その血が歩む道すじ:修正版   作:亞忌羅

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 黒い泡を撒き散らすナニか(・・・)、いったい何なんでしょうね。


五十八話

「は? え……何が……」

 

 ソレ(・・)は階段から伸びてきた黒い鞭の様にしなる鉤爪。その鉤爪が天内理子の頭を貫通している、そして……ソレ(・・)がしなり階段へと戻っていく。

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「誰だ……ソコにに居るのは誰だ!!」

 

 渾身の叫び、人並みの生き方をしたいと願った彼女を殺した何者かに耐え難い殺意を抱いた。

 そして、ソコから出てきたのは人間の様で呪霊の様でもあるナニか(・・・)だった。

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「な、何だ、アレは………イヤ……そんな事はどうでもいい!! お前がやったんだな」

 

 夏油からの問い掛け、しかしナニか(・・・)は唸り声を上げるだけで何も言わない。

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「もい、いい。死ね」

 

 多種多様な呪霊を呼び出し、右肩から生える2本の鉤爪をくねらせ、夏油目掛け伸びる。

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「(アレは駄目だ、直接受けては駄目だ。私も呪霊も、受けたらああ(・・)なる。なら、呪具でいなし避ければいい)」

 

 夏油は呪具『鬼灯』で鉤爪を防ぎ、防げないモノは躱しながら呪霊を襲わせる算段を考え、自身も飛び出す隙を探る。

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「(ここだ!!)行けお前達」

 

『鬼灯』で2つの鉤爪を弾いた瞬間、呼び出した呪霊をけしかける。

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「縺ゅ≠繝峨Λ………繝ォ繝?」

 

 唸り声を上げソレは術式(・・)を使った。

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「!? その術式は!」

 

 ソレが使った術式ーーそれは京都姉妹校交流会で戦った同じ一年生の術師、風真琥太郎(ふうまこたろう)竜頭暴爵(ドラルダ)だった。

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「何故……お前が、その術式を使っている!? 何なんだ! お前は!!」

「縺弱<…………逞帙>、縺ゅ≠……闍ヲ縺励>」

「クソッ! だが、斃すしかない(殺すしかない)。はぁ! 鬼灯!!」

 

 変わり果てた風真に近づきシン・巌流:棍術を使い、彼を打ち抜く。しかし、僅かのけ反るだけでたいして効いていなかった。

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「何!?」

 

 困惑していると鉤爪が襲いかかってくる。

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「ッ! ハァッ!!」

 

 すぐに反応し鬼灯で弾く。

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「シン・巌流:棍術〈破裏棍舞(はりこんぶ)〉!!」

 

 呪力を円形の纏わせ、鉤爪を凪払い呪霊の名前を叫ぶ。

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「口裂け女」

 

 すると、仮定風真琥太郎を簡易領域内に引きずりこむ。

 仮定風真は唸り声しか上げないため、口裂け女の簡易領域の能力が発動し、風真の周囲に布切り鋏が現れ、風真を切り刻む。

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「(確かに口裂け女の簡易領域は発動しアレを切った、だが動きを止めない。

 だが、効いているのは確かだ。アレをだすか)玖賀耳之御笠(くがみみのみかさ)捕らえ、斬り刻め」

 

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 玖賀耳之御笠(くがみみのみかさ)

 大江山最初の鬼、或いは土蜘蛛ともされる特級叛霊。

 夏油傑が操る呪霊の中でも戦闘能力で一、二を争う呪霊。

 玖賀耳之御笠の瘴気を纏った1撃は人間も呪霊も問わず蝕み侵す。

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 玖賀耳之御笠は尾の部分から瘴気を纏った糸を吹き出し、捕らえ風真琥太郎らしきモノを鎌の様な脚で斬り刻む。

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「縺弱<……縺ゅ≠縺ゅ≠縺ゅ≠縺ゅ≠!! 蜉ゥ縺代※逞帙>闍ヲ縺励>」

 

 叫び声を聞いて、攻撃が通った事を確認し夏油も腰に履いていた呪具の刀を抜き放ち、変わり果てた風真琥太郎へ駆け出してシン・巌流〈無影閃牙(むえいせんが)〉を使う。

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「逞帙>逞帙>、蜉ゥ縺代※」

 

 斬られたソレは尚も唸り声を叫びながら右肩から生える2本の鉤爪で夏油に反撃する。

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「ふっ、はっーー。シン・巌流〈夜叉車(やしゃぐるま)〉」

 

 鉤爪を躱しながら納刀し、即座に抜刀からの切り上げで鉤爪のウデを斬り裂く。

 確かに斬り裂いた、だが、鉤爪のウデは何も無かったかの様に繋がり元に戻る。

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「何!?」

「縺ゅ≠縺ゅ≠……縺弱<逞帙>…………縺後=!!」

 

 一際大きい唸り声を上げると2つの鉤爪と両手に術式を用いて風が渦巻く刀を作り、4つの刃で斬り返してきた。

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「クソッ、何て巫山戯た事をしてくるんだ!」

 

 取捨選択。逡巡すらせず受ければ危ないと本能が訴える鉤爪だけを防ぎ、風が渦巻く刀はそのまま体で受け、体が渦巻く風で抉られる。

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「ぐ、ぐぅう……ぎぃ。ああああ!! 術式……反転!! 呪霊内操! 虹龍!」

 

 夏油傑の術式反転、呪霊内操。自身の体内で呪霊を操り、呪霊が持つ特性・術式を発揮させる。

 今回は夏油が持つ呪霊の中で最高硬度の虹龍を体内で操る。

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「ぐ……これ、なら。耐えられる! そして! この距離なら確実に当てられる!」

閻魔大車輪(えんまだいしゃりん)!! 

 

 刀で円陣を無数に描き、呪人(・・)風真琥太郎を斬り刻む。

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「縺ゅ≠……縺ゅ≠縺ゅ≠……縺ゅj……縺後→縺。縺ゅj縺後→縺」

「はぁはぁはぁ…………ふぅ」

 

 警戒を解かず自分に反転術式をかける。

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「何だったんだ、今のは。アレは……さっきのアレが使ったのは京都高専の彼の………今のは人間? だったのか?」

「驚いたな、まさかアレが倒されるとは」

 

 何を倒したのか考えていると不意に声が聞こえてくる。

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「!? 誰だ!」

 

 すぐさま戦闘態勢に……呪霊を呼び出し構える。

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「ああいいよ覚えなくても。私は君に興味無いからね」

「(誰だ? フードで顔が見えない、声からして()なのは確かだ。まさか仮面を着けて要るのか? もしそうならあの時の襲撃者の仲間? ……イヤ仮面は着けていない。取り敢えず、先手を取る)拡張術式、呪霊操丸(じゅれいそうがん)

 

 手を拳銃の様な形にし、数十もの蠅頭を凝縮し撃ち出す。

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「おっと、危ない。君に興味無いって言ってるじゃん、だから攻撃してこないでくれるかな」

「誰だ、お前は」

「私かい? 私はコレ(・・)を回収しにきただけだよ」

 

 ブワッ。と怒りが吹き出し無意識に玖賀耳之御笠をけしかける。

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「これは恐ろしい呪霊を持ってるね君、羨ましいよ」

 

 玖賀耳之御笠の鎌を懐から出した形代(・・)が式神へと変じ、身代わりとなり消える。

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「だから君には興味無いんだって、コレさえ回収したら帰るから」

 

 そう言うと形代を落とし変わった形をした式神となり死体(・・)の天内理子を持ち上げる。

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「(今のは……式神? だが見た事が無い。何だ……アレは。

 だが、例え亡骸と言えど渡すつもりは毛頭無い!!)玖賀耳之御笠! 捕らえろ!」

 

 瘴気を纏った糸を形代式神を飛ばし防ぐと、別の形代を式神へと……蟷螂の呪霊に変化する。

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「また変わった式神を使うんだね」

伝統的(・・・)な式神使いだよ」

「(伝統的な? どこかで聞いたような……今はそんな事どうでもいい。理子ちゃんの遺体を取り返す)その子は返してもらう。虹龍、玖賀耳之御笠、行け」

 

 

 虹龍の硬さを活かした突撃と玖賀耳之御笠の瘴気わ纏った左右の鎌で謎の呪詛師に攻撃する。

 しかし、もう1体同じ蟷螂の呪霊が現れそれぞれの攻撃を受け消える。

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「困ったな、これ以上手札を減らしたく無いんだけど、どうしようかな。それに」

 

 上を見て何か考えていた呪詛師が、懐から5枚の形代を取り出すと50にもおよぶ蠅頭が現れ呪詛師と天内理子を覆い隠す。

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「私としてもこれ以上時間をかけたく無い。だからここで帰らせてもらうよ。ああこれはプレゼントだ」

 

 そう言うと同時に蠅頭の球が浮かび上がるのと同時に、1枚の形代が落ちてくる。するとーー凡そ3mの大鬼が大きな音を鳴らしながら降りてくる。

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「ソレは今の私の取って置きだ、仲良くしてくれると助かるよ。じゃあね夏油傑、また会おう」

 

 蠅頭の大玉と共に浮かび上がり階段を飛んでいき、五条とすれ違う。

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「な、何だありゃあ。蠅頭の群れ? 何でここに………イヤ、先に傑と天内のとこ、ろへ………まさか!!」

 

 嫌な予感を抱きながらも夏油の元へと駆け出す。

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「傑!!」

 

 ソコには大鬼と戦う夏油が居た。

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「悟! さっきの蠅頭の群れを追ってくれ!! あの中に呪詛師と……理子ちゃんが居る」

「はあ? どー言う意味だよソレ!!」

 

 大鬼と戦いつつ「理子ちゃんはそこに倒れているナニか(・・・)が殺した。その後呪詛師が現れ理子ちゃんを連れてどこかに行った」と大鬼と斬り結びながら悟につたえる。

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天内(がきんちょ)が、死んだ?」

 

 数秒。五条は呆けて、弾かれるようにすれ違った蠅頭の群れを思いだし、駆け出そうとするが逡巡し夏油が戦う大鬼を先に祓う事を選ぶ。

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「傑、避けろ。出力最大、術式反転『赫』」

 

 大鬼に向かって出力を上げた術式反転『赫』を撃ち、夏油は寸前まで大鬼を惹き付け『赫』が真後ろにきた瞬間、呪霊を使い大鬼の前から素早く離れる。

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「傑、行くぞ」

「ああ、行こう」

 

 阿吽の呼吸で大鬼を祓い、蠅頭の群れへと駆け出した。

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「蓮……何で、君なら未来が見えた筈なのに……」

「ハルを弔うのは天内を奪い返してからだ……今は……我慢だ、傑」

「そう……だね、理子ちゃんと一緒に……行こう悟」

 

 眼下には上から下まで穴が空いた加茂晴蓮の死体が有った。

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「でも悟、アレはどこに行ったのか分かるのかい?」

「恐らく盤星教の連中だ。呪詛師を雇い天内を殺させた。行くのは盤星教の施設、傑、呪霊で探してくれ」

「任せてくれ」

 

 蠅頭の大群を呼び出し方々(ほうぼう)へと飛ばす。時間にして凡そ10数秒で見つけた。

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「見つけた。ここから直ぐ近くだ」

「よし、潰しに行くぞ」

 

 

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「ここだ」

「『蒼』」

 

 五条はうもすもなく術式を放ち壁に風穴を空ける。

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「行くぞ、取り返す」

「悟……ああ、そうしよう」

 

 突如として壁が壊れたにも関わらず、ソコに居る者達は目もかけず、腰程度の高さ台の上に乗せられた天内理子が居た。

 そして、その周りで拍手をしている集団……盤星教の信者達が居た。

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「てめぇら」

「悟、抑えて、彼らを殺してしまえば私達は呪詛師になる。それは奴らと同じ場所に落ちる事を意味する」

「分かってンよ、ンな事」

 

 2人はゆっくりとした歩みで台座まで行き天内理子の死体を持ち上げる、それでも尚信者達は拍手を止めない。

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「………なぁ傑。やっぱりコイツら殺すか? 今のオレなら……多分何も感じない」

「いい。意味がないしさっきも言ったけど殺してしまえば私達は呪詛師になる。それでは蓮に申し訳が立たない、彼は呪術師として殉じた彼を穢す行為だ」

「………そう、だな。ハルは最期まで呪術師だった、オレ達が呪詛師になっちまったらハルに顔向け出来ねぇな」

 

 その時、施設の入り口から拍手と共に誰かがやって来た。

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「成る程成る程、これが盤星教の在り方か。人一人死んでも……イぃヤ、人一人殺しても何も感じない、それどころか誇らしく思っている。

 反吐が出る、殺したい程に」

 

 入り口からきこえたこえは聞き慣れたモノで、そして二度と聞けない筈の声が響く。

 ━




 変わり果てた風真琥太郎らしき人物、形代を使う伝統的な式神使い。彼らはいったい何者なのか。
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