その血が歩む道すじ:修正版   作:亞忌羅

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 原作程では無いにしろ一般人に対して思うところが生まれていた時に九十九由基と邂逅。


六十二話

「灰原、君は逃げろ。私なら何とか出来る。

 その間に加茂先輩に連絡して欲しい」

「建人でも!」

「あなたの術式は戦闘には向いてない。私なら少しは持ちこたえられる。だからーー」

「『確かにその通りだ。雄の術式は戦闘向きじゃない。

 でもね、建人。君の術式でも決定打足り得ない』」

 

 突然聞こえてきた信頼する先輩の声に驚き、どこから聞こえるのか周囲を見渡す。

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「加茂さん!!」

「加茂先輩、いったいどこから……」

「『君達に僕の式神を付けていてね、君達の状況は把握している。だから君達の所に助けを向かわせた、数分で着く筈だ。もう数分耐えられるかい?』」

「やってみます」

「任せてください!!」

「『その意気だ』」

 

 七海建人の十劃呪法(とおかくじゅほう)と灰原雄の遠退き呪法(とおのきじゅほう)を交互に使い、2級(・・)任務の呪霊、産土神信仰の土地神(・・・)と先輩……晴蓮が言った助けが来る数分を耐える。

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「『全く、式神使いが荒い主人よな』」

「あなたは……」

(われ)火産霊(ほむすび)。加茂晴蓮の式神よ。

 さて、後は吾が受け持とう、お主らはここから離れるといい』

「(妖怪呪霊であれば喋れてもおかしく無いが、ただの呪霊が喋っている!? そんなのが居るのか!)あなた1人で大丈夫なのですか?」

『呵呵。これでも特級呪霊。一級(・・)程度の呪霊なぞ吾の敵では無い』

「特級! 呪霊!! (そんな呪霊を式神に!? あの人はどこまで……)」

『ほれ、さっさと行かぬか、お主らに死なれては吾が来た意味が無くなるでな』

 

 逡巡するが自分達が居ては足手まといになる事は明白、すぐに灰原と逃げる算段を考える。

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「貴方の術式を使い私達をあの呪霊から離す事は出来ますか?」

「多分出来る、やってみようか!!」

 

 助けに来た特級呪霊を術式対象にして、自分達との距離を一気に離す。

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「うっ……ぐぅ……これが、限界……かな」

 

 凡そ400m。晴蓮が寄越した呪霊を対象に距離を取る。

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「充分です。(加茂先輩が言っていた事……解釈を拡げる、自分で上限を作らない。もっと自由に柔軟に、呪術師(・・・)とはデタラメな存在なのだから使うモノもデタラメである)視野を、拡げろ」

瓦落瓦落(がらがら)

 

 この死地にて七海建人は壁を1つ乗り越える。建物を対象にして、建物の長さを7:3に線分し比率の点に強制的に弱点を作り出し破壊する。

 七海建人の拡張術式『瓦落瓦落』の完成の瞬間だった。

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『ほぅ、建物を壊すか。中々面白い事をする人間じゃな。だが、これで一先ずの目的は達成でよかろう。

 さてと、次は御主の祓除だが……面倒くさいのう、じゃが仕方ない。

 しかし、主人がおれば式神にしたがるであろうな』

「縺ゅ≠縺ゅ≠縺ゅ≠縺ゅ≠」

『穢れで喋れんか哀れなものよ、せめてもの情けじゃ、一撃で燃やし尽くしてやろう』

 

 手を振るう。それだけで火炎が生じ呪霊を燃やす。

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「縺ゅ≠縺ゅ≠縺ゅ≠縺ゅ≠!!」

 

 苦しみ悶え聞き取れない断末魔の叫びが残響し、土地神が悪あがきをするが『火』そのものである火産霊(ほむすび)には通用せず、燃え尽きる。

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「はぁはぁはぁはぁ………」

「はぁはぁはぁーー」

『ん? 来たか人間ども』

「ね……こ?」

『我輩はミア。ご主人より賜った名だ、それと我輩はネコではない、猫魈(ねこしょう)だ』

「猫……魈……」

「『物を知らん人間だな。大陸の金華にて知られた妖怪、金華猫(きんかびょう)、それ即ち猫魈。覚えておけ人間』」

 

 言い終わり、最後に「ミャア」と鳴き「我輩に付いてこいお前達を脱出させる奴がいる」と告げる。

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「これは……」

「加茂さんの式神の肉雫唼(みなづき)だ!!」

「『良く頑張ったね、2人とも。後は僕の方で片付けておく、君達は高専までゆっくりと休むといい』」

「ですが加茂先輩、でもどうやってここから……」

「『こうするのさ、肉雫唼(みなづき)ーー呑め』」

 

 晴蓮の言葉と共に術式式神『肉雫唼』が巨大化し、七海建人と灰原雄をバクンと呑み込む。

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「『これで良し。じゃあミア、2人を高専まで連れて行ってあげてくれるかな』」

「『任せろご主人。しかしあの火はよいのか』」

「『彼は彼で戻ってこれるからね、問題ないよ』」

「『そうか、なら戻ろう』」

「『お願いね』」

 

 

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「『む、長髪の居たか』」

「君は確か蓮の」

「『我輩はミアだ、猫魈だ』」

「そ、そうか。それで2人はどこに」

「『ウム、肉雫唼。出してやれ』」

 

 ミアが肉雫唼を足でタシタシと叩くと肉雫唼が、んべっと何かを吐き出した。

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「知ってはいたけど、本当に呑み込めるんだね」

「『それだけじゃ無いよ傑君』」

「蓮、君は大丈夫かい」

「『1人2人式神がいない程度、問題ないとも』」

「無茶はしないようにね、蓮」

「『うん』」

「えーと、取り敢えず硝子のところに連れて行くか」

 

 

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「殆どの怪我治ってんじゃん」

「『そりゃ肉雫唼の中に入ってたからね、大抵の怪我は治ってるさ』」

「その肉雫唼ってホンット反則だよね」

「蓮は本当に何でも出来るね」

「『まあ僕の術式から産まれた式神だからね、ほら傑君、僕の領域ってアレでしょ?』」

「あぁ、アレか」

「『それに僕の領域は肉雫唼の胎内みたいなモノだからね。領域と似たような効果があるんだ』」

「私セイの領域知らないし」

「『あっはっは、硝子も入ってみる? 何事も経験だよ?』」

 

 そう、加茂晴蓮の領域は肉雫唼の胎内を拡大解釈し領域の外格と成したモノ。

 そして晴蓮の領域は死なない(死ねない)領域。解釈を拡げれば他者を癒せる領域(術式)とも言える。

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「絶ッッ対に嫌」

「『別に何も無いって、ただ血が溢れてるけど』」

「何それキッショ」

「『あっはっは。まあ取り敢えず2人をよろしくね』」

「りょーかい」

「私も任務に行くとするよ」

「『無理しないようにね』」

「それは私が言いたいかな」

「『あっはっは。そこまで無理しないって』」

「そうしてくれると助かるよ、蓮」

「『それじゃあお互い頑張ろうか、傑君』」

「ああそうだね……」

「(セイの領域かー。二人が言うには何もしなければ無害って言ってたけど……どーしよっかな。

 でも見た目がキショイらしいし、セイも血が溢れてるって言ってるし……どう言う意味? 一回くらい入ってみる? 考えとくか)」

 

 

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「これは……何ですか?」

 

 村の住民は理解出来ない何かを喋っている。どれだけ質問しても、やはり理解出来ないモノだった。

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「皆さん。一旦外に出ましょうか」

 

 この時の夏油は思ってしまった、思ってはいけない事をーー

 

「皆さん。あなた達は生きる価ーー」

「『そこまでだよ傑君』」

「………蓮。やっぱり見ているんだね」

「『高専所属の術師全員にね、だから傑君が見たモノは知っている』」

「コレらは人間じゃない。ただのゴミだ」

「『それは同感だ、でもね傑君。ソレをするのは君じゃない、僕の役割だ。去年そう言ったよね』」

「今、蓮がいる所からここは遠い。どうやって私を止めるつもりだい」

「『こうするのさ』」

 

 式神を通した会話をしていると、ある人物が無言で現れた。

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「蓮、この人はいったい誰かな」

「『呪詛師集団『Q』の1人だよ。最も今のソレに自由意思はないけどね』」

「………未来を視たのか、蓮」

「『少し違うかな、『常に視ている』が正しい。だから傑君にどの任務がきて、何を思い何をするのかを昨日から知っている。じゃないと雄と建人の任務に式神を向かわせたとしても間に合わない。

 傑君ならその時に気づいてもおかしくなかった、でも、今の今まで傑君はその可能性に思い至らなかった。ヒントはどこにでも有るんだよ傑君』」

「ははは、本当に……君には(かな)わないな」

「『いつもの傑君なら気づいていた、なのに気づかなかった。

 その理由は盤星教の事を引きずっている証拠だ、僕がソレに気づかないと思っていたの? 傑君。

 あの時から傑君は非呪術師に悪感情を抱き胸の内で燻らせていた、だから常に警戒し傑君を含めた高専生全員に式神を着けた。

 何か不測の事態が起きてもカバー出来るようにね』」

「分かって……分かっていたのに何故何もしなかった」

 

 怒気を孕んだ声色で問いかける。

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「『予め(あらかじめ)僕が関わると未来が変わっていた。それに傑君には呪術師、そして呪術界がどんなモノかを知ってもらうにはこうする他なかったんだ。君は呪術師に高い理想を持ち過ぎている、呪術師の世界は君が思う程キレイなモノじゃない。

 呪術界はとても穢い世界だ。

 既得権益にしか興味の無い総監部、懐古主義で頭の固い総監部(腐ったミカン)

 自分達にとって不利益なモノは即排除。それが今の呪術界だ傑君』」

 

 黙して語らずただただ拳を血が出る程強く握り締める。

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「そんなモノ……守る必要があるのか、君はそんな奴らを擁護するのか、蓮」

「『まさか、僕があんな連中を擁護するワケ無いよ。だから僕は長年かけて上を掌握した、上は僕の掌の上だ。いつでも入れ替えられる』」

「なら何故しないんだ、もっと早く……盤星教の時にやっていれば……」

「『僕以外にも総監部を操っている奴が居てね、安易に手を出せば何をするかが分からない。

 その辺りの未来(多世界)はモヤがかかっているんだ。恐らく盤星教の時に僕を遠ざけ推定呪霊人間を造った奴……そうだね呪人(・・)とでも名付けようか。ソイツが関わっている。ソイツの目を掻い潜り動くのは結構骨が折れる、頃合いを見て変えるつもりだよ』」

「そうか……」

「『もしこれでも呪術師に理想を持つなら君は呪術師に向いてない。辞めた方がいい、一般社会に出て、一般人として生活するのをオススメするよ』」

「……イヤ、私は呪術師を続ける。こんな事を無くすために」

「『そう。傑君がそう決めたなら僕は傑君の意思を尊重するよ。これから、ここから呪術界を変える。そのために協力して欲しい』」

「勿論だ、蓮。喜んで協力させてもらうよ」

「『それは良かった。じゃあソコはソレに任せて傑君はその子達を連れて帰って来て、その後これから(・・・・)を話し合おう』」

「ああ」

 

 二人が会話をしていても虚ろな目をしたまま無言で立っている。

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「本当に何も喋らないんだね」

「『今のソレは夢を見ているような状態だよ、夢遊病か白昼夢と言ったところかな』」

「蓮はこんな事て出来るのか、少し君が怖くなってきたよ」

「『誰彼問わずこんな事しないさ、特に親友達にはね』」

「それは嬉しいね、安心して君の傍に居られるよ」

「『じゃあえぇと、誰だったけかなソイツ。まあいいか、やれ』」

 

 晴蓮の言葉とともに自由意思の無い、名前も知らない呪詛師集団『Q』の呪詛師が動く。

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「…………」

 

 夏油はソレ後ろに見ながら幽閉されていた2人の子供を連れて村を出る。夏油が完全に村から出た後、呪詛師集団『Q』の誰かは術式を使い旧■■村の住民をーー

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 担当者、高専3年夏油傑が任務完了し、高専帰還後から5日後に旧■■村の住民112名の死亡が確認された。

 村からは呪詛師集団『Q』構成員『ベルガ』の残穢を確認、この件を以て呪詛師集団『Q』構成員『ベルガ』を特級討伐対象の呪詛師として呪術界に発布された。

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「ははは、本当に私の名前が一切出てないね。それどころか入れ違いで呪詛師が来た事になっている。まあ上から色々と言われたみたいだけど」

「そうだね、『何故夏油傑は呪詛師に気づかなかった』とか『この様な事になったのは警戒を怠った夏油傑に有る』だの。煩いの何の」

「まあ当然言われるか、済まなかったね蓮」

「大丈夫大丈夫。ただその代わり面倒くさい処分が出ちゃったけど」

「しょうがないさ、それくらい甘んじて受け入れるよ」

 

 会話が終わると2人が同時に笑いだす。それを不貞腐れた顔で見る人物が1人居た。

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「オレの知らねーとこで何してんだよ、オレだけ仲間外れですかーそーですかー。ケッ」

「まぁまぁそう言わずに、それに悟君は悟君で忙しいかったしさ」

「フンッ」

 

 3人会話を見てコメカミをピクピクさせる人物もソコに居た。

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「君達、此処は駄弁るための場所じゃない、帰ってくれるか」

「暇なんだし別にいいでしょ天元(・・)

「此処は気軽に来ていい場所じゃない事は知っているのか、加茂晴蓮」

「知ってるよ、でも此処は色々な意味で安全な場所だからね。来れるなら当然来るでしょ」

「はぁ。その様な理由で此処に来るのは君くらいだ」

 

 そう此処は薨星宮・本殿の内部、天元の空性結界で守られている場所。通常、そう簡単には来る事の出来ない場所だが、晴蓮からすると此処は一度道さえ分かれば容易く来れる場所でしかなかった。

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 灰原の術式の遠退き呪法(とおのきじゅほう)は捏造です。だって原作に出てこないし。
 術式内容は対象と対象の距離を離すだけの術式。好きなものに『人』を上げるぐらいの人好きで人懐っこい灰原雄の術式が誰か(対象)から離れる術式って皮肉がきいてていいかなって。
 後、頑張れば一級下位くらいにはなれると思う。『赫』に劣化版?みたいなモノだし、多分。
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