を現した。

 ━

 あのクソ野郎が。

 

 津美紀の中から出てきた黒い卵が蠢き、黒い泡を吹き出し泡が触手の様なモノに変わり、その触手を伸ばし近くの肉体……晴蓮に入りこ(寄生し)もうと(ようと)する。

 ━

「晴!」

(ケン)()()(シン)(ソン)(カン)(ゴン)(コン)

(ケン)()()(シン)(ソン)(カン)(ゴン)(コン)

「封印術:八卦封印(はっけふういん)

 

 晴蓮の中に入ろうと蠢き黒い泡を生み出しては弾ける卵は、晴蓮の封印術により動きが制限され鈍くなったところへ更に封印術を重ねる。

 ━

四象は(ししょうは)春夏秋冬(しゅんかしゅうとう)の四時と解され(のしじとほぐされ)四季と(しきと)変化す(へんかす)

 陰陽(いんよう)二気と成し(にきとなし)相互に(そうごに)作用し(さようし)四時四季が(しじしきが)生じ(しょうじ)四象を(ししょうを)以て(もって)気を正し(きをただし)四象を(ししょうを)以て(もって)正は(せいは)廻り(まわり)四象(ししょう)重なり(かさなり)此にて(これにて)廻ぐる(めぐる)正は(せいは)呪を封ず(じゅをふうず)

「封印術:四象封印(ししょうふういん)

 

 蠢動していた泡を生み出す黒い卵は晴蓮の目の前で動きを止め一時的に生成した呪力の檻に完全に封印された。

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 ふー……一先ずクリア、だが大事なのは次、呪物の摘出………大仕事だな。

 

「晴、どうなった」

「1つ目、『異様呪力(いようじゅりょく)』は取り除きました」

 

 呪力の檻を持ち上げ「コレが『異様呪力』ですね」と甚爾に見せた。

 ━

「ンだコレ……キメぇ」

「呪力と言うよりある種の生物に見えますね。後で専用の封印用の箱に入れて再度封印を施した方が良さそうですね」

 

 完全な封印されながらも呪力の檻の中でウゾウゾと蠢き触手を伸ばし呪力の檻を何度も叩いている。

 ━

「次は……呪物を取り出します。後は何か適当な……出来れば木箱とか有りますか?」

(ゆかり)、確か前に木箱に菓子が入ってたヤツが有ったよな」

「すぐに持ってくるわ」

「箱をどうするんだ? さっきのみたいに呪力でーー」

「アレは生物に似ていますが、対象が呪力だからこそ出来た芸当です。

 それに先程のもあくまで一時的なもの……ですので後で然るべき物に封印しなおします。

 ですが、呪物となるとそうはいきません。箱に封印術の印を書きます、そうすれば一時的では有りますが強固な封印用の箱に出来ます。

 勿論、こちらも後でちゃんとした物に入れ換える必要が有りますが……急場凌ぎ(きゅうばしのぎ)にはなるかと。

 取り敢えずは外に呪力が漏れなければ良いですから」

「出来んだよな」

「僕を誰だと思っているんですか、『最優』の呪術師ですよ。やりきってみせますとも」

 相手は特級呪物……基礎八卦と五行を木箱に書いた後で上位の封印術を重ねがけした方がいいか。

 いくら俺とて特級呪物は初めてだ、成功出来るかは正直分からない。でも、やりきるしかないこの子を助ける為に守る為に……全力でやる。

 

 呪物ーー加茂津美紀の体内()に埋め込まれた何かしらの呪物。

 誰が仕込んだのか、いつ仕込んだのかは分からないが、1つ言えるのはこの呪物は必ず津美紀の肉体と精神を蝕み喰らう事だけは明白だ。

 故に今引き剥がす。しかしそれは内蔵を引き剥がす事と同義であり、それに伴う痛みは想像を絶するモノになるだろう。

 ━

「晴蓮くん、これで良いかしら」

 

 (ゆかり)はティッシュ箱程の木箱を持ってきた。

 ━

「はい、ありがとうございます。それでは、始めます。先ずは結界を張りましょう」

「結界? 帳でも張るのか?」

「帳でも良いんですが、念のために僕の作った結界を張ります」

「お前そんな事も出来んのかよ」

「あはは、僕は『最優』の呪術師ですから。

 では、張ります」

 

「『彖辞(たんじ)を以て界に問う』」

「『乾は(けんは)元いに亨りて(おおいにとおて)貞に利ろし(ただしきによろし)』」

 

「『彖伝(たんでん)を以て界に印す』」

「『大いなるかな乾元(おおいなるかなけんげん)萬物資りて始む(ばんぶつとりてはじむ)

 乃ち(すなわち)天を統ぶ(てんをすぶ)

 雲行き雨施して(くもゆきあめほどこして)品物形を流く(ひんぶつかたちをしく)

 大いに終始を明らかにし(おおいにしゅうしをあきらかにし)六位時に成る(りくいときになる)

 時に六龍に乗じ(ときにりくりゅうにじょうじ)以て天を御す(もっててんをぎょす)

 乾道変化して(けんどうへんかして)各々性命を正しくし(おのおのせいめいをただしくし)大和を(だいわを)保合するは(ほうごうするは)乃ち利貞なり(すなわちりていなり)

 庶物に首出して(しょぶつにしゅしゅつして)萬國咸く寧し(ばんこくことごとくやすし)』」

 

「『象伝(しょうでん)を以て界に命ず』」

「『天行は健なり(てんこうけんなり)君子以て(くんしもって)自らつとめて(みずからつとめて)息ま(やま)()』」

 

「『爻辞(こうじ)を以て界を隔てる』」

「『初爻・(しょこう・)潜龍用うる勿れ(せんりゅうもちうるなかれ)

二爻・(にこう・)見龍田に在り(けんりゅうでんにあり)大人を見るに(たいじんをみるに)利ろし(よろし)

三爻・(さんこう・)君子終日乾乾(くんししゅうじつけんけん)夕べに惕若たれば(ゆうべにてきじゃくたれば)厲うけれど咎なし(あやうけれどもとがなし)

四爻・(よんこう・)或いは躍りて淵にあり(あるいはおどりてふちにあり)咎なし(とがなし)

五爻・(ごこう・)飛龍天に在り(ひりょうてんにあり)大人を見るに利ろし(たいじんをみるによろし)

上爻・(じょうこう・)亢龍悔い有り(こうりょうくいあり)』」

 

易経一文結界術:乾為天(けんいてん)

 

 呪詞(じゅし)を唱えると部屋を覆う様に易経の詞が埋めつくす。

 ━

「んだコイツは……見た事ねぇ」

「これは周易六十四卦(しゅうえきろくじゅうしけ)と謂われる易経の一文、乾為天(けんいてん)です。本来は易占……占いの経ですね。それを結界術にしました」

 結界はこれで良し。ふぅ……必ず成功させる。絶対この子を助ける。あのクソ野郎の思い通りにさせ無い。

 

「お前に出来ねぇ事あんのかよ」

「有りますよ、沢山。では次にこの木箱を封印用の封檻にします」

 

 持ってきた木箱の蓋に五行思想に由来する『(もく)()()(ごん)(すい)』の相生(そうじょう)図を書き記し、底に基礎八卦、『(ケン)()()(シン)(ソン)(カン)(ゴン)(コン)』を刻み呪力を籠める。

 ━

「後は……コレも(・・)使います。

 それと、箱の下に帯を置きましょう必要ですからね。ふぅ……これで準備は整いました、取り掛かります」

 呪力を廻せ。呪力を滾らせろ! 全力を尽くせ!! 

 

「何だソレ」

「呪具の材料に使われる元素の支配石と言われる物になります。これが有れば少しはマシになるかと」

「何でんなもん持ってんだよお前」

「ははは、つい最近取りに行きまして、呪具師に渡すつもりだったんですが、今回は封印に使います。

 それでは……いきます。無垢識:(むくしき:)収物囚(しゅうぶつしゅう)(かん)

 

 術式を発動すると同時に加茂津美紀は聞き取れない声をだしながら白目を向き、口から泡を吹き出し痙攣をする。すると、体内から眼球がじわりじわりと出てくる。

 ━

「いぁ……縺ゅ≠縺ゅ≠縺ゅ≠縺ゅ≠縺ゅ≠縺ゅ≠!!!」

「ッ! 晴!」

「ここまでは予想通りです。呪物は異物では有りますが、一度体内に入ってしまえば肉体と結合します。

 ですのでその状態から呪物を引き剥がす必要が有るんです。その際、肉体に大きな負荷が起きるのは当然です」

 

 呪物が完全に出てきたのを確認すると、すかさず封印術を行う。

 ━

 

最も堅き物は金剛。なれば金剛を以て鎖を成す。金剛成りし鎖は呪を縛し呪を封ずる。

封印術:金剛封鎖(こんごうふうさ)

 

 封印術が発動されると、簡易封印箱の中に置かれた石が金剛石が如く堅い鎖に変じ飛び出し、呪物を雁字搦めに縛るのを見てすかさず、次の封印術を重ねる。

 ━

 

(けん)(こん)(ちゅん)(もう)(じゅ)(しょう)

()()小畜(しょうちく)()(たい)()

同人(どうじん)大有(だいゆう)(けん)()(ずい)()

(りん)(かん)噬嗑(ぜいごう)()(はく)(ふく)

无妄(むぼう)大畜(だいちく)()大過(たいか)(かん)()

天地有りて(しか)る後に万物生ず

周易上経三十卦封印術しゅうえきじょうきょうさんじゅうけふういんじゅつ

呪相封棺(じゅそうふうかん)

 

 石から伸びる鎖で雁字搦めにされた呪物を、箱の底に呪力を使い刻まれた基礎八卦の呪印が、呪力の腕へと成り鎖ごと呪物を握り込み、箱に引き摺り込む為に箱へと戻ろうとするが、まるで呪物に意思が有る様に封印されまいと抵抗する。

 ━

 チッ、やっぱりこれだけじゃ封印出来んか……であれば、畳み掛けるまで。

 

 (かん)(こう)(とん)大壮(だいそう)(しん)

 明夷(めいい)家人(かじん)(けい)(けん)(かい)

 (そん)(えき)(かい)(こう)(すい)(しょう)

 (こん)(せい)(かく)(てい)(しん)(ごん)

 (ぜん)帰妹(きまい)(ほう)(りょ)(そん)()

 (かん)(せつ)中孚(ちゅうふ)小過(しょうか)既済(きせい)未済(びせい)

此にて成すは自然人界正し封す

周易下経三十四卦封印術しゅうえきかきょうさんじゅうしけふういんじゅつ

万呪封檻(ばんじゅふうかん)

 

 更に封印術を行使すると、蓋に書かれた五行相生(そうじょう)図に籠められた呪力が励起し、木蓋が独りでに動き、呪物の上に止まり鎖で雁字搦めにされ、基礎八卦から成った腕に握られた呪物を箱へと御し続け、檻の様に閉じ込め箱へと押し込み遂にーー

 ━

「おい、晴」

 残心は解くな何が起きても良いように意識をと切らすな、完全に箱が閉まるまで………良し、今だ。

 

「この手で鳴らすは五大明王、北方神、金剛(こんごう)夜叉(やしゃ)明王(みょうおう)金剛鈴(こんごうれい)

 魔を退け、厄を退け、災いを浄化し悪を喰らい尽くして善を護る。罪なき者に歓喜を与えん。

 

金剛夜叉明王=金剛鈴(ヴァジュラヤクシャ=ガンター)

 

遂に封印に成功する

 

「甚爾さんその帯で木箱を縛ってください」

「任せろ」

 

 言われると同時に木箱に向かい下に敷いて有った帯で木箱を縛ると呟く様に「これで……終わったのか……」と溢れ出た。

 ━




 指だと宿儺と被るので眼球にしました、ミイラ化?してるんじゃないですかね、目玉がミイラ化したらどうなるのか知りませんが。
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