「晴蓮くん……何で………」
「問題ねぇ、ハルはハルだ」
意味の分からない事を言う五条に「どう言う意味よそれ」と聞くも「そのまんまだ」としか答えない。
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「兄………さん」
「こんなのウソだ、蓮兄が……蓮兄があんな事に協力する筈がない!」
「しゃけ」
「でもよぅ、実際に付いて行っちまったぜ?」
パンダの胸ぐらを掴みあげ「蓮兄が呪詛師にでもなったった言いてぇのかよてめぇは!!」と叫んでいた。
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「なっちまったもんは仕方ねぇだろ、頭冷やせ真希」
五条の言い方に怒りを露にし掴みかかる。
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「てめぇ!」
「安心しろ、なんも問題ねーよ」
「何が……言いたい」
「俺とハルが何年の付き合いだと思ってんだよ、ハルがしようとする事ぐらい分かるっての」
離反した筈の晴蓮をどこか庇うような言い方をする五条を不思議な目で見る事しか出来なかった。
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「ハルは問題ねぇ、好きにやらせりゃいい。
問題はあの弥永っつー奴だ、あの
「弥永くんの術式は見立て式神方術。
自身が祓った
その後に見立てた
分割すればする程
今の彼がどの程度の強さなのかは分からないけど……強くなっていると仮定すると、もっと式神の性能が上がってるかもしれないわ。
それとさっき見た限りだと何体かは分割式神ね」
見立て式神方術。分類としては式神術だが、どちらかと言えば呪霊操術に限りなく近い術式であり、晴蓮曰く『彼の術式は呪霊操術の下位互換ではなく呪霊操術を別角度から解釈し、出来た術式。だから術式のポテンシャルは術師次第では特級にもなりうる術式』と言う高評価だった。
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「成る程、ハルの評価が高い訳だ」
「ガッデム! 厄介な術師だな。それに加え加茂も付いていった、これは総力戦だ。
OB、OG。それから御三家、アイヌの呪術連にも協力を要請しろ、もう一度言う。これは総力戦だ、呪詛師となっていた弥永宗二、そして離反した加茂晴蓮の抹殺だ。
加茂晴蓮には最大限の警戒をしろ、アイツは未来を視れる、こちらの作戦は筒抜けだと思え。その上での抹殺……いや、捕縛だ。
加茂を抹殺しようとなると大規模戦闘になる。捕縛であれば周囲の被害を抑えられる」
「そんなんでハルと
「………ガッデム」
音を立てて部屋に入ってきてすぐに「蓮が離反しのは本当か!?」と夏油が叫びながら現れた。
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「そうだ、加茂晴蓮は呪詛師、弥永宗二と共謀して百鬼夜行を行うつもりだ」
「そんな……訳が……」
夜蛾の言葉を聞き、五条を見ると人差し指を口に当てる仕草をする。それを見て「そうか、そう言う事か」とボソリと笑いながら呟く。
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「俺が視たモノは『OB、OG。それから御三家、アイヌの呪術連にも協力を要請しての総力戦』だ。
でも、この
「我々の間違いだろう? 晴蓮」
「ああそうだったな、どちらにせよ勝ちは揺るがない」
「頼もしいね、私はアレを取りに行く。その間君は高専側を撹乱させてくれるかい」
「安心しなよ、
さて、どう動いてくれるかな。出来れば傑君は彼の方にいて欲しい、直弥は確実に京都に出張ってくるだろう。問題は悟君だな、彼の行動は読めない………視た通りの行動をしてくれれば嬉しいんだけど……どうかな。
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「全く、警備がザルだね。あれだけ分かりやすい挑発をしたのにここを守らないとは………まあ晴蓮が手を回したのかな? どちらにせよ馬鹿なのは確かだ。
さて……特級過呪怨霊、貰いに行こうか。闇より出でて闇より黒く、その穢れを禊ぎ祓え」
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「あぁやっぱりこっちに来たね、良かったよ」
「ひっさしぶりー………それでハル。マジで
「それも愉しそうだね………でも、残念だけど君の相手は彼だ」
「アンタガヤッタ方ガイインジャナイノカ?」
肩を竦め「更地になっていいならやるけど」と外国人、ミゲルに言う。
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「…………ソレハ駄目ダナ」
「だろう? それに、僕は僕でやる事がある。
「ああ、またな」
2人を交互に見て「随分ト呆気ナイ別レノ挨拶ダナ」と言うと、五条が鼻で笑い「別れ? 違うな、役割分担だよ」と意味深に返した。
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「真希ちゃん、君は私が射ち漏らした式神を頼むよ」
「了解………もし、蓮兄が来たら教えて」
「ああ、分かってるよ。ちゃんと話さないとね」
「そうか、君がここに居るか。邪魔だな」
「悪いけど、ここは通さないよ」
視線が交差し夏油は呪霊を弥永は見立て式神を同時に雪崩の如くけしかける。
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「お互い似たような術式だ、これでは千日手になるだけだよ呪詛師」
「そうだね、確かにこのままでは千日手だ。でもこれはどうかな? 極ノ番:ーー」
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「やぁパンダ君に棘君。元気そうで何よりだ」
「加茂セン………」
「しぐれ………」
「ははは、随分と沈んだ声色だね」
驚愕と混乱。何故この人がこんな事を。全術師が憧れる呪術師が何故呪詛師になったのか………ソレが頭の中をグルグルと周る。そして、今からこの人と戦い合わなければならないという事実に戦々恐々としていた。
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「さて2人とも、最初の課外授業。1時間目だ」
「殺し合いの間違いじゃねぇの、加茂セン」
「しゃけ」
2人の返答に「なんとも手厳しいね」とだけ答えた。
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「取り敢えずはパンダ君、よく見て避けなさい。穿血」
2人にそう告げた瞬間、亜音速の穿血が飛ぶ。
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「ッ! (速い!)フン!!」
避けられないと察し即座にゴリラモードに切り替わり、片腕を犠牲にするつもりで穿血を弾く。その後すぐに狗巻が返り討ち覚悟で呪言を使う。
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「『捻れろ』」
呪言により両指から手首まで骨を軋ませ、骨が折れる音をあげながら捻れる。が、狗巻は大量な血を吐き出す。
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「それは愚行だよ棘君。僕みたいな……格上の相手にはその人物、
反転術式を使い、腕を治しながら『授業』をする。
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「特に反転術式持ちにはね。さあ次だ、
「させねぇよ加茂セン」
いつの間にか後ろに回ったパンダが「
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「よし。最初の採点だ。
行動・攻撃のタイミングはいい、素晴らしいチームワークだ。だがパンダ君の一撃は強力である一方対処は容易い、だからこうなる。
そして棘君。さっき言った事をしない限り、格上相手では先に君の喉が潰れる。
勿論君の呪言が無機物には効かないのは知っている、色々と協力しているからね。だが、周囲には有機物……小さな虫が必ずいる。
ソレを有効に使いなさい。さあ2時間目だ、
燃えた血の砲撃がパンダを襲い火に包まれ吹き飛ばされ、血で出来た荒々しい角が棘目掛け飛来する。
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「ぐっ……ぐぅう。棘!! (クソッ勝てる気がしねぇ、これが特級呪術師! 別次元だ!)」
燃えながらも棘に駆け寄り血の角を、
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「『吹き飛べ』がぁ……は……はぁはぁ。(喉が潰れる、その前に無力化する)」
呪言を躱す事は出来ず受け見えない力で吹き飛ばされる。
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「大丈夫か? 棘」
「じ、じゃ"げ」
「(やべぇな、このままじゃジリ貧……いや負け確だ。どうすりゃいい)」
どう対処すればいいかを考えていると、吹き飛んだ筈の晴蓮がいた。
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「やっぱり呪言と言うのは厄介だね、避けられない」
「マジ……かよ。(幾らなんでも戻ってくんの早すぎるだろ)」
「のど飴はまだあるだろう? 噛み砕くといい、多少は治る筈だ」
そう言われ、ポケットに入れていた晴蓮特製のど飴を口に入れ噛み砕く。それを見届け「じゃあ課外授業の続きといこうか」と告げる。
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「棘」
「はぁはぁ………し、しゃげ」
「マジかよ、そこまで効果あんのかよ」
「ほら2人とも、ここは戦場だ。呆けていては危ないよ。
手刀を振るうと鉄分を含み鋭さを増した血の刃が2人を襲う。
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「フッんラッバぁア!!」
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「
常に弱点を狙いなさい。格下、同格の強さの相手であればゴリ押しが通用するだろう。しかし、格上にはそうもいかない。常にウィークポイントを探しソコを狙うんだ。
いいかい? 格上とはいかに上手く立ち回るのかが肝要だ。
さて、採点の前にこれから出来るアドバイスをしよう。先ずは棘君からだ、さっき言った小さな虫を対象にするのが難しいのなら汎用式神術を覚えるといい、冥冥さんは知っているね? あの人の術式を真似るんだ。
式神術を覚え蠅頭を使役する。そして使役している蠅頭を術式対象にし、ソレを攻撃方法にする。どのような攻撃方かは君の発想力次第だ、期待しているよ。
次はパンダ君だ。君は突然変異呪骸であるため術式はない。
君の強みは3つある核を入れ替えてボディの
しかし今の君はゴリラモードによる短期決戦が多い。イヤ、正確にはパンダモード・ゴリラモードしか使えない、の方が正しいだろうね」
「何で……加茂センがソコまで知ってんだ」
知る者が少ないパンダの秘密を知っている晴蓮に驚き、知らず知らず聞いていた。
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「おや、夜蛾学長に聞いていないのかい。君の開発・製作に関わっているんだよ。
本題に戻ろうか。パンダ君の技と言えるものはゴリラモード時の
そうだね、パンダ君はシン・巌流を覚えるのがいいね、シン・巌流なら悟君も傑君も使える。
それか甚爾さんに教えてもらうのもいいね、甚爾さんは僕の次に巧いからね」
殺し合いの筈である状況下で教師が生徒に教えるように幾つものアドバイスをする。
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「加茂セン……マジで授業のつもりなのかよ、呪詛師になったって言うのよォ」
「ははは、僕はいつでも君達の教師さ。
最も、僕は悟君や傑君と違って担当する生徒はいないけどね」
肩を竦め「本当に残念だ」と愚痴を溢している。
━
「3時間目……と、いきたいところだけど、残念ながら時間切れだ。
パンダ君、棘君。僕を相手によく戦った、君達では僕には決して勝てない。
それを分かった上で君達は果敢に立ち向かった、それは素晴らしい事だ。誇らしい限りだ」
「………そうだよ、俺達じゃ加茂センにゃ勝てねぇ」
「しゃけ」
「でもな、ここから逃がさねぇ!! 」
声を張り上げ奥の手である3つ目の核、『お姉ちゃん』へと
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「ガっ……」
「ソレは使われる訳にはいかない、対処は出来るけど少々面倒くさいからね。
棘君、君はここでおとなしく喉を癒しなさい。僕にはやる事が、最期の仕上げがある。
それに、向こうもそろそろ終わりそうだしね。後は悟君に任せようかな、じゃあまた後でね」
そう言い残し晴蓮の姿が忽然と消えた。その後暫く経って五条が現れる。
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「棘、ハルは?」
「青菜」
「そっか、もう行ったのか。仕上げの時間ってか」
「そぼろ?」
「こっちの話だ気にすんな」
呪詛師に付いていき、総監部から呪詛師認定された晴蓮には捕縛或いは抹殺命令が下されていた。しかし五条は晴蓮を追おうとせず、それどころか捕まえる気すら無いように見え、どこかへと逃げた晴蓮のする事を察し、後押しているように見えた。
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「流石に特級2人を相手にするのは骨が折れるね」
「なら諦めて投降したらどうだい」
「ははは、すると思うかい?」
「だろうね。だからここで死んでもらう」
「それは怖いな」
呪術高専で夏油と乙骨を相手に善戦する呪詛師弥永宗二。それは特級に匹敵、或いは特級レベルである証拠だった。
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「(本当に困った。呪霊操術の夏油傑だけでも手に余るというのに、特級
その時、3人がとある人物の呪力を感じとる。
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「「「!?」」」
「(この呪力は晴蓮の呪力だね、後詰め……と、言ったところかな)」
「この呪力は加茂さんの!」
「どうやらこっちに来たようだ、困った事になったかな?」
困った。と、言いながらもその顔は笑っていた。
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「これで、形勢逆転すると言うのによく笑っていられるね」
「そうだね、本当に困った事だよ。蓮が君に
「夏油さんでも!?」
「彼はそれ程までに強いのさ、彼は『最優』の特級呪術師。
何でも出来る、出来ない事は無いとまで言われているんだよ」
「『最優』の………呪術師……(何でも出来る……なら里香ちゃんの呪いも……)」
里香ちゃんの解呪が出来るのではないか……と、希望を持とうとしたら夏油が「君が何を考えているのかは分からないけど、多分ソレはしないよ」と切り捨てるかの如く言いきる。
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「!? 何で、ですか?」
「本人に聞くといい」
「この場面でよく長話が出来るね君達、時間がかかればかかる程君達が不利になると言うのに」
「おっとそうだったね、蓮が来る前に倒さないとね」
「私はのらりくらりと時間稼ぎさせてもらうよ」
2人の視線が交わり、お互いが特級呪霊を呼び出し羂索は牽制を、夏油は攻勢を強め隙を作り乙骨に攻めさせる。そんな中、気負う事なく待ち合わせに遅れた程度のように会話に割って入る者がいた。
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「苦戦しているようだね」
「晴蓮遅かったじゃないか」
「加茂さん!」
「やぁ乙骨君元気そうで何よりだ、それに……その子もどうやら完全顕現しているようだね。結構結構」
「お陰で大変だよ」
「だろうね」
世間話のように、会話を続け戦う素振りを見せず立ち続ける。
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「君がそこまで苦戦するとは思わなくてね」
「困ったな、これ以上は危ないな」
夏油はやはり困ったと言いながら、朗らかに笑っている。
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「この状況で笑っているとは……何を考えているだろうね、本当に怖いな」
「そうか、危ないのか。じゃあ、ケリをつけないとね」
「頼めるかい? 晴ーー」
その時、
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突如として羂索の胸を貫く晴蓮くんの太刀。