その血が歩む道すじ:修正版   作:亞忌羅

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 晴蓮くんのお陰で闇堕ち(呪詛師堕ち)せずに済んだ模様。但し非呪術師には優しく無くなった。


六十三話

「それで? 傑は何しようとしたのか教えてよ」

「任務先の一般人を殺そうとした」

「はあ!? んな事しちまったら呪詛師だぞ!」

 

 声を声を荒らげ、夏油に視線を向ける。

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「ああその通りだよ悟。

 あの時私は住民を殺そうとした、それは彼処に居たモノは人間じゃなかったからだ。呵責は微塵も無かった」

「僕が止めてなければ今頃は呪詛師認定されていただろうね」

「ハルがどーにか出来ねぇのかよ」

「どうかな、出来たかもしれないね。

 でも傑君は確実に僕達から離れていただろうさ、呪術師への理想は今回の事で見事に崩れたからね」

 

 その通りだった、夏油は晴蓮の言葉に何も返せなかった。

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「そりゃああんなゲロまずなヤツを毎回取り込んでたら精神磨り減るさ」

「? 何ゲロまずって」

 

 晴蓮は知っていた、誰も知らない筈の事を。あの時に……交流会個人戦の時には既に知っており夏油を煽っていたのだ、その結果が夏油の動揺と怒声だった。

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「傑君、自分で言ってね」

「傑、何の事だよ言えよ」

「……呪霊の味だよ」

 

 呪霊の味。呪霊操術の夏油しか知らない筈のモノ……なのに何故晴蓮が知っているのか、夏油には不思議でしかなかったが、話題にあげられては話すしかなかった。

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「呪霊を取り込む時、独特な味がするんだ」

「どんな」

「吐瀉物を処理した雑巾を丸呑みしている様な味がするね」

 

 絶句していた、自分が知らないところで親友がそんなモノを毎回味わっていた事に。

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「何で、何で言わなかった」

「何でだろうね……多分、戒めのようなものだったのかもしれない」

「戒め?」

「私が呪術師でいるための、非呪術師を守るのだからこの程度のデメリットを受け入れる必要があると」

「その結果が精神磨り減らして、爆発した爆弾宜しく一般人の大★虐★殺ってね。馬鹿でしょ傑君」

「マジで大馬鹿だよ傑、オレ達をもっと頼れよ! そんなに……そんなにオレ達は頼りねぇのかよ」

 

 肩を掴み、どんどんと弱々しい声になっていく。それを見て「あぁ、自分はどれだけ独り善がりだったのだろう、どれだけ傲慢だったのだろう」と思い、そして「自分はこれ程までに彼らに愛されていたのだ」と思い知り、知らず知らずのうちに涙が流れていた。

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「……これ、は……は、ははは。そうか、私は……」

「もっとオレ達を頼れ、オレは……まぁアレかもしれねぇけどよ、ハルなら何とか出来るかもしれねぇじゃん」

「人任せじゃん悟君」

「だってオレそーゆーの分かんねえし」

「なのに頼れって、無責任が過ぎるんじゃないかな悟」

 

 天元が居る部屋で3人の笑い声が広がり和んだ空気になった……が、それを冷めた目で見る天元がタメ息を吐きながら「早く帰ってくれ」と溢していた。

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「さて、一通りの事は話し合ったかな」

「そうだね蓮のお陰で胸のつかえが取れた気分だ」

「もっと早く教えてくれればさー、オレだけ除け者ですかー」

「あっはっは。まあ終わった事だしさ、ちゃんちゃんって事で」

「それで、君達はいつまで此処にいる気なのか私に教えてくれないか」

「おっと、そうだったね。此処に来た理由を話さなきゃね」

 

 この言葉に「つまりはまだ帰る気はないのか」と愚痴を溢す。

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「じゃあ本題に入ろうか」

「そうじゃん、付いてくるように言われて来たけどさ、何で来たのか知らないんだけど」

「あの時言っていたこれから(・・・・)の事かな」

「うん、呪術界のこれからを話そうと思ってさ。それで此処に来たんだ、此処以上に安全な場所は無い。

 何せ、天元が居る場所なんだから。でさ天元」

「何だ」

「お茶、ちょうだい。この前みたいに」

 

 天元の空性結界の内部は天元の好きなように変える事が出来る。何故それを晴蓮が知っているのは不明だ。

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「君がどこまで知っているのか、是非聞きたいものだ」

「さぁどこまでだろうね」

 

 

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「はぁ!? マジかよソレ」

「残念ながら大マジだよ。今の呪術界上層部は僕以外の誰かに操られている。

 面倒この上無いね」

「誰なのかは分かっているのか?」

「傑君にはこの前言ったけど天元の任務から遠ざけた奴なのは分かっている。けど、どこの誰で、どんな名前なのかは分からない」

 警戒してるのか分からないけど、アイツ本名は教えてくれないし、総監部の連中も名前までは知らないみたいだし……はー、ホンット面倒くさい。

 

「お陰で上を変えるのが難しい、1人2人くらいなら出来るかもしれないけど、一遍(いっぺん)に入れ替えるのは無理だね。

 時間をかけて半分を入れ換えようか、僕達に都合の良い人間に」

「出来んのかよ」

「やるのさ、なんとしてでもね。でも暫くの間はおとなしくしておかないとね」

 アイツがどう動くのかが分からない、何故かアイツ関係の未来視(世界視)はモヤがかかって上手く視れないんだよね、恐らくはアイツの術式が関係しているんだろうけど……今はおとなしく任務をこなすか、万が一レベルだが怪しまれたくない。

 

 

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「まさかそっちから接触してくるとは思わなかったよ、弥永宗二(・・・・)先輩。やっぱり体を変えてたのか」

「この体の術式は中々便利だからね、私としては呪霊操術が欲しいけど……アレって珍しい術式だからね」

「彼に手を出してみろ。お前であろうと殺す」

「分かってるさ、何もしないって。(一度海外に行ってみるか? 日本は狭い……だったら海外の方が可能性は高いか。

 その間は……何もしない方がいいかな、彼の機嫌を損ねたくないしね)」

「何を考えているのか分からんが、暫くはおとなしくするんだな。俺でもフォロー出来ん事はある」

「ところで晴蓮」

「何だ」

「何故君が生きている(・・・・・)のか………教えて欲しいな。

 あの時君は確かに死んだ筈だ、この目で確かに見た。なのに君はこうして生きている。

 不思議でしょうがないよ」

 まぁそうだろうな、見てたんなら疑問に思うのが普通だ。だから此処に来た……その事と引き換えに情報を引き出すために。

 

 当然の疑問。星漿体任務で加茂晴蓮は死んだ、この男にもそう見えていた、故の疑問。

 彼には何かあるのではないか? あの状態から生き返る方法が、或いは死んだと誤魔化す方法があるのではないか……そう思うのは当然の事だった。

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「ハッ、言うと思うか?」

「だろうね、一応聞いてみただけさ。(あの時彼は確実に死んでいた、あの(・・)五条悟でさえそう認識していた。

 彼には六眼を騙せる程の何かを……術式を持っているのは確かだ。とは言えしつこく聞いて機嫌を損ねたくはない、どうやって聞く……)………じゃあ交換条件を付けよう」

「内容次第だな」

 そうだ、それでいい。

 

「私の本当の名前を教えよう、君とは長い付き合いになりそうだからね」

 そっちか……ソレも確かに知りたい。が、出来るならこの男の体を入れ換える方法も知っておきたい。

 だがアレ(・・)の影響下でありながら、今まで頑なに言わなかった事を言うか? 聞かない方がいいか……あり得ないとは思うが、聞いて万が一にでも不信感を持たれたくない。知りたいが………今はまだその時ではない。

 仕方ない、ソレだけで幻術術式を教えるか。 

 

「それはそれは、魅力的な条件だな」

「だろう? 君は知りたがっていたからね。で? どうするのかな晴蓮」

「…………先ずはそっちからだ」

「言い出しっぺのなんとやらってヤツかな。

 良いよ、言おうじゃないか。私の名前は羂索だ」

「羂索? 諸尊の持物のアレか? オマエに菩提心や善知識があるとは思えんな。

 そもそもそれは本当に本名か?」

「この名前で長年活動しているからね、こっちの方が馴染み深いんだ」

「それはまた随分と傲慢な名前を名乗るんだな」

 長年ね……この男はどれだけ生きてんだ? 考えられるとしたら体を変え擬似的な不死でもしている………ってところか。

 

「だが合っているだろう? 私がしようとしている事と。それで? どうやっていたのか、教えてくれるかな」

 確か『呪力の最適化』……だったか、じゃあ何か? 網を使ってもらさず一切の衆生(人類)の強制進化ってか。

 方法は未だ話さないが傑君を……呪霊操術が欲しいのは恐らく天元の取り込みだろう。

 コイツ、天元と人類を同化させるつもりか? ソレをして何の意味が………

 

「………幻術だよ」

「幻術? 君はそんな事が出来るのか? どうやって」

「これ以上は言えんな。

 だが、ただ1つ確かなのは六眼をも騙せる程の術式だと言う事だ」

「その幻術術式は私にもかけているんだね? あの時私は君が死んだのを見ている、何せ上から下まで穴だらけになった姿を見たからね」

「よく言うだろう? 敵を欺くにはまずはなんとやらってな」

 カードはまだ有る。ここは言った方が今後のためだ、隠し過ぎるのも不信感を抱かせるだけだ。

 

「つまり私は見事に欺かれた訳か。

 君の術式解釈は本当に恐ろしいね、どこまでの事が出来るのか本当に怖いね」

「呪術師とはこう言うモノだろう? 術師は常に進み続ける、進化し続ける存在だ、呪術に終わりはない」

「その通りだ、呪術師は進化し続ける。

 だが今の呪術師は現状を善しとしている、嘆かわしい事だ」

「上は頭が固いからな、俺からすればただの無能どもの集まりだ」

 

 この男の前では一度も本心を出さなかった晴蓮が言った本心からくる発言だった。

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「まあいい。途中(・・)までは手伝ってやるよ」

「最後まで協力して欲しいかな晴蓮、仲間(・・)だろう私達は」

「そうかい、お前さんがそう思っているのならそうなんだろうな」

「つれないね君は。情報……待っているよ晴蓮」

「お前でも集められるだろうに、上は半分変えるいいな?」

「好きにすると良い、君が動き易くなるのならね」

「ソイツはどーも」

 

 立ち上がり振り返る事もなくイラついた顔で、弥永宗二……羂索と別れる。

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「てな訳でだ天元。気を付けろ」

「開口一番がソレかね」

「ちゃんと話したろ」

「私は(うつつ)には干渉しない」

「その結果喰われてもか?」

「そうならない様にするのが君の仕事だろう、頑張りたまえ」

「相っっ変わらず気に喰わない奴だなアンタは」

 

 天元が出したお茶と茶菓子を食べながら、まるで世間話の様に話す。

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「だが呪霊操術の使い手はそう現れない」

「あの男の事が探すのを諦めるかと思うか? 俺は思えないね。

 勿論、傑君には手出しさせないけどね」

「なら安心出来るじゃないか、君が遅れを取る事は無い」

 

 晴蓮には未来視(世界視)が有る、そのため他の者達より先んじて出来事を知り、動く事が出来る。それを知る天元の発言は正しい。だがーー

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「俺にも分からない事は有る」

「君にか? 未来を視れるのにか?」

「どうやら万能じゃないみたいでね、勿論ある程度は視れはする。

 だから先んじて動けるがそれでもブレる事は有るんだよ天元」

 

 何故か羂索関連の未来視(世界視)はモヤがかかる、晴蓮は何故そうなるのか恐らくアレ……『羂索の術式』のせいだろうという予測がついている程度しかなかった。

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「アレは俺でも手に余る」

「なら今以上に頑張ってくれ」

「はぁ、面倒な。それにしてもアンタは随分と他人事みたいに話すじゃないか、1番の当事者はアンタだろ」

「確かに私の事ではある。が、それが運命なら甘んじて受け入れよう」

「はークソ、お前マジでクソだな。式神にしてやろうか」

今の私(・・・)には不可能だろうが、いずれ出来るだろうね。その時ににでもすると良い」

「マジでクソ。何でこんな奴守らなきゃ駄目なんだよ」

「世界の、日本の秩序を守るためさ」

 

 天元の空性結界は日本の主要な場所に張られている。もし天元に何かあればこの結界は崩れ、脈々と続いた呪霊との戦いや結界術のノウハウが千年前からやり直す事になる。

 それを知る晴蓮は不本意だが天元を守っている。もし晴蓮に天元レベルの結界術があれば変わっていたかもしれないが、結界術を骨子にした封印術を開発(拡張)した晴蓮であっても天元程の結界術はまだ使えない。

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「アンタのその重責を下せるようにしてやるよ」

「期待しておこう、君なら本当に出来そうだからね」

「解析と改善、拡張は得意なんでね。

 取り敢えずアンタは此処でおとなしく引きこもってな、助けにくるのが間に合わないとか面倒だからな」

「そうさせてもらうよ、加茂の麒麟児」

「………俺、ソレ言われんの大っ嫌いなんだよね、次から使うなよクソジジイ」

「それは悪かった、じゃあこう呼ぼう。加茂の天才」

 

 顔を歪め「たいして変わってねぇだろ」と吐き捨て薨星宮から出ていった。

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「彼は二重人格なのか? 私と居る時とあの子達と居る時では性格が違いすぎるな」

 

 独り言を呟きながら部屋の奥へと消える。

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 あー頭痛い、やる事多すぎんだよなー。イヤまあ自分でこの道を選んだんだけどさ、流石に疲れる。

 

 空を仰ぎ見て、見えない目を手で覆いタメ息を吐く。

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 教室……行くか。

 

 

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「何いきなり目を開けって」

「夏油から聞いてさ、その確認」

「? まあいいけど」

 

 そう答え硝子に言われた通り目を開く。

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「うっわーマジかー、ソレもかー」

「何、人の目を見てその反応」

「そりゃ目が見えないんだから鏡見ないよねー」

「見ないけどそれが何」

 

 いつまでたっても意味が分からず頭の中は疑問符だらけだった。

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「セイはさ、オッドアイだよ」

「は? マジで?」

「大マジ。それはそれはもう綺麗なオッドアイ」

「はー………そっかー、オッドアイか」

 

 その会話についていけていない者が1人、ソコにいた。

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「さっきから何か言ってっけどオッドアイて何」

「セイは先天性の虹彩異色(こうさいいしょくしょう)。五条にも見せたげなよ」

 

 その言葉に従い目を開いたまま五条の方を向く。

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「うっわ、ハル何ソレ、両目の色が違ぇじゃん」

「ソレがオッドアイってヤツ」

「つまりはだ悟君。僕に天与呪縛がもう1つ増えたって事だ」

「は? マジで」

 

 晴蓮の言った事が飲み込めず呆然とする。

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「虹彩異色……オッドアイは先天性と後天性の2つあるんだけど、多分僕のは先天性(生まれつき)だろうね。

 後天的になるような事は経験していない」

「じゃあハルはそのオッドアイの天与呪縛だってのかよ」

「そーなるね。セイってさ天与呪縛の塊じゃん」

「イヤ僕に言われても困るんだけど、なりたくて成った訳じゃないし」

 

 加茂晴蓮の天与呪縛の数、『全盲』『無痛症』『味覚鈍化』。これらは3つは晴蓮自身も自覚していた。

 しかしソコに入学時に家入が言った『アルビノ』と、たった今判明した『オッドアイ』の天与呪縛。

 この2つは目が見えないが故に今まで晴蓮は気づけなかった、確かに晴蓮はまだ何か有るだろうと予想はしていたが2つも有るとは思ってもみなかった。

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「はー……そっかー2つ有ったのか、流石にソレは予想してなかったかな」

「あ、いちおーは何か有るって分かってたんだ」

「そりゃあね、天与呪縛の数に対してその還り(恩恵)が多すぎた。

 だからまだ何か有るのでは? とは思ってたかな」

「ハルの還り(恩恵)って何があったっけ、俺未来が見える事と後アレ、空間認識? くらいしか覚えてないんだけど」

 

 1番近く、そして長い付き合いの五条は晴蓮の天与呪縛などと言うものはどうでもいいからか、何が有るのか聞いていなかった。

 ━

「あぁそう言えばソレ以外言ってなかったね、えっとぉ………。

 先ず1つ、これは体感だから確実かは分からないけど恐らくスポーツ心臓かな」

「何ソレ」

 

 医療や医学に興味が無い五条のための授業が始まった。

 ━




 遂に羂索の名前を知る事に成功。晴蓮くんはその名前を傲慢と吐き捨てる。
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