その血が歩む道すじ:修正版   作:亞忌羅

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 新版で先に明かされた晴蓮くんの天与呪縛のアルビノ、そして旧版にて発覚したアルビノによるもたらされる恩恵は『呪力の質』が違う事。
 『質』が違う事で五条とは別ベクトルの呪力ロスの良さを持つ。


六十一話

 星漿体同化任務から1年が経ったある日、晴蓮が言っていた事を思い出す。

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「あ! 夏油さん!!」

「灰原……」

 

 目の前に現れたのは後輩の灰原雄。人懐っこい笑顔で夏油に近寄る。

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「何か、飲むか?」

「えぇ! 良いんですか!! ではコーラでお願いします!」

「ははは、君らしいね」

 

 そう言うと自動販売機に近づき、灰原のコーラと自分のコーヒーを買う。

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「ほら」

「ありがとうございます!!」

 

 本当に元気がいいな、と思いながら缶コーヒーを開け、一口、ゴクリと飲む。

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「明日の任務って結構遠出なんですよ」

「そうか、お土産を頼もうかな」

「了解です!! 甘いのとしょっぱいの、どっちがいいですか?」

「そうだね、悟には甘い方がいいかな。蓮は、うん、味が濃いものを頼むよ」

 

 灰原が何かを喋っているが夏油は聞こえておらず、ある事を聞く。

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「………灰原、呪術師をやっていけそうか? 辛くないかい」

「そー、ですね。

 自分はあまり物事を深く考えない性質(タチ)なので、自分に出来ることを精一杯頑張るのは気持ちがいいです」

「そうか、お前はそういう奴だったな。蓮とは真逆だな」

 

 会話を終わらせもう一口、ゴクリと飲んだ。

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「君が夏油君? どんな女が好み(タイプ)かな?」

「……貴方は、どちら様で?」

 

 夏油傑のもとに4人目の特級呪術師『九十九由基(つくもゆき)』が現れた。

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「自分は沢山食べる子が好きです!!」

 

 九十九は灰原の返答に「ほう、良いね」と返事をし、それを見ていた夏油は呆れた様子で「灰原……」と呟いた。

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「大丈夫ですよ、悪い人じゃないです。

 人を見る目には自信があります」

「蓮が気に入っているからね君の事。人を見る目があるのは確かだろうね」

 

 灰原が「それでは、失礼しまーす」と席を外す。

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「後輩? 素直でカワイイじゃないか」

「術師としてはもっと人を疑うべきかと」

「で? 夏油君は答えてくれないのかな?」

 

 タメ息を吐きつつ目の前の人物が誰なのかを思い出し「あぁ、思い出した。4人目の特級呪術師『九十九由基』でしたっけ」と言い返す。

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「へぇ、私の事知ってんだ。何で?」

「蓮から聞いているんですよ」

「ああ彼からか、彼面白いよね。(まあ私とは合わないけど)」

「そうですね。悟と一緒にバカやったり、やってたかと思ったら悟を地面に張り付けてますけど」

「それでそれで? 加茂君から何て聞いてるの?」

「特級のくせに任務を全く受けない、風来坊の特級呪術師だって聞いてるね」

 

 その表現が間違っていないのか否定はせず嫌みを溢す。

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「はー……ほんっとに彼はさー、もー少し先輩を敬う気持ちは無いのかなー」

 

 だが、晴蓮の表現を聞いてブーブー言いながら完全に拗ねる。

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「……ま、彼がそう言うのも仕方ないかな。私と彼は水と油だ、決して交わらない」

「貴女と蓮が水と油? それはどう言う」

「彼は今の高専……正確には呪術界のやり方を、在り方を佳しとしてる。だから私とは合わない」

「貴女が言う高専のやり方というのを聞いても?」

 

 それは好奇心か、それとも胸の内で燻るナニかの答えを得られる事を期待していたのか、無意識に聞き返していた。

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「ここの人達がやってるのは対症療法。私は原因療法がしたいのさ」

「原因療法? (何を言っているんだこの人は)」

「私が言っているのは、やりたいのはそもそも論なのさ」

「そもそも……論?」

 

 九十九由基が言っている事が理解出来ず、ただ聞き返していた。

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「そ、呪霊を狩るんじゃなくて、そもそもとして呪霊が生まれない世界を作ろうよって話さ」

「!? (何を、何を言っているんだ本当に)」

「少し授業をしようか、そもそも呪霊とは何かな?」

「人間から漏出した呪力が澱のように積み重なり形を成したモノです」

その通り(エクセレント)

 となると、だ。呪霊の生まれない世界の作り方は2つ。

 1つ目、全人類から呪力を無くす。

 2つ目、全人類に呪力のコントロールを可能にさせる」

 

 九十九由基は語る。自分が目指す先を。

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「1つ目はね、結構イイ線いくと思ったんだ。モデルケースが近くに居たからね」

「モデルケース? (呪力を無くす? つまりは呪力が無い人)あぁ、ゴリ………甚爾さんですか」

「そ、禪院甚爾………ああ今は加茂甚爾だったね。天与呪縛によって呪力が一般人並みになるケースは幾つか見てきたけど、呪力が完全に0なのは世界中探しても彼1人だった」

 

 彼女の話しは終わらない。自分の目的を、目標を教えるために。

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「彼の面白い点はそれだけじゃない」

「そうですね。あの人は呪力が0なのに五感で呪霊が見えています。蓮曰く、『呪力を完全に捨て去る事で肉体は生物の範疇から外れ、一周廻って逆に呪いの耐性と呪霊の認識が出来るようになった』と、言っていたね。

 本人も呪力が無い自分は術師からすると透明人間みたいに成っている、と言っていましたよ」

「まさしく呪術師の天敵で、そして正に超人だ。

 だから彼を研究したくてね、会いに行ったんだよ。初めは本人が拒否していたけど、加茂君が説得してくれてね、お陰で髪の毛を1本貰えたよ。

 まだ全然解析が進んでいないけどね、もう1本くらい貰っておけば良かったかな。今から貰いに行っても無理だろうねぇ」

 

 実際にサンプルを渡す事を説得したが、ソレは晴蓮にも九十九の言う事に少し興味があっただけで、渡したら何が分かるのかな? と、期待していた為だった。

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「知ってる? 術師からは呪霊は生まれないんだよ」

「蓮がそんな事を言ってました。呪力をコントロールし、呪力の漏出が非呪術師に比べて極端に少ないんだとか。

 ああ後、術師の死後に呪い(呪霊)になる可能性はあるとも」

「本当に彼は何でも知ってるね、どこまで知ってるのか是非とも話し合いたいね。

 それと付け加えるなら術師の術式行使による呪力の消費量や要領(キャパ)の差もあるけど、1番は流れだね。術師の呪力は本人の中をよく廻る、だから大雑把に言ってしまえば全人類が術師になれば呪いは生まれない」

 

 九十九の話しは夏油にとって衝撃だった。以前、晴蓮が呪術界の内情やそれらを教えると言っていた。

 今、九十九から聞かされたのは恐らく晴蓮が伝えようとしていた事なのだろう。と、思い至る。

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「なら………非呪術師を皆殺しにしたらどうなりますか」

「……成る程、確かにそれも『アリ』だ。と言うかそれが1番簡単だね。

 非呪術師を間引き続け、生存戦略として術師に適応してもらう……選択肢の1つではある」

 

 思いつきで言ったしてはいけない、考えてはいけないモノを言ってみたら、予想外の返答がきたことに驚きを隠せず、混乱し慌てる。

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「要は進化を促す、鳥達が翼を得たように恐怖や危機感を使ってね。

 だがーー」

「相変わらず貴女は極端ですね。ソレを選択肢の1つとする時点で貴女は狂っている」

 

 2人の話し合い中に現れたのは晴蓮だった。

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「やあ加茂君。久しぶりだね」

「えぇ本当に。それで? 甚爾さんの髪の毛から何か分かりましたか?」

「ソレ、嫌味かい?」

「あっはっは。どうやらまだのようですね、残念だ。少しは期待していたんですけど」

 

 興味はあるがその程度(髪の毛1本)で何か分かる事は無いだろうとも思っていた。

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「それで? ここには何をしに来たんですか。傑君と呪術師談議でもしに来たとか」

「似たようなもかな、新しい特級呪術師だ、興味が出るのは当然だろう?」

「その結果があの発想ですか。本当に狂ってますね」

「加茂君、君は勘違いしてるよ。アレを先に言ったのは夏油君だ」

「傑君が?」

 

 予想外………ではなかった。あの時、1年前にしたあの任務。アレの最後は非呪術師を嫌悪しても仕方ないモノ、晴蓮が居たからこそ天内理子と黒井美里は助かったが、もし居なければ2人は死んでいただろう。

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「そうだね。あの件で一般人を……非呪術師に嫌悪感を抱いてもおかしくない。

 イヤ、抱いて当然の事を奴らはしていた、だから殺した。あのゴミどもは生きるに値しない」

「あ、やっぱりアレ君の仕業だったんだ」

「おっと。聞き間違いですよ、聞き間違い。アレらはただのくも膜下出血による死亡ですよ」

 

 仲良さげに話している。しかし、ピリついた空気が流れてもいた。

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「別に僕はあなたがしようとしている事を止めるつもりはありません。貴女がしたい事が実を結び、呪霊が生まれない世界が出来るのは喜ばしい事です。

 ですが、ソレはサイコロを千回振って千回とも同じ数字が揃うかの如くやり方です。現実味は無い」

「君ってオブラートに包むって言葉を知らないのかな」

「充分しているでしょう? なんなら不可能だ、理想論だと言ってあげましょうか?」

「私君の事嫌い」

 

 カラカラと笑い「貴女がしようとしている事はあまりにも非現実的過ぎるからですよ」と冷めた目で言う。

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「でもさ加茂君、君は呪術師の可能性を信じているんだろう? 呪術師はデタラメで解釈の仕方で色々な変化をすると」

「当然でしょう。僕達呪術師は一般的な世界から隔絶した世界で生きているんですよ? 呪術師は如何様にも進化出来る。

 そこに一般人を、非呪術師を比較対象として持ってくるのは論外だ。

 全人類術師化でしたっけ? そんな事どうやってやるんですか、机上の空論ではなく利にかなった理論をあげてくださいよ。くだらない」

 まぁ、俺なら出来るけど流石に全人類は無理、と言うかしたくない、面倒くさいし人道的にもアレだし。

 

「それと傑君。1人の呪術師(人間)が助けられる非呪術師の数は限られている。

 片っ端から助けようなんて不可能だ、手で掬った大量の砂は手の端から零れ落ちる。残るのは手の真ん中にある少量の砂だけだよ」

「それは……そうだね。私の手で掬える砂の量はたかが知れている」

 

 顔を俯かせ、覇気の無い声で独り言のように呟く。

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「ああそれと、傑君。君が見て、君が感じて生きるに値しないと判断したモノ達を見つけたら教えてね、去年も言ったけど僕が対処するから」

「君がどう対処するのか教えて欲しいなー」

「パッとやってグッとするだけですよ」

「………答える気ある?」

「今答えたじゃないですか」

 

 手をひらひらさせて「あー、ハイハイそーですね」と若干拗ねる。

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「じゃあね、本当は五条君には(・・)挨拶したかったけど……間が悪かったようだ」

「僕は違うんですか」

 

 九十九が五条の名前をあげたが自分の名前があがらなかった事にツッこむ。

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「私、君の事嫌い」

「貴女は癇癪を起こした子供ですか?」

 

 タメ息を吐き「全くこの人は、敬って欲しいならそれ相応の態度で示して欲しいですね」と聞こえるように愚痴る。

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「あーあー、聞こえなーい。

 ま、これからは特級同士、3人仲良くしようよ」

「なんで僕は入って無いんですか、九十九さん」

「君は理想を目指さないから嫌い」

「目指してますよ、呪術師の理想を」

 

 目を開けて無いが睨み合っているのではと思う程、2人は見つめ合い、先に九十九が先に視線を剃らす。

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「加茂君は知ってると思うけど、星漿体の事は気にしなくていい。

 あの時もう1人の星漿体がいたか、既に新しい星漿体が産まれたのか、どちらにせよ天元は安定しているよ。じゃあねー」

 

 バイクに乗り手を振り走りだしていく。

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「……蓮。今のは」

「だから言ったでしょ、何も問題は無いって。

 まあ新しい星漿体が出てくるのは予想外だったけどね」

「蓮……君は、君は全部を背負うつもりなのか」

「そこまではしないよ。僕がするのは呪術師が呪術師でいられるようにするだけさ、その為であれば………て、ヤツかな。

 九十九さんが言ってなかった? 僕と九十九さんが水と油だって。

 僕は呪術界を変えようとしている、九十九さんは世界そのものを変えようとしている。

 どちらに重きを置くかの違いだね」

 

 晴蓮の開かれた左右の色が違う意思の宿った瞳を見て、「結局は背負う事と同じじゃないか」と言う事は出来なかった。

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 決して交わらない晴蓮くんと九十九由基。目指す先は似ていても真逆のやり方で成そうとしている2人。
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