パラメータ的なのを見て思ったのが、晴蓮くんはカンストしてないと駄目な気がする。
運動神経が10じゃないとシン・巌流なんてモノ開発出来ないし、座学が10じゃないと山程ある拡張術式も作れないし。
呪術センスが10じゃないと山程ある拡張術式を扱いきれないし、
「しっかし、どうやって解呪すんの?」
「さっきも言ったけどコレばっかりはね、僕達には何も出来ない。勿論解呪術式も創るつもりではあるけど、何を参考に創ればいいのかすら分からない。
でも、そうだね……呪った原因を突き詰めるしか無いかな。『何故呪えたのか』幸いコレの答えは判明している」
「憂太が道真公の子孫だから呪えた」
人差し指を上げ「その通り。乙骨君が道真公の子孫だから呪えた、それが答えだ」と、言うとその事を初めて知った真依・パンダ・狗巻の3人が乙骨から離れる。
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「では次に、『いつ呪ったのか』。これは恐らく祈本里香が事故に遭って死んだ時だろう」
「じゃあ次は『どうやって呪ったのか』になるね」
「傑君の言う通り。でも、残念ながら分からない。だから調べる必要がある。
乙骨君。君は祈本里香が死んだ時に何を感じた、何を思った。先ずはそれを聞かせて欲しい」
「里香ちゃんが死んだ時………『嫌だ。そんな訳無い。嘘だ。何で……どうして、助けなきゃ。
…………死んじゃダメだ……死んじゃダメだ! 死んじゃダメだ!!』………そう、思いました」
あの時、祈本里香が事故に遭い死んだ時の事を思い返し、その時に抱いた感情が思わず爆発し叫んでしまうが、すぐに我に返り小さな声で話す。
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「なーる、死の否定・拒絶か」
「そしてその感情が『どうやって呪ったのか』の答えと言う訳か」
乙骨の当時の思いを聞き「死の否定・拒絶。怨霊化。道真公の子孫……道真公の術式……」とブツブツと喋りながら何かを考え「だとすると……」と何か考えつく。
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「何か分かったの、ハル」
「あくまで憶測だけどね。
今でこそ道真公は学問の神として祀られているけど、初めは怨霊として恐れられていた。日本三大怨霊と呼ばれるほどにね。
そしてそれを鎮めるために道真公を葬っていた安楽寺に新たな社殿、『大宰府天満宮』を建立し祀った。
僕が知る限り、記録に残っている道真公の術式は、順転の『
術式内容は
そして、道真公を語る上では外せないのは『他者を死に追いやる祟り』」
「憂太の場合その逆をしたって事になるね」
菅原道真を端的に表現するなら『呪術師にして特級
しかし、通常の過呪怨霊とは違うところは特定の一人の人間に取り憑くのではなく、自身を無実の罪で流罪にした者達全員に取り憑き根こそぎ呪い殺すと言う強力なモノ。
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「ある意味では道真公の術式は『
「ソレどーゆー意味だよ蓮兄」
「少し授業をしようか。
平安時代当時、道真公の祟りだと言われ始めたのは元号にして
何故そうなったのか。これは
しかし、醍醐天皇はこれを聞き入れたんだ。
その結果が、無実の罪で大宰府への左遷。そして任じられたのは
そして道真公が最期を過ごした場所は雨漏りさえするあばら家だったと言われている。あぁ、今で言う
「あー蓮兄、小難しい授業はいいから要点だけ言って」
肩を竦め「少しは歴史の勉強をした方が良いよ」と言いながらも分かりやすく話し始める。
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「道真公が亡くなったのは左遷されてから2年後の延喜3、西暦903年。無実の罪が晴れる事なく無念の死を遂げた。
その後に宮廷内で次々と不幸が起きたんだ、それも道真公を左遷へと追いやった者達にね。
この出来事を宮廷内の者達は道真公の祟りだと噂された」
「兄さん。その話しと道真公の術式がどう絡むの?」
「その頃にね、都には飢饉や疫病が流行ってたんだよ。コレらも道真公の祟りなのかは分からない。
ただ、民衆が飢えや病に苦しんでいるなか、富を独占する藤原氏一族に、民衆の負の感情が集まってもおかしくない。
そして民衆の願いが……民衆が心の奥底で藤原氏への天罰を望み、死後に呪いの力が増した道真公の術式と感応して祟りが起こり、道真公を左遷に追いやり富を独占していた藤原氏………時平公を初め様々な関係者が死んでいった。
まさしく『禍福』であり『
「蓮、それだと祈本里香が過呪怨霊になった事とイコールにはならない。
祈本里香が過呪怨霊になったのは間違いなく乙骨君がした死の否定の筈だ。
乙骨君は誰かの願いを叶えたのではなく、自身の
「確かに、今のハルの説明じゃ憂太には祈本里香を過呪怨霊には出来ないじゃん」
そうなのだ。祈本里香が過呪怨霊になったのは乙骨憂太が呪ったからそうなった。では
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「言ったでしょ? 道真公の術式は『禍福』であり『
乙骨君はあくまで
「なんだよその厄介なご先祖様は」
「あっはっは、言うねーパンダくん。
でも、それだけ強力な呪術師なのさ道真公って御方は」
「死して尚ってヤツか」
「三大怨霊に数えられる御方ですからねぇ、1000年の時を超えて子孫の願いを聞くぐらいなんて事ないんでしょうね。
とは言っても、今話したのは僕の仮説です。なので話半分で聞いといてください」
「加茂。もしお前の仮説が当たっていたとして、どう解呪する」
もし晴蓮の言う通り、乙骨のために道真公が祈本里香を呪い、過呪怨霊にしたのであれば解呪する方法は目処がつかない。有るとすれば。
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「そうですね……道真公に礼を言い、祈本里香への呪いを解いてもらう。
或いは乙骨君。君が祈本里香の死を受け入れ、祈本里香を
「
で、でもどうやるんですか! ぼ、僕はそんな事………知りません」
「……目を背けるな乙骨憂太。当事者である君なら気づいてる筈だ、どうすればいいのか、どうやれば解呪出来るのかを」
晴蓮の一喝を受け、俯き下唇を噛み目を強く瞑る。目を開くと「はい……」と、か細い声で答える。
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「里香ちゃん」
その言葉に反応して傍に居る特級過呪怨霊・祈本里香が、呻き声をあげながら近寄る。
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「里香ちゃん。ありがとう。今まで………今まで本当に、ありがとう。ずっと、一緒に居てくれて。僕を守ってくれて……『里香ちゃん。愛してるよ。
乙骨君の言葉を発すると、鬼哭啾啾しい姿をしている過呪怨霊の祈本里香が震えだし、
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「あ………里香……ちゃん。
本当に全部……全部僕のせいじゃないか。里香ちゃんをあんな姿にして、沢山の人を傷つけて……」
「『憂太、ありがとう。時間もくれて、ずっと傍においてくれて。
里香はこの6年が生きてる時より楽しかった、生きてる時より幸せだったよ。それに……
「!! うん、うん!! これからも一緒だよ里香ちゃん」
祈本里香は確かに過呪怨霊ではなくなった、
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「『これからは優しい力で憂太を支えるね』」
「ありがとう、里香ちゃん」
「ハル。これ分かってた?」
「……まさか、一番遠い
驚いたな、まさか成仏せず守護霊になるとは……予想外だ。でも、嬉しい予想外だね。
「おめでとう乙骨君。解呪、成功だ。
そして、祈本里香は
「変成………戴天………」
「分かりやすく言えば守護霊だね。
「兄さん、ただの呪力って何?」
「感情が乗っていない漏出した無色の呪力だよ」
「そんなの在るの?」
無色の呪力は負の感情が乗る前の真っ白な呪力で、術師が行う身体強化や、術式では無い呪力を放つ時の呪力が晴蓮の言う無色の呪力である。
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「呪力をただ放つだけって出来るでしょ? アレには感情が乗ってないんだよ。
で、今の祈本里香はその呪力で成り立ってる。その場合、幽霊的なモノだから本来ならそのまま成仏するけど、乙骨君は解呪したと同時に新しい契約をした。その結果、守護霊になったって訳だ。
いやー驚きだね、まさかこんな事になるとは、可能性が低かったから無いと思ってたんだよ。事実は小説より奇なりってヤツかな」
「あ、あの守護霊って……里香ちゃんが?」
「僕で言うと明王様みたいな立ち位置の存在だね」
「守護霊……り、里香ちゃん!? どうして!」
「『だって……『これからも、ずっと』って言ったでしよ?』」
「それは、そうだけど……」
「それに『これからも一緒だ』って言ってくれたから、嬉しくて………嫌だった?」
「……ううん。とっても嬉しいよ里香ちゃん。これからもよろしくね」
「『うん!!』」
また、歯車が1つズレた。特級過呪怨霊・祈本里香はここで完全に成仏しその結果、乙骨憂太は一時的に4級呪術師まで降格する。
しかし、祈本里香は乙骨憂太の守護霊と成り、これからも伴に在り続ける。
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「ま、上手くいったからヨシって事で」
「加茂、これは問題解決と言えるのか」
「ええまあ解呪は出来ましたし、良いんじゃないんですかね」
「………そうか」
「呪力量は減ったな」
「怨霊でもなければ
話していると遠くから人が近付いてきた。
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「オ前ノ式神カラ連絡ガキタカラコッチニ来タガ、ナンダコノ状況ハ」
「やあミゲル、悟君の相手お疲れ様」
「二度トヤルカアンナ事」
「あっはっは、大事な呪具使い切ったもんね。
まあでも安心して、2・3年後には新しく出来るからさ許してよ」
その言葉に驚いたのか「イツノマニ」と知らず知らず溢していた。
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「何でコイツが此処にいんの」
「元より彼は僕側だからね」
「マジで?」
「マジで。ところでさミゲル」
「ナンダ」
「ラルゥは?」
「京都デ禪院トヤラト話シテイルミタイダナ」
「ああ直哉か、彼にも大変な事させたし……後で何かしないとね」
「なあハル」
「うん? 何」
「どこまでが計算通り?」
「今のところ全部かな。ああでも、守護霊に成ったのは予想外だよ? 幾つかの隣も視たけど一番遠い世界だったからね。ま、全部丸く収まって万事解決って事で」
「マジかよ、後で七海に文句言われんじゃない?」
「甘んじて受け入れるさ」
「灰原が止めてくれるんじゃないかい、あの子はポジティブだからね」
「ああ是非とも止めて欲しいかな。まあでも、2人も京都で頑張ったみたいだし、建人は黒閃極めてたよ」
「マジで? やっるぅう」
「君苦手だもんね」
「俺はやらないだけだっての」
「悟の強がりはほっといて、何回極めたのか分かるかい」
「なんと連続4回極めてたよ」
「それは凄いね、私でも3回までしか出来てないからね。羨ましい」
「ハルならもっと出来んじゃん」
「僕のはなんと言うか……ズルしてるから一緒にしたら駄目じゃないかな」
晴蓮の言うズルとは本来、黒閃を狙って出せる術師は存在しないという事からきている。
晴蓮は天与呪縛によって『
そして、四次元の定義は三次元空間に幅・奥行き・高さ。そこに時間という次元を加えたもの。
故に今の晴蓮にとって黒閃とは『現象』ではなく、1つの『技』でしかなかった。
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しかし守護霊……か。…………ふむ、中々面白いモノが視えたね。これからが楽しみだ。
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「倭助さんから連絡が来るとは、珍しいですね」
「あぁ、厄介なモンを見つけてな。お前さんなら視えてんじゃないのか?」
「来る前に視ましたが、どうやら呪力が濃かったり変わった呪力のモノは視えにくいようで。それで、厄介なモノとは?」
「そうかい、これだ」
倭助から手渡されたモノは小さな木箱。しかし、その木箱から発せられる呪力は恐ろしい程濃密な、そして強力な呪力だった。
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これ、は……この
「これは僕が預かります。それよりコレをどこで?」
「悠仁の入学説明会に行ってな、その時グラウンドから感じた事もねぇ強力な呪力を感じた。で、だ。場所を探ったらコレを見つけた。
こんな代物、俺じゃあどうしようも出来ねぇ」
「正しい判断です。コレを持っていたらコレに釣られて
それに、この呪力を浴び続けるのも体によくない、『障り』が出る」
持ってきていた特製の鞄から見慣れない字が書かれた布を取り出し、布で木箱を何重にも包み鞄にしまう。
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「通りで、最近多かった訳だ」
「ありがとうございます。これで、更に変えられる」
「? なんの話だ」
「こちらの話なのでお気になさらず」
「そうか、なら聞かん」
彼らに…………イヤ、止めておこう。まだ隠しておいた方が良さそうだ。
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「後、簡易的ですが禊祓を行いましょう」
「そんなん要るのか」
「一応、念のために。
では、願い奉りましは金剛夜叉明王。彼に纏わりし悪を喰らい魑魅魍魎を喰らい彼の身を護りたまえ。
オン・バザラ・ヤキシャ・ウン。オン・バザラ・ヤキシャ・ウン。オン・ーー」
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「これで一先ずは良いと思います、ですが倭助さん。数日とはいえコレの呪力を浴びていました、恐らく心身に『障り』が出ると思いますので気を付けてください」
「歳もあるしな」
「否定はしません」
「だろうな、最近体調が悪い。そう長くないだろうよ」
「そう、ですか」
「何、気にするな。煙草の吸いすぎでな、肺を悪くした」
「だから控えるよう言ったでしょうに」
「阿呆、そう簡単に止められたら苦労せん」
「………そう簡単に呪術師を止めさせませんよ」
「もう引退だ、引退。そもそも俺はフリーだろ」
「自由に動かせる駒が減るのは困りますので」
「ほう、なら俺は何だ。飛か? それとも角か?」
「倭助さんは角ですかね」
「そいつは良いな、馬は足が速いからな」
とりとめがない会話をしていると玄関から音がしてくる。
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「おや、悠仁君かな?」
「ただいまじいちゃん。ん? 師匠来てたんスか」
「やあ悠仁君、倭助さんに呼ばれてね。鍛練は続けてるかい」
「ウス。毎日やってます」
「それは何より。武術は日々鍛練が大事だからね」
「ウス!」
「折角だし手合わせしようか」
「マジっすか!? ぃよっしゃ! お願いします!!」
晴蓮と悠仁の関係は武術……シン・巌流の師匠と弟子であり、悠仁が小さい頃から稽古をつけていた。
そのため今では夏油傑に引けを取らない程の実力者になっていた。
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「さぁ、おいで悠仁君。今の君を見てあげよう」
「ウス! お願いします! ……フッ、シィ!」
師匠と弟子の賑やかな
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私の解釈ではこれが限界だった。そして変な事も起きてしまった。
道真公や守護霊云々は当然ですが捏造です。祈本里香は成仏していませんが、特級過呪怨霊では無くなったので諸々弱体化しています。
『変幻自在で底なしの呪力』から『変幻自在の呪力』に変化しています。
等級は多分、特級から一級に降格してはいます。まあすぐに色々あって特級になりますが。
そりゃあ小さい頃から悠仁君を知ってたら鍛えますよね。ワケありだけど