その血が歩む道すじ:修正版   作:亞忌羅

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 初対面の筈なのにまるで友人の様に話し合う晴蓮と小原周防(こはらすおう)。彼女はいったい誰なのか。


五十六話

「硝子どうかした?」

「歌姫センパイから連絡がない」

「君達ってホント仲良いね、それで? いつから連絡がないの」

「2日前から」

「2日? 確か2日前に冥冥さんと一緒に依頼に行ったんじゃなかったっけ」

「そ。その日から連絡無し、だからちょっと心配でさ。そりゃさ、センパイ強いから問題無いだろうけどさ、心配なのは心配だよね」

「仕事に行ってから連絡無し、か。今の庵さんは一級上位の術師だ、それに冥冥さんも居る。

 そう簡単にヤられる事は無いと思うけど、少々気になるね。僕の方でも調べておくよ」

「ん、お願い」

 故意なのか、偶然なのか……偶然であって欲しいモノだな。

 

 

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「硝子、2人が行った任務が分かった」

「どこ?」

「静岡県の浜松市に有る廃屋敷に巣食う呪霊の祓除みたいだね。それで、上から僕達に救出要請を出させた」

「硝子、それと悟君に傑君。君達にもだ。勿論僕にもね」

「特級が3人も行く必要あんの?」

「一級2人が行って音沙汰無し、念のためにね」

「ふーん」

「まあそう言わずに行こうよ。それに面白い呪霊がいるかもしれないしね」

「しょうがねぇか、さっさと行ってとっとと終わらせるか」

 

 そう決まり3人(・・)の特級。加茂晴蓮と五条悟。そして、最近特級となった夏油傑に準一級となった家入硝子の4人で庵歌姫、冥冥の2人の救出に向かった。

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「ここだね」

「ただの廃屋敷だな」

 

 外見を見る限り何の変哲も無い、廃れた屋敷。とてもあの2人が手こずる様には見えない。

 しかし、相手は呪霊。中で何が起きていても分からない。

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「さて、取り敢えず帳をーー」

 

 言いきる前に五条が術式を使い、屋敷を潰していた。

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「あー……あのさ悟君。まだ帳降ろしてないんだけど」

「ンなもんどーでもいいっしょ」

 

 悪びれる事も無く「助けに来たんだし、さっさと終わらせようぜ」と言う。

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 ……後で怒られるのは悟だし、まあいっか。

 

「助けにきたよ~、歌姫。もしかして泣いてる?」

「泣いてねぇよ!!」

 

 いきなり壊れた屋敷に埋もれながら「つか敬語使えよ! 悪童(クソガキ)が!」と叫ぶ。

 五条に叫んでいると、いつの間にか後ろに居た冥冥が「泣いたら慰めてくれるかな? 是非お願いしたいね」と五条に言い、五条は「冥さんは泣かないでしょ、強いもん」と答える。

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「五条!! 私はね、助けなんてーー」

 

 五条に啖呵を切ろうとしていたら、真後ろの地中から呪霊が飛び出してくる。が、その呪霊は傑の呪霊に喰われる。

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「飲み込むなよ、後で取り込む。それと悟、弱い者イジメはよくないよ」

「強いヤツイジメるバカがどこにいんだよ」

「君の方がナチュラルに煽っているよ、夏油君」

 

 2人がそう言って気づいたのか「あ"」と溢す。そして、そんな夏油にガンを飛ばす歌姫が居た。

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「歌姫センパ~イ、無事ですか~?」

「庵さん、無事そうで良かった」

 

 涙を目尻に溜めながら「硝子!! 晴蓮君!!」と明るく声をかける。

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「心配したんですよ、2日も連絡無かったから」

 

 そう言うや否や家入に抱きつき「硝子! 晴蓮君。2人はあのアイツらみたいになっちゃ駄目よ!」と、また叫んだ。

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「あはは、なりませんよあんなクズ共」

「彼らは常識が欠けてますさらね、もうどうしようも無いですね」

 

 笑いながら「傑君はまだ引き返せるかもしれませんけど」と付け加えた。

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「ん? 2日?」

「どうやら呪霊の結界で時間ズレてたみたいだね、面倒な呪霊も居たもんだ」

「それな、冥さんが居るのにおかしいと思ったんだ」

「そのようだね。それはそうと君達……帳は?」

「僕は降ろそうとしましたよ、その前に悟君が術式使いましたが」

 

 晴蓮を除く3人が無言になり、呆けていた。

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「続いて昨日。静岡県浜松市で起きた爆発事故。

 原因はガス管の経年劣化では無いかと専門家は言っておりますが、どうなのでしょうか。

 現場の節アナウンサー!? そちらはどのような状況でしょうか?」

 

 テレビから聞こえてくる昨日、悟が帳を張る前に術式を使ったため、一般的にも知られていた。

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「この中に『帳を自分で降ろすから』と補助監督を置きざりにした奴がいるな。

 名乗り出ろ」

「はいはーい。先生! 犯人捜しはやめませんか?」

 

 自分ですと言わんばかりにわざわざ手を上げる。

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お前()だな。

 加茂、何故帳を降ろさなかった」

「しましたよ。その前に悟君が術式を使いました」

「はぁ……」

 

 五条に「教育的指導」と拳骨を落とす。

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「そもそもさぁ、帳ってそこまで必要? 別に一般人(パンピー)に見られたってよくね?」

 

 ぶつくさ言い「どーせ呪霊も呪術も見えねぇんだし」と文句をいう。

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「どちらかと言えば降ろした方がいいかな、見えなくてもさっきみたいに社会的問題として取り上げられる」

「蓮が言うように駄目に決まってるだろ。それに呪霊の発生を抑制するのは何より人々の心の平穏だ」

 まあ間違ってはいない、いないけどやっぱり呪術師らしく無いかな。

 

「そのためにも目に見えない脅威は極力、秘匿しなければならない。それだけじゃない、良いかいさとーー」

「分かった分かった。弱いヤツらに気を遣うのは疲れるよホント」

「秘匿する意味はちゃんと有るんだ悟君。僕としても必ず降ろせ……とは言わないよ。

 でもね、降ろす必要は有る。それは、不必要な混乱を招かないためだ」

 

 2人の発言に夏油はしかめっ面をしながら、自身の考えを言う。

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「『弱者生存』それがあるべき社会の姿だと私は思っている。弱きを助け強きを挫く。いいかい2人とも、呪術は非術師を守るためにある」

 んー……やっぱりそう考えてたか。イヤまあ甚爾さんから聞いてたし、交流会の時に『覚』も同じ事言ってたしね。その思想はちょっと……イヤかなりマズイかなー。

 どうしたものか。

 

「それ正論? オレ、正論嫌いなんだよね」

「何?」

 

 僅かに怒りを滲ませながら五条を睨む。

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呪術(ちから)に理由とか責任を乗っけんのはさ、それこそ弱者がやる事だろ」

 

 2人の言い合いに何かを察したのか硝子はその場から逃げる。

 ソレを見て「僕も逃げようかな」と考え「でも止めないとヤバい事になりそうだし……ホントどうしよ」と内心思っていた。

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「ポジショントークで気持ち良くなってんじゃねーよ」

 

 気持ち悪いと言わんばかりに「オ"ッエー」とオーバーリアクションで夏油を煽る。

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「外で話そうか、悟」

 

 怒りと共に呪霊を出しながら睨む。

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「寂しんぼか? 1人でいけよ」

 

 夏油の怒りをなんでも無いように、しかし更に煽る。

 ピリついた雰囲気のなか2人がいきなり机を壊しながら教室の床に押し付けられる。

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「2人とも、落ち着こうか」

 

 その状態の中、夜蛾が現れ「………何だこの状況は」と晴蓮に聞き「反省のポーズです、お気になさらず」との返答に良く分からんが何かしたんだろうといった表情をする。

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「まあいい。この任務はオマエ達2人に行ってもらう」

「夜蛾先生、僕は入っていないんですか?」

「ああ、加茂には別件で任務が入っている。

 だが、俺としてはお前にも参加して欲しい。別件が終わり次第合流してくれ」

「別件ですか……等級は?」

「当然特級だ」

 

 タメ息を吐きながら「まあでしょうね」と呆れる。

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 十中八九アイツの仕業だろうねぇ、天元本人が俺を含めた3人に指命依頼するって言ってたし……あのドブカスは俺に居られたら困る理由が有るんだろうね。

 じゃなきゃこのタイミングで俺に任務来ないだろうし、あの儀式……星漿体との同化を邪魔されたくない何かが有る、と。

 秒で終わらせて邪魔しにいくか、どんな反応するのかな、今からが愉しみだ。

 

「何だその面は」

 

 異口同音で「いや、別に」と言うがどこかふて腐れていた。

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「正直、荷が重いと思うが天元様のご指名だ」

 

 天元と言う名を聞き2人して驚く。

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「依頼は2つ。『星漿体』天元様との適合者、その少女の護衛と……末梢だ」

 天元からの直接依頼、なのに外れている俺……。考えられるのは、天元から総監部に依頼内容を伝え、その内容を総監部が変えて俺を外した……そう考えるのが妥当か、相変わらず手が早いことで。ますます邪魔したいね。

 しかし、天元は総監部がアレの手駒なの知ってんのかね……知ってたらこうなって無いか。これだから千年モノの引きこもりは困る。

 情報のアップデートしないからこうなるんだよ。………知った上で放置してたらそれはソレで腹立つな、今度会ったら1発殴るか。

 

少女(ガキんちょ)の護衛と末梢??」

「そうだ」

 

 2人して聞こえるように「ついにボケたか」や「春だしね、次期学長ってんで浮かれてるのさ」と言い合う。

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「冗談はさておき、天元様の術式の初期化ですか?」

 

 夏油の質問を聞きつつ先の会話の事を「冗談で済ますかは俺が決めるからな」と釘を刺す。

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「? 何ソレ」

 悟、御三家としてソレはダメじゃ無いかなー。

 

「なんだよ」

「悟君。君、御三家でしょ何で知らないの、イヤまあ君らしいっちゃらしいけど。

 あ……天元……様は『不死』の術式を持っているんだよ、でもね『不老』ではない。

 ただ老いる分には問題ないが一定以上の老化を終えると、術式が肉体を創り変えようとする」

「ふむ?」

 

 興味が無いのか、それとも分からないのか、気の抜けた声色で返す。

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「加茂の言う通り『進化』だ。人でなくなり、より高次の存在と成る」

「じゃあいいじゃん、何かカックいーし」

「天元様曰く、その段階の存在には『意思』というものが無いらしい。つまり天元様が天元様で無くなってしまう」

 俺としてはどうでもいいけど。

 

「天元が創り変わってしまえば高専各校、呪術界の拠点となる結界。多くの補助監督の結界術。

 それら全てがアレによって強度の底上げをしてるのさ、たがらアレの力添えが無いと防御(セキュリティ)や任務の消化すらままなら無い。

 迷惑だよねぇ、そもそも1人におんぶにだっこの現状がおかしいと思うけどね。

 で、最悪の場合アレが人類の敵になるかもしれない……てな訳でね、だから500年に1度『星漿体』とアレに適合する人間と同化し、肉体の情報を書き換えるって寸法さ。

 そして同化した星漿体は……どうなるんだろうねぇ、抹消ってさ」

「加茂。お前の説明は正しいが天元様をアレ呼ばわりするな」

 

 天元をアレ呼びする晴蓮を注意する。が、何故そう言えるのかを疑問に思っていた。

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「夜蛾先生、アレは所詮アレですよ。そもそもとして今のアレが人類の味方と言えるのかすら怪しい。

 こんな事してまで『人間』で在り続ける意味があるかどうか……アレの思考回路は人間らしさはもう無い。本人は有るって言ってるけど」

「蓮、まるで会った事がある様な言い種だね」

「僕だよ? 大抵の事は出来るさ。

 ただ引っ掛かるのは僕に指命が無い事だね。アレは僕にも指命を出すつもりだったみたいだし……どこで入れ違ったんだろうねぇ」

「そうじゃん、何でハルが入ってねぇんだよ。ハルも入れれば安全度が格段に上がんじゃん」

「それは……確かにそうだね、あまりにも出来すぎている。まるで……」

「ハルに居て欲しくねぇヤツがいるってのかよ」

「本当にねぇ何でだろうねぇ、僕にもさっぱり分からないね」

「総監部の連中か。ヘドが出るな」

 悟、大正解。より正確に言えばその後ろにいるドブカス野郎だけど。

 

「ま、だろうね。ただその理由が分からないところだね、僕を遠ざけたい理由……何なんだろうねぇ」

 

 理由は分かっていながらも誰に聞かれ無い程の小声で「ドブカス野郎が鬱陶しいにも程がある」と呟いていた。

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 案の定晴蓮くんは除け者された模様。晴蓮くんが居ると便利過ぎるからね、仕方ないね。
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