「やぁやぁ狂信者ども。神とは会えたかい?」
仲の良い友人にでも話すかのように声をかける人影、五条達はその人影に見覚えがあり、聞き覚えのある二度と聞けないと思っていた声。
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「おお! 貴方様は我々に子細を教えてくださった神の使者殿ではありませんか。
えぇええ、どうぞご覧におなりください。貴方のお陰で此れこの通り異物を排除するのに成功致しました。貴方様には感謝しかありません」
現れた
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「はっはっは。そうかそうか、感謝か。君は僕に感謝をしているのか」
「ええ! 勿論ですとも」
盤星教と仲良さげに話し合っている人物に五条と夏油は驚きを隠せなかった。何故なら………ソコに居たのは死んだ筈の友人。
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「ハル……何で……」
「蓮、君は何を、言って……いるんだい。それに何故ここに、君は死んだ筈……」
「ハル!! 何でお前がソイツら話してんだよ! 教えたってどう意味だよ! ハル!!」
「そう声を声を荒らげないでよ悟君。僕はいつでも僕だよ悟君。何も、どこも、変わらない」
僅かな微笑みを浮かべ五条を見る。その表情を見た五条は気がつく、あの顔は何かをした時の顔だと。
故に安心する、確信する。目の前に居るのは紛れもなく自分が知る晴蓮だと。
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「蓮。君は本当に蓮なのかい? それに何故こんなヤツらと仲良く話し合って……」
「僕は僕だよ傑君。それと『仲良く』何て言われるのは少し……イヤかなり嫌かな。こんなのと一緒にされたくないからね。コレらには人の心が無い。
それとコレらが僕に感謝するのは僕が『最優』の呪術師だからだ。
僕には何でも出来るのさ。そう、例えばこんな事もね」
そう言うや否や指を鳴らす。するとーー五条が持ち上げていた
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「!? うお! 誰だコイツ!」
「これは!? いったい……」
驚きと共に知らない人物の死体をその場に落とす。
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「僕は何でも出来る、何でも知っている。それは何故か……僕が誰よりも常に1歩先にいるからだよ」
床に落ちた死体を見て顔色を変えたのは他でもない人物、それは盤星教のーー
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「そ、そんな!! 何故■■がこんな事に!!」
「さあ狂信者ども、良い夢は見れたかい。僅かな時間だろうとしても、自分達が望んだ
最も、夢でしかないけどね」
代表役員、園田茂だった。
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「ハル。どーゆー意味か、教えて」
「そんなに怒らないでよ悟君。ちゃんと話すから、傑君も眉間に皺寄せないでよ」
台座から離れ晴蓮の傍に行き今にでも襟首を掴みそうな五条を宥める。
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「ネタバレの前に、だ。園田茂。どうだい? 大切な人を殺された気分は」
「何故……何故この子が……どう言う事ですか! 芦屋さん!!」
聞いた事が無い名前を聞いて首を傾げる。
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「芦屋?」
「彼らに使った偽名だよ、こんな奴らに本名を言うわけ無いでしょ」
「蓮はどこまで知って動いていたのか、是非知りたいね」
「後でちゃんと話すって」
今も尚叫ぶ園田茂を横目に気にする事もなく3人は話し合っている。
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「何で、何でこの子が」
声を押し殺しながら泣き続ける園田茂を無視して、周りに居る信者達に大きな声で「ああそうそう。君達へのプレゼントは他にも有るんだ、甚爾さん」と叫び、甚爾が「ったく、俺を倉庫代わりに使うんじゃねぇよ」とボヤくが悪びれもせず「甚爾さんが飼ってる呪霊って便利ですからね、仕方ありませんよ」と言ってのける。そして甚爾は、頭をガシガシと掻きながら「人の事を何だと思ってんだ」と聞こえるように愚痴を言う。
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「ちゃんと後で良いもの渡しますから、それで許してくださいって」
「へいへい、そうかい」
そう言うと甚爾は何かを吐き出し手に持つ。それはとても小さな呪霊だった。そしてその呪霊が大きくなっていき、その呪霊が2つのモノを吐き出す。
それは2つの死体だった。
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「さあ、盤星教のグズども。これが僕からのプレゼントだ、どうか受け取って欲しい。
僕にはいらないからね」
両手を広げ仰々しく施設に響き渡るように叫ぶ。すると、2人の信者が泣き叫びながら2つの死体に駆け寄る。
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「い、いやぁあぁあ!! ●●!! ●●!! 何で、どうして、こんな姿に………なんで……」
「そんな……◆◆…………いったい、何が有ったらこんな姿に……」
それは盤星教の信者達の内2人、女性と男性が前に出てきて女性は
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「ハル、穴だらけのガキと斬り裂かれてる奴ら。オレが見たモンと似てんだけど」
「そりゃそうだろうね。穴だらけの子供は僕に、頭と胴が泣き別れしている女性は黒井さんとして君達はそう見えていた、僕がそうしたからね」
「そう、見えていた? どういう事だい」
「敵を騙すなら味方からって言うでしょ? そう言う事さ」
五条は考え込み昔に晴蓮が言っていた事を思い出す。
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「他人を操る……ハル、まさかオレ達に何かした?」
「ちょっと前にね、仕込んでおいたんだ。それにちゃんとヒントは見せたよ教室で」
教室での出来事。2人は思い出そうとし、そして思い出す。
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「床に叩き付けられたヤツか」
「あの時、体がいきなり重くなって気がついたら床にめり込んでいたね。まさかアレが?」
「2人とも大正解。あの時に2人に仕込んだ血漿を操って君達の体を重くした。僕の拡張術式の
「いつの間にそんな事を」
「それは一通り片付いたら話すよ、今はこっちの方が先でしょ?」
「それは……まあ確かに」
「ちゃんと話せよハル」
「後でね。さて、狂信者どもどうだった?
君達が異物と呼ぶ天内理子が死んだと思っていたのに、実はこのゴミの息子だった心境は」
今も尚自分の子供を抱き上げ泣き崩れる園田茂と同じく穴だらけの子供に縋り付き泣く女性。
そして頭と胴が切り裂かれバラバラになっている妻らしき女性の前で茫然としている男性。他の信者達はこの光景を見て、何が起きたのか分からずオロオロしている。
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「ダメだ話になら無い。ま、混乱してもおかしくないか」
「まさか……蓮はこんな事が起きる事を予想して……」
「ここまでじゃないけどね、何か………僕達にとってよくない何かが起きる事は視えて分かっていたんだ。
だから早めに色んな人達に術式をかけておいたのさ。細工は流々仕上げを御覧じろってね。
お陰で最悪の結果にならずにすんだね、良かった良かった」
1人頷く晴蓮にハッと思い出した夏油がある事を聞く。
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「2人は、黒井さんと理子ちゃんは無事なのか蓮」
「勿論。今2人は甚爾さんの家でゆっくりしてるよ。あ、ちゃんと護衛付けてるから大丈夫だよ」
2人の事を聞かれ安全地帯に居ると伝え「申し訳ないけど今回はあの人に来てもらったし大丈夫さ」と付け加え話した。
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「さて、盤星教のクズども。大切な人を奪われる気持ちは」
「何故……何故この様な事を! 貴方はなさるのですか!!」
「お前達がしようとした事を仕返しただけだよ」
「私……達が、しようとした事を?」
彼には思い当たる節がないのか、目を白黒させながら晴蓮を見る。
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「ハル。コイツマジで気づいてねぇぞ」
「ここまでくると驚きを通り越して呆れさえ感じるよ」
「こんな、こんな奴らに理子ちゃんは!」
髪を逆立て胸ぐらを掴み、持ち上げる。
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「お前達は人の命を何だと思っているんだ!!」
拳を握り込み振り上げ、殴りかかる腕を掴み「傑、こんなヤツで手を汚すな、触れるだけでも気持ち悪ぃ」そう言い夏油を止める。
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「…………ふぅ。そうだな、触れている事すら汚らわしい」
「なぁハル」
「うん? どうかした」
「天内……あー、天内の偽者? をここに連れてきたヤツ誰か知ってる?」
「どんなヤツ?」
「あ~、え~…………」
思い出そうとするが自分は蠅頭の群れの玉しか見ておらず、説明に苦心していると夏油が「フードで顔は見えなかったが、性別は男で術式は
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「男で、伝統的な式神使い……思い当たるのは京都高の2年生の確か………そう、弥永宗二って人だね。
彼の術式は形代を使った伝統的な式神術だからね」
「じゃあ、高専の人間がコイツらに手を貸したってのか?」
あり得ない事柄、呪術高専ひいては呪術界に敵対する行為その物。故に本来であればあってはならない。
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「先走り過ぎたよ悟君。もし仮にそうだとしても裏取りをする必要がある、庵さんに連絡しよう。
それでもし、その人と連絡が取れなかった場合は……残念ながら、ってやつだね」
またか、どうせアレの仕業だろうな。だとしてもどうする……はぁ、何も出来ないな。今は、だが。
「それよりさ、ハル。ここの連中……どうする?」
「どうする、とは?」
「
意外な発言に驚き、しかし「まあそう考え至っても当然か」と1人納得する。
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「彼らの沙汰は決まっているよ」
「へぇ、どーすんの」
「こうするんだよ」
開いていた手を握り込む。するとバツンと音が鳴り、この場に居た園田茂を含めた盤星教信者達が一斉に倒れた。
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「蓮……これは、いったい」
「脳の血管を潰した。そうだね、一般的に言えばくも膜下出血……と、言ったところかな」
「!?」
「蓮! そんな事をしてしまえば君は…………」
そう、本来なら術式を使ってこの様な事をすれば呪詛師一直線。本来なら、だけどね。
「問題ないよ、残穢は残らないし見つけられない。悟君、見てみて、残穢が残っているかどうか」
「待ってろ」
晴蓮に言われ六眼で周囲を見渡す。そして本当に残穢が無い事に気づく。
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「は? ウソだろ、マジで残穢がねぇ。どう言う事だよ」
「仕組みは単純さ。
彼らは僕の術式で死んだのでは無く、自分達の体内に流れる血液で死んだ……それだけの事さ。
それに、2人にはこんな汚物なんかで手を汚して欲しくない。
それは僕の役割だ、僕なら誰にも気づかれずに消せるし殺せる」
晴蓮の発言に言葉を失い、されど彼なら確かに出来るという事実。
しかしそれは、彼は自分の手が血で染まる事を厭わない事を意味するモノでもあった。
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「僕ならどうとでも出来る。でも2人は違う、2人が術式を使えば必ず残穢が残りすぐに知られ、呪術界からの追放。そして呪詛師認定からの抹殺依頼が出るだろうね。
僕としてはとても困る、呪術界は万年人手不足だ1人でも多く呪術師は在籍していて欲しい、それにさ、親友達を失いたくない。
何かあったら僕に連絡して、僕が対処する」
それに、例え気づかれるような事になっても何も問題無い、アレらは既に僕の掌の上……何も出来やしない。
「だからってよ……」
「そうだよ、蓮。総監部の誰かに気づかれれば……」
「それこそ問題ないさ、
「盲目? それはどう言う意味で……」
からからと笑い「気にしなくて良いよ、そもそも加茂家当主の僕に逆らえないさ」とどこか、含みを孕んだ微笑みをする。
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「さあさあ皆、こんな辛気臭い場所、とっととずらかろうよ。臭くて鼻が曲がる。
だからさ、高専に帰ろうか」
晴れやかな顔で2人に言いそして付け加えるように「折角だしあの2人にも来てもらおうか」と話した。
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「はぁ!? 幻術だぁ!? 六眼のオレにそんなもん効くわけねぇだろ」
「その辺りは賭けだったよ。
でも、今回の事で僕の幻術術式は悟君の六眼も騙せる事が分かったのは良いね」
「蓮。どこからどこまでが幻術で、いつから幻術をかけられるように私達はさせられてたのか、教えて欲しい」
当然の疑問。自分達はいつから幻覚に陥っていたのか、どのタイミングで幻覚をかけられる様になっていたのかを問いただす。
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「1つ目、どのタイミングから幻術なのか。これは高専に来た時から君達は幻術にかかってた、解いたのは盤星教で指を鳴らした時だね。
2つ目、いつ頃から幻術をかけられる様になったのか。こっちは交流会の個人戦の時だね、悟君との試合で最後の方に2つの術式を使ったでしょ? その時の術式が幻術術式だよ」
「……つまり、あの場所に居た全員が連の術式に?」
「そうなるね。あの時は最大出力でやったから、舞台含め四方5km圏内に居た人間は僕の術式の影響下に入ってるね」
今は5kmが限界なんだよねぇ、出来ればもう少し範囲を広げたいものだ。
四方5km、常軌を逸する範囲。
勿論やろうと思えば五条も出来るだろう。但しそれは被る損害を度外視すればの話だ。
五条悟の生得術式は破壊には長けているが晴蓮のような搦め手は向かない術式。
ならば夏油傑はどうなのか? 彼の術式である呪霊操術は手勢手数は多いが広範囲に術式を使おうとなると、1体1体の呪霊を強くするか弱いが複数の呪霊を1ヶ所に集めるかのどちらかになる。しかしそれでは呪霊操術の強みである『数』による面攻撃が出来なくなってしまい、結果的に弱体化してしまう事になる。
そして瞬間火力の術式順転と術式反転、そこに加わる多岐にわたる拡張術式を得意とする加茂晴蓮。
ここに居る特級3人を一言で表現するのなら、一撃の破壊力を得意とする五条悟、多種多様な呪霊による面攻撃の夏油傑。
そして、何をしてくるのか予測が出来ない加茂晴蓮。といった具合になる。
呪術界『最強』の五条悟、『最優』の加茂晴蓮、『最適』の夏油傑。
お互いがお互いを補助し合うバランスの良い特級3人組。それが彼らである。
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五条の六眼さえも騙しきる晴蓮くんの幻術術式。そんなの有っていいのだろうか。
『最優』と『最適』が逆じゃね?て思ってます。ですが今更なので変えません。
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旧版で一通り書いて新版で