その血が歩む道すじ:修正版   作:亞忌羅

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 晴蓮くんに割り当てられた特級任務とはいったいなんなのか、特級呪霊でも出てくるんですかね。


五十七話

「はてさて、来てみたものは良いけれど……何アレ、呪霊?」

 

 目の前にいた呪霊は全身が燃え上がっている『火』その物だった。

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 ………自然ーー『火』に対する畏れ或いは火炎崇拝で発生した呪霊? にしてはなんと言うか……『人の形』過ぎやしないかい、アレ。

 

『お前は誰だ』

 

 脳内に響くように声らしきモノが聞こえる。

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「へぇ、これはスゴいね。今まで気まぐれで会話が出来る呪霊を探してたけど、まさか会話出来る呪霊が本当に居るとはね。流石特級呪霊」

『答えよ、お前は誰だ』

「僕かい? 僕は君を祓う者だよ」

『陰陽寮の人間か、ならばお前は(われ)の敵か』

「ソレは君次第だね。君が僕の式神になるなら敵にはならない」

 それにしても『覚』といい古い呪霊は陰陽寮の事を知っているのか、つまり『覚』もコイツも千年以上いるという事になる。長生きだね、よく今まで祓われなかったものだ。

 強かったのか、それとも知られていなかったのか……後者かな、多分。

 

『人に仕えよと、吾に言うか』

「従うんじゃない。共に在るんだ、式神は決して従者ではない」

『面白き事を言うではないか』

「それで? どうするんだい? 共に在るか、敵となるか。君が選ぶと良い」

『そうさな、共に在るのだとしても』

 

 一度言葉を止め、纏う火が燃え盛る。

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『オヌシの力次第だ、吾を認めさせてみよ』

「そうくるか、面白い。なら、魅せてやろう、僕が何者なのかを」

 

 片や周囲の木々を燃やし、片や木々が凍てつく。 今、此処に特級呪霊と特級呪術師が衝突する。

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『呵呵呵、やるではないか! 人間よ。よもや吾の火を凍らせるか』

「君こそやるじゃん、僕の氷漿(ひょうしょう)をモノともしない程燃え盛るとはね」

『呵呵。火その物である吾を凍てつかせる程の冷気を操る者なぞ今まで1人しかおらんだぞ』

「へぇ、その1人を教えて欲しいかな」

『吾を認めさせする事が出来れば教えてやろうとも』

 

 その光景は友人との会話。しかし彼ら2人の周りは燃え盛る大地と、巨大な氷柱が林立するという相反する光景だった。

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『呵呵。良い、オヌシの力は知った』

「それは良かった。流石にこれ以上に周りを壊すのは申し訳無いからね。それで? 考えは決まったかな?」

『そうさな、吾とてアレの思い通りに事を運ばせるのは気に喰わぬ。

 それに、恐ろしきも尊きお方が見守る人間にも興味が湧いた』

「ああ、明王様か。やっぱり見えるんだね」

『見えるのではなく、感じ取れる……の方が正しかろうな』

「成る程」

 感じ取れる、か。妖怪達といい知性が有るモノ達は分かる事になる。良いことを知った。

 

『最も、何故そのお方が人間に肩入れするのかは解らぬがな』

「あー……律儀な(明王)なんだよ」

『そうか、まあなんでも良い。オヌシの式となろうではないか』

「意外とあっさりだね、イヤ助かるんだけどさ」

『言うたであろう、アレの思い通りになるのは憚られるのでな』

「………アレ、ね」

 十中八九アイツの事だな、こんな事にまで噛んでくるか。マジであんな事考えてんのか? もしそうなら確実に潰す。

 

「さて、儀に入ろうか」

 

 そう言うと体の裡から五鈷杵剣を取り出し、式神の儀にを執り行う。

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『……よもや吾が人間の式になるとはな、世の中とは分からぬモノだな』

「全くだ。本当に分からないよね」

 これで1つ。アイツの企みを潰せたのかな? 思い通りにさせんよドブカス野郎。

 しかし、これで1日使われた……確か同化は2日後。急ぐか。

 

「でもその前に、下準備をしておこうか」

 

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「だ、誰だお前は!!」

「僕かい? 僕は君達を神の元に導く者だよ。

有漏:逆天:水の月潜清:逆血鏡清・載(せんせい:ぎゃっけつきょうせい・さい)

有漏(うろ)逆天(ぎゃくてん)水の月(みずのつき)潜清:逆血鏡清・載

 

「次いでにドンってね」

「有漏:境界:陀羅尼潜清:血別清神・載(せんせい:けつべつせいしん・さい)

有漏(うろ)境界(きょうかい)陀羅尼(だらに)潜清:血別清神・載」

 感謝しても良いよ? 狂信者ども。

 はぁ、後どれだけ有るんだ? 面倒くさいけどやっておかないとね、後々が楽になるし」

 

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「やぁ、めんそーれ。遅かったね、皆」

「確かに沖縄に行くと連絡したけど……何で私達より先にいるんだい、蓮」

「飛行機とか面倒くさかったからね、飛んで来た」

 

 晴蓮の周りをふよふよ飛び回るエイに似た何かがいた。

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「なんじゃぁあ、アレは!」

「その子が星漿体?」

「喧しいけどな」

「にしても何でも沖縄に?」

 

 後ろで星漿体の少女……天内理子(あまないりこ)が騒ぎ立てている。

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「思い出作りだよ」

「あぁ、そう言う。正直、哀れな子だね、アレに適合したばかりに酷な運命を背負わされる。

 反吐が出るね、やっぱり1発殴っておくか」

 

 誰かを思い出しながら手を握ったり開けたりする。

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「ハル」

「何か有ったみたいだね」

「彼女が呪詛師御用達のサイトに乗ったんだ。懸賞金は3000万。此処に来るまでに2人倒している」

「呪詛師ねぇ、依頼元は分かる?」

「ソレはハルの仕事っしょ」

「少しは調べようとしなよ、悟君」

「メンドクセーから嫌」

 

 頭に手をやりながら「全く君は……」と呆れ果てる。

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「ははは、申し訳無いけど私では出来ないからね、蓮に頼むしかないんだ」

「ああ気にしないで良いよ、悟君の言う通り、その分野は僕の役目だからね」

 

 肩を竦めながら「昔からそうだったし」と昔の事を思い出しながら傑に言う。

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「それじゃあーー」

「ソレでこの細目の気味が悪い色白男は誰じゃ」

「……2人とも言って無いの?」

 

 バツが悪そうに顔を背ける。

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「何と言うか……傑君。悟君に似てきたね」

「な! この傍若無人を絵に描いた様な人と一緒にしないで欲しい」

「あ"あ"ん。誰が傍若無人だ、コラ」

 

 やんややんやと言い合う2人をよそに天内理子に名乗る。

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「初めまして、僕は加茂晴蓮。彼らと同じ君の護衛だ」

「ですが昨日は……」

「別件がありまして、合流するのが遅れたんです。黒井美里(くろいみさと)さん」

「!? どうして私の名前を!」

「そういった事が得意なんです、僕。

 それとここには特級が3人、安心して良い君達の守りは完璧だ」

「本当なんじゃな?」

「はい。僕は嘘は吐かないので」

「なら! 遊んで良いんだな!!」

 こっちが素か、本当に反吐が出る。幼子の命を……肉体を使ってまで維持しなければいけない呪術界にも反吐が出る。

 

「あの加茂さん?」

「ああ失礼。少し考え事をしてました。

 折角沖縄まで来たんですし目一杯楽しみましょう」

「ワッハー!!」

 

 

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「年相応の子だね」

「うん、まだ幼い子だ」

「嫌気が差すよ呪術界に。天元のクソも呪術界のクソどもも………反吐が出る」

「蓮………」

「呪詛師を雇ったのは盤星教の奴らだ」

「!? そこまでして彼らは」

「盤星教にとってあの子は異物だ。何としてでも排除したいんだろうさ、呪詛師を雇ってでもね」

 ただ意外だったのが孔時雨だ、あの男なら甚爾さんがコチラ側なのは知っている筈……なのに仕事を持ってきた、わざとか? 内情を知るために繋ぎをした……無くは無いレベルか。

 確かにそう(・・)させた、だが孔時雨にまで繋いだのは驚きだな。まあ潰すのには苦労しそうに無いけど。

 

「それよりさ傑君」

「何だい」

「僕ってそんなに白い?」

「………病人かなって思うくらいには」

「病人レベルの色白さ……か、帰ったら硝子に確認するか」

「何故硝子に?」

「まあそっち系は硝子の方が詳しいだろうし、念のためにね」

 もし、もし僕の考えている通りなら………面倒な事に、まあ長年の謎が解決するしいっか別に。

 

 

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「只今15時00分。理子ちゃんの懸賞金取り下げから4時間経ちました。なので皆、お疲れ様って事で」

「まーじ長かったな」

「彼らは諦めたのかな?」

「それはあり得ないだろうね、1つの山場を乗り越えた程度の認識でいて欲しい」

「マジかー、まだかよ」

「そう……か」

 

 暗い表情をする夏油。彼にとって非呪術師は保護対象。そんな彼らに複雑な感情を抱く。

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「でもさハル。もう高専内だぜ? 幾らなんでもさもうーー」

 

 気を抜いていた表情から焦りに変わり「ハル!!」と叫んでいた。

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「は?」

 

 それは本来であればあり得ない事、未来視(世界視)出来る加茂晴蓮なら事前に防げた・避けれた。

 しかし、晴蓮の体は上から下まで穴だらけだった。

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「ァ…………」

 

 か細い声と共に血の海と化した地面に崩れ落ちる。

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「悟!!」

「行け傑!! ハルですら視えなかったヤツだオレが殺る!! 優先順位は星漿体(同化)だ!!」

「ッ………頼んだ、悟」

「任せろ。その代わりそっちは頼むぜ」

 

 高専内で突如起きた襲撃。五条はすぐに夏油へと指示をだし、自分は襲撃者の相手をする。

 その代わり夏油は天内理子と黒井美里を連れて呪術高専東京校地下最深部『薨星宮(こうせいぐう)』へと向かえと。そして五条は襲撃者と対峙する、とーー

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「さて、てめぇの相……手は……」

 

 五条の六眼を、そして晴蓮の未来視(世界視)をもすり抜けた襲撃者を見た五条は………吐いた。胃の中のモノ全てを吐いたのではと思う程に……何故なら六眼に映ったソレは呪霊でも人間性でも無い呪力をしたナニか(・・・)だった。

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「がァ、ハァハァーーウッーーな、んだよ……アレは。呪霊……なのか? イヤ、違う、アレからは人間(・・)の呪力が見える。

 じゃあアレは人間……人間に別の何かを入れたのか!? アレの中で何かが蠢いてやがる。(あぁ目が回る……気持ち悪ぃ。吐いても吐いても止まらねぇ)だが……やる事は変わらねぇ、ぶっ殺すだけだ、一撃でぶっ殺す」

 

 五条がやる事はただ1つーー

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九綱・(くこう・)偏光・(へんこう・)烏と声明・(からすとしょうみょう・)表裏の間(ひょうりのはざま)

 

 呪詞を唱えた全力全霊の術式! 

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虚式:『茈』

 

 虚式:『茈』。これは術式順転の「蒼」と反転の「赫」を衝突させることで発生する仮想の質量が発生する。そして、発生させた見ることも触れることもできない「重さ」を超高速で正体不明のナニか(・・・)に放つ。

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「はぁはぁ……はぁはぁ、ウッ、ォエッ」

 

 目の前に居たナニか(・・・)は塵1つ残っていなかった。

 それを見た五条は垂れた涎を拭い、手で目を覆い隠し、天を仰ぐ。覆い隠した目から一筋の涙が頬を伝う。

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「……ふー………っし、行くか」

 

 薨星宮に行こうとした時、聞き慣れた声がした。

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「おい、五条の坊主。何だ、何が起きてんだよ説明しろ」

「あ"あ"? ンだよてめぇか。………見たまんまだ、オレはまだやる事があんだよ、てめぇの相手してる暇なんざねぇ、じゃあな」

 

 感情も無く言い捨て薨星宮へと走っていった。

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「何言ってんだアイツは、見たまんま? じゃあこのクソガキ(・・・・)は誰なんだよ。説明ぐらいしろよ」

 

 甚爾が発した言葉は誰にも聞かれなかった。

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「なぁ、なぁ! 大丈夫なのか!? 晴蓮も、五条も……大……丈夫なのか?」

「ッ……ああ大丈夫さ、私達は『最高(最強と最優と最適)』の特級呪術師だ。簡単にはやられないよ。(悟は問題ない、でも………イヤ、大丈夫だ。きっと)」

 

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「理子様、私はここまでです………。

 理子様……どうか……」

「黒井、大好きだよ。ずっと、これからもずっと!!」

「私も、大好きです……」

 

 何かを考えながら2人の別れの挨拶を見届ける。

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「ここが……」

「あぁ。天元様の膝元、国内主要結界の基底。薨星宮・本殿

 階段を降りたら門をくぐってあの大樹の根元まで行くんだ。そこは高専を囲う結界とは別の特別な結界の内側、招かれた者しか入ることは出来ない。

 同化まで天元様が守ってくれる」

 

 一拍置きとある言葉を言う。

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「それか、引き返して黒井さんと一緒に家に帰ろう」

 

 その言葉は予想外なモノで理解するのに僅かばかりの時間を要した。

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「…………え?」

「担任から……この任務の話を聞かされ、蓮が……彼が詳しく説明してくれたんだ。

 蓮は抹消とは言わず『同化』すると言った、そして『肉体の情報を書き換える』ともね。

 この儀式をしてしまえば君は君で無くなる、私には君という存在がどこにいくのか分からない」

 

 片手を上げ「蓮なら知っているかも知れないけどね」とおどけて言う。

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「だから、引き返すのなら今ここだ、このタイミングだけだ。理子ちゃん、君が考え、君が決めるんだ。あぁそれと、悟と蓮にも話してある。そして2人とも同じ答をした。

 私達は『最高(最強と最優と最適)』なんだ。理子ちゃんがどんな選択をしようと君の未来は私達が保証する。特に、蓮はこういった事は得意だしね、大抵の事は出来るんだ、彼にはね」

「私はーー」

 

 昔の事を思い返し、今の事を考える。すると、涙と共に本心が溢れ出る。

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「もっと、皆と……一緒にいたい。もっと皆と色んな所に行って、色んな物を見て……もっと!!」

「帰ろう、理子ちゃん」

 

 夏油に手を伸ばし「うん、帰ろーー」と言おうとした瞬間、黒い泡を撒き散らすナニか(・・・)が天内理子の頭を貫通する。

 ━




 晴蓮くんの事をクソガキですって、何て失礼な甚爾さん。
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