「スポーツ心臓ってのはスポーツ選手に見られる心拡大と、それによる安静時心拍数の低下する病気だね」
「一般人には病気だけどスポーツ選手にはプラスになるから、スポーツ選手にとっては病気じゃないって言われてるヤツだね」
「それが有ると何の意味がアンの」
「心臓って筋肉っしょ? スポーツ心臓ってのは、心臓によって単位時間当たりに送り出される血液量を増やすんだよね」
「スゲーじゃん、大当たりのヤツじゃん」
「そ、セイにとって最高の
でもそれだけじゃない、スポーツ心臓には他にも心室内腔は拡大、壁肥厚や筋の増大ってのがあってさ、だから拍出効率が良くなるし、35〜50回/分の低い心拍数で充分な血液を全身に巡らす事が出来るって寸法だね」
「それだけじゃないよ硝子。僕のは更に効率がいい、一般的なスポーツ心臓より倍近いモノだ。
さしずめ超スポーツ心臓ってところかな」
通常のスポーツ心臓でも晴蓮にとってかなりの恩恵を与えるが、晴蓮の場合は更に効率の高いモノだった。
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「何ソレマジヤバいじゃん」
「加茂家の赤血操術には最高な
んで、次は血中酸素濃度が常時はニ乗、最大で四乗になるモノだね」
「は? マジで?」
「うん。お陰で一眠りすれば常に最高のパフォーマンスが出来る」
「硝子、説明よろしく」
「あー……血中酸素濃度が高いと、疲労回復や集中力のアップ、睡眠の質の良くなったりするんだよね。
ついでに他に何があるか言ったげる。
1つ目のメリットは疲労回復。
高濃度の酸素を効率的に取り込めると、短時間で疲労を回復出来る可能性がある。てゆーかセイが言ってるから出来てる。
2つ目は、集中力のアップ。
脳にとって酸素は活力・動力源で、脳内の酸素量が増えると頭がスッキリして集中力が増すって言われてんね。そこら辺どーなの」
「増してるね、だから術式順転と反転を使いこなせるしあそこまで化けた。
これが無かったら無理だっただろうね」
「ハルスゲーじゃん」
「それだけじゃないよ五条。睡眠の質が改善される。
血中の酸素濃度が上がると副交感神経が優位になるし、リラックスした状態になる。
この状態で眠ると質の良い睡眠が取れるし、疲れの回復にもつながる。
1つ目もそうだけどさっきセイが言ってたヤツもコレに当てはまってるね。
次は脳の働きが良くなる。
脳内がクリアになってパフォーマンスの効率も良くなるし、記憶力がアップする。
んで最後。疾患予防・健康増進。
低酸素下運動負荷で筋力増強、疾患予防や健康増進とかだね。まぁこの辺りはソコまでって感じ?」
「どうだろうね、軽症とかはすぐ治るけとソレのお陰なのかは分からないかな」
「だ、そうだけど。結論、セイは超ヤベーって事」
今まで説明された晴蓮の天与呪縛を聞いて「成る程」と返すが、半分くらいしか理解出来ておらず「取り敢えずハルはスゲーんたな」程度に思っていた。
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「後は……ああアレだね、『嗅覚による周囲の肉体及び呪力の状態・状況の知覚と認識』、それと『音と『呪力』による反響定位での
これが
んー多いなぁ、我ながら有り過ぎでしょ。まぁその分天与呪縛のデパートだけど」
「笑えねー」
「どれがどれの
5つもの
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「セイさーよくそれで生活出来るよね」
「んーまあ基本的に目が見えないだけだし、そこまでかな」
「なぁハル」
「何?」
「天与呪縛って幾つあんの」
「
「マジかよ、マジでヤベーじゃん。どんなヤツ」
「ちょっと待ってね………『全盲:無痛症:味覚鈍化:アルビノ:オッドアイ』だね。
本当にヤバいね、イヤ本当に多くない? まだ有ったりしないコレ」
「今んとこ外見で分かる先天的なヤツは無いかな」
「それは良かった」
胸を撫で下ろし一先ずの安心を得る。
━
「ところで、傑君は?」
「任務」
「ああ成る程」
任務……ねぇ、アイツが手を回したのか? イヤ、あそこまで釘を刺したんだやらんだろう。それに、式神も付けてある。
何かあれば俺に連絡がくるからソレが無いって事は問題なさそうだな。
「傑君が帰ってきたら話さなきゃね、情報共有は大切だからね」
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「何をお考えで?」
「〖本人の意思なのだ〗」
「だから秘匿死刑、と。あまりにも飛躍し過ぎではありませんか?」
「〖加茂晴蓮よ、それは我々も分かっている〗」
「〖だが逆に何人呪い殺されるか分からん以上やむを得んのだ〗」
「………反対します」
「〖ではどうするつもりかね〗」
「彼は僕が所属する呪術高専で預かります」
「〖それで何か有ったらどうするつもりかね〗」
「僕が責任をもって処理致します」
「〖ふむ〗」
「〖君がそう言うのなら預けよう〗」
「〖我々としても特級
「〖ここは彼に任せよう〗」
「ご配慮、ありがとうございます」
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「どーだった」
「取り下げさせたよ」
「さっすがハル」
「その代わり東京高預かり、何かあれば僕が処理する事になった」
「ま、妥当な落とし所か」
「何、上手くやるさ。それにまだ16歳の子供だ、ただ
「ホントにな、でもさあの子説得出来んの?」
「するしかないね。ま、頑張ろうよ」
「やっぱり俺もやるんだ」
「当然」
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椅子の上で足を抱え込む陰鬱な少年が座っている。
━
「乙骨憂太君、これは?」
「ナイフ……だったものです、死のうとしました」
「わぁおスッゴいねぇ、ナイフがグニャグニャだ」
「………でも里香ちゃんに邪魔されました」
「暗いねぇ君」
「今日から新しい学校だよ?」
「行きません」
抱え込んでいる足を両腕で力強く抱き締める。
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「どうしてか、聞いていいかな乙骨君」
「もう誰も傷つけたくありません。だからもう……外には出ません」
「だってさ、ハル」
「それは困るかな」
微塵も困った顔をせずに言い、微笑みを浮かべながら乙骨に提案する。
━
「でもさ、乙骨君。1人は寂しいよ? 君にかかった呪いは使い方次第で人を助けることも出来る。
力の使い方を学び制御する、全てを投げ出すのはそれからでも遅くはないと、僕は思っている」
━━
━━━━
「転校生を紹介しやす!! テンション上げてね皆!!」
両目を隠すように包帯でぐるぐるに巻かれた男性、それは呪術高専東京高の教師になった五条悟だった、そして転校生がくるためハイテンションで教室に居る生徒達に叫ぶ。
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「蓮兄から聞いてっけどさ、スッゲェ暗い奴らしいじゃん。
蓮兄にも歓迎するように言われてるけどさ、そんな奴のために空気作りなんてごめんだね」
「なんで兄さんはそんな奴を気にかけてるのか全っ然意味わかんないんだけど、なんでよ五条」
「せめて先生はつけなさいよ。それでなんだっけ? ああハルが気にかけてるってヤツだったね、それはハルが後見人になったから」
「「はぁ!? 何ソレ聞いてないんだけど!」」
「あ、言ってないんだハル。めっずらしー。まあ最近決まった事だし? 知らなくてもしょーがないんじゃない」
晴蓮からある程度聞いているのか、陰鬱な転校生に苛立ちを隠さない。
━
「………だからさ皆、テンション上げてよ」
「無理」
「真希に同じく」
「しゃけ」
「加茂センが言うくらいだからなぁ、でも面倒くさそうだから嫌」
「君達さ、揃いも揃ってなんでそんなリアクションするかな、しかも僕じゃなくてハルから聞いたから嫌って……君達の担任僕だよ?」
「信頼度の問題じゃね」
さっきから教室で一際異彩な雰囲気を漂わせる生徒、そこにはまさかのパンダがおり尚且つ喋っていた。
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「それな、五条の信頼度なんて地の底レベルだし」
「真希に同意」
「しゃけしゃけ」
「マジでそれな」
4人の五条に対する評価は言わずもがなだった。
━
「ホンット可愛くないね君達。ま、いっか。
入っといでー」
教室の外に居る乙骨憂太に聞こえるよう大声で教室に入るよう促す。
━
「(ものすこく冷めた空気を感じる)」
「(なんか蓮兄が気にかけてるし一発ぶちかましてやろうかな)」
転校生……乙骨憂太が入ってきたその瞬間、濃密な『呪い』の気配が充満し、生徒4人が即座に戦闘態勢に移りーー
━
「乙骨憂太です。よろしくお願いしまーー」
名前を言いきる前に真希が持つ呪具の1つ、薙刀が黒板に突き刺さり、真依は懐から拳銃を取り出し向ける。
そしてパンダは拳が届く距離まで近づき、口を隠していたネックウォーマーを下げ、特徴的な紋様が口回りに有る生徒が乙骨憂太の前に立つ。
━
「これ……な、なんかの試験?」
「おい、オマエ呪われてるぞ。ここは呪いを学ぶ場だ、呪われてる奴がくる所じゃねーよ」
「真希、いつでも撃てる」
「りょーかい」
生徒4人が完全に乙骨憂太を包囲していると、そこに五条が語る。
━
「日本国内での怪死者・行方不明者は年平均10000人を超える。その殆どが人の肉体から抜け出した負の感情ーー『呪い』の被害だ、中には呪詛師による悪質な
呪いに対抗出来るのは同じ呪いだけ、ここは呪いを祓うために呪いを学ぶ『都立呪術高等専門学校』だよ」
「事前に言ってくださいよ!!」
「今教えたの!?」
「なんで兄さん言ってないの!?」
するとどこからか「わざとです」と語尾に星マークが付きそうな軽い口調で声が聞こえてくる。
━
「メンゴ!! てっきりハルが言ってると思ってたから言ってなかった。
あ、それと早く離れた方がいいよ」
五条から唐突に言われた言葉に全員が疑問符を浮かべると、黒板の中から濃密な『呪い』が真希の薙刀を掴んで姿を現す。
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━━━━
「ってな感じで彼の事がだーい好きな里香ちゃんに呪われてる、乙骨憂太君でーす。皆よろしくねー!!」
五条の説明の後、またどこからか誰かの声が聞こえてくる。
━
『やぁ皆、おはよう。
遠い所からでごめんね。彼に何も伝えなかったのは先入観を持って欲しく無かったからあえて言わなかった。
真希達にも言わなかったのはどう行動するかが見たかったから君達にも言わなかったんだ、ごめんね真希、真依』
「兄さんの事だから何かあるだろうとは思ってたけどさ、少しくらいヒントちょうだいよ」
『あっはっは、それじゃあ面白くないだろう?』
「えっ! な、何! どこからか声が聞こえて……それにこの声って……確か、加茂……晴蓮さん!?」
『うんそうだよ乙骨君。あの時以来だね、元気そうで良かったよ』
「あ、はい。元気です?」
「加茂センさぁ、俺達危うく死ぬとこだったんだけど」
『あぁそれは大丈夫だよパンダ君。
真希には
「ハルってそーゆーとこあるよね」
『それに君が居れば大抵の事は大丈夫でしょ? だから心配してなかったのもあるんだよ悟君』
「人使い荒いね」
『上に立つ者として人を使わないとね、じゃあ後よろしく。僕は任務の途中だからね』
「がんばー」
「兄さん」
『うん? 何』
「無理しないでね」
『大丈夫、僕を誰だと思ってるの?』
「そうだね、兄さんなら問題ないよね」
『でも心配してくれて嬉しいよ。真希・真依、授業、真面目に受けるんだよ僕の隣に立てるようにね』
「「当然!」」
姿無き声と会話をしている双子を見て乙骨がパンダに小声で聞く。
━
「あのパンダ……さん? この声とあの2人はどんな関係が」
「兄妹だよ。あの2人は加茂センの妹」
「加茂さんっていつも目を閉じてる人……でいいんですよね」
「そ。それと敬語じゃなくていいよ、ムズムズする」
「あ、うん分かった」
何だかんだ言いながら乙骨を受け入れ、
━
「はーい気を取り直してお互い自己紹介しようか」
「じゃあ私から。私は加茂真希、基本コレみたいな武器ーー呪具を使って戦う」
「じゃあ次は私。私は加茂真依、真希とは双子で私が妹。で、私は構築術式って言う術式を使って戦う」
真依が手の平を見せ「こんな感じ」とパチンコ玉を作って見せる。
━
「すごい………」
「んじゃあ次は俺だな。俺はパンダ、そのまんまだな。で、こっちは狗巻棘、呪言師だ」
「こんぶ」
「じゅ、呪言師……ですか? (パンダの説明無いんだ、1番聞きたいのに)」
「しゃけ」
パンダの手を乗せられた狗巻棘が「しゃけ」としか喋らず困惑していると真希が「呪言師ってのは喋った言葉通りになる術式」と追加で言うも未だ理解できていなかった。
━
「は、はぁ成る……程」
「棘、なんか言ってやんなよ」
「しゃけ」
乙骨以外が念のため呪力を用い、尚且つ手で耳を塞いだのを確認し「『座れ』」と言った途端に乙骨が何かの力に押される様に座った。
━
「まーこう言う事だ、だから棘は通常の会話が難しくてな、おにぎりの具材で喋るんだよ」
「なんでおにぎりの具で」
「それは棘に聞け」
「おかか」
4人全員が名乗り五条が「とまぁこんな感じ」と締めくくった。
━
「さぁこれで1年も5人になったね、今年は多いねー。それどころか過去最多じゃないかなコレ」
「五条ンの時はどうだった」
「4人だね。僕、傑、ハル、硝子の4人。頭文字をとってさしすせ組だよ。因みに言い出したのはハルだから」
生徒5人見回して「午後の呪術実習は2-3のペアでやるよ」と言い、ペアの構成を告げる。
━
「棘・パンダペア。真希・真依・憂太ペア」
ペアの割り振りに姉妹揃って「げっ」と溢す。
━
「(『げっ』て言った!)よ、よろしくお願いします」
乙骨をじっ、と見た真希が「オマエ、イジメられてたろ」と言葉を濁さずに言い、その言葉に乙骨は固まってしまった。
━
「図星か、分かるわぁ。私でもイジメるよこんな奴」
「かわいそうだけど同感、イジメたくなる顔と雰囲気してるし」
「呪いのせいか? 『善人です』ってセルフプロデュースが顔に出てんぞ、気持ち悪ぃ。
なんで守られてるくせに被害者ヅラしてんだよ」
「そうね、ずっと受け身で生きてた来たんでしょ? なんの目的もなくやってる程呪術高専は甘くないわよ」
そこにパンダが割って入り、続くように狗巻と入る。
━
「真希・真依それくらいにしろ!」
「おかか!!」
「チッ。分ーったよ、うるせぇな」
「はいはい」
「すまんな、アイツは少々他人を理解した気になって濁さずズケズケと言う節がある。加茂センの妹とは思えねーくらいに口が悪りぃ」
「……いや………本当の事だから」
━━
━━━━
━━━━━━
「ここは?」
「ただの小学校だよ。ただの校内で児童が失踪する小学校」
「失踪!? 大事件じゃないですか!」
「場所が場所だからね、恐らく自然発生した呪いによるモノだろうね」
「子供が呪いに拐われたって事ですか?」
「そ、今んとこ2人」
一般人であった乙骨は何も知らないため真希があらましを教える。
━
「大勢の思い出になる場所にはな、呪いが吹き溜まるんだよ」
「学校や病院なんかがいい例ね、まぁ病院は少し違うのだけれど」
「真依が言った通り学校や病院といった所は何度も思い出され、その度に負の感情の受け皿になる。
それが積み重なると今回みたいな呪いが発生するんだ。呪いを祓い子供を救出、死んでたら回収だ。
『闇より出でて闇より黒く、その穢れを禊ぎ祓え』」
五条が帳を唱え空からタールの様な粘り気の有るナニかが小学校を覆っていく。
━
「!? 夜に、なっていく!」
「これは『帳』。君達を外から見えなくし、呪いを炙り出す結界だ。
内側から簡単に解けるよそんじゃ、くれぐれも死なないように」
「死って……先生!?」
「転校生。よそ見してんじゃねぇよ」
「呪霊。来るわよ」
真希と真依は戦闘準備をする、その目の前にはいつの間にか呪霊が3体、いる。
━
「は……い……。る、は………い……る?」
呪霊がボソボソと一言ずつ喋り、首辺りから股まである縫い目をブチブチと引き剥がし、遂には口のようになる。
━
「こっちに来る!! どどど、どうしよう!!」
「喚くな転校生。覚えとけ呪いってのはなーー」
少しジャンプし薙刀を構え「弱い奴程よく群れる」と言うと同時に着地し薙刀を振るい呪霊を祓う。
━
「……他にはいないようね」
「凄い……一振で………」
拳銃を構え周囲を見回す。
━
「け、拳銃って呪いに効くんですか?」
「普通は意味ないわね。
でも、私のは特別製。昔兄さんが造ってくれた呪霊にも通用する拳銃と弾丸。勿論人間も効くわよ」
本物の拳銃であることに冷や汗をかき「撃たれないようにしよう」と胸の内で思った。
━
「さて、行きましょうか」
「行くって……どこに?」
「
真希と真依をビクビクとしながら追いながら「加茂さん達は怖くないの?」と一般人的な質問をする。
━
「私らは子供の頃から蓮兄に連れられて何度も任務に行ってっから慣れてんだよ」
「兄さんは基本優しいけど任務関係は結構スパルタなの、ピンチにならないと助けてくれないし」
2人の言葉に「あの人が? あんなに優しそうな感じなのに」とボソリと呟いた。
━
キング・クリムゾン。時間は大きく飛ぶ。星漿体任務終わったしその他諸々も書いたしね。巻いていこう。
あぁでも交流会の傑君との個人戦書かなきゃ。