「硝子どうかした?」
「歌姫センパイから連絡がない」
「君達ってホント仲良いね、それで? いつから連絡がないの」
「2日前から」
「2日? 確か2日前に冥冥さんと一緒に依頼に行ったんじゃなかったっけ」
「そ。その日から連絡無し、だからちょっと心配でさ。そりゃさ、センパイ強いから問題無いだろうけどさ、心配なのは心配だよね」
「仕事に行ってから連絡無し、か。今の庵さんは一級上位の術師だ、それに冥冥さんも居る。
そう簡単にヤられる事は無いと思うけど、少々気になるね。僕の方でも調べておくよ」
「ん、お願い」
故意なのか、偶然なのか……偶然であって欲しいモノだな。
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「硝子、2人が行った任務が分かった」
「どこ?」
「静岡県の浜松市に有る廃屋敷に巣食う呪霊の祓除みたいだね。それで、上から僕達に救出要請を出させた」
「硝子、それと悟君に傑君。君達にもだ。勿論僕にもね」
「特級が3人も行く必要あんの?」
「一級2人が行って音沙汰無し、念のためにね」
「ふーん」
「まあそう言わずに行こうよ。それに面白い呪霊がいるかもしれないしね」
「しょうがねぇか、さっさと行ってとっとと終わらせるか」
そう決まり
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「ここだね」
「ただの廃屋敷だな」
外見を見る限り何の変哲も無い、廃れた屋敷。とてもあの2人が手こずる様には見えない。
しかし、相手は呪霊。中で何が起きていても分からない。
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「さて、取り敢えず帳をーー」
言いきる前に五条が術式を使い、屋敷を潰していた。
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「あー……あのさ悟君。まだ帳降ろしてないんだけど」
「ンなもんどーでもいいっしょ」
悪びれる事も無く「助けに来たんだし、さっさと終わらせようぜ」と言う。
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……後で怒られるのは悟だし、まあいっか。
「助けにきたよ~、歌姫。もしかして泣いてる?」
「泣いてねぇよ!!」
いきなり壊れた屋敷に埋もれながら「つか敬語使えよ!
五条に叫んでいると、いつの間にか後ろに居た冥冥が「泣いたら慰めてくれるかな? 是非お願いしたいね」と五条に言い、五条は「冥さんは泣かないでしょ、強いもん」と答える。
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「五条!! 私はね、助けなんてーー」
五条に啖呵を切ろうとしていたら、真後ろの地中から呪霊が飛び出してくる。が、その呪霊は傑の呪霊に喰われる。
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「飲み込むなよ、後で取り込む。それと悟、弱い者イジメはよくないよ」
「強いヤツイジメるバカがどこにいんだよ」
「君の方がナチュラルに煽っているよ、夏油君」
2人がそう言って気づいたのか「あ"」と溢す。そして、そんな夏油にガンを飛ばす歌姫が居た。
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「歌姫センパ~イ、無事ですか~?」
「庵さん、無事そうで良かった」
涙を目尻に溜めながら「硝子!! 晴蓮君!!」と明るく声をかける。
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「心配したんですよ、2日も連絡無かったから」
そう言うや否や家入に抱きつき「硝子! 晴蓮君。2人はあのアイツらみたいになっちゃ駄目よ!」と、また叫んだ。
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「あはは、なりませんよあんなクズ共」
「彼らは常識が欠けてますさらね、もうどうしようも無いですね」
笑いながら「傑君はまだ引き返せるかもしれませんけど」と付け加えた。
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「ん? 2日?」
「どうやら呪霊の結界で時間ズレてたみたいだね、面倒な呪霊も居たもんだ」
「それな、冥さんが居るのにおかしいと思ったんだ」
「そのようだね。それはそうと君達……帳は?」
「僕は降ろそうとしましたよ、その前に悟君が術式使いましたが」
晴蓮を除く3人が無言になり、呆けていた。
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「続いて昨日。静岡県浜松市で起きた爆発事故。
原因はガス管の経年劣化では無いかと専門家は言っておりますが、どうなのでしょうか。
現場の節アナウンサー!? そちらはどのような状況でしょうか?」
テレビから聞こえてくる昨日、悟が帳を張る前に術式を使ったため、一般的にも知られていた。
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「この中に『帳を自分で降ろすから』と補助監督を置きざりにした奴がいるな。
名乗り出ろ」
「はいはーい。先生! 犯人捜しはやめませんか?」
自分ですと言わんばかりにわざわざ手を上げる。
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「
加茂、何故帳を降ろさなかった」
「しましたよ。その前に悟君が術式を使いました」
「はぁ……」
五条に「教育的指導」と拳骨を落とす。
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「そもそもさぁ、帳ってそこまで必要? 別に
ぶつくさ言い「どーせ呪霊も呪術も見えねぇんだし」と文句をいう。
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「どちらかと言えば降ろした方がいいかな、見えなくてもさっきみたいに社会的問題として取り上げられる」
「蓮が言うように駄目に決まってるだろ。それに呪霊の発生を抑制するのは何より人々の心の平穏だ」
まあ間違ってはいない、いないけどやっぱり呪術師らしく無いかな。
「そのためにも目に見えない脅威は極力、秘匿しなければならない。それだけじゃない、良いかいさとーー」
「分かった分かった。弱いヤツらに気を遣うのは疲れるよホント」
「秘匿する意味はちゃんと有るんだ悟君。僕としても必ず降ろせ……とは言わないよ。
でもね、降ろす必要は有る。それは、不必要な混乱を招かないためだ」
2人の発言に夏油はしかめっ面をしながら、自身の考えを言う。
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「『弱者生存』それがあるべき社会の姿だと私は思っている。弱きを助け強きを挫く。いいかい2人とも、呪術は非術師を守るためにある」
んー……やっぱりそう考えてたか。イヤまあ甚爾さんから聞いてたし、交流会の時に『覚』も同じ事言ってたしね。その思想はちょっと……イヤかなりマズイかなー。
どうしたものか。
「それ正論? オレ、正論嫌いなんだよね」
「何?」
僅かに怒りを滲ませながら五条を睨む。
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「
2人の言い合いに何かを察したのか硝子はその場から逃げる。
ソレを見て「僕も逃げようかな」と考え「でも止めないとヤバい事になりそうだし……ホントどうしよ」と内心思っていた。
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「ポジショントークで気持ち良くなってんじゃねーよ」
気持ち悪いと言わんばかりに「オ"ッエー」とオーバーリアクションで夏油を煽る。
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「外で話そうか、悟」
怒りと共に呪霊を出しながら睨む。
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「寂しんぼか? 1人でいけよ」
夏油の怒りをなんでも無いように、しかし更に煽る。
ピリついた雰囲気のなか2人がいきなり机を壊しながら教室の床に押し付けられる。
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「2人とも、落ち着こうか」
その状態の中、夜蛾が現れ「………何だこの状況は」と晴蓮に聞き「反省のポーズです、お気になさらず」との返答に良く分からんが何かしたんだろうといった表情をする。
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「まあいい。この任務はオマエ達2人に行ってもらう」
「夜蛾先生、僕は入っていないんですか?」
「ああ、加茂には別件で任務が入っている。
だが、俺としてはお前にも参加して欲しい。別件が終わり次第合流してくれ」
「別件ですか……等級は?」
「当然特級だ」
タメ息を吐きながら「まあでしょうね」と呆れる。
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十中八九アイツの仕業だろうねぇ、天元本人が俺を含めた3人に指命依頼するって言ってたし……あのドブカスは俺に居られたら困る理由が有るんだろうね。
じゃなきゃこのタイミングで俺に任務来ないだろうし、あの儀式……星漿体との同化を邪魔されたくない何かが有る、と。
秒で終わらせて邪魔しにいくか、どんな反応するのかな、今からが愉しみだ。
「何だその面は」
異口同音で「いや、別に」と言うがどこかふて腐れていた。
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「正直、荷が重いと思うが天元様のご指名だ」
天元と言う名を聞き2人して驚く。
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「依頼は2つ。『星漿体』天元様との適合者、その少女の護衛と……末梢だ」
天元からの直接依頼、なのに外れている俺……。考えられるのは、天元から総監部に依頼内容を伝え、その内容を総監部が変えて俺を外した……そう考えるのが妥当か、相変わらず手が早いことで。ますます邪魔したいね。
しかし、天元は総監部がアレの手駒なの知ってんのかね……知ってたらこうなって無いか。これだから千年モノの引きこもりは困る。
情報のアップデートしないからこうなるんだよ。………知った上で放置してたらそれはソレで腹立つな、今度会ったら1発殴るか。
「
「そうだ」
2人して聞こえるように「ついにボケたか」や「春だしね、次期学長ってんで浮かれてるのさ」と言い合う。
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「冗談はさておき、天元様の術式の初期化ですか?」
夏油の質問を聞きつつ先の会話の事を「冗談で済ますかは俺が決めるからな」と釘を刺す。
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「? 何ソレ」
悟、御三家としてソレはダメじゃ無いかなー。
「なんだよ」
「悟君。君、御三家でしょ何で知らないの、イヤまあ君らしいっちゃらしいけど。
あ……天元……様は『不死』の術式を持っているんだよ、でもね『不老』ではない。
ただ老いる分には問題ないが一定以上の老化を終えると、術式が肉体を創り変えようとする」
「ふむ?」
興味が無いのか、それとも分からないのか、気の抜けた声色で返す。
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「加茂の言う通り『進化』だ。人でなくなり、より高次の存在と成る」
「じゃあいいじゃん、何かカックいーし」
「天元様曰く、その段階の存在には『意思』というものが無いらしい。つまり天元様が天元様で無くなってしまう」
俺としてはどうでもいいけど。
「天元が創り変わってしまえば高専各校、呪術界の拠点となる結界。多くの補助監督の結界術。
それら全てがアレによって強度の底上げをしてるのさ、たがらアレの力添えが無いと
迷惑だよねぇ、そもそも1人におんぶにだっこの現状がおかしいと思うけどね。
で、最悪の場合アレが人類の敵になるかもしれない……てな訳でね、だから500年に1度『星漿体』とアレに適合する人間と同化し、肉体の情報を書き換えるって寸法さ。
そして同化した星漿体は……どうなるんだろうねぇ、抹消ってさ」
「加茂。お前の説明は正しいが天元様をアレ呼ばわりするな」
天元をアレ呼びする晴蓮を注意する。が、何故そう言えるのかを疑問に思っていた。
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「夜蛾先生、アレは所詮アレですよ。そもそもとして今のアレが人類の味方と言えるのかすら怪しい。
こんな事してまで『人間』で在り続ける意味があるかどうか……アレの思考回路は人間らしさはもう無い。本人は有るって言ってるけど」
「蓮、まるで会った事がある様な言い種だね」
「僕だよ? 大抵の事は出来るさ。
ただ引っ掛かるのは僕に指命が無い事だね。アレは僕にも指命を出すつもりだったみたいだし……どこで入れ違ったんだろうねぇ」
「そうじゃん、何でハルが入ってねぇんだよ。ハルも入れれば安全度が格段に上がんじゃん」
「それは……確かにそうだね、あまりにも出来すぎている。まるで……」
「ハルに居て欲しくねぇヤツがいるってのかよ」
「本当にねぇ何でだろうねぇ、僕にもさっぱり分からないね」
「総監部の連中か。ヘドが出るな」
悟、大正解。より正確に言えばその後ろにいるドブカス野郎だけど。
「ま、だろうね。ただその理由が分からないところだね、僕を遠ざけたい理由……何なんだろうねぇ」
理由は分かっていながらも誰に聞かれ無い程の小声で「ドブカス野郎が鬱陶しいにも程がある」と呟いていた。
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案の定晴蓮くんは除け者された模様。晴蓮くんが居ると便利過ぎるからね、仕方ないね。